プリムローズが咲いた日   作:かぼちゃの馬車

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魔法使いになる前 2

…どうやら無事に転生したらしい。

だが今の自分は赤子だ。

 

???「…あぃ……」

 

まだ話すこともできない。

視界もいまいちよく見えないから、おそらく産まれて間もないのかもしれない。

 

…困った。困ったぞ。

母親らしき姿が居ない。というか、ここは外だ。しかも夜なのか、とても暗い。

 

…自分は捨て子かもしれない。

悪い予感がした。

どうする。どうする。泣き叫んだところで、人攫いなんかに拾われても困る。

転生したのにすぐに死ぬなんてことないよな。

 

…いや、あり得る。

アズラエルからのギフトはだいぶ贅沢言ってしまったから、実は寿命が短いですなんてことはあり得てしまう。

 

とりあえず落ち着こう。

 

頭の中と状況を整理するんだ。

…てか、ここはどこで、いつなんだ!

情報がなさすぎて逆に混乱してきたぞ!

 

あー…まず以前の自分はサイトウケイ…

確か…11歳だった…

ハリーポッターの世界に転生した…はず。

アズラエルからギフトを5つ貰った。

確か……

絶対記憶力

容姿端麗

超膨大魔力

全種言語力

そして…大天使アズラエルの守護

 

なにか使えるようなもの…言葉話せないからまず全種言語力は無意味だし…容姿なんて赤ん坊には関係ないし

 

とりあえずは…転生の記憶があるから、絶対記憶力はちゃんと使えてるみたいだ。

 

んー、となると…

…超膨大魔力…使えるだろうか…赤ん坊だが。

 

どう使うかもわからないけど…やるだけやるか。いちかばちか…

 

“Repello Inimicum” (敵をさけよ)……

 

……なにも起こらないな、やっぱり

 

あー…どうする…どうする…

赤ん坊のまま死にたくないぞ…

 

くそ…

…まだ死にたくないっ!!

???「ぅあ…ぁ!!」

 

ゾクっとした瞬間、身体の底からなにか溢れるような感覚が駆け巡る。

 

???「っ!?、とても大きな魔力を感じた…だが、薄汚い赤ん坊しかいない…ルダは魔力を感じたのに…気のせいだったかもしれない…魔法使いの家に雇われたかったのに…ただの赤ん坊…」

ルダ?…人か?いや耳が尖って…屋敷しもべ妖精か!…人じゃないが誰かいただけでも安心だ。

 

???「ぅ…ぁあ」

拾ってくれるかもしれん。ここは無邪気な笑顔を見せつけよう。

 

ルダ「無害な赤ん坊…捨てられてしまった赤ん坊…可哀想な子だ…こんな…ノクターン横丁に捨てられるなんて…ルダは…ルダは…見なかった…赤ん坊など見なかった…」

 

なに!?、見なかったことにするのかよ!

てかここ、暗いと思ったらノクターン横丁か!やっぱりハリーポッターの世界に来たんだな!やった!…死ぬかもしれないけど。

 

いや…やっと望む世界にきたんだ…見なかったことになんてさせてたまるかっての

さっきの感覚を思い出せ…

???「ああ…!!」

またゾクっとした。

 

ルダ「…!?、こんな小さな赤ん坊が…とても大きな魔力を出している…見間違いじゃなかった…ルダは恐ろしい子を見つけてしまった…」

見なかったことにはしないみたいだな。よし。

 

ルダ「…小さな赤ん坊…恐ろしい子…この世界は例のあの人がいる…とても危険な場所だ…大きな魔力を持ってる赤ん坊…きっと狙われてしまうだろう…」

屋敷しもべ妖精ルダは、自分の瞳を真っ直ぐ見つめ、心を見つめてきた。

 

ルダ「っ…ぁぁ、なんと…赤ん坊は恐怖を知らない…でもここにいても行けない。」

何を言ってるかわからなかったが、ルダは何か紙と道端に咲いていた花を摘んで、自分の胸元に置いた。

 

視界が歪んだ。…ちょっと気持ち悪い感覚。姿現しみたいなことをしたのか。

…でここは?どこだ?

…海の匂いがする。ノクターン横丁ではないみたいだ。

 

ルダ「…吐かなかったのか…やはり強い子だ…とても強い子…なにか特別な子…マグルに渡したくはないが…魔法界より安全だ…恐らく…」

 

コンコンコン…

 

ルダがノックをした。

そして自分の頬をなで、地面に置いてかれた。ルダはどこかに行ってしまった。

 

???「まったくこんな夜中に…誰なの!」

女性の声がして、すぐに扉が開いた音がした。

 

???「っ…赤ん坊だわ…孤児院だからってこんな小さな子捨てていくなんて…」

女性の顔が覗き込む。

抱き上げられ、人の体温が心地よく感じた。 

 

…魔力使いすぎたか。凄い眠気が。

 

???「あら…なにかしらこれ…プリムローズだわ!綺麗ね…これは?…」

 

“1980.04.27. Urbach-Wiethe disease”

(1980年4月27日 ウルバッハビーテ病)

 

女性はメモを読み、はっとしたように孤児院の中に入り扉を閉める。

 

???「マリア!マリア!…すぐに医者を呼んで頂戴。この子病気みたいなのよ。…みて。」

マリアと呼ばれている女性にメモを見せる。

 

マリア「…!はい、すぐにお呼びします。院長」

 

院長「…ウルバッハビーテ病なんて聞いたことないわ。どんな病気なのかしら。」

 

 

_____1年後

 

“英国ヒルパー州 フェリック・スノー ペルレベ通り 2番地 オードルファス孤児院”

 

マリア「プリム?プリム?…どこに行ったのかしら」

 

プリムは自分の名前だ。プリム·ウルバッハ。

拾われた時、プリムローズとウルバッハビーテ病というメモ書きがあったらしい。

前はサイトウケイ…。男か女かわからないけど、今の自分は女だ。

 

プリム「マリア」

マリア「そこにいたのね?貴方はまだ小さいのだから、動きまわっては駄目よ?」

 

マリア·オードルファス。彼女はオードルファス孤児院の教育係で、院長シルビア·オードルファスの娘だ。

自分のことを凄く気にかけてくれる。

 

プリム「うん、わかった。」

???「プリムの成長相変わらずよね。この子1歳よ?よちよち歩きで話すのもできない筈じゃない普通。気味が悪いわ。」

ちょっと嫌味なこの人は、ペネロピ·ベネット。マリアと同じ教育係だ。ただ自分は嫌われてる。なんせ成長が早く気味が悪い。それに、病気持ちだって知ってるから余計だ。

 

でも院長よりはましだ。

 

マリア「そんなこと言わないで頂戴。子供の成長は個人差があるのよ。」

ペネロピ「そんなこと言ったって、プリムの見た目は3歳くらいだわ。…きっとあの病気のせいね。」

マリア「ちょっとペネロピ!」

 

自分の見た目や、異様なほど早い成長は、自分の魔力でやったものだ。赤ん坊の姿では言いたいことも言えない。話せるように声帯を変化できないかと思ったが、それには身体の成長が必要だった。

ギフトが役立った。コントロールはまだできないが。

 

プリム「大丈夫だよマリア。病気なのは本当のことだもん。」

院長「ウルバッハビーテ病。脳の病ですから、ちょっと変なのは確かだわ。」

プリム「院長、私の病気は、恐怖を感じないだけです。」

院長「黙りなさい!呪いがうつるわ!話しかけないで頂戴!」

プリム「」

 

院長は自分を呪われた子だと思ってる。

そりゃそうだ。奇妙すぎるもの。

まぁ、この見た目も本当に3歳になれば目立たなくなる。

 

マリア「…ほらプリム外へ出てみんなと遊んでなさい。」 

プリム「うん、またねマリア」

マリアは本当に優しいと思う。

ペネロピとかの反応が普通だと思う。

 

 

プリム「…誰かいないかなぁ、あ、小鳥さーん?」

???「ん?人間だ。人間が僕に話しかけてる?」

プリム「そうだよ。君に話しかけてるの。小鳥さん。」

???「僕はトト。小鳥さんじゃない。なんで話せるんだ?」

プリム「こんにちはトトさん。んー、なんでかなぁ。鳥なのかも。」

トト「!?鳥なわけない。君は人間だ。翼がない。」

プリム「わからないよ?翼がない、飛べない鳥かも。」

トト「は!翼のない飛べない鳥なんて、見たことも聞いたこともないよ!馬鹿な人間だ。」

そういってトトは羽ばたいてしまった。

 

???「おや?また病人が1人でブツブツ呟いてるぞ。」

???「話しかけるなよ、病気がうつるぞ。」

???「はは、病人は小鳥が友達なのか?」

 

…絵に描いたような、意地悪3人組。

背が高いのが、マイロ。

小太りなのが、ダルタン。

出っ歯で眼鏡をしてるのが、ルイス。 

同じ孤児院の6歳児だ。

 

プリム「少なくともあなた達とは友達じゃない。病人に話しかけるほど寂しかったの?」

ダルタン「なんだと!病人のくせに生意気だぞ!」

マイロ「あぁ、ダルタンやっちまおうぜ!」

ルイス「はは、病人なんか一捻りだ!」

プリム「病人で女の子の私相手に…3人も。とっても勇敢ね。」

ダルタン、マイロ、ルイス「…」

マリア「プリム?プリム?」

プリム「じゃあ、マリアが呼んでるから、またね」

この世界にきて思ったことがひとつ。

意地悪3人組はどこにでもいるんだなと思った。

 

プリム「ただいまマリア」

マリア「おかえりなさいプリム、外はどうだった?みんなと仲良くできた?」

プリム「んー、どうだろ。ダルタン達が話しかけてきて…」

マリア「ダルタン!またあの3人組ね!あとで叱っておくわ!なにをされたの!」

プリム「ふふ、なにもされてないよ。話してただけ。ありがとうマリア。」

マリア「そう?…なにもされてないならよかったわ。なにかされたらちゃんと言うのよ?」

プリム「うん、わかったよ、マリア。あ、もう部屋に戻るね。」

マリア「ええ、夕飯の時間になったら降りてくるのよ?」

 

______

さて…

魔法が使えるように鍛えておかなきゃ。

怠けたら駄目ってアズラエルに言われたからね。




ウルバッハビーテ症候群
恐怖を感じず好奇心を得る病気。

実の親は不明
捨てられた理由 マグルと魔女の間の子として生まれた為、闇陣営が猛威を奮っている中育てることは不可能だと考え捨てられる。産みの母は産後直ぐに死喰い人に見つかりマグルと交わったとして殺される。

院長 シルビア・オードルファス
海沿いの田舎の孤児院、オードルファス孤児院の院長。玄関前に置かれた赤子を拾う。メモ書きとプリムローズの花から、プリム・ウルバッハと名付ける。
プリムはブツブツと話す(鳥や蛇と話している)ので、不気味な子だと思っている。手が掛かるので早く手放したい。

教育係
マリア·オードルファス
院長シルビアの娘。プリムを懸命に育てる。プリムの孤児院での唯一の心の拠り所。

ペネロピ·ベネット
プリムの成長が早く気味が悪いと感じている。嫌いはするが、院長ほどではない。給料がいいとして働くが、そもそも子供があまり好きではない。

プリムローズの花言葉
運命を開く 永続する愛
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