プリムローズが咲いた日   作:かぼちゃの馬車

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蛇はパイプで眠る(秘密の部屋 終)

 

ハッフルパフとグリフィンドールの試合は中止になった。…ハーマイオニーが襲われたんだ、確か。

アリエッタ「あぁ…楽しみにしてたのに。」

プリム「アリエッタはシーカーになりたいの?」

アリエッタ「んー、向いてるなぁと思うのはシーカーだけど…セドリックがいるからね。」

プリム「そう…でもクィディッチはするんでしょ?」

アリエッタ「もちろん!その為のギフトだもの。来年の選抜試験受けてみようかなって。ビーターとしてセドリックを守るわ。」

来年はディメンターがでる。…早くパトローナスをできるようにならなきゃ。

プリム「…ディメンターに気をつけてね。」

 

________________

 

スリザリン寮

マクゴナガル「皆さん…静かに!事件が続いたため、たった今から、新しい規則を設けます。全校生徒は、夕方6時までに、各寮の談話室に戻ること。授業に行く時は、必ず先生が引率します。…例外はありません。…残念ですが…一連の襲撃の犯人が捕まらない限り学校の閉鎖も考えられます。」

 

 

…必要の部屋も頻繁には使えない。

 

ドラコ「プリム聞いたか?」

プリム「何を?」

ドラコ「今日、魔法省大臣が来てくださる。森番がアズカバンへ連行されるそうだ。…これは秘密だが、父上が言うにはダンブルドアは校長を停職するらしい。」

何やらドラコは嬉しそうだ。

プリム「…じゃあ、学校が閉鎖されるのはそう遠くないわけね。」

 

 

広間前

 

プリム「アリエッタ!…規則のこと聞いた?必要の部屋で集まるのは難しくなる。個人で空いた時間に開くことにしましょう。」

アリエッタ「そうね…」

沈黙が長く感じた。

 

_____________

 

その日の夜、スネイプ先生に、医務室に来るよう私は呼び出された。…ドラコもついて来た。私が怒られるとでも思ったのだろう。医務室にはハリー達もいた。私達を見ると直ぐに出て行ったけど。

 

スネイプ「8階の廊下で見つかったのだ。こうなってしまっては…薬の完成を待つしかない。」

 

アリエッタが石になっていた。

8階ってことは必要の部屋を開けようとしたんだろう。…手に握ってあるコンパクトのおかげで命に別状はない。

 

プリム「アリエッタ…」

ドラコ「…っ!これ、僕がプリムに…なんでアリエッタが。」

ドラコがアリエッタの握ったコンパクトを手に取る。

プリム「貸したの。」

ドラコの眉間にシワが寄る。

ハーマイオニーのベッドに近づいた。鏡が置いてある。手に紙は…ない。ハリー達が持ち去ったんだろう。

 

 

ドラコ「プリム、これは、僕が君にプレゼントしたものだ。君が持つべきものだ。」

ドラコが後ろで声を上げる。

 

プリム「アリエッタには必要だったの。」

ドラコ「気に入らなかったか?」

プリム「そうじゃないわ。これがなければ、アリエッタは死んでたってこと。」

スネイプ先生が後ろに立つ。

 

スネイプ「…ミスクロウリーは、原因が何か知っているのかね?…スリザリンの継承者が誰かも。」

閉心術をかけながら話すことにした。スネイプ先生にまだ存在がバレてはいけない。

 

プリム「…推測ですが、秘密の部屋にはバジリスクが眠っているのではないかと。継承者は知りません。」

ドラコ「バジリスクだって!?」

プリム「スリザリンの継承者はパーセルマウスで、バジリスクは蛇。石になった生徒が出た夜はクモが逃げる。」

スネイプ「…」

ドラコ「でも、バジリスクに睨まれたら死ぬんだ。誰も死んでないじゃないか。石になっただけだ。」

プリム「だから鏡が必要だったの。」

スネイプ「…さよう。」

ドラコ「…ど、どういうことだ?」

プリム「誰も直に目を見た訳じゃない。ハーマイオニーとアリエッタは鏡で。コリンはカメラを通して。ジャスティンは、ほとんど首なしニックを通して。ミセスノリスは床の水を見たの。」

スネイプ「君達は…寮に戻りなさい。それから、この件に関してはもう介入してはならない…。」

プリム「はい、先生。」

 

 

 

ドラコとスリザリン寮へ戻る。

ドラコ「バジリスクがホグワーツにいるって?一体どうやって動いてるんだ?でかい蛇が廊下をズルズルと?」

プリム「パイプ。」

ドラコ「パイプ?パイプだって?」

ありえないという表情だ。

 

プリム「城中張り巡らされてる。…ミセスノリスを見たとき床は水浸しだったし。でかい蛇がいて、マグル生まれを見つけて突然現ることも、パイプを使ってたらおかしくないわ。」

ドラコ「…そう、だな。」

ドラコは納得してソファーに深く腰をかける。

プリム「バジリスクのおかげで、ホグワーツはとても安全ね。」

危険でもあるが。

 

______________

 

 

 

アナウンス(マクゴナガル)「生徒は全員、直ちに寮に戻りなさい。先生方は、至急2階の廊下にお集まりください。」

 

…ジニーだな。先生達は集まるんだ、寮から抜けても気づかれないだろう。たぶん。

 

プリム「…」

おっと…。ハリー達も聞き耳を立てている。

…目くらまし術をかけておこう。

 

マクゴナガル「…ご覧の通りです。スリザリンの継承者が、また伝言を残しました。…恐れていた事態です。生徒が1人怪物にさらわれました…秘密の部屋の中へ。生徒を家に帰しましょう。…ホグワーツはもう、これでおしまいです。」

 

ロックハート「ウトウトしまして…何の話で?」

…ロックハートは、とことん教師もどきだ。

 

スネイプ「女子生徒が怪物に連れ去られた、あなたの出番ですぞ。」

ロックハート「私の…で…出番?」

スネイプ「昨夜おっしゃいましたな、秘密の部屋への入り口は…とうに知っていると。」

マクゴナガル「では決まりですね。怪物はあなたにお任せしましょう、ギルデロイ。伝説的な、あなたのお力にね。」

先生方はもう気づいているんだな、教師もどきだと。

 

ロックハート「よろしいあ〜…では部屋に戻って…。支度します。」

マダムポンフリー「連れ去られた生徒は誰なんです?」

マクゴナガル「…ジニーウィーズリーです。」

ロン「ジニー…」

 

“彼女の白骨は 永遠に 秘密の部屋に 横たわるであろう。”

 

プリム「…」

ハリー達がロックハートのところへ向かった。秘密の部屋の場所を教えに行くのだろう。…私は何もしない。いくら強くても、バジリスクとは闘いたくない。…半分嘘だ、臭くて汚いパイプの中に入りたくない。

___________

 

 

翌朝、ダンブルドアに呼び出された。何かしただろうか。…何もしてない。だってバジリスクと闘ってないし、トムリドルにも会ってない。…なんだ。

 

沸々と考えていると、ロンが校長室から駆け下りてきた。フクロウ便でハグリッドの釈放通知を送るんだろう。

 

ロン「あ、お前クロウリー…なんでこんなところにいるんだよ。」

プリム「ダンブルドアに呼び出された。そっちこそ、何か問題でも起こしたの?トラブルメーカー」

ロン「…感じの悪いやつ。なんでこんなのをハーマイオニーが友達って言うのかわからないな。」

プリム「あら気が合うのね、私もあなたは感じが悪いと思ってたわ。…ところで何か急ぎの用事があるんじゃないの?」

あ、そうだ!とロンが走り去る。

慌ただしいな。

 

 

校長室へ入ると、ハリーも居た。

プリム「お呼びですか、先生。」

ダンブルドア「あぁ、プリム。ようきた。少々聞きたいことがあっての。」

青いビー玉が見つめてくる。…常に閉心術をかけてる、大丈夫だ。落ち着け。

 

ダンブルドア「ハリー、まずは君にお礼を言いたい。君は、まことの信頼を示してくれた。そうでなければフォークスは、呼び寄せられまい。」

…不死鳥。そうだ、ひとつやることがある。

不死鳥の涙が欲しい。…バジリスクの毒も癒す力。

 

ダンブルドア「それからもう1つ。…君は何か悩んでいるようじゃが、違うかね?…ハリー。」

青いビー玉がハリーを見つめる。

 

 

ハリー「僕はその…あることに気付いてしまったんです。認めたくないけど…トムリドルと僕には、似通った点がある。」

私をチラチラと見て、様子をみながら話すハリー。

 

ダンブルドア「あぁ、そうじゃのう。君もまた、パーセルタングを話せる。プリムもじゃがの。」

プリム「…」

 

ダンブルドア「なぜならば、ヴォルデモート卿が…それを話せるからじゃ。わしが思うにヤツは、ハリー…君に自分の力の一部を移したのじゃ。…その傷を負わせた夜に。」

 

ハリー「ヴォルデモートが、力の一部を僕に…移した?」

 

ダンブルドア「ああ…思いがけずじゃろうが、そうなのじゃ。」

ハリー「じゃあやっぱり…僕はスリザリンに入るべきだった…。」

ダンブルドア「確かに君は、ヴォルデモートが誇った様々な資質を持っておる。…意志の強さ。豊かな才知。…少々規則を無視する傾向もな。…だがなぜ帽子はグリフィンドールに入れたか?」

ハリー「僕が頼んだから。」

ダンブルドア「その通りじゃよ、そこが君と、ヴォルデモートの違いじゃ。自分が何者かは能力で決まるのではない。“どんな選択をするか”じゃ。」

…能力を沢山つけてる私の存在を否定されていないか?さりげなく。知ってていってるなら、ダンブルドアもスリザリンだ。老害め。

 

 

ダンブルドア「君が、本当にグリフィンドールに属すという、証拠が欲しいのなら…これをよ〜く見るがいい。…気を付けてな。」

剣を持ち、見つめるハリー。

 

ハリー「…ゴドリック・グリフィンドール」

ダンブルドア「…そう。真のグリフィンドール生だけが、この剣を出せる。」

 

バタンッと強くドアが開く音が響いた。

…ルシウスさんだ。ドビーもいる。

ハリー「ドビー!じゃあ君のご主人って…君、マルフォイの家に仕えてるの?」

ドビー「うぅ…」

ルシウス「…お前のお仕置きは後だ。」

ドビーが怯えて震えてる。

 

 

ルシウス「ほう…お戻りだとは、本当でしたな。」

ダンブルドア「アーサーウィーズリーの娘が連れ去られたと聞いて、理事達がわしをここに、呼び戻したのじゃ。」

ルシウス「バカな…」

ダンブルドア「奇妙なことにの、何人かの理事は君に脅されたと考えておる。停職に賛同せねば、家族を呪うと。」

ルシウス「無礼なことを!」

ダンブルドア「何じゃと?」

ルシウス「この私が心を砕いているのは後にも先にも、この学校の繁栄と、そしてもちろん、生徒達のことです。誰の仕業か判明したのでしょうな?どうです?」

 

 

ダンブルドア「したとも。」

ルシウス「それで?誰かね?」

ハリーを見るダンブルドア

 

ダンブルドア「ヴォルデモートじゃ。」

ルシウス「ああ…」

ダンブルドア「今回は誰かを手先にして、行動したようじゃがな。これを…使ってじゃ。」

トムリドルの日記が黒く輝く。

ルシウス「なるほど。」

ドビーがハリーのローブを引っ張って、何か言いたげだ。…確かルシウスさんがジニーに渡したんだっけ。

 

ダンブルドア「幸いにもポッターが、これを見つけてくれた。ヴォルデモート卿の昔の学用品が、罪もない生徒の手に二度と渡らねばいいが、何かあれば…裏で糸を引いた者はただでは…済まさぬ。」

 

ルシウス「ではこの先もポッター君がいつも救ってくれることを祈りますか。」

スカイグレーがギラギラと輝く。

 

ハリー「ご心配なく、そのつもりです。」

ルシウス「…では失礼。来いドビー!帰るぞ。」

蹴られるドビー…扱いが酷いな。普通がわからないが。

 

ドビー「うっうっ…あ〜っ!そんなあんまりでございます…。」

ドアが閉まると、ハリーが日記を手に取る。

ハリー「先生、これをいただいていいですか?」

ハリーが日記を持って校長室を出た。

 

 

 

プリム「ハリーの話は終わりましたか?」

ダンブルドア「あぁ、プリム…君は何故パーセルタングを話せるのじゃ?」

プリム「私はどんな動物とも話せます。」

ダンブルドア「ほぅ…なんと、そんなことが。」

プリム「心は覗かないんですね、本当かどうかもわからないのに。」

ダンブルドア「わしはプリムを信じる方に賭けておるからの。」

…わかってないな。私はあなたを救わないのに。

 

プリム「ひとつ頼みを聞いてくださいませんか。」

ダンブルドアが視線をむける。心は覗いてない。

ダンブルドア「頼みとは?」

プリム「不死鳥の涙を採取したいのです。…とても貴重なものだ。興味があります。」

ダンブルドア「わしはよいが、フォークスに聞いてみてはいかがかの?…不死鳥とも話せればじゃが。」

もちろんだ、私はビーテといつも話せてるんだぞ?

不死鳥のフォークスに意識を向けて話しかける。

プリム「フォークスさん、私はプリム。あなたの涙をわけてくださいませんか?」

純粋で礼儀正しい子供。そう思わせる。

フォークス「…私はダンブルドアを信じるものに、力を貸します。あなたは違いますね?」

…鳥のくせに。気取ってる。鳥頭のくせに、勘がいい。

 

プリム「…確かにダンブルドアは信じてない。でも、あなたの力が必要なの。私の…私の大事な人を救う唯一の手段なの。」

嘘じゃない。スネイプ先生のことだ。ナギニの毒も不死鳥の涙があれば救える。筈だ。

 

フォークス「…時がくれば、私はあなたの前で涙を流しましょう。」

…やっぱり駄目か。可能性は初めから低い。

 

プリム「駄目みたいですね、先生。涙は貰えない。残念です。」

ダンブルドア「そうじゃったか、残念じゃ。じゃがプリムは、本当にどんな動物とも話せるようじゃの。」

プリム「はい、意識を向けないと話せませんが。…じゃあ、もう行きますね。」

 

ダンブルドア「プリム」

寮に戻ろうとすると呼び止められた。

 

ダンブルドア「わしのことは信用できないかの?」

プリム「はい、あなたのことはよく知ってますので。」

振り向かずに校長室を出た。

 

 

…ん?

ドビーが靴下を握ってる。あー、やっと自由になったんだね、ドビー。

 

________________

 

 

その夜、広間ではドラコがなにやら不機嫌だった。まぁ、マルフォイ家はいろいろあったよね。

 

広間のドアが開くと、アリエッタとハーマイオニーが戻ってきた。

ドラコ「アリエッタだぞ、会いに行かないのか?」

プリム「行かない。アリエッタならそうする。」

ロンとハーマイオニーが意識し始めるところだ。あまり下手に動かない方がいい。

 

 

ダンブルドア「宴を始める前に、まず拍手を送りたい。スプラウト先生と、マダムポンフリーに。マンドレイク薬で、石にされた者達を見事元に戻してくださった。」

盛大な拍手が送られる。

スプラウト「ふふ、ありがとう」

ドラコは拍手してない。…私はしておこう。軽く。アリエッタを救ってくれた。

 

ダンブルドア「更に、これまでの経緯を踏まえ、お祝いとして…期末試験を取りやめとする。」

スネイプ先生が本気か?という表情をしている。何も知らされてなかったんだろう、ちょっと面白い。たんまりと作った問題もあっただろうな。

ドラコも、これには拍手している。

 

バタンッと強く扉が開く音が広間に響く。

ハグリッド「遅れてすまねぇ。釈放通知を送ってきた梟が、道に迷ってしっちゃかめっちゃかでな。…エロールつう名前のやつだが。」

…ロンの梟だ。

 

ハグリッド「お前さん達のおかげだ、ハリーがいてくれたんで…。ロンも…もちろんハーマイオニーもだ。でなきゃ俺は…例のあそこから出られんかった。礼を言わせてくれ…ありがとう!」

ハリー「ホグワーツには、ハグリッドがいなきゃ。」

ハリーとハグリッドが抱擁し、拍手が送られる。だんだんと拍手は広がり立ち上がってみんな拍手する。拍手と歓声が広間に響く。

 

クラッブやゴイルが立ち上がって拍手しようとするが、ドラコに止められる。ドラコに付き合っておこう。…マルフォイ家はいろいろあったのだから。もちろん同情だ。

 

 

 

プリム「アリエッタ、さっきは会いに行かなくてごめんね?…もう、元気?」

アリエッタ「いいのよ、だってあそこの場面って重要だもの。…あなたのおかげで死ななかった。ありがとうプリム。」

抱き締めた。強くつよく。生きてることを確かめるように。

 

プリム「アリエッタは必要の部屋で特訓しようとしたの?」

アリエッタ「そう、守護霊の呪文。だって私達まだ形になってないでしょ?…マグルの世界じゃ魔法使えないから練習できないし。」

焦ってきて頻繁に通ったの、とアリエッタが言った。そうだ、まだ守護霊の呪文は膜を貼るくらいにしかならない。

 

プリム「じゃあ、私の家で練習しない?魔法を使っても、父上が使ったことになるから大丈夫よ。」

アリエッタ「わぁ…プリム、それって最高だね」




無事に秘密の部屋も終わりました!ここまでの「プリムローズが咲いた日」を読んでいただきありがとうございます❁⃘*.゚
次は遂にアズカバン!これからも是非、引き続き「プリムローズが咲いた日」をご愛読ください!

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