中庭でアリエッタの姿を見つけた。
プリム「アリエッタ!今日よね?クィディッチの選抜。」
アリエッタ「プリム!そうなの、見に来てくれる?」
プリム「行かないわ、だってアリエッタは必ず選ばれるもの。」
アリエッタ「ふふ、そうかな。」
冬が近づいているのか、暴れ柳の葉は枯れてしまっていた。
プリム「そうだ私、幸運の液体を作ってるの。でも案外難しくて…もう少しってところ。」
アリエッタ「幸運の液体?それって…凄く難しいやつじゃない?えっと…6年生あたりの話よ?」
指で数えて驚愕しているアリエッタ。
プリム「まぁ、実は半純血のプリンス蔵書を手に入れてね。あ、双子の呪文をかけたから、本物じゃないけど。だいぶ助かってるよ。」
アリエッタ「プリムって…何歳だっけ?」
プリム「あなたと同じだと思ってたけど、違った?」
ブルブルと暴れ柳が寒そうに震える。
プリム「幸運の液体ができたら、あなたにプレゼントしようと思ったの。でも選抜には間に合わなかった…ごめんなさい。」
アリエッタ「プレゼントは嬉しいけど、選抜にも試合にも使いたくないよ。…ギフトの出番だしね!」
アリエッタが微笑みを浮かべる。
プリム「そう?…幸運の液体があればいい結果になるのに。」
アリエッタ「私のこと信用してない?…プリムってばとことんスリザリンね。」
それって狡いってことか?何が悪いんだ?使えるものは使わないとだろ。
アリエッタ「そうだ、今年は脱狼薬の方が必要じゃない?ルーピン先生大変なことになるでしょ?」
プリム「…ルーピン先生を助けるの?」
アリエッタ「私は…助けてもいいかなぁって思ってた。でも脱狼薬って難しいからプリムに任せることになるんだけどね。」
私も暇じゃないんだぞ。…相変わらず他力本願だな。
プリム「ルーピン先生を助けたら、ピーターペティグリューがアズカバン送りになる。その後どうなる?…バーテミウス·クラウチ·ジュニア。そいつが厄介になるだろうね。それにセドリックが助かる可能性が低くなる。」
アリエッタが青ざめる。
アリエッタ「…じゃあ、幸運の液体をあげたらどう?先生が飲むか飲まないかは別として。飲んだら狼にならないかもしれない。」
プリム「…まぁ、飲まないだろうね。スリザリン生が作った得体の知れない薬だ。」
アリエッタ「そうよね…」
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闇の魔術に対する防衛術の授業だが、今日はルーピン先生ではなく、スネイプ先生が授業を担当することになった。満月の日が近いのだろう。…どこにいるんだろうか。禁じられた森…もしくは叫びの屋敷かな。
プリム「…叫びの屋敷ね」
パンジー「叫びの屋敷?」
プリム「…早く行きたいなって」
勢いよく教室のドアが開き、スネイプ先生が教室へ入る。
生徒を見回して怖い顔を向ける。
スネイプ「教科書の394ページを開け」
ピリッとした空気だ。ルーピン先生とは正反対の空気感。…悪くはないが。
ハリー「スネイプ先生…ルーピン先生はどうなさったんですか?」
スネイプ「君が気にすることではない。…ルーピン先生は、今日は授業が出来る状態でないことだけ言っておこう。教科書を開きたまえ394ページだ…」
ロン「狼人間?…」
ハーマイオニー「先生…レッドキャップとヒンキーパンクは習いましたが、夜行性の生き物はまだです。」
先生は「…黙れ。」
ロン「ハーマイオニーいつ来たんだ!?入ってきたのみた!?」
…逆転時計だ。随分と乱用してるらしい。
スネイプ「…この授業は私が教えているんだ」と機嫌が悪いスネイプ先生。
スネイプ「さて、動物もどきと人狼はどうやって見分けるか分かるものは?…居ないのかね?なんと嘆かわしい…」
ハーマイオニーが手を挙げているが。
ハーマイオニー「先生…動物もどきは自分の意思で狼に変身しますが、狼人間は違います。満月が来て変身すると今までの自分を忘れて、友達さえも殺してしまいます。…そして、同じ仲間の呼び声だけに答えます。」
ドラコがすかさず狼の鳴き真似をする。
スネイプ「ご苦労、ミスターマルフォイ。…ミスグレンジャー…勝手に発言したのはこれで二度目だな。君はそうやって知ったかぶりをせずには居られないのかね?…罰としてグリフィンドールから5点減点だ」
グリフィンドールからは嘆く声が上がる。
スネイプ「不勉強の罰として、月曜日の朝レポートを提出するように。人狼とその見分け方について羊皮紙2巻きだ。」
ハリー「でも明日はクィディッチが…」
スネイプ「では、より一層注意したまえ。例え手足がもがれても、宿題は免除せん。…教科書394ページを開け。」
とことんスリザリン贔屓だ。
スネイプ「人狼という言葉だが、じんは人。人間を意味し、ろうは狼を意味する。すなわち人狼とは狼人間のことを指す…」
ドラコが魔法のかかったメモ書きをハリーに渡す。…子供っぽい。
満月の夜、外出をした。
プリム「…」
たぶんこの先にいる。
“Immobulus”(動くな)
暴れ柳に魔法をかけて、根っこの穴に潜った。道が続いている。
…やっぱりここは叫びの屋敷に繋がっていた。先生はいるのだろうか。あたりを見回した。
プリム「…ルーピン先生?」
ルーピン「…っ!誰だ!…今すぐここからでなさい!」
部屋の隅で継ぎ接ぎのローブを被り、蹲る先生がいた。
脱狼薬の効果だろう、理性がある。それか、まだ変身してない。変身する寸前なのか?ローブのせいでわからない。
プリム「ルーピン先生、脱狼薬は欠かさずお飲みですか?」
ルーピン先生の声がする震えたローブに手を置く。
ルーピン「っ、なんでそれを知ってる。」
プリム「ルーピン先生のボガートの授業で、先生は満月が怖いものでした。それから…スネイプ先生が狼人間の授業をしました。他にもあるけど…これで気づいてる人はハーマイオニーくらいですかね。」
ルーピン「…頭がいいようだけど、ここに来たのは間違いだ。早くホグワーツに戻りなさい。」
プリム「ルーピン先生はいい先生です。いいことは褒めてくれるし、悪いことは叱ってくれる。寮に関係なく。…ハリーは先生の特別かもしれないけど。…私は、ルーピン先生の授業が好きです。」
ローブが少しずれてルーピン先生の瞳が光る。
ルーピン「…君は、プリムだね?スリザリン生だろ?…なんで私なんか気にかけるんだ。僕のような…化け物を。」
プリム「…尊敬する先生なので、まぁ…ただの気まぐれです。」
…話も目立つ変化はない。このくらいは大丈夫だろう。
プリム「…」
私は静かに黒豹になり、隣に座って朝を待った。
目が覚めると先生はいなかった。
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外は大雨だ。それでもクィディッチは中止にならなかった。…そして、今日はアリエッタの初試合だ。無事にビーターとしてのポジションを勝ち取った。まぁ、当然だな。
ハッフルパフとグリフィンドールのクィディッチの試合の為に、学校中の生徒が芝生の競技場に集まった。
プリム「大雨なのに、こんなに集まるのね。」
ドラコ「当たり前だ。クィディッチだぞ?」
パンジー「ハッフルパフとグリフィンドール、どっちが勝つと思う?ドラコ」
ドラコ「…グリフィンドールじゃないか?僕といい勝負をするからな。」
ブレーズ「ハッフルパフはアリエッタがビーターになったらしいぞ、そうだろプリム?」
プリム「ええ、まぁアリエッタは運動神経がいいから、当たり前よ。」
フィールドにいる、ハリーとアリエッタが目に入る。
フーチ先生が試合開始のホイッスルを吹いた。
ハリーは急上昇したが風にあおられた。
アリエッタはブラッジャーを難なく打ち返している。…力もあるんだろうな。額押されると痛いし。
プリム「…」
痛みを思い出して額を抑えた。
ブレーズ「寒くないかプリム?」
プリム「大丈夫、このくらいは。」
パンジー「ドラコ、私なんだか寒いわ。」
パンジーが寒そうにブルブルと震える。
ドラコ「…ローブ羽織るか?」
ドラコが自分のローブをパンジーに渡したから、ドラコが寒そうだ。
プリム「…」
視界に入れない。試合に集中しよう。
稲妻が容赦なく落ちる競技場。
アリエッタは素早く交わしている。…やっぱりシーカーの方が良さそうだ。
ハリーが上空で向きを変えると目の前で稲妻が走る。スピードを上げてスニッチに突進した時、ディメンターが襲い掛かる。ハリーはニンバスから落ちていった。
ドラコ「おい!あれ…」
プリム「…」
沢山の叫び声が上がる。
ダンブルドア「アレストモメンタム…」
ハリーは医務室に運ばれた。試合はハッフルパフが勝ったけど、アリエッタは不完全燃焼だったと言っていた。ダンブルドアは魔法省にかんかんだそうだ。ディメンターがハリーを襲ったから、生徒のいるグラウンドに入ったからだ。
ハリーの自慢の箒は、暴れ柳にぶつかって壊れてしまったらしい。変わらない。記憶と変わらない。…アリエッタがいたのに。何か見逃してるのかもしれない。
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秘密の部屋
プリム「間に合わなかったけど…上出来ね。」
ぐつぐつとした大鍋には金色の液体がパチパチと弾ける幸運の液体ができていた。
液体を瓶へ詰めると量が多く感じた。
プリム「…3…4…6本か。」
そんなに作るつもりではなかったが、思いの外沢山できた。
プリム「ルーピン先生にあげる分はあるか。」
雪の降るホグワーツ。学期の最後の週末、みんなはホグズミード行きが許され、クリスマスのショッピングの計画で大騒ぎしている。
プリム「パンジーは、ドラコと行かないの?」
ダフネ「っ!プリム!」
駄目よ、と口を塞がれた。
パンジー「…喧嘩したの。」
プリム「あぁ…それは、ごめん。」
ハニーデュークス店にやってきた。
アリエッタとドラコは甘いものが好きだから、食べなくても買わないといけない。
プリム「蛙チョコと百味ビーンズ。あとは…」
袋いっぱいに買ったから、間に合うだろう。
…早く立ち去りたい。甘い匂いがキツい。
店を出ると、ドラコとブレーズとクラッブとゴイルがいた。…ちょうどいい、ドラコに渡そう。
プリム「ドラコ!」
ドラコ「っ!プリム?…どうしたんだその荷物。」
プリム「あー、これドラコに。…ブレーズ達も食べる?」
クラッブとゴイルは食いつくように袋を見つめる。
ドラコ「…蛙チョコ?」
ブレーズ「プリムがわざわざ買ったのか?」
プリム「うん。ドラコは蛙チョコ好きでしょ?」
クラッブとゴイルのおかげでアリエッタに渡す分だけになった。
ブレーズ「そうだ、これから叫びの屋敷に行くんだ。プリムも行かないか?行きたがってただろ?」
プリム「行くわ。もちろんよ。」
ハーマイオニーとロンが先客だったみたいだ。話し声が聞こえた。
ハーマイオニー「ねえ…イギリスいち怖い幽霊屋敷よ…”叫びの屋敷”まで行ってみない?」
ロン「えぇ…いいよ…僕ここで十分」
ドラコ「誰かと思ったら…新居でも買うつもりかい。…ここじゃ大きすぎないか?」
ロン「うるさいぞマルフォイ」
あ…これ、ハリーが…
まずいな…
ドラコ「その態度はなんだ。こいつに目上の者を敬うことを教えてやれ。」
ハーマイオニー「あなたが目上?」
ドラコ「僕に口をきくな!この…汚れた血め!」
二人をからかっていたドラコの顔に雪玉が飛んでくる。
…やっぱり。…どうしようか。私は叫びの屋敷を見に来ただけなのに。
ドラコ「誰だ!」
ズボンが脱がされる。
次は押し倒される。
引き摺り回される。
…私は何もされなかった。なんでだ?…まぁ、いい。好都合だ。
ドラコたちが恐怖で逃げて行く
プリム「ハーマイオニー…ごめんね?ドラコがあんなこと。」
ハーマイオニー「気にしてないわ。」
プリム「ロンも…」
クロウリーが謝ってる!?とハーマイオニーに驚きの表情を見せるロン。失礼だぞ。
私はドラコ達を追いかけて去った。
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ルーピン先生に幸運の液体を渡そうと、教室へ向かうと、ハリーとすれ違った。
プリム「やぁ、ハリー」
ハリー「…やぁ、プリム」
それだけ。たったそれだけ特に何も起こらない。ハリーは疲れた表情だ、パトローナスかな…
プリム「ルーピン先生…体調はいかがですか?」
ルーピン「…やぁ、プリム。大丈夫だよ。いつも通りだ。」
…嘘ではなさそうだ。
プリム「ルーピン先生、これを先生にお渡ししたくて。…私が作った幸運の液体。フェリックスフェリシスです。きっと先生には必要ですから、使いどころを間違いなければ。運良く事が進みます。…スリザリン生の作ったものですから、飲まないのが正解ですけど。」
最後のが本心だ。飲むな。
ルーピン「君が作ったのかい?…フェリックスフェリシスを?…その歳で?」
プリム「魔法薬学は得意なんです。父上が魔法薬の学者なので、小さい頃から調合していました。」
…蔵書の力が半分だが。
プリム「先程もいいましたが、飲まないのが正解ですよ。…ルーピン先生は苦い薬でお腹いっぱいでしょうから。」
ルーピン「はは、スリザリン生だね。やっぱり君は。…教え子が作った自信作だ、飲んでみよう。」
プリム「っ!駄目です!飲むな!」
しまった…思わず声が…
ルーピン「っ!飲んだら駄目なのかい?…じゃあ何故これを私に?」
半分救われて、ルーピン先生の授業をまだ受けていたい。半分うまく話が進んで、何も変わらなければいい。…正反対の感情がぶつかり合った結果だ。
プリム「…」
ルーピン「君はアニメーガスにもなれるね?」
ルーピン先生が瓶を置いて私に近づく。
プリム「…勉強したので。」
ルーピン「でもそれは、私の前で見せなくてもよかっただろう?教師に見せるのは都合が悪くならないか?…君は、何をしたいんだ?」
私にもわからない。正反対なんだ感情が。
プリム「私…は、本当は、何もしない方がいいんです。…でも、ルーピン先生はいい先生だから…。」
何かしたいのに、何もできない。何か変われば、全て変わる。アズラエルも全てを良い方向するわけじゃないだろう。
ルーピン「…私は、いい先生ではないよ。君が知っているように人狼だ。それに、こんなみすぼらしい…何か成し遂げた、偉大で優れた魔法使いでもない。」
プリム「…」
ルーピン「…だから、これは返そうプリム。君は私に何もしてない。」
幸運の液体を私の手に握らせ、頭を優しく撫でられた。あたたかい優しい手だ。
プリム「…ルーピン先生、ひとつ頼みがあるんです。」
ルーピン「なんだい?」
プリム「ボガートの授業…途中で終わってしまったので、受けてみたいんです。」
ルーピン「…構わないよ、呪文はわかるね?」
プリム「はい…」
私は…病で恐怖がわからない。だから、どうなるかわからない。
ルーピン「ボガートはこの中にいる…準備はいいかい?…さん…に…いち」
ルーピン先生が黒い大きな箱を開ける。
ボガートが私の前で怖いものを探すように、ぐるぐると回る。
…なんだ。…何になる。
ドラコが床に倒れている。血塗れだ。どくどくと血が流れてる。セクタムセンプラを受けた時に似てる。血が溢れるのが止まらない。
プリム「…やるじゃないボガート。”リディクラス”」
杖を振ると、ベリーで口を汚したシロイタチになり。箱に戻って行った。
ルーピン「…さっきのは、ドラコマルフォイだね?スリザリンの」
プリム「…ドラコは魔法界でできた最初の友達なんです。あ、恋人とかではないですよ。」
ドラコの死が恐怖だった。なるほどな。
…ドラコやスネイプ先生の死、それは私にとって最悪なことで。それが起きればこの世界のことなど、どうでも良くなる。だって意味がない。守るべきものがないんだから。…この身体だってタウリンのものだ。私がいる理由がなくなる。
それが私の恐怖なんだ。