______________ 8月25日
今日はクィディッチワールドカップの観戦日だ。すでに会場は沢山の魔法使いで溢れかえっている。今回はプリムのご家族と一緒に観戦することになっている。…そろそろ来る筈だ。
ドラコ「父上、母上、プリムを迎えに行ってきます。」
ルシウス「ああ、気をつけなさい。…それから失礼のないように。」
ドラコ「はい、父上。」
父上にネクタイを直されてテントをでた。
賑わっている通りを歩いてプリムの姿を探す。確か深いブルーのワンピースを着ていると言っていた。…道の先に深いブルーが目に入る。…心臓が跳ねた気がした。
ドラコ「プリム、ここにいたのか」
プリム「やぁ、ドラコ。元気だった?」
ドラコ「まぁね、こっちだ。僕のテントに案内しよう。…レオナルドさん、シルビアさんお久しぶりです。」
シルビア「ええ、久しぶりねドラコ」
レオナルド「プリムとは変わらず仲良くしてくれてるみたいだね?」
プリムの両親はプリムに似て不思議な雰囲気を漂わせている。学者だからだろうか、薬品の匂いも微かにする。高い香水の匂いと混ざって妙薬のように引き寄せられるようだ。
ドラコ「もちろんです。…みなさんもこちらです。」
テントへ案内すると、プリムは感嘆の声をあげた。…珍しいだろうか?…まぁ、感動されるのは悪くない。ほとんど父上の趣味だが。
ルシウス「おや、ドラコ…ああ、クロウリー殿お待ちしていました。」
ナルシッサ「どうぞゆっくりして行ってください。まだ試合まで時間がありますから。」
プリム「お久しぶりです、ルシウスさん、ナルシッサさん。お言葉に甘えさせて頂きます。」
それからプリムとは夏休みのことを話した。他愛もない話が心地よかった。
クィディッチワールドカップがまもなく始まる。会場に入るとウィーズリー達の声が上で聞こえてきた。…ポッターもいる。
ロン「凄いや、一番上の席だ。」
ルシウス「こうとも言えるな…雨が降れば真っ先に濡れる。」
ドラコ「僕等は魔法省の貴賓席さ。大臣じきじきのご招待でね」
ルシウス「自慢するなドラコ!…相手にする価値はない」
父上のステッキが腹部にあたって少し痛かった。…先に声をあげたのは父上なのに、あんまりだ。それにプリムの前で叱るなんて…あぁ、やっぱり気まずそうな顔をしている。…そんな顔で見ないでくれ。
会場はすでに大変な盛り上がりようだった、風船や紙吹雪が舞っている。シーカーの編隊が妙技を公開している。
日本のチーム、トヨハシテングは新しいシーカーを導入したらしい。…名前は覚えてないが、マホウトコロで前シーカーがその才能を見つけたと記事に載っていた。
プリム「父上、母上、日本のシーカーはやっぱり恭史郎です。」
プリムが両親に興奮しながら日本のシーカーを指差す。目が輝いている、僕の試合の時はそんな目…しないのに。
ドラコ「プリムの知り合いか?」
プリム「ああ、ほら、日本で箒が得意な子がいたじゃない?その子よ。」
ドラコ「な、なに?…そんなに若いのか」
あのシーカーは僕等と同じ歳ということか?…そんなに若いのに試合で追いつけるのか?怪しいところだ。
ファッジ「ようこそ、みなさま…大いなる喜びをもって、歓迎のご挨拶をさせていただきます。…第422回クィディッチワールドカップ決勝戦です。…それでは”試合開始”」
魔法省大臣の杖が振られ、杖の先から火玉が飛んでいった。
試合は思った以上に白熱した試合だった。ブルガリアのシーカー、ビクトールクラムは、しつこく付き纏われるもののブルガリアチームはブラッチングやコビングは当たり前のようにしていた、でも反則行為はクィディッチでは割と多い。
一方で日本のシーカー、五領恭史郎は稲妻のようなスピードに自在に方向転換する高度なバランス能力、それは…僕よりも、いやポッターよりも優れた技術だと感じた。ブルガリアチームの反則も物ともせず、華麗にスニッチを手にする瞬間はまさに花形選手だった。
結果は日本が260点ブルガリアは180点だった。
ドラコ「なぁ、プリム、恭史郎のあの稲妻のようなスピードを見たか?僕もいつかあれだけ飛べたらな…クラムの技も素晴らしかった!…試合には負けたけど、あそこまで研ぎ澄ますのは何年もかかるんだ、わかるか?」
プリム「…ええ、どちらも素晴らしかったわ。」
試合が終わってすぐ、僕はまだ熱が冷めずにプリムに話しかけたが、聞いてるのか聞いてないのかわからない顔だ。
ドラコ「それにしても、恭史郎が僕等と同じ歳だなんて信じられないな。」
プリム「…そうね。」
プリムがふと立ち上がり父上に話しかけた。
プリム「ルシウスさん、少しお話が」
ルシウス「ああ…なんだね?」
父上は先程から具合が悪いようだった。顔が青白い。
プリム「…左腕を見せてください。」
ルシウス「…なに?…何故左腕を?」
プリム「…失礼します。…っ!やっぱり… 」
ルシウス「…っ、見たな。」
プリム「…大丈夫です、誰にも言いません。もう時間がない。…失礼しますね。」
何を話しているのか聞き取れなかった。けど、2人共何やら深刻な表情を浮かべている。父上に至っては…プリムを殺しそうな眼差しで見つめていた。覚えがある、ポッターに対する眼差しだ。
ドラコ「…」
たまにあることだ、珍しくはない。
…と思っていると、プリムが急に父上と僕の腕を掴んだ。プリムの両親は母上の腕を掴む。…急になんなんだ。
ドラコ「おい、プリム、何するんだ!…何をする気だ!…聞いてるのか!?」
プリム「…」
…プリムが僕の話を無視して…姿現しをした。視界が歪んで身体もぐるっと回った感じがした、とても…気持ちが悪いがここは堪える。…そこは海辺で、近くに大きな屋敷が聳えていた。…我が家に似たような雰囲気を感じる。
ドラコ「…ぅ、」
ルシウス「こ、ここは…君姿現しが?」
少し遅れて母上とプリムのご両親も現れた。
プリム「みなさん…こちらへどうぞ。ご招待します。」
今まで何も無かった場所に急に建物が現れて、プリムがその先へ招く。…プリムが怪しい笑みを浮かべている気がした。
プリム「さて、みなさん。第二のクロウリー家へようこそ。我々はみなさんを歓迎します。」
ルシウス「…なんのつもりなのかね?」
ドラコ「…」
父上に続いて入ったが、第二のクロウリー家だと?…どういう意味だ?いや…先程の屋敷が本館か?クロウリー家は多大な財産があると聞いた、ありえるな。
プリム「突然連れて来てしまったので、混乱されているでしょう。しかしご安心ください、ここは誰にも見つからない。そういう結界を張っていますので。」
ドラコ「結界?」
ナルシッサ「なんなの?どこなのここは」
プリム「落ち着いてください。全てお話ししますから。…時間がないので、要約いたしますが。今魔法界では大きな動きがあり、死喰い人が動き出しました。闇の帝王は時期に復活するでしょう。」
ナルシッサ「そんな…」
ドラコ「まさか…ありえない」
ルシウス「…」
変な屋敷に招かれたと思えば、プリムが信じられない事を話し始めた。…しかし父上が黙って聞いている。何故だ?…どういう事だ?
プリム「ここは闇の帝王が復活した時の為に、破れず、見つからず、強力な結界を施した隠れ家です。…招待されないと入れません。そして、場所を知ったみなさんはこの家に関して口外した場合、苦しみながら死ぬことになるでしょう。」
僕達は固唾を飲んで静かに聞いた。
レオナルド「信じられないかもしれないが、家に関しては本当だ。プリムが日本で学んだ魔法陣型結界を少し組み替えて、この家に施した。」
な…なに!、なら僕達は今脅迫されているようなものだ。
ドラコ「なんでそんな危険な家に僕達を入れたんだ!」
僕はレオナルドさんの襟を掴んだ。
プリム「マルフォイ家を守るためです。闇の帝王は自分の為に、如何なる犠牲を払っても目的を成し遂げようとします。犠牲を犠牲だと思わない彼に救いを求めても救ってはくれない。死喰い人も数ある駒のひとつとして扱うでしょう。」
ルシウス「…」
ドラコ「僕達になんの関係があるっていうんだ。」
信じる信じないにしても、僕達には関係ない話だ。なにしろ純血一族だからな、闇の帝王が復活したところで狙われることはない。
プリム「マルフォイ家は由緒ある純血一族ですから、闇の帝王は手に納めて置きたがる。だから、私はマルフォイ家がそちらへ行く前に、同盟を組みたい。我々は帝王にも、ダンブルドアにもつかない。どっちつかずの二重スパイのような感じですかね…いかがですか?まぁ、この家に入った時点で答えは決まっているのですが。」
ルシウス「…」
…なるほど、プリムの考えはありえる話だ。それでもし、駒の一つとして扱われるとする…いい気分ではないな。…だが、プリムに何ができる?結界を施した家をシェルターとして使うのか?…たかが未成年魔法使いと、学者達の集まりに何ができる?何もできないだろう、闇の帝王の力の前では。
プリム「あ、マルフォイ家のみなさんのことですから、こんな小娘に何ができるとか思っているでしょう?」
…っ!
プリム「…今は2つの指輪によって魔力を抑えていますが、ひとつ外しますと…」
レオナルド「プリム駄目だ!」
シルビア「よしなさい!」
プリムの両親が血相を変えて止めようとするが、言うことを聞かずに指輪らしきものを外した。
瞬間床に亀裂が走り窓ガラスが割れ、部屋は荒れる。僕達はレオナルドさんが咄嗟に放った守護呪文で守られた。…なんという魔力なんだ。…プリムはこんな力を持っていたなんて。
プリム「…とまぁ、こんな風になりますので、抗う力くらいはあるかと思います。どうぞご安心ください。」
プリムは指輪をはめ、何事もなかったかのように部屋を戻す。…ご両親に叱られながら。
ルシウス「…いいだろう、そもそも答えはひとつしか用意されてない。」
プリム「では、決まりですね。我々は必ずマルフォイ家をお救いします。組織名は…そうですね…第三の眼なんていかがでしょう。」
ルシウス「…私はなんでも構わない。」
父上はプリムの手を掴み契約をするように握手をした。
プリム「第三の眼は、クロウリー家、マルフォイ家、そしてアリエッタロリスが今のメンバーです。」
ルシウス「っ、汚れた血も招いているのか」
プリム「アリエッタは特別なのです。…そうですね、私の共犯者というか。…まぁ、それはどうでもいいですね。」
プリム「では、これで話は以上です。お戻りいただいて結構ですよ。なにか聞きたい事は?」
ルシウス「…結界を破る方法はないのか?」
プリム「ひとつありますよ、術者である私の血です。でも時が来るまで結界は解くつもりはないです。」
父上は何か考えた顔をした。
プリム「…結界を解こうとしているならやめた方がいいですよ。ドラコが死喰い人になる未来から救おうとしてるんですから。」
プリムが父上の耳元で何か囁くと、視線を僕に向けた。
ドラコ「父上?」
ルシウス「…帰るぞ。」
プリム「ではマルフォイ家のみなさん、絶対にこの家に関しては他言しては駄目ですよ?待っているのは…死ですからね。」
…フン、僕の家より立派な屋敷だ。もちろん皮肉だ。
我が家へ帰宅すると、重苦しい空気が漂った。
ドラコ「父上…プリムの話、本当だと思ってらっしゃいますか?」
ルシウス「…ああ、お前にはもう話すべき事かもしれない。…クロウリー家が知っていることだ、遅かれ早かれお前の耳にも入るだろう。」
ナルシッサ「…あなた、まだドラコには早すぎます。」
ルシウス「いや、早く知らねば…ドラコの身にも危険が及ぶかもしれん。」
ドラコ「…何の話です?父上、母上。」
父上と母上は僕をまっすぐ見つめてくる。
父上は左腕を捲り、しるしを見せた。…死喰い人の印だ。
ルシウス「私は、死喰い人だ。…あの方に仕えている。プリムクロウリーが話したことは本当だ。印が濃くなっている…あの方はもうじき復活なさるだろう。」
僕の父は死喰い人だった。
ドラコ「…っ、」
ルシウス「プリムクロウリーは予言者かもしれない、未来のことも知っているような口振りだった。…クロウリー家は我々を守ると言っていた、殺す気ならあの場で殺せた。その力があるからな。…ドラコ、あの方に気をつけろ、我々はあの方に抗えない決して。目の前で仲間が殺されても、家族が殺されても動じてはいけないのだ。…もし、もしも望みがあるとするなら…プリムクロウリーが我々を守ってくれるかもしれないということだ。」
プリムクロウリーの側にいろ、と父上が肩を掴んでまっすぐ見つめてきた。
ドラコ「はい…父上」
本編である「プリムローズが咲いた日」不死鳥の騎士団編に入る前に、「ドラコマルフォイの思想」を数話ほど投稿致します。本編「プリムローズが咲いた日」を楽しみにされている読者の皆様申し訳ございません!どうか引き続き次話の投稿をお待ちいただけると嬉しいです❁⃘*.゚