ヤーナム産ロクデナシ共、日本へ渡る 作:そら豆
伊之助の刀初めて見たとき「獣特攻ありそう」と思った人って沢山いると思う。
今年は年末まで、ばたばたしているのでただでさえ進みが遅いのに更新出来ないかと思います。
次は、きっと一人でふらふらしている顔だけしか取り柄の無い方のロクデナシ。
一瞬あの声の聞こえる気味の悪い左手武器の歌が聞こえた気がした。その音の出所を探る為に、耳を澄ますが何やらあちこちで騒がしく、上手く拾う事ができない。
やはり獣狩りの夜の様に、一斉に駆除でも行っているのかも知れない。鬱陶しい。
兎も角も、あのロクデナシは何処かで武器を振り回して居るのかも知れない。出来る限り、芳しい血の香りが漂う方へと向かう。
残念ながら、見つけたモノはロクデナシ同行者では無かった。
獣面の巨体。獣面のちいさいの。
そこに『獣の抱擁』を刻んだ自分だ。妙なひとかたまりが出来上がってしまった。まともに装備着けている者が居ない。
ちいさい方の獣面は既に手負い。あれが一体何なのか分からないが、この山に点々と落ちている鬼狩りは、ヤーナムの狩人程悍ましい存在ではない。死ぬその瞬間まで殺しにかかって来る事は無いだろう。放置でいい。問題は教会の奴らが使う、奴僕共染みた大きさの獣面だ。いや、蜘蛛面か。脳の働いてない類の巨体は鬱陶しくて面倒くさい。
あれは殺そう。
確実に殺そう。
ちいさいとは言え、障害物としては十分な働きをするモノを掴んだ腕ごと切り飛ばし退ける。血が降り注ぐ以前に、後ろへ飛び敵の動きを見るが、こちらへ向かってくる事は無い。
ありがたく一息で飛び掛かり、びっしりと目玉の並んだ頭部を穿つ。ぶつりと眼球を潰し、骨を割り、圧し潰す脳の感触が獣と化した爪に伝わる。
噴き出る脳漿と血液、まき散らされる慟哭に獣性が高まる。体勢を崩した巨体の腹へ勢いよく腕を沈め、腸を引き千切り横隔膜を突き破り、脊椎を掴み引き抜く。
獣とも人とも明確に違うが、確かに全身を叩く生臭い血の雨垂れには歓びがあり、体を満たしていく。
血を浴びる程に高まる昂揚感に急かされ、獣の爪を突き立てる。一撃ごとにより深く抉る。獣は死ぬまで殴るに限りる。
……思考の片隅でツレが物凄く冷たい視線をよこして来る。腹が立つ。
決して、血に酔った等という事は断じてないが、ふと思い浮かべた顔だけは絶対的正義なクソに思考が醒めた。
そのおかげか何者かの気配を察知し、爪で引き裂き続けていた鬼はそのままに真横へ飛びのき、身構える。
先程まで自分の居た場所、というか、獣面の巨体がばらりと崩れ地に転がり霧消していく。
一瞬でそれを行った乱入者は、鬼狩だろうか。
この国の人間は顔立ちが幼い……と言うか、年齢が分かりづらい。向かい合う、派手な半々の柄をした上衣を着た男の年齢も分からない。大体の人間が自分より歳下に見える。
まあ、年齢などどうでも良い。
問題は自分の邪魔をするかどうかだ。今はこんな見てくれだが、誰彼構わず襲い掛かる獣ではない。これまでだって邪魔するモノを排除して、必要なモノを攫っていただけだ。理性無く襲う訳では無い。理性を大事に抱えながら殺しているだけだ。
今この男が自分の邪魔に成るかどうか……。鬼狩りだと言うのなら、さっさと鬼を減らして一人ふらふらしている自称非力な阿呆の危険性を減らす事に貢献して貰いたい。
もしくは、ただ私情による理由だとしても真っ当に『獣』だけを狩ってやってる自分にまで武器を向ける、礼儀知らずだろうか。
そういう事態が起きた場合が、面倒くさい。
数秒、お互いに相手の出方を伺う。左手に武器を持たない奴らが、狩人の様な動きはするのか謎だが、振り抜いた瞬間に水銀弾をぶち込む。そういうセオリーだが、自分は積極的に戦いたい訳ではない。あくまでも相手の出方を待って居るだけだ。
なのだが、目前の男が踏み込む事も、何か言葉を発する事もする前に、手負いで転がって居たちいさい獣面が大声を上げる。
「俺と戦え半々羽織り!」
自分に話かけてはいない。勢いよく喋られると、殆ど聞き取れない。それでも此方に積極的に人間を狩ろうという意思が無いのは察してくれた、のだろうか?
「このヘンナノも仕留めきれなかった十二鬼月にお前は勝った。そのお前に俺が勝つ。そういう計算だ。そうすれば!一番強いのは俺っていう寸法だ!」
何を言って居るのか全て聞き取れなかったが、自分と値踏みするように静かに見つめる男を交互に指示した後に、自身を指さす。
……まとめて掛かって来い……的な意味だろうか。複数を同時に相手にしたいなんて、どんな戦闘狂だ。血に飢え思考力の欠いた獣だろうか?
何だか馬鹿らしく成って来た。こうしている間にも、ツレがどこまで潜り込んで居るか分かった物ではない。特に邪魔をする意図が無いのなら、この鬼狩り共に用はない。
「待て」
早急にあのロクデナシを追う為に離脱を試みた瞬間、ずっと黙り込んでいた男が一言だけ発する。
右腕が武器の柄へ伸びている。
今さらに成って邪魔をする気だろうか? 面倒くさい。
一つ、人間らしく溜息をついて見せ、『獣の咆哮』を上げる。
━━━
響くのは悲鳴にも似た獣の声。
野生動物のものではない。そんな可愛げのあるものではなく、悍ましいばかりの『獣』の叫び声。知性を持たない生物の獰猛さと、人間の狡猾さ。それらを併せ持った酷く醜悪な獣。
そんなモノが突然目前へ踊り出る。
伊之助を掴んだ腕を、まるでその先の物体が邪魔だからとでも言うように、払いのける動作で引き千切り切り落とす。
僅かに首を突き出す様な前傾姿勢に、硬そうな体毛を纏う。鋭利な爪を備え不格好に肥大した左腕と、何処かからもぎ取って来たかの様な二本の爪を振り上げ勢いのままに目前の鬼へ飛び掛かる。振り上げたそれは深々と鬼の顔面に突き立てられた。
確かに大柄な『獣』だが、大きな左腕とは対照的に顕著に浮出た肋の痩身だ。そんな物が正に筋骨隆々と言った大柄な鬼を引き倒し、あろうことか頑健なその体に深々と腕を潜り込ませその内側に詰まってた臓物を血飛沫ともども後方へぶちまける。
「なっ、んぶ……!?」
鬼の腕ごと振り払われ、ぞんざいに地面を転げた伊之助に盛大に引き千切られた臓物と夥しい血糊がぶちまけられ、誰何の声も引っ込む。
おぞましい。その姿を形容するのなら、獣が最も近いのだろうがそれは根本的に何かが違う。あまりにも歪で、その存在を見せつけられるというのは正体不明の不快感がせり上がる。
いで立ちだけなら猪頭の彼と大差ない。そのはずなのに、まるで歓喜の声のような叫びを上げながら、日光と日輪刀で首を刎ねる事でしか殺せない鬼を、執念染みた勢いで爪を突き立て執拗に血をぶちまける姿は、ひたすらに不気味だ。
強者に強い執着を持つ筈の、『獣の様な』少年さえその目前の『獣』へ怖気に近い気持ちの悪さを覚えた。
だから、という訳でも無いが、その後現れた『真っ当に強い』存在にひっそりと安堵し殊更に勢いを取り戻す様に大声を張り上げた。
一応このお話の終着点は考えて居ますが、この辺り書いていて、このままでいいのかなぁ…と考えます。
私普段クトゥルフシナリオ書いている人で、クトゥルーENDが大好きなんです。
人とは別次元に生きるものが関与した時点で因果応報なって物は成立しないし、行いに大して絶対に報われる、罰がくだるなんて事もなく、ただどれだけ理不尽から上手く逃走出来たか、みたいなものなのかな、と。勿論ハッピーエンド、きっちり因果応報が果たされるのもの好きです。
好きなんですが、上位者に認識されてしまった時点でそんな物崩れる気しかしなくて…。
それでも報われないのは、その、しんどいしロクデナシ共にもやった事の報いは受けて貰いたい。と思ってしまって揺れてます。
自分の性癖に素直に、能登声帯を得た偽フカ先生を殺せなかったりするのです。
最初は、蜘蛛のまっまはうっかり異星の使者に成りかけ、穏やかになんか死ねない予定だったりとかしましたが、アニメの声と演技が可愛すぎて、原作通りに穏やかに死んで頂きました。
そんな感じで、このまま突っ走りクトゥルーENDまたは(人類的な)BAD程でも無いけれどもやっとした気持ちの悪い終わりに辿り着くか…涙もろくて報われてくれって願っちゃう私に託すか…本当に迷う。
あと単純に、私のENDの分類が何かズレてると言われるので、いまここで「こんなクトゥルーENDやん…」と自身がもやって居ても、実際に出てくるのは普通にハッピーかもしれません(逆もまた然り)