ヤーナム産ロクデナシ共、日本へ渡る   作:そら豆

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人攫いは雑に生きているので、他人の名前が覚えられません。覚える気が無いともいいます。
ただ、炭治郎くんにはツレの匂いが変わったと根に持ってる、大分陰湿でねちっこくて大人げないクソと化して居ます。




嫌悪

 

 嫌いな人間も好きな人間も、特に居ない。ひとえに他人に興味がない。

 同行者のロクデナシは、そのツラが途方もなく好みなだけで人間性は順当にクズだと理解している。なので好きな人間、というものではない。断じて。

 

 ただ、関わりたくない人間は明確に居る。

 

 信心深い思考停止の馬鹿や、頭のイイ学者サマ方は当人達に深入りせず、だまって頷いて従って居ればすむ。

 最も関わりたくない人間は人望の篤い奴。

 

 種類はどうあれ、求心力の有る人物とは関わりたくはない。当人の思惑思考は兎も角、勝手にその人間に感じ入って入れ込み、最悪殉死する事さえ厭わない信奉者を生み出していたりする。

 

 実際、昔教会で黒衣を纏って居た頃、兄だか姉に自身を検体に差し出した血の聖女がいたなんて話を聞いた。

 あれがその兄だか姉だかの求心力によるものだったのかは分からないが、ともかく心酔する輩を抱えた人間には関わりたくない。

 

 そしてこの妙にやたらと絡んでくる、例の屋台で遭遇し、あのロクデナシの匂いを変える原因を作った子供が、関わりたくない分類だ。

 明らかに善人だ。しかも、悪夢に沈む古都に放り込んだって、変質する事無く行動しそうな、大分とんでもねえタイプの、ある意味狂人より質が悪い。

 

 全力で関わりたくない。

 

 殉教者とまでは言わない。だがその歪まない狂気じみた善性故に、この人の為なら、あの人が言うのなら、という人間を抱えている恐れのある奴の好意を無下にしてみろ。それこそ面倒くさい人種に敵視される羽目になる。

 なので、渋々とそいつに関しては、出来る限り、真摯に対応していた。

 所詮長いものに巻かれておく主義の人攫いだ。

 

 まったくもって悍ましいことに、鬼狩り共は別段狩人の様に頑健ではない癖に戦っているらしい。たかだか腹部の裂傷如きで病床に縛られている。

 そのせいで、なかなか目覚めないクソの傍に居る自分が、こうも関わりたくない人種に絡まれる羽目になる。

 

 以前にロクデナシがひとりではしゃいでいた山でかち合った、コミュニケーション能力に難がありそうな男等は、一度何か言いたげやって来たが、言葉が分からないと首を傾げれば一瞬で諦めた。

 同じく山中で出くわした獣面の子供や、それらにくっ付いていた明るい髪色の子供も、近づくな、という意思を込めて睨めば、それ以上寄ってはこなかったと言うのに……。

 

「……はぁ……」

 

 輸血して居れば飲食睡眠、ある程度省けるのに、この厄介な子供にせっつかれて慣れない異国の食物を消費する事になる。

 自分が遅々としたペースで粘りの強い穀類を食べる間も、明らかに励ます様な語調で言葉を挟んでくるためため息が漏れた。

 

 そろそろうんざりし、ツレが目覚めなかったとしても、最悪その首さえあればいい気がして来た。問題は防腐の処置だろうか。攫っては使わない部分を腐らせることが多いので、標本のよろしく綺麗に保つ術を知らない。顔面は兎も角も、脳は取り出さなければあっと言う間に腐りそうだ。それはそれで頭を綺麗に割開く技術もない。そう言うのは当のロクデナシの領分だ。

 そう言えば、本来は何だったか……何たら教だかの話を聞きに行くための移動だったが、約束を取り付けたツレが眠ったままでは、現状を伝えるのは難しい。自分はどうしようもないから、放置で良いか。

 よし。あと丸一日待って目覚めなければ、首を落として去ろう。ああ、女医の部屋を漁って見れば、防腐剤の類も出て来るかもしれない。鬼に携わる医療者が、どの程度秘密主義に己の探究物を隠したがるのかは未知数だが、邪魔だったら殺してみるのでもいいかも知れない。

 

 そんな現実逃避に近い思考を練っていた。

 ふっと上げた視線に、件の厄介極まりない子供が口を閉ざし、呆気に取られた様な顔で固まって居るのが写る。

 そしてふわりと、甘くこびり付く様な香りが漂った。

 

 沈み込む様な血の香りに跳ねる様にして立ち上がり、匂いの元を辿る。いや、辿るまでもなく、根源は分かり切っている。

 この香りは知っている。背後で驚いた声を上げるお節介な善人を置いて、出元へ駆ける。

 

「鎮静剤飲めくそ!!」

 

 予想の通りに血の香りのもとは目覚めたらしいあのクソロクデナシだった。くらくらする程の血を吐き出し、歓喜の笑いを上げ、例の子供にしか見えない女医の肩に手を置き、嬉し気に何かを熱弁している。

 

 深くに触れ過ぎて、トチ狂い、ああいった様子の探究者達は散々見た。そして奴らは鉄さび臭い、臓腑に重く圧し掛かるような鎮静剤を常用しながらも更に深淵を覗こうとする。実に頭がおかしい。

 

 まあ、つまり、そういった神秘を研究し続けるイカレタ連中は取り敢えず鎮静剤をねじこんでおけばいい。少しマシになる。

 

 走り込んだ勢いのまま飛び掛かり、普段からあるか怪しいが正気が留守のツレを、小柄な医療者から引き剥がし。腰かけていたベッドに押し倒す。

 体格に由来する質量差に女医がその場に転げるが、そんな事はどうでもいい。

 

 仰臥したロクデナシを全体重で抑え込み、何かを語る為に息を送り出す首を引っ掴んで締め上げ、言葉を止める。

 

「エ、エバさん! 何してるんですか!?」

 

 質量に乏しい女医が腕に抱き着く勢いで引き剥がそうとしてくる。

 獣……ではなく鬼か。それらを相手にしており、多少は同じ体格の者より馬力は有るのだろうが、大した妨害にはならない。

 

 ごぼごぼと逆流した喘鳴と血を吐き出し、酸欠によりツレの抵抗が弱まるのを確認する。手持ちを漁り、鎮静剤を取り出す。

 血生臭さには慣れているだろうに、圧縮した様な重い血の臭気に女医は顔を顰める。自分もこれを常飲している狂人達にはその表情になるから、気分は分かる。

 分かるが便利なので使う。

 殆ど叩きつける勢いで、ツレの顔面に浴びせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お恥ずかしい所をお見せしてしまいました。それに、大変お世話になっていた様で……ええと、貴女は?」

 

 すっかり落ち着いたのか、自身の血で盛大に周囲と、女医と付きっきりで居てやった自分を汚しまくったクズはいつも通りの顔で微笑みやがった。

 自分がぶちまけた鎮静剤の血糊? 誤差だ。

 

「……私は胡蝶しのぶです。落ち着いたようで、なによりです。あなたは今の状況を理解できますか?」

 

 女医は憔悴仕切った目で名乗り……、恐らく今の現状に対する理解度を確認しているのだろう。今回は以前の、夜の中で出会った女医との対話の時の様にツレが翻訳を綴っている訳ではないので正確な事は分からない。

 

「胡蝶さん、ですね。私の事はアリーでも、レキシーでも音にしやすい方でお呼びください。今、は……この子と列車に乗って居たら懐かしい夢を見ていて、ここで目覚めた、というくらいしか分かりません」

 

 ロクデナシが例の人当たりのいい笑みで饒舌に語るのを、女医は若干気味悪そうに笑顔を引きつらせ見詰めている。

 

「エバさんには鬼と言って理解してくださったんですが……アリー、さん? が乗っていた列車が襲われ、乗客はその鬼の異能で眠らされ、夢を見せられていた、という説明で大丈夫ですか?」

 

 エヴァ、という名が口にされたがロクデナシはそれに言及したり、自分に問う様な事はしないので、何となく察してくれたのだろう。

 あるいは、自分の同行者の名に興味が無いかだ。圧倒的に後者の気がする。

 

「実際に何が起きていたのかは見ていませんが、何が有ったのかは分かりました。その、確か血鬼術、でしたか? ……ああ、彼女がそんな事を言ってましたね」

 

 小さく頷きながら、女医の言葉に答えていたツレが、少し離れたベッドで一人笑う女へ視線を向ける。

 女医もその視線を追い、眉をしかめる。しばし何かを頭の中でつなぐように、視線が左右に揺れた。

 

「それは……夢のなかで、会ったという事ですか?」

 

 ゆっくり話すような配慮はないので、拾えた単語や二人の表情、語調から推測していくしかない。若干険しくなった語調と『夢』という言葉は拾えた。

 ヤーナムの悪夢に、上層のロクデナシ共がどれ程の造詣を有して居たのかは分からないが、ツレはにこやかなままええ、と頷く。

 

「確か、その血鬼術だかで最初は鬼狩りの方の夢に入ったら、暗くて狭い上に怪物に追われて逃げてきたら、見知らぬ風景で、私が居たそうですよ。どうすれば良いのか分からないし、一人は怖いと言って、暫くついて来て居たんですが、気づいたら居なくなっていました。彼女は早くに目覚めていたんですか?」

 

 疑問形で終わった言葉に、少し悩む素振りを見せてから女医は首を振る。

 

「いいえ。あなたと殆ど変わりませんよ。今日まで三日程眠り続けていました。……もし、失礼でなければどんな夢か伺っても?」

 

 普段から全く何が楽しいのか、微笑を浮かべてる事の多いツレが、誰が見ても嬉しそうに頬を緩める。温かな思い出でも語る様な顔だ。

 

「故郷の夢です。私の居た聖堂街の上層、と言っても想像し辛いでしょうか? 宗教色の強い病院が運営する孤児院と研究室の様な物を考えてもらえれば。そこで過ごした夢です」

 

 病院……、医療者。

 

 何事かを思い出すよに、女医が目を伏せ小さく呟くが、その大きさは恐らく思考の確認作業であって、こちらへの言葉ではないのだろう。ツレも反応せずに口を閉ざしている。

 

 沈黙は一瞬で終わり、女医は伏せた目を上げ、相変わらずの優し気な笑みを向けて来る。

 

「アリーさんは聖職者と伺ったのですが、医療にも明るかったりします?」

 

「一応、医療者でもありますけど……『私達』は学術者と言った方が近いと思いますよ」

 

「なるほど」

 

 二人が更に数語交わした後に、突然故郷の言葉で此方にふられる。

 

「君も夢を見ましたか?」

 

「……ヤーナムの悪夢なら」

 

「そこに日本人の男性が巻き込まれていたりは?」

 

「いや。知らない。気味の悪い狩人に殺されて、早々に目覚めをやり直した」

 

 そうですか。と頷いて、また日本語での会話に戻る。

 

「視認はしていないそうですが、可能性は有ると思いますよ。運が悪かったのかと」

 

 かなり臭気の違う医療者二人が話込んで居るが、ほぼ会話を拾えなく成って来る。ただ、目の前の小さい女医の声がやや硬くなり、何らかの疑念が宿っているのは感じ取れる。

 派閥争いで間者が行き交ってる場所で、人攫いなんぞをしていたお陰か、穏やかな語り口に別のものが滲んでいるを見つける。

 

 ロクデナシは当然の権利とばかりに人格最低な屑の外道なので、嫌悪し疑念を抱くのは当然だが、この顔だけは良いロクデナシの命は自分の物なので、余人の害意で損なわれる事は許容できない。

 

 そっとツレの肩に手を置き、少しばかり自分に引き寄せた。

 ……まだ甘い血の香りが濃く薫ってくる。

 

「……すいません。少し話がズレてしまいましたね」

 

 ちらりと一瞬、女医の目がこちらに向き、すぐに外された。僅かに表層へ現れた疑念も霧散させる。或いは厳重に覆い隠す。

 

「アリーさんは落ち着いたようで良かったです。出来れば現状をエバさんにも伝えてあげてください。随分心配して居ましたから」

 

 朗らかに笑み、女医は甘い血で汚れた為に脱ぎ、脇へ置いて居た上衣を拾い、離席する素振りを見せた。

 

「医療者の方に言うの変ですが、恐らく血鬼術の影響で眠り続けて居たので、後で診せてくださいね。……それから、いくつかお聞きしたい事がありますので、しばらく様子を見て体調に問題なければお話させてもらってもいいですか?」

 

 立ち上がりツレに何事かを尋ねる小柄な女医が、一瞬こちらに視線を向ける。

 

「アリーさんと私だけで。ほら、エバさんは三日間も付きっ切りでしたので、休んで頂いた方がいいですから」

 

 自分が呼ばれたのは分かったがそれ以外は上手く聞き取れず、ツレの少しばかり長い返答も、肯定しているという事しか拾えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?」

 

「で……?」

 

 ようやく二人きりに成ったので、結局のところ『なに』が『どう』したんだと、との心算での疑問の声だったが、全く意図が掴めなかったのか同じ音で首を傾げて見せた。本気かこいつ。

 自身の血で汚れた服を脱ぎ、衣服を整える手を止めて心底不思議そうだ。

 

「……お前は一体何をしていたんだ」

 

「先程胡蝶さんにお話した通りですよ? 懐かしい場所を満喫していました。誰にも文句を言われない実験は、いいですね。楽しかったです」

 

 だからそれに何の思惑があったのかと聞いて居るのだが、本気でただ悪夢を観光してきただけなのか? 基本的に頭がおかしいから、はぐらかしているのか、本気なのか判断に難しい。そもそも内容は正確に理解できていない。

 

「ああそうだ。君、貸していた仕込み杖そのまま使ってもらって構いませんよ。使い慣れた物を持って来ましたので。というか、獣の骨を武器に仕立てるなんて野蛮ですよ?」

 

 粛々と襟元を整えながら、此方を見向きもせずにまたトンチキな事を宣う。持って来た?

 

「は?」

 

 あまりにも頭の悪そうな声が漏れてしまう。それが余程滑稽だったのか、わざわざ振り向き目を合わせてまで笑って見せる。

 

「ふふっ、さっきから音ばかりで、ろくにお喋りできてませんね」

 

 至近距離の真正面から見たツラがやはり最高に好み過ぎて、うっかり息が止まりそうになる。本当に害しか産まないクソみたいな存在だな。

 

「お、前の訳の分からなさに言葉を失ってるだけだクズ」

 

 顔の良さに若干言葉が震えながらも、正真正銘の事実を叩きつけるが、顔だけのクズは目を細めて、いっそう愉快そうに、喉の奥でくつくつと笑う。

 珍しく肌の見える指先が頬を摘まんでくる。

 

「分からないくせに、聞いてくれるんですか? 本当に、私の事好きですねえ」

 

 こいつまだトチ狂ってるのか? と、当惑する。鎮静剤でどうにかならない狂気はどうすればいいのだろう。

 

 かなり本気で対処を思考し始め、引き攣る頬を緩く抓っていた指先が、今度は柔らかく擽る様に撫でていく。ロクデナシに体温がある事に地味な気色悪さを感じ、その手を振り払おうと手を上げる。

 

「……ッぁ゛!?」

 

 だがツレの手を叩き落す前に、左肩に衝撃と、鋭利な痛みと、じわりと鈍く侵食する鈍痛に、困惑に詰めていた息が吐き出される。

 呼吸を吐いた後が吸えず、視界が不快に明滅する。

 

「君は暫くずっと起きてた様なので、少し寝た方がいいですよ」

 

 相変わらず悪びれる風もなく、お綺麗なツラに微笑を湛えてひとさまの左肩に突き立てたメスの柄を握り小首を傾げている。

 あのメスは知っている。時々対峙した医療者共が、護身用と宣い毒を塗って仕込んでいた代物だ。

 

「狩人さん方なら死ぬような濃度ではないので、大丈夫ですよ。……たぶん」

 

 それじゃあ私は、呼ばれているのでちょっと席を外しますね、等と囁きお上品に手を振って小走りに何処かに向かう、その行先を追う前に視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 警戒心が強い。

 

 血で酷く汚れた上衣を小脇に抱え、しのぶは異邦人二人の態度を反芻する。

 

 警戒心が強い、と。

 

 いや、アリーのは方はむしろ危機感という概念を持ち合わせて居ないのかと、疑ってしまう程に警戒心が無い。ふわふわと世間話をするように、訪ねた事には答え、そこには偽りなどのが一切見えない。

 だが漠然とした気味の悪さを感じる。

 

 まるで那田蜘蛛山で目気した、解剖跡の様な空気。人ではない者と対話を試みている気分。

 アリーという人間に関して何一つ知らないはずなのに、あの人間の体温を感じない惨状や、ころりと転がった注射針が脳裏に過ってしまう。

 何の根拠もないものだ。実際、言葉を交わすアリーは穏やかに礼儀正しい人間に見える。

 

 問題は、根拠のない連想に滲んだ、僅かな疑念にさえ反応したエバだ。小さな不信感をアリーに抱くと同時に、気配が尖り、庇う様な動作をした。

 もし那田蜘蛛山について尋ねてみたとして、アリー当人は気にせず話してくれるだろうが、少しでも疑っていると受け取られる空気を出しただけで、並々ならぬ執着を抱いているエバがどんな行動を取るか分からない。

 

 根拠のない疑念が払拭し、故郷で鬼に似た『獣』が居たという二人の話は聞きたい。興味がある。何か、鬼にも応用の効く技術があれば、それを知りたい。

 

 ただそこに至る為の対話に、エバの警戒心が壁に成っている。

 

「……炭治郎君、と、 禰豆子さん? 何してるんですか、そんな所で」

 

 どう話を持ちか変えれば、穏便に進むかと思案するしのぶに、何故か通路の真ん中で、炭治郎が硬直している情景が飛び込んで来た。

 良く見ればその腰には彼の妹である禰豆子がしがみ付き、必死の形相で兄の行動を留めているらしい。

 

「しのぶさん! さっき急にエバさんが走り出して、追いかけようしたら……」

 

 声を掛けられて、妹の行動に動けず固まっていたらしい炭治郎は眉をハの字にする。小さな駄々っ子の様に成った妹へ視線を向け、こうなりました。と言う。

 歴戦の長男にも、突然の妹の行動理由は分からないらしい。

 

「禰豆子さん、どうしたんですか?」

 

 様子のおかしな彼女に小首を傾げ、そっと近づく。

 

 すると、むーっ、と唸りながらじりじりと抱き着いた炭治郎ごと後退していく。彼女の表情は、明確に嫌悪を示している。

 

「……これが原因ですか……?」

 

 その視線の先が、先程血に汚れた為に脱いだ上衣へ向けられている事に気づいた。

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