ヤーナム産ロクデナシ共、日本へ渡る   作:そら豆

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一体どうやってる動画なのか分かりませんが、おすすめされた動画でNPC同士が戦ってるのが有ったんです。正確に言うと、ボス同士なのかもですが…。
ガスコイン神父とヘンリックが戦ってたんですけど、最初は「お義父さん!娘さんを私にください!」「誰がお義父さんだ!」みたいな神父、彼女のパパにご挨拶。とか浮かれた脳内して居たのですが、獣神父に成った後で、あぁ…これ狩人様が殺さなかった場合、ひょっとしたらこんな事も起きえたのか…と思いちょっと涙ぐんでました。
体力ぎりぎりでヘンリックが勝ったので、尚更涙腺が…。あの動画本当にどうやって作られたんでしょうか…。
はいあの、文章と関りのない事を書きましたが、何ていうか、ヤーナムで今まで生きて居た人達に想いを馳せると泣きそうになります…。

このお話のロクデナシ共も、ヤーナムこそを世界として生きていた人間です。が、別に哀しみはありません。何なら普通に破滅しても良いと思いますが、ロクデナシなので、全力で粘ります。




異国の医療者

 東京府浅草。人が多く、異邦人が紛れても悪目立ちせず、『他人』が多い都会。それを目指してやって来た。

 

 人が多い所は煩くて苦手だと文句を言い、夜間も品の無い人工の灯りで星も見え辛い、などとぼやくツレは昼夜問わず殆ど引きこもって居た。

 あろうことか、花街の宿に居座って。

 こいつがいつの間にか持ち込んでくる金の出所は、本気で探らない方が良いだろうと再認識する。面倒くさい。

 

 頭おかしいトンチキ聖職者ではあるが、こんな所に入り浸って良いのか? と聞いても聖堂街にだって娼館はありましたよ、と微妙にズレた答えをする。

 そういう意味ではない。こいつの場合、トチ狂った情緒による的を外れた答えなのか、分かった上ではぐらかして居るのかの判断が難しい。

 

 それに、別段滞在場所ではどこでも良いと言うのが本音だ。流石にここはどうかと思うが、奴の言う聖堂街の様な娼館ではない。余分に払う金はツレが調達したものだ。ただ女を呼んでは 話すだけ、という事を繰り返しそろそろ周囲から奇異な目で見られ始めて居る。だからと言って、本業へ勤しんで貰えという訳でもない。

 

 もしそんな事を始めたら、もう一度、両の手足合わせて二十の指全て砕いてやる自信が有る。嫉妬等では断じてない。

 ただただ、ツレが不特定多数の人間と会話して居るのが面白くない。

 

「面白いですよ。色々な伝承が有って。その内の幾つかは、子供向けの寝物語などでは無く、この国に存在する上位の存在の影響かもしれませんよ」

 

 こういう所の人は、何処の土地でも物知りです。

 そう付け足してにっこりと笑い、面白いですね。ともう一度言う。ちっとも面白くない。

 だが直接的に、役に立ちそうな話は合った。

 なんでも最近、妙な男女の二人連れが居るらしい。気味の悪い事に、医者だというその二人は人血を金で買うのだそうだ。

 文化の違いを感じる。血を扱う医療者は『気味が悪い』のだと。そう語る人間をヤーナムに送り込めば、悍ましさに気でも狂うのだろうか。

 だが自分にとっては、それこそが医療者だ。そしてその血こそが今は欲しい。

 ヤーナムで行われる血の医療とは、恐らく違うのだろうが。どんな規模で行っているのかも謎だが、少しばかり融通しては貰えないかと考えた。手間が掛からないのならば、それに越したことはない。

 

 もし断られたら、奪い取れないか、とも。

 

 医療者共の空気は良く分かる。あいつらは総じて薬臭くて、狩人達とはまた異なる深い血の香りがする。ヤーナムにごろごろ居た連中だ。

 

 断片的にしか日本の言葉が分からない上に、他人の視線も好きではない。コミュニケーション能力が著しく低いのは、あいつも理解して居るのか対人が絡む様な駄々はこねない。

 だが今晩はツレに頼まれた訳でも無いく、一人で出て来た。

 あいつは絶賛体調不良だ。血の抜きすぎだ。馬鹿なのだろうか。

 要は、「私の血で良ければあげましょうか?」と言う事だ。あいつはちゃっかり自分は獣……鬼と対峙する事も人攫いも全てこちらに丸投げする心算で、馬鹿みたいな量の血を抜いて寄越して来た。

 

 狩人なんて因果な奴らは大抵、死ぬその瞬間まで全力の動きをし続ける。獣に体の殆どを抉り取られようが、銃弾で穴だらけにされようが、生きて居る限り100%の力で殴り掛かってくる。

 死ななければどうという事はない。あいつだって、狩人では無いにしても血を入れ、獣狩りの真似事は出来る。失血程度で身動き取れなくなる訳が無いが……情緒の有る『まとも』なロクデナシな自分は負い目を感じてしまう。

 縁も所縁も無い他人ならば、何の気負いもなく儀式の材料にでも検体にでもしてやるが。

 そんな想いで一人夜間にも関わらず人の溢れる只中へ繰り出した……のだが、やはりちらりちらと視線を送られるのに成れない。全身黒いのがいけないのだろうか……。

 ともかく、人目を逃れて暗い方へ、人の少ない方へと道を逸れて行った。

 

 そこで見つけた、良く知った空気を纏う連中を咄嗟に追ったのだ。

 

 しかし残念な事に、声を掛けた女医らしき者が何を訪ねて居るのかは殆ど分からず、何故血が居るのかをこの二人に説明する事が出来ない。

 仕方が無いので、やや強引にツレの元まで連れて行き、話してもらおう。もし、後ろ暗さに激しく抵抗するのなら、そまま当人達に輸血液の原料になって貰えばいい。

 

 女医に付き従うチビの腕を掴んだのは、まあ、効率だ。

 このチビが終始女医の盾になる様に動くので、このまま彼女を強引に連れて行ったら煩そうだ。後は自分の人間性に虚しくなる様な判断基準。

 ああ、本当にロクデナシで申し訳ない。改める気はないが。

 

 体躯の割に妙に力の強いチビを強引に引っ張って来れば、女医も慌てた様子で着いて来た。

 あまり人目に付きたくは無いのか、派手な抵抗はされず、ここ数日の寝床へ戻って来る。借りた部屋の前までやって来ると、何やら厭な臭いが漂っている。

 

「この臭いは一体……?」

 

 きな臭さと、油と、この旅の同行者の、酷く甘い血の匂い。

 この国の医療者にも不穏な香りに気づいたのか、些か過剰だと思う程に口元を覆い、問う様に此方を見て来る。

 

「何をやらかした?」

 

 答えは自分も知らないので、恐る恐る部屋へ踏み込めば、箸は使える癖に工房仕事は出来ないツレが自身の持ち込んだロスマリヌスを盛大にばらしていた。

 

「おかえりなさい。あの、違うんですよ? 血が足りないので、その、構造は殆ど変わらないのでオイルを入れたらただの火炎放射器に成るかな、と。獣に使う訳でもないならいけるかと思ったんですけど。駄目でしたね。ところでそちらの方は? 聖女?」

 

 一瞬気まずそうにしてから、直ぐに開き直りやがる。

 半歩引いた場所で、相変わらず眉を潜め口元を覆う人物を見つけて小首を傾げる。

 

「……っ!?」

 

 例のこの国の医療者だと事を伝える。面倒ごとを起すなとも苦言を呈そうとしたところで、未だに掴んでいたチビが急に音も無く飛び退り、するりと抜け出してしまう。

 下を見れば、ぐちゅぐちゅと湿った音を鳴らす、肉塊の様な何かが這い寄って来ていた。気持ちの悪い、悍ましいナニカ。

 

「なんだ、それは……」

 

 距離を取ったチビが、女医と近寄って来る蠢く肉の間に立ちふさがりながら、霞むような声で尋ねる。

 知るか。自分も聞きたい位だ。

 唯一知って居そうなツレも、おっとりと和やかな顔のまま首を傾げる。

 

「さぁ? 元は鬼という生き物でしたが……何でしょうね? これ」

 

 這いずって来た、薄桃色のぶよぶよとする何かを持ち上げる。人の頭部程の肉塊が水音を立てながら、認識できない音を歌う様に鳴らす。

 

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「お、に……?」

 

「失敗作にさえ成れない不出来で使えない子でも、こうして見ると可愛いですね」

 

「気色悪い。何を言ってるんだ、それ」

 

 女医が気味悪そう……いや、戸惑った顔で『鬼』と繰り返すが何を尋ねたいのかも分からないし、それを聞いてやる語学は自分には無い。だからツレに伝わる自分の言葉だけを発する。

 

「私の真似をしているだけですよ。何を聞いても、お話してくれないので。代わりに私が色々お話をしてあげたんです」

 

 ああ、あれか。

 と、納得する。薄暗い麓の道で捕まえた鬼の、何とか死守した頭部の欠片か。日光で消失しない様加工しようとしていたが……こうなったか。獣でもない、気色の悪いナニカ。

 ツレの言う所の、失敗作にも劣る屑。

 特に憐憫の情も沸かないが、にこにことツレが抱きかかえて居るのはいただけない。殺せるかは分からないが殺したい。

 いや、というか、お前は何を語って聞かせたんだ……?

 

「珠世様が! 話して居る! だろうが!」

 

 何故かこのチビは自分にばかり突っかかる。日本語は分からないと明言した筈なのに、故意か何かは知らないが、ツレの方を見ようとしない。

 

「ああ、すいません。それで、この国の医療者なんですよね? 輸血を行る?」

 

 自分が黙って居ると、ツレの方が対応に出る。蠢く頭部だけの存在を抱えたまま、人懐っこい顔でツレが当惑した顔の女医へ近寄る。僅かに腰を折って顔を近づけ……。

 

「こいつの唯一の取り柄だぞ触るな」

「明らかにロクでもない輩が近寄るな!」

 

 目を見て話そうとした横っ面を、チビが勢いよく引っ叩こうとするその手を打ち払う。

 顔以外が糞な奴の顔面叩くとか正気か? 自分がこいつに対して、皮膚を剥ごうが、眼球抉ろうが骨を砕くのはいい。そもそもあの場から連れ出した時点でツレの命は自分の所有物だと言っても過言ではない。それを余人がどうこうして良い訳がない。引っ掻き傷一つでも許容できない。

 

 一息に叫ばれては尚更言葉は聞き取れないが、相容れない事は理解した。信念の相違は武力でもって相手を捻じ伏せて通す他ない。

 ぎっと言葉も無く睨み合う。お互い何を言ってるかは完全に把握できないが、主張が絶対に相反するものだ。

 

「君たち騒ぐなら、隅の方でお願いしますね。お忙しい中申し訳ありませんが、少しご相談させて頂いてもよろしいですか?」

 

「……私も、いくつかお伺いしたい事があります。けど、あの……良いんですか?」

 

「いいんじゃないですか、別に、好きにして貰えば。 そんな事より、まず……何からお話しましょうか? それとも貴女がお尋ねに成りたい事からお答えしましょうか? 私も『全て』を知って居る訳では無いので何でも、というのは難しいですが……ああ、そう言えば貴女は鬼という生き物をご存知なんですか? それから……」

 

 ツレが座る様促すのに頷いて見せながら、女医が一触即発とばかりのこちらをちらりと見る。対してロクデナシの身内は振り向きもしない。今興味のあるのは目の前の異国の医療者だけらしい。何とも薄情な奴だ。もともと情なんてものが有るか不明だが。

 

 だが今はいい。こちらは己の信念を押し通さなければならないのだ。この人間性が糞の様な汚物のロクデナシの方が、どう見ても可愛いのだという信念を押し通すのだ。

 




あっさり人物紹介

人攫い
内臓攻撃が地味に痛い。狩り道具の手入れはそれなりに出来る。
日本語は何となくしか分からない。ツレに教わって居る。

顔だけのロクデナシ
内臓攻撃がへぼい。箸は持てるが技術的な器用さは無い。
日本語は皮肉な言い回しなどを除けば完璧。最近『お』のつく言葉は可愛いと思ってる。「お家」「おに」「おうどん」

『おもちちゃん』
ロクデナシ共に捕まってしまった、あのモブの鬼。
ヤーナム医療者が弄り倒した結果、実験棟の患者の様なよく分からないナニカになった。元々の体が修復されなかったため体積が全体的に小さい。
「お」のつく言葉にはまったロクデナシが、何となくで名付けた。

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