ヤーナム産ロクデナシ共、日本へ渡る 作:そら豆
「……蜘蛛は噛むぞ」
ちぃちぃ、と実験マウスでも宥める様な音を出しながらわらわらと徘徊する蜘蛛を、臆せず捕まえ観察する為に屈み込むツレの襟首を掴む。
襟首、というか黒衣の背に垂らされた荒縄を掴んで無理矢理立たせる。今さらだが、この格好は背後から容易に首を絞められるのではないのだろうか? という思考が浮かぶが、まあ、今までに一度も無かったのだから、どうでもいい。
「こんなに小さいのに生きてるんですよ。凄いですね」
憐れな事にツレに捕まってしまった一匹は、ふっくりとした腹をくにくにと摘ままれている。
確かに小さいが、ヤーナムにだって普通サイズの虫は居た、筈だ。居もしない虫を居ると言うおかしな連中も居たが、普通の生き物も、居た……か? 自信がない。
「それを可愛いとでも言う心算か?」
「いいえ?」
君はこれが可愛いんですか? とでも言いたげに小首を傾げ、ぶちゅりと摘まんで居た蜘蛛の腹を圧し潰し、わなわなと動く頭部を放り捨てる。
「君たちは好きですよね、蜘蛛」
「別に好きという訳じゃあない。たまたま瞳を与えれた者が蜘蛛だっただけだだろう」
そして自分には瞳だ叡智だと言った話も興味はない。そういった事は『頭の良い』連中の領分だ。
クソガキのような無意味な殺生をするこいつもその『頭の良い』奴らの一人なのだろうが……。
ふと、複数の人の気配を察し視線を向ける。闇に成れた目には、しっかりと同じような恰好の集団を認識する。
「……また人だ。隠れるぞ」
「この山は人が多いですねぇ。観光地なのでしょうか。私達も観光して居るようなものなのに、いちいち隠れるのは面倒です」
不平を零すツレを、再び背後に垂らされた縄を掴んでずるずると引き摺り、木々の間に身を潜める。
……これはとても便利な気がする。人目等が無ければ常に縛り付けておきたい位だ。
「その恰好で人前に出れると思うか?」
いつもの視界の端でひらひらふわふわと目障りな白い恰好ではなく、自身の黒衣をおしつけて居た。
行先も経路も任せるとは言ったが、こいつの『観光』は無茶苦茶の一言だった。気が向いた時に、気が向いた物にちょっかいを掛けに行く。自由気ままと言えば聞こえは良いが、要は無計画。経路の効率も何も考えずに、行きたい所へ行ったり来たり。
そんなツレが次に行きたいと言ったのがここ那田蜘蛛山。
もともと都会から一歩出れば、山に盆地にと起伏の激しい土地。植生も違う様で、意気揚々とに深い森や山へ踏み込み、薬草(らしきもの)を毟るなどもしていた。
山だと言うのでまたその類のお遊びか、或いはこの国の人間が山を神格化する事が多々あるというので、その『痕跡』を探しに行くのかと思ったのだが……。
この呑気な同行者曰く、物騒な噂が有るから、いきましょう。との事。お前、先日話した女医の存在を覚えて居るのか? まさか興味を無くして、本気で記憶の彼方へ葬り去ったのか? どこまで自分本位な糞なんだ?
だが結局そのロクデナシ屑の、可愛いお顔にせがまれてやって来てしまった。
せめてその何の防御もない恰好を止めろ。獣には無意味だが、人間らしき物には気休め程度には有効かも知れないと、自分の狩り装束を使う事を条件にした。
つまるところ、今は二人して頭の先から爪先まで真っ黒だ。
完全に後ろ暗い事を行っている人間の出で立ちだ。こんなモノで現地人の前に出るのは面倒ごとの火種にしか成らない。いくら自分がロクデナシの人攫いでも、目撃者関係者皆殺しなどしたくはない。面倒くさい。
「それにあれはどう見ても、観光客ではないだろ」
ツレの様に呑気に楽し気でもなく、緊張した面持ちだ。アレが話に聞いた鬼を狩る『狩人』だろうか。可哀想に、とても人間性に満ちた健全な奴らだ。ろくな死に方をしない。
千景によく似た得物を携えてはいるが、左手は空だ。
「面倒な事に巻き込まれる前に戻、る……」
こちらの話を聞いているのか、いないのかじぃっと大人しく隠れながら中空を眺めて居たツレの姿が消えて居た。
何の気配もなく。
「あのクズ……ッ!」
込み上げるままに、ただ押し殺しながら罵倒を絞り出す。
鬼を狩る者共が、どの程度群れて狩りを行うのか知らないが、こうもぞろぞろとやってきているのを見るに、獣狩りの夜のような事態なのかも知れない。
それを、自称非力な学者が一人でうろうろと……。
自分だって獣狩りとしての腕は無いが、少なくともあのクソは自分に拉致されている。つまり、自分以下。どんな状況かも分からないとうのに、あいのロクデナシ、頭はいいんじゃないのか!?
くそ、と吐き出してから、久しぶりに契約のカレル文字を刻む。あの糞ロクデナシ同行者は、この契約も自分の使う仕掛け武器もご不満の様だがそんな物知ったこっちゃない。『人間性を誇示するための、複雑な機構の仕掛け武器なのに、何故獣に寄せるのですか?』という事らしいが、楽なのだから仕方無いだろう。
思うままに獣を刻み、浴びる返り血に斬撃の熱を増し、より深く抉り取る。ほら、簡単。狩人相手はそうはいかないが、腕の無い獣狩りなど獣性を高めて殺される前に敵を殺すしかない。こんな方法だって未だ血に酔って居ないのだから、問題ない。むしろお前の身内共の、蒼白く気色悪い苗床頭の方がどうかして居る。顔しか取り柄のないツレが、アレをやった暁には、銃口を額に押し付け吹き飛ばす所存だ。
変質し、歪む体に衣服は煩わしく関節の動きを阻害する。手早く衣服は脱ぎ捨て、仕掛け武器を手に取る。
ロクデナシの思考は読めない。あいつが何を考えているのかなんて、分かった物ではない。何が気に成り、何処へ向かったのかも分からない。
あいつがどこへ向かって居ようが、ともかく目に付く危険を排除して、少しでもあのクズの危機を減らそう。
あのロクデナシは自分の物だ。余人が危害を加える事は許容できない。片っ端から、ころそう。
リアル知人に!クソロクデナシ共っぽい物を描いてもらったわーーーーい!
髪型とかは、キャラメイクで出来る内で…と、あとその他あんまり容姿には関係ない着崩した、というか正しくない恰好でお願いして、大変申し訳なく思います。ごめんねありがとう。
そしてこの絵の代償に、アルフレート君をいじめる様な事が出来なくなりました!知人はアルフレート君大好きなので…。もともとそんな予定はありませんよ。大丈夫。
カレル文字は許可を貰って上から描かせてもらいました。かなりいい加減です…。
また、こちらの物はゲーム上では正しくない恰好をしているロクデナシ共のその辺うろついている時の格好の説明の為の物で、容姿等はやっぱり具体的に考えて居ません。
あと人攫いさんはこれとは別に、正しいヤハグル装備をします。怪しいです。
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