【凍結】愚者ガイル   作:邪骨

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リハビリ。
以前の文体を忘れた。原作の展開も忘れた。


第十五話 八幡、初めてのサボり

 折本女史に敵わぬ恋心を抱いてしまった哀れなハゲマン――おっと八幡だった――の恋路の行方には興味はあるものの、あまり調子づかせて酷いフラれ方をされるのは友人としては望まぬところであった。

 

 まさか折本女史の気を引くためだけに頭を丸めてくるとは八幡にしては意外な勇気を見せたが、それは道化になって笑わせただけで恋愛フラグは立っていない……と思う。このまま告白なんてすればまず間違いなく玉砕するし、そうなれば八幡のことだから凄く面倒くさい拗ね方をするだろうことが予想できた。

 小学生時代虐められていたと語る八幡の顔を、どうして親友である私がさらに曇らせるマネが出来ようか。

 ここはそれとなく「脈はないよ」と彼にしっかり伝えて、折本女史のことはきれいさっぱり諦めてもらうのが賢い選択というものであろう。

 

 折本女史は、そもそも恋愛とかに興味はなさそうであるし。

 

 というのも先日、八幡が頭を丸めてから幾日が経ったある日、折本女史とその学友が廊下でしていた会話の内容をすれ違いざま聞いてしまったのである。

 

「折本ってさ、彼氏とか作んないの?」

 

「ないない、みんなガキっしょ(笑)」

 

 この会話が折本女史の本心から出たものであるとするならば、誰が告白しても折本女史と付き合うことなど出来ぬということで……。

 

「八幡、強く生きろよ」

 

 私は憐みの情を顔に出さぬよう努めながら、隣で給食をモリモリ掻き込む八幡に告げるのであった。

 

「あん?何なんだよ突然……」

 

 ああ、屋上に照り付ける日差しが眩しい。

 5月だというのに、暑いな……。

 

 訝しげな顔を向ける八幡に、私はニヒルに微笑んで「なに、気にするなよ」と言って屋上のフェンスに腕をかける。

 そうだよ八幡、お前は純粋なままでいてくれ。

 

「マジで何なの」

 

 若干イラついた視線をこちらに向ける八幡の頭頂部は、ツルツルではなくザラザラであった。まあ、三日も経てばスキンヘッドは維持できないのだから当然である。

 野球少年でもないのに坊主頭なのはこれはこれで面白いが……お前のその自己犠牲精神は、折本女史の恋心を刺激することはなかったよ……。

 

 ああ、なんだか目から汗が……染みるぜこれは。

 

 

 私と八幡のコンビは、教師陣から言わせれば困った不良野郎にカテゴライズされるらしい。

 

 配膳された給食を立ち入り禁止の屋上に持ち込み勝手に食べる――というのが私と八幡の常であったが、なるほど確かにやっていることを見れば間違いなく不良である。

 しかし言い訳をさせて欲しい。

 私個人としては別に教室で給食を食べるという規律を犯すつもりは微塵もなかったのである。しかし八幡は過去のトラウマからか教室で給食を食べることに多大なストレスを感じているようで、致し方なく私が付き添う形でだね――。

 

 言い訳はよそう。

 

 ただ、私と八幡は決して不良などではないということを覚えておいてほしい。

 

 私は基本品行方正だし、人付き合いが悪い自覚はあるし口も悪いし愚か者でもあるが、それでも授業は真面目に聞いているし成績だってそれなりに優秀なハズだ。妹思いだし?母に変わって家事手伝いだってしている立派な息子だよ。

 

 八幡だって人相は悪いし捻くれているし素直じゃないが、それはちょいとばかし理想高くて嘘が嫌いなだけの普通のガキなだけで、別に不良ってわけでもない。何というか、奴には可愛いところが多くてちょっと萌えキャラっぽい節があるし、これが不良なわけがなかった。仮に俺が女なら、その哀れ可愛いところにキュンときて惚れていたかもしれない。

 

 だから学校をサボって我が家で八幡と妹と共にゲームに興じていても、だからと言って不良になるとは私は思わないのだ。

 

「また戦争がしたいのか、あんた達は!?」

 

「トゥ!ヘァー!もうやめるんだ!」

 

 ちょこまかと動く!

 私の駆るジャスティスがインパルスにボコボコにされていく。畜生ほとんどナチュラルのくせに!

 

 もってくれよ、私のDUALSHOCK3……!

 

「兄ちゃん早く変わってよ」

 

 おいおい妹よ、テレビの前に割り込んでくるんじゃない。画面が見えなくて八幡に負けちゃうだろ!

 

「へッ、見えててもお前は俺に勝てねえ。なんせ俺はゲーセンで鍛えているからな」

 

 お前オリジナル版連ザ経験者かよ!前世含めてやったことねーよ!

 

「どうせ兄ちゃんの負けだよ、ほら」

 

 あーはいはい、わかりましたよ天使さん。私の負けです負け。

 

 妹は5歳になった。

 

 彼女を幼稚園に連れて行くべき母さんが病気で寝込んでしまっている以上、駆け付ける親戚が近所に住んでいない現状では妹の世話は私の義務のようなものであった。今日学校をサボった理由は正しくそれで、だからサボりかどうかは正直微妙なところであったが……。

 しかし八幡は間違いなくサボりと言えよう。彼は毎日私の家まで来て「一緒に学校行こうぜ」と誘ってくるのだが、今日は休むと伝えると「じゃあ俺もサボるぜ」などと言って家に上がり込んできてしまったのである。全く不真面目な奴だ。

 

 私は八幡に「妹に代わるよ」と断りを入れ、ゲームを中断させてもらった。

 

「そりゃ構わねぇけどよ、このゲーム俺の勝ちにさせてもらうぜ」

 

 あ!お前!動けない俺のジャスティスにトドメ刺してんじゃねーよ!

 

 仕方ない奴だよ八幡クンは。卑怯が極まってるよ。この坊主頭め。

 

 私は妹の相手を八幡に任せて、母さんにお粥を作るために台所へと向かう。母さんにはちゃんと食べて、早く元気になってもらわないとだからね。

 お粥は実は胃腸に優しくないという言説をいつか見かけたけど、私にはお粥以外作ってあげられるものがないのだ。

 何といったって、私は料理がド下手くそなのだから。

 

「八幡くんよわーい!」

 

「ヌォォォォォォォッ!?」

 

 現在時刻は11時25分。

 お粥を母さんだけに作るのはもったいないので、私や妹、八幡のぶんも一緒に作ることにした。今日のお昼はみんなお粥です。文句は言わせません。

 

 早速私は米一合と水とを鍋にいれ、中火で煮立たせる。

 

 遠目からはしゃぐ妹と八幡を見るが、どうやらゲームは妹の優勢らしく、八幡が情けない声を上げてコントローラーをガチャガチャやって粘っているようであった。

 

 俺があんなに苦戦した八幡をこうもあっさり破るとはな……末恐ろしい子だ。

 

「もう一回だ!」

 

「覇王は挑戦を拒まない」

 

 どうやら妹は覇王らしい。将来が楽しみだね。

 

 ……お粥は簡単だが、待ち時間が長いのが難点だよな。私としてはパスタの方が楽でよかったが、さすがに病人にパスタを食わせるのは憚られた。

 手持無沙汰になってキッチンから窓の景色を眺めていると、ふと思い出したことがあった。そう言えば雪乃君からメールが来ていたなと。

 


 from 雪ノ下

 

 中学生活は楽しめているのかしら?

 いえ、あなたのことだからきっと友達も作らずにウジウジするばかりの日々を送っているのでしょうね。

 そんな可哀そうなあなたに私の生写真をプレゼントするわ。

 泣いて喜びなさい。《添付画像》*1

 

 追伸。

 夏休みは日本に帰るから、どうしてもというなら会ってあげてもいいわ。


 

 メールの内容に私は思わず顔をほころばせ、「友達くらい、一人できたさ」と返信した。

*1
可愛らしいフリル姿の雪乃君が、猫を抱えて微笑んでいる画像。

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