北条の野望 ~織田信奈の野望 The if story~   作:tanuu

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第39話 苦難の道 甲

 戦場は混迷を極めていた。河を挟んだ死闘はなおも続いている。後方へ撤退する武田軍。追いすがる村上軍。村上軍の先頭は大槍を構えた村上義清が率いている。

 

「板垣信方様、討ち死に!」

 

 その報が武田軍を駆け巡る。彼らはその統制を失いつつあった。

 

「甘利様、撤退を始めました!」

 

「我が軍の勇士が、続々と討ち死にしております! 村上方の奇怪な長槍隊に対処できませぬ!」

 

「総大将の村上義清自らが旗本衆を率いて、この武田本陣をめがけて突進して参ります!」

 

「村上軍の被害も甚大なれど、退くつもりのない玉砕戦を挑んで来ました!」

 

 千曲川沿いに展開した味方の先鋒が次々と総崩れになっている光景を凝視しながら、武田本陣は騒然となっていた。

 

 晴信は「板垣が…!」と思わず声を詰まらせたが、次郎と二人きりの時以外は決して涙を見せまいと誓ったことを思いだし、かろうじて踏みとどまった。無意識のうちに自らの唇を噛み破り、赤い血を流していた。

 

 誰からともなく、村上義清が繰り出してきた奇態な長槍の集団を、槍衾、と名付けていた。

 

 勘助とあたしの兵法はほぼすべて、学問。すなわち、学んだもの。兵站に情報戦。謀略に挟撃等々。けれど、戦場に新たな兵器を投入し、その兵器を生かすための新たな陣形を考案することまでは、できなかった。いや、無数の長槍を足軽に持たせて戦闘時の間合いを完全に奪い、こちらに攻撃する猶予すら与えない槍衾を構築するなど、完全に盲点だった。その上、あらゆる計算と策略を覆す村上義清の圧倒的な武。見くびったり侮ったりしたつもりはなかった。板垣と甘利から、村上の武勇については何度も聞かされていた。だが、これほどとは。想定外以外の何物でもなかった。

 

 活かし方が悪いのだ、と河越城の軍師が怒りそうなことを思いながら、晴信は後悔していた。兼音に言わせれば、学んだことを活かせていない時点で何の意味もない。それなら知らない方がマシだ。なぜなら、下手に知識があるとそれに囚われるからである。

 

 やはり、村上が城から出て野戦を挑んできたところで、いったん兵を退いて策を練り直すべきだったのだろうか?智者は智に溺れるとはこのことかもしれない、と晴信は悔いた。それにしても、あの板垣がこんなにもあっけなく、この地上から消え去ってしまうとは。

 

 板垣信方は、晴信の守り役だった。晴信を疎んじた信虎に代わって、父のように晴信を守り、教え諭し、信虎追放劇の際にも動揺する家臣団をまとめて自分のために奔走してくれた。実の父親よりも慕っていた。

 

 その板垣が――。

 

 別れの言葉もなく――。

 

 村上義清は「姫武将といえど武士。降伏など認めぬ」と晴信の首だけを求めて戦場のただ中を駆けているという。しかし己の死が間近に迫っていることよりも、武田家の柱石と頼んできた彼を失った衝撃のほうが晴信にははるかに痛かった。今までの人生で、これほどの恐慌状態を来したことはなかった。いったいどうすればいいだろう。どうすれば。父上が村上義清と和睦した選択は正しかったのだろうか。身の程を知らないあたしの野望のためにあの忠臣は、多くの将兵は、武田家を支えてきた勇者たちは、死なずともよい死を迎えたのだろうか。

 

乱世の恐ろしさ、合戦の激しさに、晴信は身震いしていた。涙よりも先に、脂汗が流れおちていた。脇腹の猛烈な痛みと、吐き気に襲われていた。油断、怠慢、慢心。招いたのは敗北と言う結果だけ。あれほど次郎に言われたにも拘わらず。興国寺城で己の常識の埒外の攻撃を受けたにも拘わらず。自分は何一つ成長していなかった。驕った末の末路がこれか。

 

「勘助は。勘助はいずこに」

 

 軍師の姿が本陣内に見えなかった。

 

「軍師殿は何とか全軍を撤退させるべく中軍の次郎信繁様のもとに。次郎様は、御屋形様を逃がすべく盾とならんとするから、と」

 

 背後に侍っていた小姓が震えながら伝えた。次郎さまの討ち死にだけは阻止せねばならない、今ここで次郎さまが失われれば御屋形さまのお心は保たぬ、と言い残して。

 

 

 

 

 

 

 さて、その次郎信繁は中軍にて板垣隊が崩れるのを目の当たりにした瞬間に撤退命令を下した。彼女の瞳には、槍衾が写っている。あれこそが、己の常識では測れぬもの。事実、彼女の読んだ兵法書にあんな陣形は無かった。板垣隊も撤退しようとしているのが見える。救援か、撤退か。迷う彼女は記憶を必死に蘇らせる。送られた書状には、「万が一の際は御身はいち早く逃げ延びるべし。貴殿を失えば、晴信殿は狂乱されよう。ともなれば、武田は滅亡を免れぬ。他を顧みず、ただ一目散に駆けよ」とあった。

 

 兼音からすれば、折角できた繋がりをこんなところで失ってしまっては困る。その為、さっさと逃げるように指示していた。しかし板垣たちを見捨てる訳には…と葛藤する信繁のところへ息を荒くした甘利虎泰が逃げ込んできた。

 

「甘利!板垣はどうしたの!?」

 

「はっ!板垣は盾になると申して踏みとどまっております!ここで我らが両方とも討たれれば御屋形様の御心はどうなる。お主は生きて、最後まで御屋形様をお守りせよ!ここで死ぬのは拙者一人で十分だ、と…!」

 

 盟友が生きて帰ってくる可能性はゼロに等しいと分かっている甘利の声には涙が混じっている。

 

「そんな、板垣…!すぐに退くように言ったのに…」

 

「じきにここも危なくなりまする!次郎様はどうかお早くお逃げください」

 

「ッ!……分かった。全軍退け!」

 

 ああ、あの軍議でもっと何か言えていたら。違う結末があったのだろうか。ふと信繁は、自分ではなく兼音が武田家に産まれていたら…と思った。そうなっていたら、どうなっていたのだろうか、と。

 

 後悔から己の無力さを呪う信繁のもとに勘助がやって来る。

 

「次郎様!最早戦線を立て直すのは不可能。お早く…!」

 

「知っているわ。今から退くところよ。甘利!護衛は任せた!」

 

「承知ぃ!この老骨ここで果てるとも必ずやお守りしてみせましょう!」

 

「勘助。姉上は」

 

「退くように伝えるよう、小姓に言い残しました」

 

 それに安堵しつつも、信繁は急いで後退を始める。規律を失いかけながらも最後のところで踏みとどまっていた武田軍だが、信繁の撤退命令により後退を始める。勘助は己の不甲斐なさを恨みながら、何とか撤退できそうなことに安堵していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 板垣信方は生前、勘助の知が策に傾きそこに情がないことを何度も警告し教え導こうとしていた。その性格ゆえか容貌ゆえか、あるいは天性の一匹狼であったのか、人情というものが生来理解できなかったその勘助が、晴信そして四郎との出会いと交流を通じて、板垣の訓戒を通じて、はじめて情というものを知った。

 

目の前の戦における言い訳のきかない敗北を自称天下一軍師として糊塗するよりも、勘助は、窮地に陥った晴信の心がもっとも今望んでいるであろうことを為なそうとした。そして、駆けた。

 

 しかし、情を知ってしまい情を抱いてしまっただけ、勘助は無敵ではいられなくなったのだろう。かつての勘助であれば逆転勝利の可能性を掴むためならば次郎をも捨て駒として切り捨てようとしたはずだ、と晴信は思った。すまない。あたしがふがいないばかりに、お前の戦歴に黒星をつけてしまった、と勘助に感謝しながら詫びた。

 

 小姓の一人が「御屋形さまをお救いする策を出さずに無断で飛びだすとは、軍師にあるまじき行動です」と吐き捨てるように口走っていた。

 

「勘助は左様な無責任な軍師ではない。なにか策を言い残していったはずだぞ。告げよ」

 

「お、『御屋形さまはすべてを捨てて一目散に逃げよ』と、だけ」

 

「それは正しい。勘助の言う通りだ。あたしがここで死ねば武田家は滅び去る。今は恥も外聞も捨てて逃げるしかあるまい。だが――村上義清は、その猶予を与えてはくれなかったようだ」

 

 幔幕が突き破られ、巨大な黒馬に跨がった武者が晴信の視界に入った。本陣の急襲。それが彼の策だった。その男の姿の中に、晴信は武田信虎の影を見ていた。加えて周囲からは多くの殺気。戸隠の忍びたちが彼女を狙っていた。

 

 あたしが父上から奪い取ったもののすべてを、この男は、あたしから根こそぎ奪い取ってしまう。これはあたしへの罰だ。父上が、同盟者をあたしのもとへよこしたのだ。あたしの首を奪うために。極限状態でふと生じたこの思考の錯誤から、晴信の心は突如としてあらがいがたい恐怖に囚われていた。

 

 床几に座ったまま、身動きができない。机の上に置いた剣を手に取ることができない。このような獣じみた男に、この細腕で勝てるはずがない。

 

「武田晴信、その首をいただく。葛尾城主村上義清、参る」

 

 勘助ともあろうものが、あたしが逃げる猶予を与えられなかった時のための策を準備していなかったはずはない――と晴信は己を励まし、剣に手を伸ばそうとした。

 

 ごぉ、と村上義清の槍が音を立てて晴信の頭上へ落ちてきた。ほんの一瞬ではあったが、恐怖で身体が言うことを利いてくれなかった。その一瞬が、生死を分けた。晴信は、臆病のために自分の命運がここで尽きた、と覚悟し絶望した。

 

 

 

 

 

 

 だが、運命はそう簡単に彼女をこの世界からは解き放たなかった。轟音を立てながら振り下ろされる槍は、凄まじい速さで飛来したクナイを払うために軌道修正させられる。目の前の状況を飲み込めない晴信の鼻腔に甘ったるい花の香りが入り込む。

 

 桃色の靄が陣中を満たす。村上義清もこれに混乱しているようだった。戸惑いながらも再度晴信に狙いをつけ、槍を振り上げる義清。しかし、勘助は自ら次郎信繁を救いに行くと同時に、晴信の命運を自らの「教え子」たちに託していた。

 

 村上義清が必殺の気迫を込めて振り下ろした槍先を巨大な鎚で受けてぎりぎりではじき返し、晴信の命を防ぎ止めた者がいた。

 

「……あー……馬場信房、見参」

 

 鎚の使い手は、長身の姫武将、馬場信房。小姓衆の中に身を小さくして紛れていたらしい。俺の槍を受けきる女がいたとは、と村上義清は目を見開いていた。

 

「逃げましょう、姫さま!」

 

 腰の抜けていた晴信を庇うのは春日源五郎。

 

「姫小姓だらけの本陣だと!? 武田晴信! この俺を舐めていたか!」

 

 義清が怒鳴る。その姫小姓どもに必殺の一撃を外されたわが慢心こそが不覚にして恥辱!青ざめた村上義清が「邪魔だてする者は女であろうとも叩き斬る」と怒気を放ちながら、鎚を引き上げて再び構えに入ろうとしていた馬場信房へと躊躇なく躍りかかる。

 

「馬場信房とやら、死ね。その重い鎚では、俺の槍の速度には追いつけん」

 

 その村上義清の左手から、鉄扇が。右手からは、何の変哲もない「石」が次々と放たれてきた。

 

「姫さまをやらせはしないわ!」

 

「いいい石つぶての目つぶしです!」

 

 小姓衆に紛れていた飯富三郎兵衛が鉄扇を、そして簑を着込んで完全に気配を消していた工藤祐長が石つぶてを、左右から同時に村上義清めがけて投擲してきた。二発目、三発目、四発目、と息を継ぐ暇もなく。

 

 山本勘助は、教え子である彼女たちに「馬場信房は鎚の一撃を繰り出した後、無防備になる。姫武将であるそなたたちに忍びになれとは言わぬが、戦場で馬場を補完する特技を身につけよ。乱戦において御屋形さまをお守りするため、そしてお互いを守りあうためである」と槍・弓・刀以外の独自の技を習得させていた。彼女たちはみな、晴信が見出した将来の武田を担う姫武将たちだった。春日源五郎は高坂昌信、飯富三郎兵衛は山県昌景、工藤祐長は内藤昌豊と言った方が通りが良いか。いずれも後世に名高き武田四天王である。そしてこの中の三人は長篠にてその命を散らすことになる。高坂昌信だけが生き残り、斜陽の武田家を案じながら亡くなった。

 

 なるほど。三方からの同時攻撃か。忍びまがいの術を姫武将どもに教え込んだのは山本勘助か。俺を侮っていたわけではなかったらしい――と村上義清は苦笑いを浮かべた。石と鉄扇とは、それぞれ異なる軌道を描いて変化しながら飛んでくる。とりわけ、重量の軽い石が厄介だった。一発、二発を食らっても問題はないが、飛びながら奇妙に曲がったり落ちたりする。これらすべてを変幻自在にうねる槍先で払い落としている隙に、正面の馬場信房が再び鎚を振りあげて村上義清の頭を兜ごと叩き潰そうと迫ってくる。

 

「が、しょせんは覚え立ての児戯よ。実戦ではまだ使いものにならん」

 

 村上義清が槍の射程内に再び馬場信房を捉えたこの時。晴信を背負って本陣から逃げようとしていた春日源五郎が、不意に村上義清の首筋めがけて、小刀を投げていた。それも、背を向けて逃げながらだった。

 

「……背面投げ!?」

 

 逃げることしか頭になさそうなこの娘が……そうか、四人目がいたか、勘助得意の詐術か!と義清はうなった。小刀の直撃を避けるために馬上で身をかわし、太股の力だけで馬の背に踏みとどまりながら、馬場信房が振り下ろしてきた鎚を両腕で盾代わりに握りしめた槍の柄で受けた。義清に勝るとも劣らぬ、すさまじい剛力だった。まして、槍と鎚とでは圧倒的な重量差がある。この姫武将ははじめから己を守ることをいっさい考えていない、三人の姫武将による支援を信じているのだ、と義清は思った。

 

「どうやら俺は貴様らを甘く見ていたな。だが……」

 

 だが、これまでだ。これ以上晴信に時間を与えるつもりはない。視界はなおも色のついた靄が漂っている。邪魔なこれだが、何とかならない訳ではない。それよりも、これに紛れて晴信に撤退される方が厄介だった。村上義清は盾代わりに構えていた槍を押し戻して馬場信房の鎚をはね飛ばすと、雄雄雄雄、と異様な雄叫びをあげていた。

 

 この時、義清が引き連れてきた村上家の旗本衆は、武田本陣前で晴信の旗本衆を相手に激しい攻防を繰り広げていた。村上義清は奇襲攻撃などで殺せる相手ではない。次の一撃を突破口に、晴信を守ろうと本陣内に踏みとどまっている姫武将をことごとく倒すだろう。殺し尽くすだろう。

 

 しかし、その時には晴信は本陣を脱出しているのだ。それこそがあちらの姫武将たちの目的。義清を殺せるとははじめから思っていない。全員が捨て石となって、時を稼いでいるのだ。その関係こそが、彼らの強さだった。

 

 

 

 

 

 村上義清が手間取っている。ならばこの隙に、と影に潜む者たちが動き始める。晴信の頭上から一斉に襲い掛かろうとしていた。彼女はそれに気付かない。だが、次の瞬間、彼らは地面に落ちる。

 

 突然落ちてきた忍び姿の者たちに晴信は驚くが、彼らが自分を殺さんとした戸隠の忍びであると理解する。しかし不可解なのは、何故彼らは傷を負って地面に伏しているのかである。疑問を抱く彼女の前に一人の人間が姿を現す。金色の目に黒い髪。黒と赤、それも血のように濃い赤を基調とした服に身を包み、長い髪は赤いリボンで一つに括られている。異質な美しさを誇る忍び姿の女が立っていた。

 

「間一髪、と言うところ。助太刀は一度でいいかと思っていたが、存外に手のかかる姫だ」

 

 彼女はそう言いながら晴信を見下ろす。そして地に伏している戸隠忍びに向けてガラス片のようなものを吹きかける。途端に悶える忍びたち。その中の一人が苦し紛れに叫ぶ。

 

「貴様、この裏切り者!」

 

 それを無表情な目で見降ろし、彼女は絶命したその姿に向かって言い放つ。

 

「いつまでも戸隠にしがみついている貴様よりは、天下万民のためになれる場所を見つけただけのこと。裏切り者とは心外だ」

 

 鼻を鳴らしながらなおも抵抗の意志を見せる忍びたちの頭上から大量のクナイが降り注いだ。

 

「間に合ったでござる。村上義清の突撃に紛れて忍びどもがこの本陣に来ると読んで、軍師殿と口裏を合わせていたでござるよ!」

 

「日和見は嘘か! 真田の者どもが武田方に参戦していたか!」

 

「当主の幸隆どのはほんとうに日和見しているでござる! 参戦した者はあんたがたに気取られぬように、ごく少数でござるよ!」

 

 最後に言い残した忍びに答えたのは晴信も知った顔。猿飛佐助であった。その姿を先ほどの女忍びは片眉を吊り上げながら見ている。

 

「猿飛、佐助…。それと、お前は…」

 

問う晴信に女忍びは答える。

 

「ああ、名乗っていませんでしたか。我が名は加藤段蔵。我が主、一条兼音より命じられ、援軍に参上」

 

 佐助は晴信を促し、陣を脱出させる。追おうとする武士は段蔵によって悉く冥界に送られた。村上義清は槍を一閃して馬場信房を馬上から振り落としたところで、「晴信が陣中から消えた。勝ち戦を、逃したか」と目を細め、思いを吹っ切るかのように馬首を翻していた。馬場、飯富三郎兵衛、春日、工藤。なおも自分を足止めすべく陣中に留とどまる四人の姫武将の命を奪おうとも思ったが、やめた。晴信の首を獲れないのならば、この少女たちを殺し尽くしたところで意味がない。戦は終わったのだ。勝利条件は満たせなかったのだ。ならば、未熟で幼い姫武将たちを殺したところでそれはただの腹いせでしかない。

 

 戦場に男も女もないとは言ってきたが、戦が終われば話は別だった。よくぞこの俺を防ぎきった。お前たちは生かしてやる、四人はいずれ名将になるだろう。だがその時こそお前たちの命を俺が奪う、とつぶやいた。

 

「者ども。晴信を取り逃がした。急ぎこの戦場より離脱する」

 

 上田原の合戦は六時間に及んだ。このような正面からの玉砕戦は、戦国時代では滅多に起こらない。普通の大将は、このような明日のない戦などしないからだ。村上軍からもまた、甚大な被害が出ていた。

 

 村上義清は、果敢に討ち死にした味方の勇将たちの名を聞かされながら、憂鬱そうに眉をひそめていた。

 

 屋代源吾、小島権兵衛、雨宮刑部。重臣だけではない。この六時間のうちに死んだ将兵の数は、数え切れなかった。覚悟の上で犠牲を払った。だが、晴信を討ち漏らした。山本勘助とその教え子である姫武将たち、そして真田幸隆が送り込んだ忍び、そして名乗りは聞こえなかったがおそらく手練れの忍び。そいつらが俺ををぎりぎりのところで阻んだ。ならば、死んだ連中は無駄死にだったのだろうか。明日もう一度突撃をかけるのか。いや、それでは武田も滅ぶが村上も滅び去る。信濃の片田舎で俺はなにをしているのだ。村上義清はふと出家への思いに駆られた。

 

「わたくしたちだけでは姫さまは守りきれなかったわ。村上義清の猛攻を食い止めて時間を稼ぐのが精一杯で戸隠忍びまではとても手が回らなかった。真田を最高の形で高く売りつけたわね。真田幸隆」

 

 仲間とともに本陣を最後まで死守した飯富三郎兵衛が、佐助に声をかけていた。

 

「幸隆どのは流浪暮らしが長びいて、銭にせこいのでござる。面目ないでござる」

 

 佐助は頭をかいて、笑った。

 

「しかしまた、ずいぶんと人が死んだでござるなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 

 千曲川を挟んで武田・村上両軍は再び睨にらみ合いに入った。しかし、双方ともに甚大な被害を出し、容易には動けない。これでも一応史実より武田の戦死者は少ない。早急に撤退したことが生きていた。

 

 村上義清はなにを思ったか、板垣信方の首と遺骸とを丁重に武田本陣へと送りとどけてきた。

 

 これでこの戦は水入りにしたい、という意志なのかもしれなかった。だが、村上軍が陣払いをする気配はまるでなかった。この上田原は村上領である。武田が退かない限りこちらからは絶対に退かない、このまま戦い続けて滅亡するならばともに滅びようという挑戦の意志とも受け取れる。

 

「死ぬのは俺か、飯富兵部だと思っていたのだがな……あんたはまだまだ死にそうになかった。別れの言葉すら交わせなかった。御屋形様に言い残したい言葉もあったろうに、それすら伝えられなかったな。これが戦か」

 

 軍議の席で、横田高松が酒を浴びるように飲みながら首桶を前にそうつぶやいた。総大将の晴信は号泣したい気持ちをけんめいに抑えていた。何とか生き残れた甘利虎泰は満身創痍のため、手当を受けている。

 

「姉上。先鋒ってのは若いやつがやる仕事なんだ! 次こそ俺を先鋒に使ってくれ。頼む!」

 

「太郎。姉上は深手を負われているの。これ以上姉上を心配させてはだめよ」

 

 逸る太郎を次郎は必死に抑える。山本勘助は、宿老の死という痛恨の敗戦を噛みしめながら、敢えて淡々と撤退の方針をすすめた。

 

「無念ですが武田の完敗にござる。このような無謀な突撃を仕掛けてくることも計算外でしたが、あの槍衾は堅い。急いで諏訪へひきかえさねば、諏訪にて反乱が起こりますぞ」

 

「いや勘助。撤退はしない。われらも大打撃を被むったが、村上軍も多くの重臣と兵を失って四分五裂する寸前だ。板垣たちの無念を置き捨てて、おめおめと帰れるはずがない」

 

 晴信が撤退に反対した。必ず諫止したであろう板垣はもうこの軍議にはいない。甘利は出られる状態ではない。

 

「御屋形様。これ以上村上に固執すれば、諏訪、高遠、佐久。これまで奪った領地のすべてを失いますぞ。小笠原長時が中心となって信濃の反武田勢力がいっせいに蜂起いたしましょう。さすれば信濃平定は振り出しに。もし佐久と諏訪を失陥すれば、われらは敵地で孤立したまま甲斐へ戻れなくなります」

 

「勘助。お前は最前線で立て直し、同時に馬場たちと佐助を本陣に集結させてあたしを守った。次は、諏訪での反乱を抑えながら村上と戦うのだ。できぬことはないだろう」

 

「御屋形様、立て直したのは次郎様でございます。それがしは、何も…」

 

「勘助。あたしは村上義清の姿を見るなり金縛りにあって動けなくなった。板垣の仇を目の前にしていながら、恐怖に居すくんでしまった。このまま逃げ帰れば、自分がどうしようもない臆病者だと認めることになる」

 

「……これまで、武田家の内政外交は板垣様が。軍事は甘利様が統括されておりました。その柱石の片翼が亡くなられたのです。武田家の体制そのものを立て直さねばなりませぬ」

 

 勘助は晴信を懸命に説得する。しかし、晴信はぐちゃぐちゃになった感情のために冷静な判断が出来ずにいる。

 

「板垣を捨てては帰れぬ」

 

「捨てて帰るということにはなりません。もう死んだ者にございまする。それに、首はこうしてわれらのもとに還ってきております」

 

「勘助! 今朝の軍議では、冗談を言い合っていたではないか! それを、もう死んだ者とはなんだ!」

 

「御屋形様はまことにお優しいお方でござる。しかしそれがしは軍師にござりますれば、今だけは心を鬼にして事実を述べているまで。ここでそれがしまでが情に流されれば、武田家は滅びまする」

 

「ならば武田を滅ぼさずに村上に勝つ策を考えよ、勘助!」

 

「兵どもは村上義清を恐れております。再び決戦する兵力も士気も今はありませぬ。あの圧倒的な村上義清の武と、そして鉄壁の槍衾を破る戦術を考えねば……実戦経験のなさを、それがし、板垣さまに懸念されていました。それがこのような形で現実のものになるとは……」

 

「この敗戦でそのことをわれらは学んだはずだ。新たな戦術には、さらに新たな戦術をぶつけるしかない。勘助。そなたならできるはずだ」

 

「昨日今日というわけには。閃きだけでは戦術は実戦に投入できませぬ。調練にも日数がかかりまする」

 

 御屋形様は判断力を失われておられる、と勘助は震えた。

 

 しかしそれがしには説得する方法が見えぬ。四郎さまは二度と戦場へ連れ出さぬと決めた以上、他に方法が見えない。引き続き、次郎様と太郎様に説得していただくしかない。

 

 だが、次郎と太郎もまた、晴信に撤退を納得させる言葉を持たなかった。とりわけ次郎は「あたしは臆病者ではない。しかし今逃げれば臆病者だ」と父親の影と村上義清の姿をだぶらせながら涙目で繰り返す晴信の心情がわかるだけに、強く晴信を叱りつけることができなかった。

 

 

 

 

 だがそんなのは知ったもんじゃないとばかりに陣幕にもたれかかった者が口を開く。

 

「内輪もめは大いに結構。ですが、とっととどうにか結論を出してほしいものですな」

 

 それに一同が目を向ける。勘助は一度だけ目にしたことのあるその姿に何故…と戸惑いつつも問う。

 

「それで、加藤殿。北条家の、もっと言えば一条殿の家臣の貴殿が何故ここに」

 

「主命だ。勝ち戦ならばそれで構わぬが、負け戦ならば武田の当主を守れ。万が一にも死なれては困る、とのことでな。詳細は分からねど、あのお方のことだ。神慮遠謀があるのだろう」

 

「左様か…」

 

 勘助が、まさか一条兼音はこの展開を予想して…!?だとしたらそれがしはまた敗れたのか、と臍を噛む。どういう経緯でここに段蔵がいるのか。その詳細は数日前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 信繁に書状を送った後、兼音は上田原の合戦に関しての記憶をほじくり返していた。何か無かったかと思ったからである。そして思い出したのは、この戦の結果、晴信はかなりの傷を負ったということである。これは史実でも確認されている為、事実だろう。最近で評価の見直され、史実性があると判断されている甲陽軍鑑にもそう書かれている。流石は甲陽軍鑑を原文そのままで読んだ男。こんな大事な資料の内容を抑えていない訳がない。

 

 兼音はここで警戒する。この世界は必ずしも自分の知る世界と同様ではない。何かのはずみで大きく変わる。万が一にも晴信の傷が悪化し、死亡したら。もっと言えば、討ち取られたら。可能性が無い訳ではなかった。この時代の医療など、現代人に言わせればお粗末なものである。破傷風やその他の病気になる可能性は高い。

 

 そうなっては対越戦略は破綻する。それは彼のもっとも恐れる事だった。その可能性を断つために万が一に備え、段蔵を送ったのである。それと共に上田原の戦いについての情報を正確に集め、戦術研究をする目的もあった。かくして鳶加藤は信濃へ送られたのである。

 

 

 

 

 

 再び場面は戻って、上田原。武田四天王のうち、中軍を任されたためにからくも生き残った二人――横田高松と飯富虎昌は、板垣を戦死させたことに後ろ髪を引かれている。

 

「御屋形様の代わりに俺たちで決着をつける。仇討ちといこうぜ」

 

「おうよ! 弔い合戦さね!」

 

 と戦う気まんまんで、逆説得をはじめる始末だった。勘助と次郎が「こんな時に板垣様が」「勘助。それは言わないで。せんのないことよ」と顔を見合わせていると、一人の異相の姫武将が――姫と呼ぶにはすでに年を重ねているが――陣中に現れた。

 

 六文銭の旗印。小銭を数珠のように紐に通して縛り、首や肩にじゃらじゃらと掛けていた。両脇に、うら若い双子の「真田姉妹」を引き連れている。

 

「わたくし、真田幸隆と申します。こちらの姉妹はわが娘、信綱と昌輝。真田一党は上州を去り、この信濃に戻ると決めました。そのほうが銭を稼げそうですので。わたくしどもはこれより武田晴信様にお仕えいたします」

 

 てめえが真田か! 今頃来たのかよ? さんざん気を持たせて日和見してきやがったくせに、今更なんだ! と飯富兵部がイナゴをほおばりながら怒鳴った。

 

「武士も商人も、自分がいちばん高く売れる時に売るもの。ふふ。土産代わりに、晴信様のご母堂・大井夫人様から書状をいただいて参りましたわ」

 

「なんだって?」

 

「ええ。ここに。ここで敗戦を認めたくがないあまりに意地を張って武田を滅亡に導いてはならない。潔く敗北を認めて退く時は退き、再び立ち上がる機会を窺うかがうことこそが真の勇気。今は急いで撤退し、甲斐へ戻れとのこと」

 

 控えめな大井夫人はもともと、奥のこと以外には関わらない。すべてを信虎に任せていた。夫・信虎が追放されて以後も、娘・晴信の国政に口を挟むことはなかった。

 

 それだけに、晴信の心には大井夫人の手紙が響いた。

 

 いきなり自分の主君を調略すんのかよこの女は、と飯富兵部がいよいよ真田幸隆をうさんくさがったが、勘助はこれで御屋形さまは救われた、と安堵のため息を漏らしていた。

 

「……わかった。あたしは父親を駿河へ追放した娘だ。それでもなお甲斐に留まってくれた母上に対して親不幸はできない。甲斐に引き返そう」

 

 それを聞いた段蔵はフッと影のように消えようとした、それを信繁が止める。

 

「どうされた」

 

「一条様に御礼を。勝てはしませんでしたが、兵を損なわず済みました。加えて、書状の内容を活かせば、村上義清に再戦を挑む事も出来ます。本当にありがとうございました」

 

「お伝えしましょう」

 

 その姿を真田幸隆はやや驚き気味に見つめる。

 

「本当にあの鳶加藤が主を持つとは…」

 

 勘助は幸隆にその言葉の意味を問う。

 

「あの、とは?」

 

「鳶加藤は主を持たぬことで有名でしたの。戸隠でひっそりと暮らしていたはずですが」

 

 それに段蔵は答えた。

 

「私の理想を叶えられる器を持った主を得ただけのこと。加えてその主の方から私を呼んでくださったのです。僥倖でした」

 

そう言って段蔵は闇に消える。それを見た幸隆は「心から心服させるとは。河越城主・一条兼音。侮れない相手かもしれませんわね」と呟いていた。

 

 それに…案外関東の風土は暮らしやすい。食事も良いですし、もう戻れそうにはありませんな、と苦笑しつつ、段蔵は主への報告のために河越を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 上田原から去ってゆく武田軍を見ながら、村上軍は手出しできなかった。両軍はすでに大打撃を負って崩壊寸前となっている。ここで追い打ちをかければ、大怪我を負いながらも頑として撤退しようとせずに戦線に粘り続けた武田晴信とその家臣たちは最後の一兵まで戦って討ち死にする道を選ぶだろう。加えて、援軍に来ていた北信の諸将がこれ以上の追撃を拒んだのである。義清は彼らに無理強いすることは出来なかった。

 

 かつて武田信虎と組んで信濃から追い出した真田一族が武田に合流したと知った村上義清自身は「真田の力を手に入れた晴信はより強くなる。いずれ手に負えなくなるのならば、ここで共倒れを選ぶのもいいかもしれん」と追撃をもくろんだが、「武田が退いていく!」「勝った。命を拾った」「生き延びた」と安堵し緊張状態から解かれていた家臣たちや兵士たちが無謀な追撃に反対したのだった。義清も、それ以上強くは追撃を主張できなかった。なにしろ、兵が、将があまりにも死にすぎている。加えて、援軍の北信の諸将が追撃に反対したのである。彼らに無理強いすることは出来なかった。

 

 板垣たち戦没者の墓標を建て終わり、満身創痍となった武田軍が粛々と甲斐府中へ撤兵する中、村上義清の圧倒的な武と新戦術の前に一敗地にまみれた山本勘助は、真田幸隆に頭を下げていた。

 

「よくぞご決断くださった、真田殿。欲を言えば、もっと早く武田家に帰順してくだされば上田原であのような負け戦はやらずにすんだかもしれぬが」

 

 いえ、真田はあくまでも城を守ることに特化した一族。攻める戦は得意ではありません。わたくしたちが参戦しても武田は勝てなかったでしょう、と幸隆は苦笑した。すでに何人もの子を産み育ててきたはずの幸隆だが、不思議と年齢を感じさせなかった。この辺は北条幻庵と共通するものがある。武田がこれほど大敗したというのに、その武田をかろうじて救ったというのに、戦功を誇ろうともせず、恬淡としている。

 

「母」とはこのようなものなのかもしれぬ、と勘助は思った。

 

「去就を迷っていたのは事実ですわ。武田・村上・諏訪の連合軍に真田の庄を奪われて追われた後、上州で多くの人々の世話になりましたから。その上州の上杉憲政様もいまや北条そして武田にいいようにやられてすっかり落ち目で、今ここで上杉家を見限っていいのやらとずいぶんと迷いましたわ。ですが」

 

「が?」

 

「我らにはまっとうな武士とは言いがたい独自の価値観がありますの。むしろ、忍びの一族に近い存在」

 

「たしかに」

 

「武田信虎殿はそんな真田を邪道の一族と嫌いました。その父上の逆を、逆を行こうとなされる武田晴信様は、関東管領上杉家も、神氏諏訪家も、そして信濃守護小笠原家もお認めにならない。人の価値を、血筋や官位ではなくその能力に求めようとされるお方。ご自分がその能力をお父上に認めていただけなかったからかもしれませんね。すなわち御屋形さまは、決して真田の一族を疑ったり差別をしたりなさらぬお方と、見定めましたの」

 

 相変わらず頭の切れる女性だ、と勘助は冷や汗をかいた。

 

「御屋形様は幸隆殿を、信濃先方衆の筆頭として重用するとのこと」

 

「ありがたき幸せ。ですが勘助殿。武田軍は、村上義清には勝てませんよ」

 

「勝てませぬか。新しき世の戦に対応するようにこれより制度改革を進めますが、それでもなお?」

 

「御屋形さまとあなたは、理詰めの戦をします。真田もそうですわ。村上のように荒ぶる武神とは、相性が悪いのです。かの韓信は国士無双でしたが、項羽にだけはかないませんでしたでしょう? 村上を相手にするならば勝ち戦を求めずに、負けぬ戦をするべきです」

 

「それでは、いつまでも信濃を平定できませぬぞ」

 

「世に、完全無欠な武将などおりません。長所があれば欠点がある。ひとつの能力に己を特化させた者は、特にそうです。武神には武神の弱みというものがございます。武のみならず奸智に長けた武田信虎どのですら、あっけなく自分の家臣団に追放されてしまったではないですか。ふふ」

 

「相性の悪い相手に対しては王道を行くな。邪道を行って勝て、ということですな。ですが、御屋形様は納得しますまい。板垣殿を失った以上は……それよりもなによりも、村上義清を恐れて本陣内で一瞬ひるんでしまった自分の臆病を、御屋形様は許せますまい。正面からぶつかりあって戦わねば、先へ進めぬとお覚悟の様子」

 

「それでは、また大勢の兵と家臣が死にますよ」

 

「死んでいく者たちは、誰も悔いたりはしますまい。だが、家臣の死が続くと、御屋形さまのお心が心配です……」

 

「勘助どの。あのお方はまだうら若き乙女。戦にばかり執着させるのがよくないのです。心に余裕がなくなっているのですわ。佐久での強引な戦、上田原での大敗、いずれも戦に勝って父を超えようと欲する焦りが生みだしたもの。恋でもさせるのがよろしいでしょう」

 

「もともと男に恬淡としている方です。縁談を勧めても、どうなるか…」

 

「ご自分が母親にでもなれば、あの父上に対する負い目や執着のようなものも薄れるのですけれどもねえ」

 

「それがしも、妻子を持てば己の野心の炎が鈍るのではないかと恐れておりまする。妻子かわいさに己の命を第一と考えるようになれば、軍師としては失格であると。軍師たる者はいつでも戦場で死ねるよう、身ひとつで生きるべきだと。ですが御屋形様は武田家の当主。お世継ぎも必要です。父を追放したという重荷を背負ったまま戦に次ぐ戦の日々では、御屋形様……」

 

「本来、あのお方は誰よりも情熱的な人。いずれその時が来るでしょう。人の心は否応なしに成長するもの。ただ、その恋が成就するか新しい悲劇となるかは、わたくしにもわかりませんが」

 

 しかしその時こそ武田晴信さまが完全無欠の名将になる時かもしれませんと幸隆は笑い、そのすでに女として盛りをすぎたはずの幸隆の笑顔をまぶしく感じた勘助は、それがしにはその時は来なかったのであろうか。老齢にさしかかりながら男として未完成なそれがしは、いつか天下一の軍師になれるのであろうか、と目をしばたたかせていた。

 

 

 

 

 かくして上田原の戦いは終結する。板垣信方を失い、武田家には初めて敗北という結果が突き付けられる。ここからが武田家の苦難の道の始まりである。兵数の損失が少ない事、晴信が五体満足な事、甘利虎泰が辛うじて生き残っているのが数少ない救いだった。




感想欄で多数のご意見がありました。中には否定的なご意見もありましたが、これはひとえに私のストーリー構成力が足りなかったことが原因です。満足できる物語を書けず、申し訳ありませんでした。

言い訳をさせていただくと、この作品はあくまで司馬遼太郎先生などがお書きになった歴史小説ではなく、「織田信奈の野望」の二次創作です。勿論、はじめの方に書いたようになるたけ硬派な作品を目指してはいますが、あくまでも二次創作です。

二次創作は原作の雰囲気を大幅に変えすぎるのはあまり良くないと思っております。その為、現実の戦国時代では為されないであろう行いをすることがあります。これはこちらとしては原作リスペクトのつもりですので、ご承知下さい。

ただ、ストーリー上矛盾があったり、余りよく分からなかったり、これはちょっと…と思うものがありましたら遠慮なくお書き下さい。精一杯活かせるようにしたいと思います。また、この勢力についてもっと深く書けやゴラというのもありましたらどうぞ。努力致します。

長くなりましたが、読者様あっての拙作です。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

一つ、アンケートを取らせて下さい。内容はこの世界の本願寺の扱いについてです。原作では、本願寺は猫神を信仰する、不思議な力を持つ門主の導く本猫寺でした。この作品では、原作にあったファンタジー要素はなるべく削ってます。現実の戦国時代と乖離しすぎるからです。ただ、匙加減に迷ってるので回答お願いします。

  • 本願寺でいくべき
  • 本猫寺で良いだろ
  • どちらでも可。作者の好きにしろ
  • 半兵衛ちゃん可愛い。早く出せや

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