魔法少女あすみ☆マギカ ~Rainy Ambivalence~   作:Κirish

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注意

▼本項目について
 描写構成上の都合により劇中では描く事の無かった各登場人物のその後の動向や心理、一部設定および後書きを記載しております。そのためエピローグまでご覧になってから閲覧して頂く事をお勧め致します。



付録
補足情報・設定等&あとがき【読了後推奨】


▼神名あすみ

 自らを取り巻く境遇を、そして禍中にて泣きじゃくる自分を助けてくれなかった世界を呪い『周囲の人間の不幸』を願った魔法少女。しかしながらその本質は、いつだって母性にも似た無償の愛情を渇望しており、もしも本当の自分を曝け出してなお受け入れてもらえる存在が居るとするならば、己が業を悔やむと共に自らの歩んできた昏い路が『普通』でなかったのだと突き付けられる事により、即刻魔女へと身を堕とすだろう。ただし一見して母性的であったとしても、その実『他者の弱さを理解出来ない、環境に恵まれた強者』等であった場合、他の魔法少女と同様に彼女にとっては嘲笑の対象であり且つ()とされるが為に注意されたし。

▼▼固有魔法:精神汚染

『周囲の人間の不幸』を願って手にした魔法。その力は強力無比で、洗脳・読心・読んだ心を映し出す心象風景結界の具現・記憶読み取りおよび改竄・認識改竄・トラウマ抉り・廃人化・強制絶望・催眠・催眠を応用した任意の生体器官の停止・人格改竄・人格乗っ取り・精神科による診断が不可能な未知の精神病の罹患──等、ココロにまつわる攻撃であらば凡そオールマイティであり、精神系統の魔法に於いては彼女の右に出る者はほぼ誰一人として居ない。ここで連ねた物はあくまでも一例であり、彼女自身が新たな精神攻撃法を思いつきさえすればそれも可能であると思われる。

 また上記の精神汚染魔法に加えて悪辣な事は、そうして荒稼ぎしたグリーフシードを用いるが為に多少──否、強引に無理を掛けた超物量物理戦法も可能としている為、精神系統の魔法を得意とするから物理攻撃は不得手──と言うセオリーは彼女に限っては成立していない。

 なおトラウマを抉って詰るとは言っても、それに伴うソースが被害者本人の記憶および神名あすみ自身の知恵や倫理観および常識に依存するが為に、それらの範疇から大きく逸脱した精神性を持つ者達が対象であった場合、単に精神力が強いが為に堪え切られるか、そもそも常人の価値観や倫理観を持たぬが為に神名あすみと言う名の常識人の繰り出す嫌がらせが全く効かないかして、精神汚染が上手く働かないか最悪無効化される恐れがあり、この類の者に対しては相性上不利になると考えられる。特に女神に至らんとする程の素質を持つ者や、救国の聖女と呼ばれし者、または己が特異な価値観を確固たる揺るぎない物とする類の本当の意味での狂人が相手となる場合には、神名あすみは手も足も出ないものと考えられる。後者について言うなれば、怨讐に浸る事へと逃げているだけの偽りの狂人が、本物の狂人には決して勝てない──と言う事。

 また、もしもワルプルギスの夜(舞台装置の魔女)と対峙した場合、当該の大型魔女は魔女の集合体であるが為に、膨大な数の魔女の精神を並列して読み取り、且つ各々のニーズに合わせた弱点特効を編み出す必要がある。時間さえ掛ければ理論上は出来ない事も無いのだろうが、所詮は机上の空論である。そんな事をしている(いとま)に高層建造物落下攻撃等の超巨大質量戦法により、あすみの方が即座に潰されるのが現実だろう。即ち神名あすみに勝ち目は無い。せいぜい逃げる他なし。

 

▼美樹さやか・鹿目まどか・呉キリカ・千歳ゆま

 本編および外伝コミックと同様であり省略。

 

▼佐倉杏子

 かつての幻影魔法──ロッソファンタズマは家族を皆殺しにしてしまったとも言える忌まわしき力であり、自らの願いを否定している事より基本的には使用不可能。本作劇中に於いては、今の自分を想ってくれている家族──千歳ゆまと巴マミを全力で守ってみせると言う想いから、神名あすみとの決戦時に限り一時的に再び使用が可能となった。

▼▼神名あすみの敗因

 家族の死。そして自らが愛していた父による宣告。間違いなく彼女自身のトラウマであり、本来であれば魔女化は避けられなかったものの、今の彼女が彼女であれる楔とも言える存在が千歳ゆまと巴マミだった。特に後者については、一度は雪の積もる中で絶望しかけた中にて繋ぎ止めてくれた事もあり、魔女でなく魔法少女として留まらせるに効果は絶大だった。よって巴マミの幻影を用いて詰ったのであれば魔女化の危険は考えられたが、あの時点での神名あすみにとっての巴マミ──例え自らが『魔女』であったとしても『大好き』と言ってくれる巴マミとは、愛すべき母同然の存在と思うか否かで揺らいでいた事から、悪夢に彼女の幻影が用いられなかったのは自らの巴マミ像を穢したくなかった事によるものと思われ、皮肉にもそれが杏子にとっては突破口となり得たのだろう。

 

▼美国織莉子

 原典である外伝コミックと同様、八重樫との諍いにより自らの背負う『大人』の重荷に堪えられず発狂寸前に追い込まれるが、公秀との実質上の和解により『大人』の重荷を下ろし、最期は鹿目まどかを殺害すべく、守護者である暁美ほむらとの決戦に挑んだ。劇中にもある通り、原典とは違い巴マミと佐倉杏子および千歳ゆまの不在により二対一の戦いとなり、暁美ほむらから見て初見ではない事から、彼女達の協力が無かろうとも同等に応戦する事自体は可能だった。だがリアルタイムでまどかを守りながらと言うのは困難を極めたのか、やはり彼女は死に際の織莉子の手により殺害され、本作時空に於いて救済の魔女が顕現する事は無かった。

▼▼神名あすみとの関わり

 神名あすみと対面すれば固有魔法である『未来予知』にて()るビジョンを認識改竄により汚染されるであろう事は予め予知しており、神名あすみとしても未来予知を用いて先回りされて葬られる可能性を予期していた事からお互いに遭遇せぬまま本作時空を終えた。また佐倉杏子に敗れ満身創痍であった神名あすみへと追い打ちを掛ける事により彼女の絶望──もとい魔女化・実質上の退場を期待出来た事から呉キリカを仕向ける事となった。

 

▼優木沙々

 毎度のごとく風見野にて自らよりも強い魔法少女を狩っては愉しんで、その過程で見滝原に乗り込み本来であらば呉キリカとの遭遇を経て美国織莉子と出会う筈が、神名あすみに魔女化させられ死亡。

▼▼固有魔法:強者操作

 自らよりも強い存在を洗脳し支配下に置ける厄介な魔法ではあるが、何を強者とするかは術者である優木沙々本人の主観による事が最大の弱点であると考えられる。と言うのも新約に於いてはやろうと思えば呉キリカを洗脳する事は可能である事を思わせる描写がある一方で、別編に於いては洗脳を用いて彼女を退けた訳ではない事から、当該時空に於いての呉キリカに固有魔法は効かなかったと考えられる。本作劇中に於いては認識改竄され、神名あすみをクソガキ──もとい自らよりも劣る存在、すなわち強者ではないと思い込まされた事により固有魔法を無効化されたまま嬲り尽くされる結果に終わった。

 

▼暁美ほむら

 劇中にもある通り、自らとは違う正義を以って対峙してきた──例えば美国織莉子等の魔法少女、または悪意すら無く理解不能な価値観を以って自分たちをあくまでもエネルギー源として消費せんとする異星人──キュゥべえには覚えがあるものの、明確な悪意に晒された試しは無かったが為に、対神名あすみ初戦に於いては冷静さに欠いた結果逃走してしまう。その際に巴マミと佐倉杏子および千歳ゆまごと消し飛ばせば、神名あすみを葬り去ることは容易かったものではあるが、暁美ほむらは自らが思っている程冷酷ではなく、巴マミは巴マミで、また佐倉杏子は佐倉杏子でほむらなりに大切な存在であった事により、上記の様な戦法は取れなかったと考えられる。そもそも鹿目まどか以外をどうでも良いと謳うのであれば、彼女以外の邪魔な存在を丸ごと葬り去れば手っ取り早い話ではあるが、そんな事に手を染めないと言う事は、暁美ほむらにとってはやはり皆は大事な存在なのだろう。

▼▼神名あすみの消去

 己が信条とする(エゴ)を改めて自覚した彼女からしてみれば、神名あすみおよびその魔女態である花嫁の魔女に負ける事は決して有り得ず、適切かつ高効率な手法を以ってその魂を解体する事だろう。今後の鹿目まどかを主役とする時空に於いては暁美ほむらの手により秘密裏に葬られる事から、神名あすみは二度と表舞台に上がる事は無くなると考えられる。言うなれば神名あすみは、その歴史から『消去』されたと言って良いだろう。だがもしも──彼女が『リボンを結ぶ』事があるのなら、神名あすみと如何にして対峙するかはまた別の話──。

 

▼巴マミ

 両親を亡くした事は誰が見ても不幸な事故にしか過ぎないだろうが、彼らを己の手で救えなかった事は──手を掴めなかった事は今でも彼女にとっての重荷であり、また罪である。ポータブル版と同様に最初は固有武器としてはリボンしか使えず、目の前で子供──男の子が断末魔を上げながら魔女に喰われるところを指くわえて見てるしか出来ぬまま敗走──と初陣は散々な結果に終わった。

『また私だけが生き残った』

 その罪悪感から、もう誰も目の前で死なせなんてしない、目についた人々を自分の手で救うんだ──と血の滲む努力を重ねた結果、現在の様にリボンから多量のマスケット銃を錬成する事に成功しており、また彼女の自罰から鍛練はそれに留まらず、さらに自らへの熾烈な苛めとも言うべき鍛練を重ねに重ね、RPGで言うなれば今も限界無くレベリングしている事と言えよう。故に少なくとも見滝原に於いては彼女を討てる魔法少女は居ないと見て良いと考えられる。

 無類の強さを誇る彼女ではあるが、そのココロは愛する両親を喪った少女のままで、大切な人を救えなかった罪滅ぼしですら無く、ただ誰かと一緒に──魔法少女となって手放したはずの温かな暮らしを心より渇望していただけだった。神名あすみにシンパシーを覚えた事も、九死に一生を得て例え命だけは助かろうとも、その後は大切な人が傍に居てくれないまま、救われないままずっとひとりぼっち──と言う自らの境遇と重ねた事によるものだろう。ひとりぼっち同士で、お互いの弱さを埋め合いながら『素敵な未来』を送る事が、彼女の何よりの夢だった。

 暁美ほむらの経たかつての時空に於いては、魔女化の真実を知ろうものなら発狂した末に心中を図ろうとすると思われており、現に暁美ほむらにとってはそれこそが巴マミを苦手とする要因となっている。だがよく見れば巴マミ自身に次いでベテランである杏子、時間停止能力と言う厄介な力を持つ暁美ほむらの順で狙った事から、極めて冷静にその命を刈り取ろうとしていたと考えられる。ただ唯一の誤算としては、鹿目まどかが己が感情と指先を切り離す事の出来る者だった事か。

▼▼魔女の狩人(Cacciatori di streghe)

 上記の事件にてもしも全員の命を砕いたのであらば、その後は自らの命も絶つか、魔女化する──暁美ほむらの見立てに沿えばこうなる。だが魔女化するのであれば、美樹さやかが人魚の魔女へと堕ちた光景を目の当たりにした時点──否、それよりも前に暁美ほむらの口から魔女化の真実を伝えられた時点で、自らもおめかしの魔女へと堕ちる筈であり、この事より暁美ほむらが評する程にその精神は惰弱──と言う事もないと考えられる。現に上記の如く極めて効率的に周囲の魔法少女を一瞬で狩り尽くそうとした。

 巴マミは長らく魔女を狩り続けていた。だが彼女にとってなにより堪えられなかったのは、自らが葬ってきた魔女が、あろうことか自分と同じ悩める少女の成れの果て──魔女は魔法少女であり、魔法少女は魔女だった事。そして──かつて自らの手で魔法少女へと勧誘し、少なからずの少女達を破滅の道へ追いやってしまった事だろう。自分の手はいつだって、少女達の血で汚れていたのだ──。魔女(魔法少女)を狩らねば生きられず、また魔女によって命を奪われる人々が大勢いる事だろう。であれば魔法少女(魔女)を狩り続ける終わりなき旅路に赴く彼女も、ある時空によっては居たかもしれない──。大切な人を守れなかった手は、いつだって血に(あか)く染まるが如く幻視してしまい、魔法少女を狩った夜には部屋の隅っこで『ごめんなさい』と啜り泣き、それでも魔女に堕ちる程に穢れる事は出来なくて、また自分だけ生き延びてごめんなさいとむせび泣く。かと言って自ら命を投げ出せられる訳もなく、あの子の『生きて欲しい』との遺言が彼女を縛り付ける。そして夜が明ける(・・・・・)まで──幾多もの命が消え去る(サマ)に目を背け、涙を呑んで逃げ果せ、そして堪え切るしかなかった──。そんな彼女が総ての魔女(魔法少女)を狩り尽くした暁には、きっと今度こそ自死を選ぶだろう。

 ──尤も、ソレは決して叶えられぬ望み(しあわせ)なのだろうが──。

『待っててね……あすみちゃん……、それまではごめんなさい……』




あとがき

 先ずは長らくのお付き合いに感謝致します。

▼神名あすみについて
 2012年の7月16日にて、神名あすみが産まれてきてくれた記念すべきスレが立てられました。当該スレの>>1さんが言うに、魔法少女まどか☆マギカの映画が放映されるので、架空のキャラクターを作り上げてファンを釣ろうと言う事です。この手の安価を用いて架空キャラを作り上げるスレは、途中で異物が混じった途端に台無しにされるのが世の常ではありますが、この時は奇跡的に『らしい』安価が揃い、キャラ造形も設定も──そしてデザインしてくださった見知らぬ絵師様がたにより命が吹き込まれた末に、同年8月9日にてTwitter等でまどマギ新編のキャラクターとして拡散されました。当時のTwitter人口としてはそのRT数は凄まじいもので、およそ7000もの数を叩き出し、神名あすみと言う虚構から産まれた一人の少女の名を知らしめました。その勢いはなんと原作者である虚淵氏も言及された程で、スレ民であった筆者としましては言い知れぬ高揚感に打ち震えていた事でした。そして翌日である8月10日を以って、一連の騒動は釣りであり、神名あすみなる少女は存在しなかったのだ──と種を明かされ、その様は宛らシンデレラの魔法が解かれるかのよう。およそ1か月、同スレ内にてあすみが産まれ出づるその瞬間を目の当たりにしながら過ごすそのひと時は僅かながらではありましたが、とても楽しい夏の思い出として、入道雲から秋晴れに浮かぶうろこ雲の彼方へと霧散して逝きました──。
 ──そして幸か不幸か、私は神名あすみに魅入られてしまった。

▼当時のSSについて
 同年9月2日。当時のニュー速VIPに於いてはSS文化が盛んであり、まどマギのジャンルに於いても同様でありました頃でしょうか。確かに神名あすみの名は、確かにまどマギ界隈の歴史へと刻み込まれました。ですがかつて程の勢いは、件の騒動より一ヶ月を経た当時でさえ衰えていたものです。そこで私は、不束ながら筆を執りました。『神名あすみが生きた証を、もう一度刻みたい──』と言う思いを胸に抱きながら──。して、二日間ほどお掛けしまして、どうにか一スレ内にて収めつつ完結に漕ぎつけられる事となりました。神名あすみと言う女の子は、産まれた経緯も然ることながら、その生きた道筋もさらには性格も千差万別です。私は私の想う神名あすみと言う人となり、そして彼女の生きざまを書き記せたかと思います。神名あすみの生きざまを見てくださった方々には、心より感謝を申し上げます。
 また一つ余談ですが、あすみの武器はモーニングスターと安価で指定されておられました。しかしながらモーニングスターと言えば鎖鉄球と言うよりは、先端に鉄球のついた鎚を指す物と存じております。一方で実際にデザインとして起こされました際には鎖鉄球──すなわちフレイルを手にするあすみが見られました。ならばフレイルとモーニングスターの可変武器にすれば、戦略の幅が広がって面白いのではないか──と考え、当時より本作に於いては可変ハンマーとして描かせて頂きました。

▼リメイクにあたって
 2020年現在、元SSを書いた年より8年──10年近い間にも渡る長い時を経ています。流石にこれだけ経ってしまおうものなら、人々の記憶から薄れゆくか、はたまた神名あすみという一人の悲劇的な女の子が居た──なんて、ご存じでない方も居られて当然でしょう。何せ時代は令和です。神名あすみが産まれてきてくれた時代は平成。時代を跨いでしまえる程の長い長い時を経ました。その期間にて、神名あすみと言う名は徐々に徐々にと──少しずつ風化し薄れゆくのだろう──と、時の無常さそして残酷さを肌で感じつつ、自らの中に今でも燻ぶる思いが胸の中に淀んでいた事は常々自覚していました。
 ──神名あすみは死んでいない。
 ──神名あすみは生きている。
 ──神名あすみは確かに居た。
 神名あすみの名をもう一度刻み込みたい──と、はちきれんばかりの想いを胸に再び筆を執りました。台本形式のSSが決して劣る物だと言うつもりもなく、寧ろ私は台本形式SSの世界で育ってきており、漫画を読むが如き馴染み深さや懐かしさを今でも感じており、常々恋しく思っている程です。一方で地の文が無ければ表現出来ず──地の文があればこそ表現出来得る『想い』もある筈です。実際のところ、以前より常々この形式を以って『神名あすみ』を記したいと心に秘めていました。されど筆が乗らず、ダラダラと、筆を執っては筆を投げ、今か今かとあすみを想う日々。ですが、令和の時代に突入して暫く経った事もあってか、どうしてか導火線に火が灯され、アフターファイア(スポーツカーのマフラーもとい排気ガス口から火を噴くアレ)をぶっ放しながら突っ切って、改めて神名あすみの人となり、そして生きざまを刻み付ける事が可能となりました。地の文地の文とは申し上げましたが、不束者である事には変わりはないのだろうと自責の念に囚われております。ですが、これが今の私の全力。これが今の私のあすみへの想い。これが今の私が出せる神名あすみへの愛の結晶なのだ、と声高らかに宣言したい所存です。

▼私の想う神名あすみ
 神名あすみとは誰よりも愛情が信じられず、そして誰よりも愛情に飢えていた娘でしょう。と言うのもあすみはマザコンの気があります事から、母親からは止め処なくこれでもかと愛情を注ぎ尽くされていたかと考えられます。あすみんは可愛いですしね。しょうがないですね。けれど父には母子とも捨てられ、果ては母を亡くしてその後は凄惨な虐待をその身に受ける訳です。そこで不幸中の幸いならぬ、寧ろ不幸中の不幸であってしまった事と言うのが──神名あすみは自尊心が高めと言う事。母親に対してだけは些か自己犠牲そして自罰的な側面を垣間見せるでしょうが、それでも母親からは目一杯愛情を注ぎこまれている事より、自分は愛してもらえる女の子であり、そして自分が酷い目に遭うなんて一切我慢ならないワケです。わたしなんかこんな目にあって当然──そう淀んだ思いに堕ち、果ては凌辱の末に発狂してしまえたならばどれほど一元的でラクだった事でしょう。ですがあすみは()()()()()()()()()()()()()のです。だからあすみは凶行に走ったのでしょう。わたしがこんな目に遭ってるのに、何でわたしだけが悪者なんだ──と。わたしがこんな目に遭ってるのだから、オマエ等全員不幸になってしまえばいいんだ──と。そのためのソウルジェム。その為の固有魔法。母親との温かな暮らしから一転し、まさに文字通り金と暴力と███、そして金と暴力と███に塗れた世界へと沈め込まれたあすみは、目につくものすべてを自分の藻掻き苦しむ毒沼へと引き摺り込もうとします。綺麗は汚い。汚いは綺麗へと。幸せが不幸へと転じた世界を実現すべく、日々呪いを振い撒く神名あすみ。人と人の悪意と悪意がぶつかり合う様だったり、自業自得の業に自滅する者だったり、はたまた不幸とは無縁だった者が突如として不幸へと垂直落下する者を見ては嗜好として嘲嗤ったり──と、その所業はまさしくド畜生のソレであり、端から見れば狂人そのものと言える事でしょう。ですがもともとは母親想いの優しい女の子だっただけに、根は真人間のソレとも考えられます。そのココロは、世界は残酷と定義する事で、自分の遭ってきた境遇を『普通のコト』として正当化したい一心。自分をこんな境遇に追いやって、その上誰も助けてくれなかった世界への復讐心からあのような願いが引き出された事であろうな、と。かと言って『人間』としての自分を忘れる事も、また不幸にも狂う事すら出来ないまま見た目だけ狂人として振る舞う事でしか生きられない、毒沼で永遠に藻掻き続けるが如き可哀相すぎる人生。更には今更善人に戻ろうなんてしても──再び幸せを掴もうなんてしても、優しい娘としてのあすみがその業に、また自分が『普通』などではなかった事に堪えられる筈もなく魔女化直行──と、どの道毒沼に沈んで逝くと言う、誰の手を借りようとも救えない人生でしょう。涙を禁じ得ません。そしてあすみ本人からすれば、その涙も侮辱同情に値し堪ったものではなく一発で魔女の餌行きとなる事でしょう。泣いてくれるなら何で助けてくれなかったの。あなたが助けてくれるの? なら助けて見せてよホラホラホラと人間を魔女に生きたままバリバリ食わせるのが神名あすみ。そして嗤うんです。嘲嗤うんです。『不幸』の正当化の為に嫌々狂人として振る舞ってる──かと思えばあすみちゃん、実際のところ人が苦しむ様を見て少なからず楽しんで──いや大分と愉しんでます。それこそが神名あすみの()()()()()たる所以です。かと思えば根は真人間。そんな真人間に繋ぎ止める唯一の楔が『母親』の存在だったのだろうな、と。あすみからすれば神聖視されている『母親』ですが、自分たちを捨てた父親の行方を海外出張と誤魔化してしまったのも巡り合わせの悪さであり、これが無ければきっとあすみの復讐心はそこまでは育たなかったものかと。と言うのも糞親父と再会するまでは、あすみの中では優しいお父さんでしかなかったものかと。しかし自分たちを捨てて新しい妻と餓鬼をこさえてる所を見れば『反転』する筈です。自分はこんな目に遭ってるのに──と、真っ当な愛情を抱いてただけに憎過ぎて、ついぞ「自分の知る周囲の人間の不幸」を撒き散らしたと考えられます。可愛さ余って憎さ千倍とは末恐ろしい……。以上を持ちまして、神名あすみは誰にも救えない──果ては女神にすら救えない可哀相な生き物です。女神にすら──と言うのは当時のスレ内でも囁かれていた事で、あまりにメタ特攻過ぎるかとも思われますが、あすみちゃんよりも後に続々と「この子って女神に救えるんですかね……? 願いを受け止めてもらえるんですかね……?」と思わないでもない子が増えてまいりましたが、それはそれとして。
 余談ですがあすみちゃん、魔法少女として契約しないとしてもそれはそれでこれからも不幸な人生を歩んでく事だろうと存じます。彼女の芯は不幸の正当化にあり、魔法少女も魔女も人間も喰い散らかすのはあくまでもその為の手段の一つなのであって、自らが魔法少女でないなら別の手段を以って己が不幸を正当化する事だろうと考えられます。例えば自ら██に走る等の事により、伯父から受けた██が当然の事なのだ、と。だからそれが当然な世界に浸る事で不幸を正当化するかと思われます。もうあすみが救われる世界線なんてどこ探してもなさそうです。もしもあったとしても『まっとうに幸せなあすみ』は私の知る神名あすみでないので……。
 最後にもう一度、自分の遭ってきた目が『嘘』になる。神名あすみにはそれが一番堪え難い。だから、是が非でも自分が不幸だった事が当然で普通な世界を作らなきゃならない。不幸で無くて済んだ、つまり今の自分は普通じゃないなんて世界があってたまるか。それが神名あすみ。
 小さな躰の中で、ずっとずっとそのココロをズタズタにされたまま、そして自らズタズタにしながら藻掻く神名あすみが私は大好きです。愛してます。I’m addicted to KANNA Asumi.

▼最後に
 およそ20万もの文字に及ぶ中、最後までお読み下さり、ここまで長くお付き合い頂き誠に感謝致します。そして私の思う神名あすみの生涯・生き様を見届けて下さり本当にありがとうございました。今まで読んで下さった貴方の心の片隅に、神名あすみと言う一人の少女の存在を置いてくださるのならば、それこそ私にとっては幸いです。彼女は確かに、存在したのだと──。
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