IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神 作:土鍋ダイコン
まずはやってみる
話はそれから
(配点:苦手)
桜舞い散る入学式があった時期から少し時が経ち、ひらひらと桜が舞い散った四月下旬。ほぼ女子に囲まれて過ごしてきた慣れない学園生活やクラス代表決定戦、セシリアの和解や篠ノ之との真剣勝負などあまりにも濃いことばかりが起きているが、それでも何とか日々を過ごしている。
「さて、これからISの基本的な飛行操縦の実践を始める。織斑、オルコット、武藤。試しに軽く飛んでみろ」
雲一つない晴天の下、俺たちは織斑先生による実習授業の真っ最中である。
「何をしている。熟練のIS操縦者なら展開に一秒もかからないぞ」
さて、あまり無駄な思考をすると見えない一閃で意識が一瞬飛びかけるのは避けたいので、思考を切り替えて集中する。
ISを専用機とする場合、搭乗者のデータを入力する
織斑は白い籠手、セシリアは左耳の蒼い……イヤリング? いや、リングではないがアレは何というのであろうか。俺のは無骨な剣のアクセサリが付いたネックレス。
そんな普段身に着けないアクセサリを掴み、鞘から刀を抜き放つイメージをする。
(来い、ベーシック・コア)
瞬間、抜刀するイメージを以て展開を開始する。右腕から広がるように光る粒子に包まれ、集束するとIS本体に身を包まれる。その時間、1.8秒。
―――各種センサーの起動を確認、各種システムに異常なし
ISが今の状態を伝え、機体を浮遊させる。地に脚がついていない感覚は慣れないもので、すぐに機体を接地させようとしてしまう。
「よし、飛べ」
最も速かったのはやはりセシリアで、言った瞬間に空へ飛び出し遥か上空で静止した。俺も追いかけるために急上昇を行う。昨日教わった方法は『自分の前方に角錐を展開するイメージ』らしいのだが、まったくイメージができなかったため『地面を思い切り踏み込み跳ぶような感覚』で飛翔する。
以前の代表決定戦ほど速度が出せないが、それでも二番目に上空へたどり着き、制止する。俺に遅れて織斑もゆっくりと上空へたどり着く。
「何をやっている。スペック上の出力は測定収集型のベーシック・コアより白式の方が上だぞ」
信越しにお叱りを受ける織斑は、未だに急上昇の感覚を掴めていいようだ。確かに普通は空を飛ぶこと自体ないのに、垂直に体を動かすことなんて尚更だ。俺は鍛錬の一環でいろいろな動きをしていたためにきっかけをすぐに見つけることができた。
「一夏さん、イメージは所詮イメージですわ。自分が最もやりやすい方法を模索するのが建設的ですわよ」
「そうは言うけどよ、空を飛ぶってどうにも分からねぇんだよ。大体、どうやってこれ浮いてんだ?」
知らん。そもそもお前と同等程度の知識で説明できるわけないし、なんとなくで飛んでいる俺には無理だ。
「別に説明してもよろしいですが、かなり長い時間かかりますわよ? 反重力力翼や流動波干渉などの話になりますわ」
……どうやら俺と織斑には到底理解できない領域の技術らしい。出てきた単語なんて本当にどういう意味か分からんし、また山田先生に尋ねなければ。
それにしても、あの決闘以降だいぶ角がなくなったセシリアだが、勉強に関してもいろいろと教えてくれたりなどしてくれる。まぁ楽しそうに教えてくれるので、こちらとしてはありがたいだけだ。
「一夏さん、智哉さん。今日の放課後また指導いたしますか? まだ遠距離戦闘は不慣れですし」
「織斑、オルコット、武藤、急降下と完全停止をやってみろ。目標は地表十センチ」
通信回線から織斑先生の指示が通達される。地上を見ると織斑先生がインカムで話しており、山田先生が隣でデータを入力しているのが見える。地上から二百メートルほど離れているのにまつ毛一本一本見えるのは、ISの基本機能であるハイパーセンサーによる視力補正によるらしい。
「では、お先に失礼しますわ」
そういうと、地上へ向け一気に墜ちていくセシリア。その速度は先ほどの比ではなく、しかしきちんと制御できているため機体がぐらつくこともなく、地上付近で完全停止を果たす。その迷いの無さはさすが代表候補性を名乗るだけのことはある。
深呼吸をし、覚悟を決める。
急降下をするために下側に向けて加速する。
足を吊るされるように体の向きを変え、踏み出すように足を曲げる。スラスターがゆっくりとエネルギーを溜めていき、踏み込むと同時に放出する!
「行きますっ!」
途端、体全体にGがかかり、装甲にわずかな悲鳴が上がる。地面がものすごい勢いで近づいていき、墜落という恐怖が膨れ上がっていくが、体を回転させ体制を整えたのち、スラスターを一気に吹かすことで急停止を開始する。
過剰に吹かされたスラスターにより砂埃が舞い上がるが、それでも何とか完全停止を果たす。
「地表から約三センチ。停止するタイミングが遅すぎるし、そもそもスラスターを吹かし過ぎ。それではエネルギーの無駄の上―――」
突如シールドバリアー越しに来る衝撃に一瞬目の前が白くなり、ISの機能ですぐに視界がクリアになる。
「誰が
どうやら跳ぶやり方がまずかったらしい。いや、だって人間が空を飛ぶわけないだろう。
掴んだやり方を否定され、このあとどうやって飛行に慣れるか考えているとギュインッという音と共に轟音が響き渡る。振り返ってみるとそこには小さなクレーターができており、その中心には目を回している織斑が倒れていた。いや、どうやったらクレーターができるのであろうか?
「……誰が墜落してクレーターを作れといった、馬鹿者」
「……ごめんなさい」
周りから小さな笑い声が聞こえ始めるが、そんな中駆けだす篠ノ之とセシリアが心配そうな表情で近づいていく。
どうやら怪我はないのかどうかを確かめるために見に言ったらしい。いくら絶対防御があるからと言って、気持ちが納得はしないのだろう。
「織斑、武装の展開をしろ。それぐらいなら問題なくできるようになっただろ?」
「は、はい!」
織斑はそういうと瞳を閉じ、右腕を握りしめ意識を集中させる。徐々に掌に光が集まり白銀の骨子が構成され、現れしは自身の腕たる一本の太刀《雪片弐型》をしっかりと握りしめる。フゥと息を吐き出し安堵の表情を浮かべるが、織斑先生は憮然とした表情のままだった。
「遅い、最低でも0.5秒以内に出せるようにしろ」
辛い評価と共に出席簿による一閃を受け項垂れる織斑を余所に、視線を俺へと向け語りかける。次はお前の番で、織斑の二の舞の場合は分かってるな? と。
軽く冷や汗が流れるが、すぐに意識を切り替える。
想像するは、一本の大太刀。
流れるような刃文、こちらを映し出すような曇りなき刀身、鋭き刃先、一刀の下に全てを斬り掃う己の半身を。
左腰に添えた左手から瞬時に柄が形成され、抜き放つように一気に振り大太刀を展開する。
「展開速度は悪くはないが、その構えから形成するのは矯正しろ。どこから出すのかが相手に分かってしまうぞ」
やはりこちらの展開でもダメなところが出てしまった。まあ、一閃を食らわずに済んだと今は考えておこう。
このあとセシリアが俺達と比べ物にならない速度で武装を展開するも、狙撃銃を横に構えないと展開できないのを直すように言われたのち近接武装の展開についても指摘を受ける。そして、織斑は授業が終わり次第墜落してできな穴をふさぐように命じられ、クラスメイトと先生は教室へと向かっていく。
「手伝うぞ」
「いいのか?」
無言でスコップを手に取り、土をネコに乗せていく。織斑はありがとうと言い土を盛っていく。グラウンドが完全に直るのに、二人だったため時間はそうかからなかった。
放課後、織斑と篠ノ之それにセシリアと共にアリーナに来て、それぞれが鍛錬に励む。
織斑は篠ノ之の指導の下ISによる剣術の稽古を、俺とセシリアはというと。
「まずはどの程度までできるか、やろう」
「お手柔らかにお願いしますわ」
セシリアの苦手分野である近距離戦闘の鍛錬をしていた。
こちらは武装を展開せずに手足の感覚を確かめつつ、セシリアはインターセプトを最初から右手に展開する。
右手を前に伸ばし、左手を腰の位置にて構える。一呼吸の後スラスターを吹かし加速し近づく。セシリアは短剣を横に薙ぐが動きがあまりに単調だったために迫る短剣を右手で掴み、加速した勢いをつけた左掌底を腹に叩き込もうとする。
が、腐っても候補生。掴まれた短剣を軸に上へ飛びながら回避しつつ、その勢いのまま踵落としの要領で背骨を狙う。
瞬時に左腕で蹴りをガードし、蹴った勢いを利用して離脱しようとするセシリアの片足を掴み、一本背負いの要領で地面に思い切り投げ飛ばす。
衝撃が強すぎて地面で小さく跳ねている間に接近し、腰を捻りを加えた正拳突きを溝尾ちに容赦なく打ち込む。
「カハッ」
シールドバリアーによって怪我はしないが、衝撃を逃がすことができずに何回か転がりながら吹っ飛び、やっと止まり顔を上げたセシリアの目の前に立つ。
「ここまでな」
「っはい」
伸ばした手を掴み立ち上がるセシリアを尻目に、今の組み手から得られた情報を整理する。
「正直言って、叩きつけた時や殴られた時にすぐ体勢を整えなかったのは頂けない。短剣も搦め手も何もないただ振っただけなら簡単に対処できる」
センスがないなら諦めがつく、間違い歪んだ
だが彼女はそもそこに辿り着いていない。
短剣を振るった際の動きに変な癖はなかった。昔鍛錬の一環で軍人と戦ったことがあるが、動きが完全に決まっていてどの動作に何をするのかが先読みしやすくただの一撃も受けずに終わったことがある。セシリアの動きは正しくソレと同じだった。
培った技術をそのまま使うのでは三流でしか通用しない。その技術を応用し別の技術へと昇華させなければ上へは目指せない。
師匠ならきちんと言葉で相手に伝えることができるだろうが、俺ではどうやっても言葉だけじゃ相手に伝えることなんてできないし、なにより未熟者である俺が偉そうに言えるはずもない。
「まずは近接戦の感覚に慣れること、近接戦における自分の戦い方を見つけよう」
「よろしくお願いしますわ!」
それからはセシリアのやり方を模索し、それが実戦で扱えるかどうかを試し、俺は近接武術師として徹底的に格闘を繰り出し、体に叩き憶えさせる。その結果分かったことはセシリアに短剣を使った戦闘は不向きだということ。手数と素早さが売りと言っても過言ではない短剣だが、彼女自身そこまで素早く動かせわけでもなく射撃型であるIS使用時はライフルをほぼ展開し続けているため利き腕ではない方に持つことになるためなおさらである。
「とりあえず、今日はここまでにして明日以降別の方向から考えよう」
「はぁ……はぁ……はい」
ひとまず今日は解散ということにし、セシリアは覚束ない足取りでピットへと向かっていく。俺は幾度となく殴り蹴りをしたISを見るために整備室へと足を運んでいく。
初めて起動させた次の日以降から、暇な時間を見つけたりISを使った特訓をした後は必ず整備室へと足を運んでいる。整備技術は無いに等しく山田先生作のマニュアル片手に、少しずつ調整してる。
整備室のドアが開き、視界の隅に空色の少女が写る。
「智哉?」
近づく足音に気付いて振り返る簪にん、と返事をする。
彼女の目の前には試験時に使った打鉄に似ている、無骨でありながらスリム、灰色をベースに薄く水色の装甲、何より周りにある四つの……確か非固定ユニット? だったか。それが盾のように鎮座している。
「これは?」
「私の専用機、打鉄弐式。まだ完成して無いけど」
完成してない? それはどういうことなのだ。
「本当は倉持技研が開発してたけど、もう一人の男性操縦者の専用機開発に人が行っちゃって……」
もう一人、つまり織斑の専用機である白式が原因なのだろう。世界で二人しかいない男性操縦者、それの専用機開発となれば組織としては優先してしまう。
それは自分にも当てはまる。こちらはデータ収集が主な機体だからこそ、造るのは簡単だと開発担当者にメッセージを貰ったが、やはり何人かは専属担当になったと聞く。
さて、自分のことは置いといて、そんなことにあったのだ、何かしら思うことがあるだろう。
「ん、少しは。でも、しょうがないよ。こればっかは」
「……」
打鉄弐式を見る簪は少しばかり哀愁が漂っていた。しかし、すぐにそれらが変わる。
「だから新しい目標にした。あの人の妹だって胸を張れるように、皆に手伝ってもらいながらこの子を完成させるって」
その表情は悲しみに染められたものではなく、強い意思とやる気が感じられる。ああ、だから最近夜遅くまで部屋に居なかったのか。
ん? あの人とは誰なのだろう。
「私のお姉ちゃん。ロシアの代表操縦者で、ISを組み立てたの」
……すごい人がいたものだ。
――こんなことも■■■いのか、お■は。
ズキッと、軽く頭痛がしたが、気にする痛さではなかったので無視する。
しかし、身近にすごい人がいると、比べられたり、その人が疎ましく思ったことがあるのか?
「ん、前はあった。けど、誰かさんのお陰でお姉ちゃんと仲直りできたから」
それはよかった。家族なのに仲が悪いままなんて、きっと辛いし面白くないだろう。
「もしなにか手伝えることがあったら、言ってくれ」
知識も技術も持ち合わせていない俺がいたところで、役立たずだろうけど。
何故だが分からないが、彼女を手伝いたいと思った。
簪は少しばかり俺を見つめ、温かい視線と共に溜め息を吐き出される。
「……ほんと変わらない」
「なにがだ?」
「なにも。稼働データを
よくわからんが、彼女が何もと言うのだから、気にしないでおこう。
「委細承知」
少年は共に奏でる
蒼き少女が綺麗に奏でられるように
少年は約束する
傷む何かを孕み、手を貸すことを
どうも、何時もあなたの隣でグツグツ煮えてる土鍋大根です。
やっと更新できたぁ!
皆様は体調管理はちゃんとできていますか? 私は少し夏バテ気味です。
さて、この小説を読んでくださる方は居られるのでしょうか、ふと思ってしまいます。
楽しく読んでくださる読者様がいるなら、とても嬉しいです。
では、皆様日々暑いですが、暑さに負けず、健康でいてください。
この小説を読んでくださった読者様に、感謝を。