IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神   作:土鍋ダイコン

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逃げ出すことはできない
その背に誰かがいる限り
ならば、この手に剣を
配点:(襲撃)




十四章 決死の剣士(白)

「智哉!」

 

 ハイパーセンサーでもう一機のISに連れ去られる智哉を助けに行こうとし、目の前に閃光が迸る。

 

 そちらを急いで見れば謎のISが左腕を此方に向けており、両肩がガシャンと開き、ゾワッとした感覚に従い鈴を抱えて飛び出す。

 

 刹那、先ほどと遜色ないほどの閃光がまた迸り、アリーナのバリアーが悲鳴を上げる。

 

 あんなものが自分や鈴に当たっていたと思うと、考えたくないものだ。

 

「ちょっと一夏! いつまで抱きかかえてつもりよ!」

 

「ちょっ、暴れんな! うわっ、ビームが真横に!?」

 

「っどこ触ってんのよ、変態!!」

 

 ISの腕でガンガン叩かれるが、それマジで痛いからやめてくれ。シールドエネルギー少量だがガリガリと削られんだよ。

 

 砲撃が終えてから地面に降りて鈴を下ろし、ISを見る。

 

 今まで見ない全身装甲(フルスキン)型で、人の胴ほどもある両腕に両肩につけられた砲門。その威力は先ほど目にしたばかりで、どうみても人に向けて撃つものではなかった。

 

『鳳さん、一夏くん、今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちが制圧に行きますので!』

 

「わりぃ山田先生、今逃げちまったら先生たちが来るまでの間にこいつがどんなことするか分かんねぇ」

 

 もしあの砲撃を避難する生徒に向けられたら、そんなことを考えてしまったら。

 

 自分の中で背を向けるなんて選択肢は、どこかへと吹き飛んでしまった。

 

「だから、先生たちが来るまで俺たちで足止めしています」

 

『お、織斑くん!? 駄目ですよ、貴方達を守るのが私たちの――』

 

「鈴、ああは言ったけど避難していいからな」

 

「馬鹿言わないで。あたしよりも下手な癖に、あんたを置いて尻尾巻くわけないわ」

 

 謎のISがこちらに突進をかけてきたので、意識を少し切り替え――回避に成功。

 

 エネルギー残量、機体状態、自身のコンディション、最高とは言い難いが問題はないだろう。

 

 俺は一人で戦っているわけではないし、何よりこれは誰かを守るための戦いだ。

 

「あんたは好きに戦いなさい。剣一本(それ)だけで援護なんてできないでしょ? あ、あたしも援護しながら前に出るからそのつもりで」

 

「おう、じゃあいっちょやりますか」

 

 キンッと武器をぶつけ合い、それが合図となる。今を持って即席コンビで挑むこととなった。

 

 距離と取って様子見、などはしない。やって意味がないわけではないが、近づかなきゃなんもできないし何より考えたところで俺がやることなんて決まってる。

 

 近づいて斬る。

 

 敵ISに雪片を振るうが、全身のスラスターを器用に使いひらりと躱され、剛腕をその速度を乗せたままに振るいきる。高速で振りぬかれた鋼鉄は、当たれば人の体など簡単に引き千切れてしまうだろうし、絶対防御があったとしてもただでは済まない。

 

「おぉ!」

 

 だから、受け止めずに()()()()。例え雪片で防げたとしてもその衝撃でただでさえ少ないシールドエネルギーが減少してしまう可能性があるのだ。長く戦うためにもダメージはなるべく受けたくない、なら受けなければいい。

 

 雪片の腹で受け流しつつ伝わる衝撃は足腰の捻りで足裏に流し、そこから零落白夜を発動し削り取ろうとしたが、敵ISは両肩の砲門を起動させ狙い撃とうとする。

 

「させない!」

 

 それを衝撃砲を俺に当てることで射線上から無理矢理ずらし、最小限に抑えてくれた鈴にもう少しどうにかできなかったのかと文句をつけたかったが、この際仕方がないと諦める。

 

 狙い撃ちされないように撃ち続けるが、見もせず左腕で射撃をして全弾撃ち落としつつ右腕で俺を狙ってきた。零落白夜で消滅させていくが、距離が離されてしまった。

 

「――――」

 

 敵ISは次に鈴に向かっていき、砲撃を撃ちつつ両肩の砲門で牽制射撃をして動きを止めようとしている。が、腐っても鈴は代表候補生で、砲撃は避けつつ射撃は青龍刀のような刃が二つ付いた長大な双刃剣で弾き返す。

 

 徐々に近づいていくが、今度は両腕を広げ高速回転をしながら砲撃を撃ちだしてきた。周りの被害などお構いなしに繰り出す砲撃から逃れるように飛びながら距離を取らされた。

 

 合流しようと鈴に近づこうとした時、砲撃をやめすべての砲門を展開しチャージを始め――

 

「鈴!」

 

 砲撃の嵐がアリーナ内に乱れこまれた。

 

 粉塵舞うアリーナの隅、瓦礫の影に隠れる俺と鈴は息を整えるのと同時に状況判断を行っていた。

 

「何なのよ、あの火力。あんなの砲撃じゃなくて魔砲よ、魔砲!」

 

 鈴が怒鳴りながら装備やエネルギー残量を確認し、俺も白式のエネルギーを確認する。

 

 残り残量:213。ダメージレベル:B。

 

 やはりというべきか代表戦との連戦、少しとはいえ零落白夜を発動したためにエネルギーの消耗が激しい。瞬時加速も場合によって使うとして、零落白夜を使えるのはあと二回ほどが限界だろう。

 

「にしても、あの動きなんなんだよ。まるで昔のロボットアニメ見てるみてぇだ」

 

「ほんとよ。弾が見たら喜びそう」

 

 ああ、確かにそうかもしれない。

 

 いくら全身にスラスターがついていたとしてもあんな無茶苦茶な動きをして、パイロットが無事に済むとは思えない。

 

 ……?

 

 どこか、頭の隅に引っかかるものがあった。

 

 こう、なんというのだ。奥歯の隙間に小骨が刺さって、抜けそうで抜けないような微妙な感覚。

 

「なあ、あれってISなんだよな?」

 

「何言ってんのよ、他に何だっていうのよ」

 

「いやな、あれって本当に()()()()()んのかなって」

 

「はあ、何言ってんのよ。ISなんだから人が乗って当たり前。無人機なんて聞いたことないわ」

 

 心底呆れた様に溜息を零す鈴だが、こう何かが問いかけるのだ。

 

 アレには人が本当に乗っているのか?

 

 知識がほとんどない俺でさえISは人が動かすパワード・スーツだと知っているのに、戦っている内にそんな考えが大きくなっていくのだ。

 

「……そういえば、あたしたちが話してる間何にもしてこないわね。まるで興味があるから見続けるみたいな」

 

「もし、もしだぞ。あれが無人機だったらどうだ」

 

「そうね、あたしは()()でぶち当たるわ」

 

 ニカッと八重歯が見え、それはもう愉しそうに笑っていらっしゃるが深くは聞かない。聞いたら最後なんか俺の方に来そうだから。

 

「で、一夏の方はどうなのよ」

 

 俺は鈴の言葉を聞きながら、握りしめている《雪片弐型》を見つめながら少し前のことを思い出す。

 

 ◆◆◆◆

 

「バリアー無効化攻撃?」

 

 次の智哉との試合までに白式のエネルギー回復や装甲の修復が終わるまでの間に、自身の機体性能の説明を千冬姉にしてもらった。

 

「より正確に言うならエネルギー無効化攻撃、《雪片》に備わっている特殊能力の正体だ。ありとあらゆるエネルギーを消滅、無効化し相手のバリアー残量に関係なく、それを切り裂いて本体に直接攻撃できるものだ。さて、本体に直接攻撃できるということはどうなる篠ノ之?」

 

「は、はい! 絶対防御が発動して、大幅にシールドエネルギーを削ぐことができます」

 

「その通りだ。その能力があったからこそ、私が世界一位の座にいられたのが大きい」

 

 千冬姉は懐かしむように零落白夜の説明をする。なにを隠そう三年に一度開催されるISの世界大会『モンド・グロッソ』の初代チャンピオンであり、今日まで世界最強の名を語り続ける所以である。

 

「ん? じゃあなんで俺負けたんだ?」

 

「では聞くが、どうして負けたと思う?」

 

 負けた原因? そりゃシールドエネルギーがいつの間にか0になってたから。

 

 待て、どうしていきなり0になったんだ。まだセシリアの攻撃は当たっていなかったはずだし、スラスターが原因だとしてもすぐになくなるような飛び方はしてなかった。

 

 つまり、零落白夜そのものに敗因の原因があった?

 

「相手のエネルギーを無効化する、これにどれだけのエネルギーが必要になるの思う?」

 

「つまり、足りない分を自分のシールドエネルギーを使って補ってるわけか」

 

「シールドエネルギーを攻撃用に転化してしまう、欠陥機だ」

 

 おい、今本人を目の前に行ってはいけないこと言ってなかったか。つーか言ったよな、おい!

 

 バシンッ!

 

「言い方が悪かったな。ISはそもそも完成してないから欠陥もクソもない。お前の機体はちょっと攻撃寄りになってるだけだ。大方拡張領域(バススロット)も埋まってしまってるだろう」

 

 ぐおぉ、何も言っていないのに叩かれるとはこれいかに。すいません、俺が悪かったですから、どうかその出席簿をお納めください。

 

「ふん、本来拡張領域に使うべき処理をすべて《雪片》に使っているんだ。その火力は全IS中最大だろう」

 

 そういえば、千冬姉も《雪片》一本で世界一位になってたな。前々からスゲーとは思ってたけど、自分もIS操縦者になって実感したよ、やっぱ千冬姉はぶっ飛んでいる(人外じみてる)

 

「大体お前のような素人に射撃戦闘などできるものか。弾道予測から距離を計算、射撃時の反動制御、シューターフローに一零停止――」

 

 ごめん、途中から何言ってるか分からないから、これ以上俺のライフを削らないでくれ。

 

 分かればよろしい、とガリガリライフを削った自覚もなく、意気消沈してると頭に手が乗っかる。

 

「大体、お前は一つのことを極める方が向いている。何せ、私の弟だからな」

 

 その時の千冬姉は、教師としてじゃなく、姉としての顔で俺の背中を押してくれた。

 

 ◆◆◆◆

 

 よし、覚悟を決めよう。

 

「鈴、次で決めるぞ」

 

「いいじゃない、じゃあ先手はもらうわよ」

 

 双刃剣を思いきり振りかぶり、投げ飛ばす。ものすごい速度で敵ISに迫るが難なく弾いてしまう、それも承知の上。

 

 弾いた時にはすでに鈴は目前まで近づいており、次の一手を決めていた。

 

「破!」

 

 叫びと共に轟音が響き渡り、敵ISが地面から少し浮かび上がる。

 

 震脚から得られた勁を腕へと流しつつ、正拳突き。装甲が厚かったからか完全には壊せはしなかったが、凹ませる位はしてみせ、そこから拳・肘・肩を使った三連撃を叩き込み、最後の一撃で吹き飛ばす。

 

 凰鈴音に剣や槍など武器を扱う才能はあまりなかった。射撃の腕もあまりいい方ではなかったが、それでも他人と一線を駕すものがある。

 

 それが体術だった。

 

 実家の近くにいた麻婆好きの神父から八極拳を教わり、旅をしていた映画好きの日本人と共に数年間映画を見ながら実戦鍛錬をした。そのおかげで独特の型にはなったものの、近接格闘戦において大人相手でも殴り合えるようになった。

 

「師匠たちから一般人には使うなって言われたけど、どう見ても普通じゃないからね」

 

 近接戦、特に零距離における格闘戦というただ一点だけならば、凰鈴音は一流に限りなく近づく。それこそ、たかが機械人形に後れを取ることなどなかったのだ。

 

「粉!」

 

 一気に近づこうとするが、両肩の砲撃を放ち近づけさせようとしない。それらをすべて避け、加速した勢いを乗せた踵落としと正拳突きでそれらを破壊。

 

 しかしその対価というべきか、スラスターを掴まれ完膚なきまでに破壊され、逆に此方が思いきり叩き伏せられた。

 

 だが、それでも武装は何とか壊せた。あとは――

 

「一夏ぁ! 決めなさい!!」

 

 俺がきっちり決めないとな。

 

 雪片を構え飛翔、両腕の弾幕を被弾覚悟で突き進む。

 

 目指すは最短最速、一直線のみ。さあ、もう少しだけ付き合ってくれ、白式!

 

 たった一瞬生まれた、ほんの小さな隙間に縫うように瞬時加速をして目の前に辿り着く。その時には敵ISが胸部装甲を開きエネルギーを溜めているが、もう関係ない。

 

「鈴、頼む!」

 

「ええ、手加減なしで行くわよ!」

 

 後方でチャンスを窺っていた鈴が最後のエネルギーを振り絞り、俺に向かって衝撃砲を撃ち込む。と同時に瞬時加速を起動、もちろんエネルギー不足で不発に終わるが狙いはそこではない。

 

 瞬時加速の原理は外に放出したエネルギーを取り込み、圧縮開放することで爆発的な加速力を得るというものだ。

 

 では、今衝撃というエネルギーの塊を起動状態で受けたらどうなるか。その答えは――

 

 エネルギー転換率90%超、全エネルギーを雪片弐型へ集束。

 

 お前自身で答えてみろ。

 

 零落白夜を発動した雪片を斬り上げ、返しの刃で斬り下ろす。一昇二墜の構えから繰り出される篠ノ之流剣術奥義之二。

 

沙羅双樹(さらそうじゅ)

 

 二度の斬撃を受け、エネルギーが切れたのか焦げ臭さと全身から火花を散らせながら地面へと倒れ、機能を停止していく。

 

 ここに、二人の戦いはやっと終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 一歩も引かない少年少女

 諦めなかったからこそ

 その剣で守れたのだろう

 その、小さな想いを




 寒い日にはぜひとも土鍋大根を。
 こんにちわ、ストックがちょっとだけできましたので、ちょっとずつ投稿。
 正月休みも終わり、これからはまた仕事とゲームと小説を読む合間に頑張ってちょっとずつ書いていく日々に戻りますが、無事完結させるようにしますので、気長に待っていただきますと幸いです。
 では最後に、この小説を読んでくださる読者様に最大限の感謝を。
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