IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神   作:土鍋ダイコン

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今の現状にも
前の現状にも
何一つ理解できない
(配点:共感)


一章 話し合う馬鹿者達

 地獄のようなLHRを終え、つい数週間前の出来事を振り返って現実逃避をしていた俺は、ぐったりと机に突っ伏している。

 

 一時間目のIS基礎理論授業が終わり、休憩時間になったので次の授業を準備をしたいのだが、教室から廊下まで女子という女子が織斑と俺を見て、『あなた話しかけなさいよ』という空気を醸し出している。

 

 つまるところ、自分の周囲を含めたここら一帯がかなりの緊張感で満ち溢れているのだ。

 

 ため息をつきたくなる衝動に駆られながら、仕方なく次の授業の準備を始めようとする。

 

「ああ、ちょっといいか?」

 

 こんな女子高みたいな場所で、男の声なんて俺を除けばただ一人だけ。顔を上げると、やはりそこにいたのは―――

 

「織斑一夏か」

 

 ある意味俺を巻き込んだ原因かすもしれない人物。そして同じ境遇を分かち合う人物でもある。

 

「おう、同じ男同士仲良くしようぜ。えーと…」

 

「名前でも苗字でも好きに呼べばいい」

 

「よろしくな、智哉!」

 

 笑顔で手を差し出す織斑。どうやらこいつは人付き合いがうまいのか、もともとそういう奴なのか、初対面なのにこうも接しやすい態度をとるのはなかなかいないだろう。

 

「こちらこそ、織斑」

 

 そういって握手を交わす。織斑は、一夏でいいんだぞ。と言っていたが、人を名字で呼ぶのに慣れてしまっているのだから、いつか名前で呼ぶまでは我慢してもらおう。

 

「それにしても―――」

 

「ちょっといいか?」

 

 織斑と話していると、横から声をかけられる。

 

 今度はそちらに顔を向けると、長い黒髪をポニーテールにしている少女が立っている。風格は今時の少女というよりも、大和撫子のようでいて刀のように鋭い感覚がする。

 

「……箒?」

 

 織斑が少女の名を口にする。どうやら知人のようだ。

 

「屋上でいいか?」

 

「いや、俺は別にいいけど」

 

 織斑がこちらに顔を向ける。確かにさっきまで俺らは話し合っていたけど、それは別に今じゃなくてもいいだろう。

 

「ほら、さっさと行って来いよ。久しぶりに会った友人なんかじゃないのか?」

 

 織斑は一瞬渋った顔になったが、ありがとな。と感謝を述べてから少女の後についていく。

 

 俺はそれを見届けてから、また机に突っ伏した。なぜって? そんなもん、さっきまで二分していた視線が全部俺に向かってるんだ。それを全部受け流せるほど、俺の神経は図太くない。

 

 二時限目始まりの鐘の音が聞こえたので、ボンヤリとした思考を浮上させる。

 

「とっとと席に就け、織斑」

 

「……ご教授、ありがとうございます」

 

 させた瞬間に、どうやったら出るのであろう打撃音が響き渡る。もしかしたらあれは特別な素材でできているのかもしれない、どこぞの超合金なんちゃらで。

 

「お前も受けてみたいか?」

 

 ギロリとこちらを睨みつける織斑先生。なぜだか分からないが、こちらの考えが丸分かりのようだ。

 

「いえ、ご遠慮願います」

 

 正直にそう答えると、余計ことは一々考えるなと言わんばかりに出席簿をちらつかせながら、教室の端に置いてある椅子に座る。

 

 真面目に答えよう、あの人怖い。

 

「このようにISを運用する際には基本的に国家による認証が必要であり、これに反するIS運用をした場合は刑法により――」

 

 朝の慌てようが嘘のようにスラスラと説明をしている山田先生。俺の周りでは先生の話を聞いて余裕なのかあまりノートをとっている人が少なく、だからと言って不真面目ではなく真剣に先生の話を聞いている。

 

 そんな中、俺の心中は穏やかではなかった。

 

(な、何を言ってるか、さっぱりわからねぇ)

 

 パソコンの機能を内蔵した最新型の机の上に載っている五冊の教科書の内一冊を手に取り、先生が説明しているページを開くものの、専門用語が多すぎてさっぱり理解できない。

 

 とりあえず先生が投影ディスプレイと黒板の二つに書いていくものは全部板書をしているのだが、如何せん意味が全く理解できないから自分で何を板書しているのかがわからない。

 

 全身から嫌な汗が吹き出しそうになり、手が少し震えてきた。

 

「織斑くん、何かわからないことがありますか?」

 

 山田先生が織斑に聞いている。織斑を見てみると、多分俺と同じように理解できていないのかもしれない。額から少し汗が流れている。

 

「え、えっと……」

 

「分からないことがあったら、聞いてくださいね。なにせ、先生ですから」

 

 自信たっぷりに胸を張る山田先生。その際、胸が揺れた気がするが、多分俺の気のせいだろう。

 

 そんなことはそこらの野良犬にでも食わしておいて、織斑は頼れる先生だと思ったのか、目を輝かせている。

 

「先生!」

 

「はい!」

 

 山田先生は生徒に頼りにされているのが嬉しいのか、とてもやる気に満ちた声だった。

 

 そう、ある一言を聞くまでは。

 

「ほとんど全部、分かりません!」

 

 織斑のその言葉で教室の空気がピシリと、何かに罅が入る音が聞こえた気がした。

 

「えっ? 全部、ですか?」

 

 かなり顔が引きつっている山田先生に、教室の隅でため息をついている織斑先生。理由は何となく察することができる。

 

「え~と、織斑くん以外に、ここまでの内容が分からない人、どれくらいいますか?」

 

 そんな言葉に手を上げる女子は誰一人いなかった。

 

 当たり前だ。ここにいる女子は全員がIS学園に入りたくて来ているのだから、基礎的な内容である最初の授業くらいなら何も問題ないだろう。そう、女子なら(・・・・)

 

「えぇ!? 武藤君もですか!」

 

 静かに手を上げる俺に、山田先生は困惑度百二十パーセント越えの驚きをしてしまった。織斑は同士を見つけたとばかりに俺を見てくるのだが、まったく嬉しくないからな。

 

「……織斑、武藤。入学前に渡されている参考書はどうした?」

 

 ああ、あの入学式二日前に渡された電話帳と勘違いしても仕方がない分厚さのあれか。

 

「電話帳と間違えて、捨てま―――」

 

 その言葉は最後まで紡がれることはなかった。織斑先生の出席簿の一撃で織斑は、机に何度目か分からないが沈まされた。

 

「必読と書いてあっただろ、馬鹿者が」

 

 いや、今の織斑には何も聞こえないのではないのでしょうか。頭からなんか煙り上がってるのが、幻覚なのかもしれないが見えるし。

 

「武藤、まさかお前もこの馬鹿と同じようなことを言わないだろうな?」

 

 蛇に睨まれた蛙のような気分になりつつも、俺は正直に答える。

 

「二日前に渡されましたので、ほとんど読めていません」

 

 俺がそういうと、クラスから音が消えた。あれ? なんか空気を冷やすような発言をした覚えはないのだが。

 

「えっと、武藤くん。その話って本当ですか?」

 

 まるでここにいる全員の意見を代表していっているように、山田先生が口を開く。

 

「正確には、二日前に渡されましたが、渡されてすぐにここに来る準備と移動をされましたので、実質的に読み始めたのは昨日からです」

 

 まあ移動中にも読んでいたのだが、周りにいた黒服の人たちの視線のせいでまともに読めるような空気ではなく、長く続いた検査や長話のおかげもあって移動中は爆睡。ビジネスホテルに着いた瞬間にふかふかのベッドの誘惑に負けて、そのまま就寝。だから読み始めたのは次の日からということである。

 

 そう答えると出席簿を下し、そうか。とだけ言って織斑を叩き起こす。

 

「織斑には後で再発行してやるから、一週間で覚えろ。武藤は一週間とは言わないが、二週間で覚えてもらう」

 

 あの厚さを二週間でか。織斑より期間は長いが、なんて無理無茶難題だ。

 

「いや、あの厚さを―――」

 

「やれ」

 

 織斑はなんか言おうとしたが、織斑先生(おに)の前に轟沈。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力、どれをとっても既存の兵器を遥かに凌ぐ。そんな『兵器』を扱う者が、それのことを深く知らずに扱えば遅かれ早かれ事故が起きる。それをさせないための基礎知識と訓練だ。お前たちが知らなかろうが覚えたくなかろうが、きちんと覚えてもらう。それが規則というものだ」

 

 ……そうなんだ。

 

 最初の開発目的とは裏腹に、ISという兵器のしての一面を考えるのであるならば、織斑先生の言っていることは正しいのだ。

 

 だけど、俺は。

 

 ただ破壊するだけの兵器じゃなくて、あの人達みたいに誰かを守れるような――

 

「えっと、織斑くんに武藤くん。分からないことがあったら、放課後に教えてあげますから。ね?」

 

 少し物思いに老けている間にどうやら話がほとんど終わっていたらしく、山田先生の声で現実に戻る。

 

「お願いします、山田先生」

 

「はい! 先生、頑張りますから!」

 

 元気よく返してくれる山田先生に、少しだけ微笑ましい光景かなと思ってしまう。

 

 今は誰よりも知識も何もかも足りない。

 

 だけど、これからそれを補おうとすれば、このクラスの人たちと同じスタートラインに並べる。そう信じて、これからを過ごそう。

 

「ほ、放課後に先生と二人の男子生徒のみ……。あ、だめです、私初めてなのに」

 

 顔を赤くしながら首を振る山田先生。ああ、この人男の人に耐性ほとんどないのだろうな、そう確信せざるを得ない状況だ。

 

「んんっ! 山田先生、授業の続きを」

 

「あ、すみません!」

 

 織斑先生の鶴の一声で妄想から帰ってきた山田先生は、急いで教壇に戻り―――こけた。

 

「イタタタ」

 

(……この人に教えてもらって、本当に大丈夫なのか?)

 奇しくも、俺と織斑の心の声がかぶってしまったが、しょうがない。

 

 

 

 

 少年は慣れなければいけない。

 それが例え自分が望んでいなかったとしても。

 世界は常に不平等なのだから。




 初めましての方は初めまして、私のことを知っている方にはお久しぶりと。
 土鍋ダイコンです。
 さて、やっと第二話の投稿ができました。
 ここまでいろんな意味で長かった。相部屋のくそじじいが一々こっちの私生活に首を突っ込んできて、PC触る機会が滅法減ったり(そのくせ自分はこっちの迷惑関係なしに色々やったり)、ネタが思いつかなく友人と別の二次創作ネタを考えてしまうなど、後半は自分のせいですね、すみません。
 これからも不定期更新になってしまいますが、まだまだ頑張ろうと思いますので、応援してくださいますと、作者的にとてもうれしいです(^◇^)
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