IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神 作:土鍋ダイコン
出来うる限りのことをする
それが、相手への礼儀
(配点:準備)
「ちょっとよろしくて?」
始まりはそんな言葉からだった。
地獄のような二時限目が終わり、これからのことを話し合おうと織斑の席に行こうとした時だ。その横に立っていたのはややロールがかった長い金髪に、透き通るような蒼い瞳の少女。
雰囲気は
ISが世に出てきてから、ISを動かせる女=偉いという構図が出来上がってしまい、かなり好き放題なことをしている。酷い場合はすれ違った見知らぬ女性にいきなりパシられてしまうこともあり、それを拒否すると警察を呼ばれて捕まってしまうという馬鹿げた話も聞く。
そんな典型的な雰囲気の女子に話しかけられている織斑には同情するが、触らぬ神に何とやら。こちらから厄介ごとにかかわる気はない。
話すのはまた後でもいいかと思い、自分の席に戻る。確か次の授業は実戦で使われる兵装についての授業だったはずだ。
だが、そんなことを忘れるような言葉を聞くとは。
「代表候補性って、何?」
織斑の何気ない一言に、クラスメイト全員がずっこけた。いや、さすがにそれはオーバーリアクションだろうと思ったのだが、俺も机に頭を打ち付けてしまった。
「あ、あ、あ。あなた! 本気でおっしゃってますの!?」
「おう、まったく知らん」
かなりの剣幕で話す金髪さんに織斑は平然と答える。なに? これ狙ってやっているのか、それとも本当にただの馬鹿なのだろうか。
「正式名称は国家代表候補性。意味は文字通り、国家を代表するIS操縦者の候補生、一応一般常識に入るぞ?」
さすがにあれは酷いので、織斑の近くに行って教える。
確かにそうだな。と納得がいってくれてよかったのだが、どうやら深く考えていないだけらしい。
「つまり、エリートということですわ!」
金髪さんがいきなりこちらを指さしていく。一応言っとくが、それはマナー違反だぞ。
「普通ならばわたくしのような選ばれた人間と一緒に入れるだけでも幸運なのよ。それをご理解いただけますか?」
ヘェ、ソウナノカー。
内心どうでもよかったので返事はしなかったが、織斑は律儀に返事を返した。
「へえ、ラッキーだな。俺たち」
こら、そこで俺を巻き込むな。
「貴方達、馬鹿にしてますの?」
「お前が幸運だなって、言ったんだろ?」
だからなぜ火に油を注ぐ行為ばかりすんだよ、織斑。
「だいたい! 貴方たちはISについて何も知らないくせに、よくこの学園に通えますわね。唯一男性でISを動かせる方々と聞きましたのに、先ほどから知的さの欠片すら感じません。まるで期待はずれですわ」
悪かったな、知的差の欠片も感じさせない感じで。
「俺に何か期待されても、困るんだが」
織斑も素直な感想を述べている。
「まあ、わたくしは優秀ですから、貴方達みたいな
どうしてだろう。何か別の言葉に聞こえたような気がしたのだが?
「何かISについてわからないことがあれば、泣いて頭を地面にこすり付けながら頼みましたら、教えて差し上げますわ。なにせわたくし、入試でただ一人教官を倒しましたエリート中のエリートなのですから!」
それはすごい。
IS学園の入試には筆記以外にも、実技としてISを使った模擬試験なるものがある。そこで最低限ISを動かせるのか、また動かせるとしたらどの程度までできるのか。それを見るための模擬試験だ。二人の例外を除けば筆記で落ちなかった人でも、この実技で落ちる人がいるらしい。
もちろん、試験官を務めるのはIS学園の先生であり、金髪さんの言うことが正しいのだとすれば、相当実力があるということだ。態度や言動はややアレだが、代表候補性を名乗っているだけはある。
「ん? 入試っていうとアレか、IS使って戦うやつ?」
「それ以外に何がありますの?」
「それなら、俺も倒したぞ」
何を言っているんだ、こいつ。
教官を倒した? 俺と同じIS初心者で、知識だってほとんどないようなこいつが?
「……マジで?」
「いや、アレは倒したっていうか、自爆というか」
どういうことなんだ?
織斑が小声で金髪さんに聞こえないように俺にささやく。
「試験始まった瞬間にこっちに突っ込んできて、それを避けたら壁に激突して終わった」
……それ、自爆だろ確実に。どんだけその先生緊張してたんだよ、と思考してさっきまでの山田先生を見てあの人ならやりそう。とか思ったり思わなかったり。
「わ、わたくしだけと聞きましたが……」
金髪さんがふるふると震えながら呟く。自分だけということに優越感を感じていたからなおさら織斑の発言に納得が言ってないのだろう。
「女子ではってオチじゃないのか?」
瞬間、氷に罅が入るような音が聞こえた気がする。
その発生源である金髪さんは徐々に顔を赤くしていき、目がギラついていく。
「教官を倒したっていうのは、本当ですの!」
「いや、まあ、多分?」
回答に困る織斑に、その理由を知って苦笑するしかない俺。そんな態度にさらに憤りを感じる金髪さん。
「たぶんって、どういう意味なのかしら!? それとそこの貴方も教官を倒したのかしら!」
何かこちらまで飛び火してきた。やっぱり織斑の近くに行かなければよかったと、今さらながら後悔し始める。
「俺は動かすのだけでも精一杯だったから、そもそも戦闘にすらなっていない」
間違っても火に油を注ぐような発言をしないように言葉を選びつつ、実技試験のことを話しつつあの時のことを思い出す。
アレは色々酷かった。
何とか歩行までは入試前までに無理やり覚えさせられたが、飛行なんてものはそんなすぐにできるわけがなく、飛行前提である戦闘なんてもってのほか。担当教官なんて武器すら構えないで温かい目でこちらを見ている始末。あの時ほど穴があったら一生潜り続けたいと思った時はなかった。
そんな考えをしていると、三時限目の始まりのチャイムが鳴る。
「くっ! またあとで来ますわ。貴方達、逃げないことね!」
いや、逃げるって学校のどこに逃げるんだよ。トイレか。
三時限目の授業は山田先生ではなく、織斑先生が教えるようだ。だが、その立ち姿はなぜか先生というよりも軍人を連想させてしまう。
「武藤、授業中に考え事とは余裕だな」
待て、まだ授業は始まってはいない上に、何人の考え読めているんですか。人間やめてませんか?
「さて、この時間は実践で使われる各種兵装と特性についてだ」
織斑先生は何事もなかったかのように授業を始めているのだが、俺の額に白く細長い何かを見えない速度で投擲しているのは、いかがなものか。いや、織斑のように出席簿が来ないだけまだましなのだろう。
額に当たって散っていった白チョークを机の隅に移動させて、ノートを開く。分からないからと言って板書をとらない理由はないから、あとで山田先生に聞くためにも一生懸命に書く。
「ああ、そうだ。その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出てもらう代表者を決めなければいけないな」
クラス対抗戦? 名前からしてクラス同士で何かを競い合う感じだが。
「クラス対抗戦とはクラス代表者同士が行う個人IS戦のことだ。ただISの技術などを学ぶより互いに研鑽し競い合ったほうが伸びしろがいいだろ。クラス代表とは、そういった行事に参加してもらうほか、生徒会が開く会議などにも出席してもらう。そうだな、代表者というよりも、クラス長といったほうが分かりやすいか」
なるほど。クラス長として行事の会議の出席のほか、クラスの代表としてそういった行事に参加する。それに負けていくと代表を選んだクラスそのものの評価にもつながる可能性があるし、逆に勝ち続ければクラスの士気にも繋がる。なかなか難しい仕事だな。
「さて、誰かやる奴はいるか? 自薦他薦でも構わん。それと、一度決まると一年間は変更が聞かないからな」
そんな面倒な仕事、だれが自分からやるかっての。そういうのは委員長タイプがやるっつうのが定石なんだから、俺には関係ないな。
「はいはい、私織斑くんを推薦します!」
「あ、私も織斑くんに一票!」
先ほどの金髪さんといい、どうやら彼は厄介ごとにかかわる体質でもあるのだろう。当の本人は我関せずなのか、はたまた単に気付いていないだけなのかまったく動きがない。
先の二人の影響で続々と織斑に一票を入れる人が増えてきている。まったく、織斑の人気はすごいなー、憧れちゃうなー。
「ウチは武藤さんがええなぁ」
「それならあたいも」
何…だと…。
先ほどの考えがフラグだったのか、俺もなぜか推薦されてしまった。誰だ、俺を推薦した奴は。お兄さん怒らないから、前に出てきなさい。
「候補者は織斑と武藤の二人だけか? 自薦他薦は問わないぞ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「言ったはずだ、自薦他薦は問わんと。他薦された奴に拒否権などない」
織斑がやっと気付いたのか反論しようとしたが、織斑先生の前にはまったく無駄な抵抗。例えどれだけの
「ちょっとお待ちになって!」
もう諦めてどうやって織斑に押しつけてやろうか思案しようとした時、後ろのほうから机を思い切りたたく音の同時に聞き覚えのある声が叫ぶ。
そちらの方向を見てみると、金髪さんが目が飛び出そうなくらいの形相でいた。
「そのような選出は認められません! だいたい、男がクラス代表などクラスの恥。そんな屈辱を、このわたくし、セシリア・オルコットに一年間味わえというのですか!」
金髪さん、セシリア・オルコットは顔を真っ赤にしながら叫ぶ。そんなに嫌なのか、男がクラス代表を務めるのは。
「そもそも、クラス代表ということはクラスで実力トップの方がなるべき。ならば、それはわたくしがなるべきことですわ!」
まぁ、実力は高いだろうね。代表候補性だし、入試でも教官倒したらしいし。
「だいたい、文化としても後進的な国で暮らさなければいけないこと自体、わたくしには耐えがたいことなのに、それに―――」
「イギリスだって、大したお国自慢ないだろ。何年間世界飯マズ一位とってんだよ」
あ、それを言ったら。
「あ、あ、貴方! わたくしの祖国を侮辱しますの!」
「先に侮辱してんのはそっちだろうが!」
売り言葉に買い言葉。二人の口喧嘩は決壊したダムの如く勢いを増していく。
「決闘ですわ!」
「いいぜ、四の五の言うより分かりやすくていい!」
ついにこちらなんて関係なしに話を進めていく二人。絶対この二人、俺のことなんて眼中にないんだろうな。
「いいですこと。わざと負けたりなんかしましたら、わたくしの小間使い、いえ奴隷になってもらいますわ!」
「真剣勝負で手を抜くなんて、ふざけた真似はしねぇ!」
もし漫画なら二人の間にバチバチと火花が散っているんだろうなぁ。と現実逃避をして思考することをやめる。
この二人にはいろんな意味でついていけん。
「それで、ハンデはどうする?」
「あら、早速お願いですか?」
「いや、俺がどのくらいハンデを付けるかって」
瞬間、クラス中から笑いが起きる。ある者は腹を抱えながら、ある者は馬鹿にするように、様々な爆笑が飛び交う。
「織斑くん、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強いなんて、もう大昔の話だよ」
そう、彼女たちは言っているのだ。
ISを使える女とISを使えない男では、圧倒的に女のほうが強いと。それが今の時代の常識だといわんばかりに、女子たちは宣言する。
戦闘機や航空機などの
「……じゃあ、ハンデはいい」
「それはそうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなければ対等とは言えませんから。日本の男性は大変面白いジョークセンスがおありのようで」
オルコットも笑いを堪えながら、織斑に言う。いや、笑いを堪えているのではない、勝ち誇ったような笑みで織斑に言っている。
ああ、悔しそうな顔だな、織斑。
「それで、貴方はどうするのですか?」
オルコットがこちらに振り向き、問いかける。内容なんて聞かなくても分かっている、ハンデのことだろう。
「ああ、ハンデなら―――」
普通なら、付けるべきなのだろう。こちらはIS初心者で、オルコットは腐っても代表候補性。その差はどうみても埋めれるはずのないものだろう。
織斑のように理解していないわけではないし、相手はハンデを付けてくれと頼んだたら付けてくれるだろう。
「―――一切必要ない」
だが、それがどうした。
「俺はお前ら二人のせいでほとんど巻き込まれたようだが、決闘ということは真剣勝負そのもの。いくらこちらが圧倒的不利だとしても、ハンデを付けるなんて真剣勝負に泥を付けるような行為を、俺はしない。それに―――」
――ハンデなんてつけたら、八百長みたいで気分が悪いだろ?
そうはっきりと宣言すると、クラス中からの視線が変わっていく。嘲笑なんてものじゃない、完全に敵対するような視線に変わっていく。
そうだ。俺が師から学んだことで、ハンデなるものは鍛錬の時にしかなかった。
勝負の世界にハンデは存在しない。あるとしたらただ運が悪かっただけ。
だから、真剣勝負にそんなものは持ち込まない。それは俺の信条に、師からの教えに反するから。
「それでは、話はまとまったな。勝負は一週間後の放課後、総当たり戦でやってもらう。場所は第三アリーナで行うので、それぞれ準備をしていくように」
では、授業に戻る。と織斑先生は教材を手に取る。
俺も周りの視線を一切気にすることなく、板書を取るべく筆記具を手に取る。
勝負は一週間後。つまり一週間の
早くも俺は、一週間後のために行動を始める。
三時限目が終わった瞬間に、俺は教員室へと足を運ぶ。
理由は簡単だ。ISの貸し出しとアリーナの使用許可をもらうためだ。
二時限目の時間中に並行して調べていたのだが、どうやら訓練機を借りるためには自前に申請していなければならず、またアリーナの使用申請も同じように申請していなければ使用できないらしい。
それを知って、俺は織斑先生の所へ来たのだが。
「すまないが、無理だ」
申請許可をもらおうとして、一言目がこれだ。
「先一週間は二・三年生で予約がいっぱいだ。すまないが、こればかりはどうしようもない」
どうやら俺は運が悪かったらしい。
ため息をつきたくなる衝動を抑え、俺は教員室を後にする。ISを使った練習ができないとなると、残るは相手の情報収集と自身の鍛錬、あとは座学くらいしか残されない。
座学に関しては申請ついでに山田先生にお願いして放課後補習してもらうことを約束してもらったので、残るは二つだけ。
相手の情報収集はとりあえずインターネットを使って公にされているものだけでも集める。それ以上を収集しようとするには、オルコットの練習を盗み見たり、誰かしらから聞くしかない。
鍛錬については、放課後が埋まっているため早朝にしよう。そうすれば時間の無駄にならずに済むし、どうせ昔から早く起きて師匠の鍛錬をしていた俺にとっては問題ない。
座学は明日からにしてもらったので、放課後にオルコットの情報収集をしよう。代表候補性ってことは、それなりに有名なのだから、ちょっとくらい情報は落ちているはずだ。
色々考えを巡らしていると、四時限目開始のチャイムが鳴る。俺は先生に見つからないように急いで席へと座る。
「セシリア・オルコット。イギリスの代表候補性であり、第三世代ISであるブルーティアーズの稼働データ採取を目的として専用機となる。主な兵装はスナイパーライフルと第三世代型武装のマインド・インターフェースであるBT兵器『ブルー・ティアーズ』の遠距離射撃型の機体である」
ネットに上がっている情報はこれが限界か。
パソコン室からオルコットについて調べているが、やはりそこまで情報が上がっているわけでもなく、例えあるとしても今のような簡単な情報のみ。しかし、それでも相手がどのような
「あとは鍛錬のみか」
体を伸ばして全身の筋肉をほぐしながら、玄関へと歩いていく。その道中で遠距離型の敵に対してどう動けばいいのかを考えながら、イメージトレーニングをする。
「あ、武藤くん。待ってください!」
名前を呼ばれたので後ろを振り返ると、山田先生が走っているのが見える。はて、補習は明日からお願いしたはずだし、教室に忘れ物はしてないし、何か悪いこともしていないぞ俺。
「はぁ、はぁ、む、武藤くんの、寮の部屋が、決まりました」
息を切らせながら用件を伝えてくれているのだが、別に息を整える時間くらいは待ちますよ。
時間にしてはほんの数分だが、山田先生が息を整えるのを待つ。
「ではもう一度。武藤くんの寮の部屋が決まりましたので、鍵を渡しに来ました」
そう言って1163と部屋番号の書かれた紙と鍵を手渡された。渡されたのは別段いいのだが。
「確か俺が寮に住み始めるの、来週以降からじゃありませんでしたっけ?」
「そのはずだったのですが、織斑くん同様事情が事情でしたので部屋割りを無理矢理変更したらしいのです」
山田先生の話を聞いてやや納得した。俺と織斑は世界で二人しかいない男性操縦者だ。国としても監視の目が届きやすく、かつ保護ができる
「政府からの特命ということもあって、二人にはそれぞれ女子と相部屋になってもらいましたが、一カ月もすれば織斑くんと同室になる用意ができると思いますので、それまでは我慢してください」
女子と一カ月同室か。問題を起こそうなんて考えはしないのだが、相手の方にはかなり嫌な思いをさせてしまうだろうな。
「部屋に関しては分かりましたので、一度ホテルに戻っていいですが? 寮に行くにしても何にしても荷物を取りに行かないと―――」
「それに関しては問題ない」
その刀のように鋭くやや女性としては低い声を出す人物を、俺はただ一人しか知らない。
山田先生の後ろから歩いてくるのはやはり織斑先生だった。
「お前の荷物はすでにホテルから寮の部屋の方に移している。ありがたく思え」
あなたの用意周到さに俺は冷や汗ものなのですが、ホテルに戻る手間が省けたので素直に感謝します。
「それでは寮の簡単な規則を説明しますが、夕食は六時から七時の間に一年生用食堂で取ってください。部屋にはシャワーや簡易キッチンと各種設備も充実しています。また学年毎に使える時間は違いますが、大浴場もありますが、現在のところ織斑くんと武藤君は入ることができません」
さすがは高校とはいえ国立校。寮の部屋にそんな設備が当たり前とは、なかなか考えられないな。だけど……
「どうして大浴場が使えないのですが?」
「お前も織斑同様アホか。同年代の女子と入りたいのか?」
まさかのあいつと同じことを聞いてしまったらしい。いや、普通に考えたら織斑先生の言う通りなのかもしれないが。
「そんなの、他の学年別みたいに男子だけが入れる時間を決めればよかったのではないのですか? 例えば、女子全員が入り終わった後の一時間とか」
中学の修学旅行では、そんな感じで男女別以外にも入れなかった人のために時間が作られていた。
「私もそのように言ったのだが、他の教師や生徒から色々な苦情が入ってな。それでやむなく男子は使用禁止ということだ」
そのやむなくの理由を聞きたいのだが、もうなんか面倒だから聞くのはやめておこう。
織斑先生たちに挨拶をして、俺は寮の部屋へと目指すことにした。その道中はもはや動物園の客寄せ白熊の気分になりつつも、部屋の前まで来ることができた。
とりあえずノックを三回して、中に誰かいることを確かめる。だがいくら待っても返事がないので鍵を使って部屋に入る。
中は昨日まで泊まっていたビジネスホテルとは比べるまでもなく、広く設備が整っている部屋だった。テレビにネット環境に本棚、ベッドも余裕で二人は寝れるであろうデカさである。いくらなんでも金のかけ過ぎではないのだろうか。
「……国が経営してるってだけで、こんな豪華なものになるのかな?」
そんな疑問を感じつつ、部屋の隅に置かれている段ボールの荷解きをしようとした時だった。
部屋のドアが開く音がしたので後ろを振り返ると、そこにいたのはセミロングで内側に癖がついている水色の眼鏡の少女だ。
「……どうして、あなたが?」
見ず知らずの男が部屋にいたからなのか、少し警戒気味にこちらに話しかけてくる。俺は荷解きを一時中断して彼女に向き合う。
「武藤智哉。最近話題になっている人物の陰にひっそりと流れている二人目の操縦者」
「そんなの、知っている」
はて、どうやら聞きたかったことと答えが違っていたらしい。
「どうして、私の部屋にいるの?」
あ、そっちのことね。
「国のお偉いさんが無理矢理寮の部屋に入れるよう特命出して、今日からこの部屋で一カ月くらい過ごすよう言われた」
そうなんだ、と言って少女は興味なさそうにしている。
「……線引き」
ん?
「同じ部屋で過ごすなら、線引きは必要」
ああ、確かに男とならとりあえず適当でもいいかもしれないけど、女子と同部屋ならある程度はきっちりとルールは決めないといけないよな。主にシャワーだとか、着替えとか。
シャワーを浴びる時間と着替える場所を決めると、少女は何事もなかったかのように部屋から出て行ってしまう。
消灯までは時間があるのだし、まあこっちが気にすることでもないか。
そう思い、荷解きを終わらせ俺はさっさと次のために寝ることにした。
いつだって、この世界は不平等だ
少年はそんな中、抗うための術を見つけ出そうとする
なぜなら、そういう事に対して抗うのは、人間として当然のことなのだから
こんにちわ、土鍋ダイコンです。
いやー、どうしてこうなってしまったのでしょう。
セシリアとの決闘前までの話なのだから、そう長くなるはずないだろうと書いていたんですが、気付いたらほぼ9000文字を入力していた。
な、何を言っているのか分からないかもしれないけど、書いている作者も一切わからない(汗)
まあ、そんなことはどうでもいいのですが、やっとのことで更新ができました。
それなのにまだ決闘まで行っていないというこの進行の遅さ。正直ダメダメですよね。
さて、決闘前の話はサブタイトルの【上】の通り、二話構成になることにしました。というか、そうしないと一万字越えの話になってしまいますので、ご了承させてください<(_ _)>
最後になりますが、感想を入れてくれた人に感謝を。また、このような小説を読んでくださる読者の方々に、ありがとうと言う感謝を述べさせていただきます。