IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神 作:土鍋ダイコン
己の出せる全てを
相手に伝えるだけ
(配点:決刀)
身体に走る痛みで、意識が覚醒する。
視界に映るのは、決闘が始まる前にいたピットの天井。そして、桃色の髪と水色の髪の少女、布仏本音と更識簪だった。
「あ、とーやんが起きたー!」
「だいじょうぶ?」
二人とも心配そうな顔でこちらの様子を伺ってくる。どうしてそんな顔をしているのだろうかと思い、体を起こそうとするが身体の至る所に痛みが走り、再び倒れこむ。
「無理しちゃだめ。あれだけ無茶な機動して、身体が無事な訳ない」
簪が顔を覗き込むように怒る。表情があまり変わらないが、確かに俺に対して起こっているのがわかる。まあ、どうしてそこまで怒っているのかはわからないが。
ふと、自分の後頭部がやけに柔らかいものが当たっているのに気づき、何かと思い手を触れる。
「おお、とーやん大胆」
「ん?」
何が、と聞く前に突如視界一杯に何かが迫り、ゴツッと鈍い音ともに顔を殴られる。どうやら簪の肘鉄が顔に決まったらしい。
痛みに悶絶している途中、今度は身体を落とされ、痛みでやや鈍い身体に鞭を打つように第二撃が決まる。
「……えっち」
いったい何があって、そのような言葉が出てくるのだ簪さん。
訳が分からないまま、体を起こす。ゆっくりと身体を伸ばし痛む体の調子を確かめ、この調子なら多分引いてくれるだろうと楽観的に考えた。
「とーやん、この後大丈夫?」
何が、とは聞かない。
時間を見れば、試合前の時間から一時間以上も経っていた。どうやら俺が考えている以上に体への負担は大きかったようだ。
「調子はどうだ、武藤」
扉が開き、織斑先生が尋ねてくる。それに対し問題ないと言い切り、立ち上がり自分のISの状態を確認する。
あれだけの弾幕を受けたのだから、かなりやばいのではないかと思ったのだが、エネルギーから装甲の状態までほぼ前回まで回復していた。
「お前のISだが、整備科の連中に頼んで急いで整備させた。済まんがすぐに出れそうか?」
「問題なく」
再びISを纏い、ゲート前まで移動する。オルコット戦で動かすコツというかなんというかを分かったので、飛ぶことそのものはだいぶ楽となった。
「武藤、また先のような無茶な機動をした場合、教師として試合を中断させてでも止めなくてはならない」
「尽力します」
絶対にやらない、とは言い切れないのでとにかくやらないように努力はする。という旨だけでも伝える。
スラスターを吹かし、待ってくれているであろう奴の所まで飛んでいく。
アリーナの中央に待っていてくれる、白き鎧を纏った中世騎士のようなIS《白式》に身を包む織斑がいた。
「すまない、待たせたか」
「いや、そんなことより大丈夫なのか?」
こいつもか、と思いつつこれから戦う相手を気遣うのかと突っ込みたくなった。がこいつの性格から考えて本気で俺のことを心配してくれているのだろう。
「一応、これから戦う相手なんだが、分かってるよな?」
「誰かを心配するのに、戦う相手とか関係あるのか?」
こりゃ参った。こいつはとんでもないお人よしなのかもしれない。
「たく。大丈夫だ、戦いに支障は出ない程度までは回復した。心配をかけた」
素直に謝り、それを見て織斑は納得したのかおお、と笑顔で微笑む。なんというか、ほんとに良い奴だな。
「さて、俺の無事も確認できたんだろ? なら後は―――」
分かるよな?
刀剣を具現化させ右脇に構える。織斑も俺の安否の確認が取れたからだろう、真剣な眼差しで白銀の太刀《雪片弐型》を中段の構えを取る。
互いに一切動かず、アリーナ全体が異様な静けさに包まれる。
「っ」
「うおおぉぉ!」
ほぼ同時に飛翔し、刃がぶつかり合う。
ぶつかり合ったところから火花が散り、互いに弾かれる。そこに間髪入れずに左脇腹を狙った蹴りを放つが、それをギリギリで織斑は後ろに跳ぶことで回避し中段突きで距離を詰めつつ攻撃してくる。
俺は刀剣の腹で受け流し、距離を詰めてきた織斑の腹に掌底を叩きこむ。ISの絶対防御やシールドバリアーなどによってある程度のダメージを軽減できるとはいえ、速度が出ている中での掌底は少なからず体に答えるものだ。
「かはっ」
体勢を崩した織斑に間髪入れずに袈裟と逆袈裟に斬撃を畳み込み、三撃目を入れようとしたところで織斑が復活し。
「このぉ!」
スラスターを限界まで吹かした
何とか体勢を立て直そうとするが、それよりも速く織斑の斬撃が俺を斬る所まで迫っている。その太刀は刀身が光り輝いており、まるでレーザーブレードのような状態になっていた。
いつもなら、別段気にすることもなく刀剣で防ごうとしただろう。だが、自身の中の何かがこう言っているのだ。
―――アレに触れたらいけない。と。
スラスターを吹かし、無理に体を捻りつつ斬撃を躱そうとするが。が、ほんの少し切っ先がバリアーに触れてしまい――
「なっ!?」
――シールドエネルギーが、三割削られた。
たった切っ先が掠った程度で、こちらのエネルギーが三割も削られた。もし受け止めるのに失敗し、斬撃をもろに食らっていたらと思うと、勝敗はすでに決していたのかもしれない。
驚く暇もなく織斑の洸剣が迫りくるが、冷静に穿牙で鍔に当て弾き返す形で逆に斬撃を入れる。それを機に互いに距離を取り、一度深呼吸をしつつ情報を整理する。
織斑の雪片弐型、正確にはそれが光り輝いてる洸剣の時、掠りだけでもこちらのエネルギーをごっそり持っていくほどの火力を秘めている。今はその状態を解除しているようだが、油断ならない。
(いや、待て。なぜ解除する必要があるのだ)
あれだけの高火力。わざわざ解除する必要があるのだろうか。
いや、アレだけの高火力なのだ。なにかしらリスクがついているのかもしれない。例えば、発動中はバリアーが張れないとか。いや、バリアーはISの絶対設定の一つのはずだから、解除できるはずがない。だとすれば考えられる可能性としては、展開時間に限りがあるか、もしくは――
(発動中はエネルギーを大量に消費してしまう、とか)
だとすれば納得がいく。長考している時に発動し続ければエネルギーがもったいないと考え、発動を一時的に解除している。辻褄としてはあっているが、正しいかは分からない。
とにかく、洸剣の時はなるべく弾くなどせず、どうにかして躱さなくてはならない。
高速で情報整理を終わらせ、こちらに接近する織斑に視線を戻す。
「おおおおっ!」
先ほどと同様洸剣となった雪片弐型を振りかぶるが、大振りの上段は隙が大きく対処がしやすい。
「マジか!?」
俺は刀剣の柄で太刀を受け止め、足払いをして体勢を崩す。ISを纏っているので空中で足払いをした程度じゃ精々びっくり箱くらいの驚きしかないかもしれないが。
その小さな隙でも、隙は隙だ。
最上段に構え、息を吸い込みただ全力で振り下ろす。もっとも斬ることを優先した、全力剣戟。
「壱の型、《蒼炎撃》!」
体勢を崩されていた織斑は防ぐこともできず、最上段の振り下ろしをまともに食らい地面へと墜落する。
黙々と土煙が舞う中、俺は未だに右脇に刀剣を構えたまま、動かずジッと墜落していった場所を見続ける。
「っ!」
目を離していたつもりはなかったが、気付けば織斑は俺の前まで接近しており、洸剣の一撃を防御もできずに食らってしまった。そして響き渡る警報と共に表示される残りシールドエネルギーの残量。
今の一撃で六割を持っていかれ、残り一割しか残っていない。
これ以上、長期戦は望めない。つまり、次が決着をつける最後の一振りとなる。
「……行くぞ」
「ああ!」
互いに刀剣を構え、己が最後の一撃を繰り出すために加速する。
織斑は洸剣を左脇に構え、俺は居合の構えを取る。
その距離は凄まじい速さで詰め寄ってくるはずだが、二人にとっては遅く長く感じた。
洸剣を左切り上げで振りかぶる織斑は、絶対に当たると確信を持っていたのだが、そんな彼は知る由もなかっただろう。
俺が持つ剣術に置いて、彼の速さはあまりにも
ゆっくりと近づいてくる洸剣は、俺に当たる直前で目では認識することができないほどの速さで振り抜かれた抜刀が織斑の右脇に当たり、そのまま左に切り上げる。
「……肆の型《孤月》」
直後、キィンという音と共に四度銀の軌跡が閃き、織斑は悔しそうな顔を浮かべながらゆっくりと落ちていく。
『試合終了―――勝者、武藤智哉』
そして俺は、確かな勝利を掴み取った。
戦うということは勝ち負けだけではない
しかし、この場に置いては二人の少年にとっての勝利と敗北は決められた
そして、こう思うだろう
次は絶対に負けない、と
次も勝たせてもらう、と
それは、互いに譲れない想いと共に
どうも。二日に渡る荷揚げで腕が筋肉痛気味の土鍋大根です。
さて、今回は一夏VS智哉のIS戦でした、いやー、短い文章だなぁ。
セシリア戦はかなり長かったのに、半分以下の量ってどういうことなの?
次の戦闘シーンは頑張って書きたいと思います(-_-;)
では、また書き終えたときお会いしましょう。
この作品を読んでくださってくれた読者様に、感謝の言葉と気持ちを。
読んでくださって、ありがとうございます。