IS<インフィニット・ストラトス> 次元超えし女神   作:土鍋ダイコン

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男は皆媚びるもの
男なんて、最低
では、彼らは?
(配点:探求)


閑章 蒼滴の悩み

 クラス代表決定戦を終え、セシリア・オルコットは一人シャワーを浴びていた。

 

 少し熱めのお湯は汗でやや冷たくなっていた体を温め、水滴がボディラインをなぞるように流れていく。

 

 彼女はシャワーを浴びながら、物思いに耽っていた。その最たる原因…。

 

(――織斑、一夏)

 

 最初はどこまでも気に入らない男性だった。

 

 ただ最初にISを起動させたからと言ってちやほやされているだけで、知識なんて皆無で優雅さなどの欠片もない。

 

 しかし、戦いの場においての彼は全くの別人だった。

 

 最初こそ情けないほどの動きだったが、それがまさか初期化と最適化が終わっていないものだとは誰も予想だにしなかった。

 

 そこからの怒涛の攻め。

 

 なぜ彼のシールドエネルギーが先に切れたかは彼女には分からないが、もし彼の一閃が自分に届いていたと考えれば、まったくどうなっていたか。

 

(わたくしが、勝ったのに……)

 

 自分が勝ったはずだが、どうにも腑に落ちず胸のモヤモヤとしたものが無くならずにすっきりしない。

 

(織斑、一夏)

 

 思い出すは、彼の瞳。

 

 他者に、特に女性に媚びることない強い、意志の宿った瞳。その瞳を見るたびに彼女は自身の父親のことを逆連想していた。

 

 まだISが出る前。その頃は両親共に仲が良く、笑顔が絶えない家庭で彼女自身もその時間と場所が好きだった。

 

 しかし、ISが出始め、女尊男卑の考えが強くなり始めると、そんな笑顔が絶えない家庭が崩壊を始める。

 

 いくつもの会社を経営していた母は、さらに多忙になり笑うことが少なくなり、父は常に母のご機嫌をとるかのように顔色をうかがうばかり。そんな父の姿を見た幼少の彼女は、将来こんな男性とは結婚しないと心に決め、貴族の名を汚さぬように様々なことをやってきた。

 

 しかしその実、彼女から離れていく両親の気を引こうとピアノやバイオリンなどの習い事でたくさんの賞を取り、それを褒めてもらいたかった。

 

(あの頃は、本当にいろいろなことをしましたわ)

 

 ピアノにバイオリン、フルートにダンスなど、できる限りの習い事はやっていた。だが、ただの一度もコンクールなどに母が来ることはなく、来るのはいつも父だけ。

 

 それがどれだけ少女の心に響いていたか、周りの執事などが気付くはずもなく。何度自分の部屋で泣いたことか。

 

 ただ、いつも情けない父が、そういう時に限っては自分の部屋に訪れ、彼女を慰めてくれるのだ。

 

 次はきっと来れるから。だからその時のために頑張ろうと。

 

 情けない父が唯一、父らしい一面を見せる時。幼い自分はこの時の父に何度心を救われたか。当時は同時に嫌悪感を抱いていたが。

 

 そんな水と油のような二人は常に別々だったのだが、どうしてかその日だけは一緒にいた。

 

(今でも、どうして一緒だったのか分かりませんわ)

 

 国境鉄道の横転事故。その事故により百人近くの乗客員が死亡し、その中に両親の名が並んでいた。

 

 一時はオルコット家を陥れる陰謀ではないかと思われていたが、事故の規模からそれをあっさりと否定する。

 

 それからは騒々しい毎日であった。

 

 両親が残した莫大な遺産。それを狙う金の亡者から守るためにありとあらゆる勉強をし、その一環で受けたIS適正テストでランクA+が出た。それから政府によりさまざまな好条件を出され、両親の遺産を守るために代表候補性へとなり、ブルー・ティアーズの稼働データ収集を目的として日本へとやってきた。

 

 そんな毎日だったために両親の葬式はきちんとしたものができず、両親の部屋などの片づけも未だに出来ず仕舞いである。

 

(……次帰省する時に、チェルシーと一緒に掃除しましょう)

 

 今気にするべきことは、別のことである。

 

「……織斑、一夏」

 

 自身が探し求めた理想の、強い瞳をした男の一人。

 

 そして、もう一人。彼女の心の中にいるもう一人の男。

 

「……武藤、智哉」

 

 その男の名を呟く。

 

 織斑一夏とは別の、強い瞳をした男。

 

 最初は彼同様知的さも優雅さの欠片も感じさせないもので、織斑一夏以上に挑発的なことを宣言した男。

 

 彼との戦いの最初の感想は、落胆だった。

 

 そして、次に思ったのは驚愕だった。

 

 動きなんて初心者そのもので、ぎこちないもので途中何回か不自然に動きが止まったりなどしたが飛行に慣れていないことによる感覚の違いだろうと考え、徹底的に一方的な試合にした。

 

 二度と、こちらにあんな口がきけないように。様々な考えがあったかもしれないが、結局は父のように最後はこちらの顔を伺うのだろうと。

 

 だが、そんなことはなかった。

 

(あのときは、本当に負けるかと思いましたわ)

 

 あんな連続で鋭角に動き続けたり、時には知らないであろう技術である瞬時加速(イグニッション・ブースト)をしたのだ。驚くなと言う方が無理と言うものだ。

 

 最後の最後まで、勝つという思いが込められた強い瞳に、負けたくないと無我夢中で戦ったのを、今でも覚えている。

 

 そして終わった後に残った分からない気持ちに、それがどんなものかどうしても知りたくなった。

 

 世界最強の姉を持つ一人の少年の思いを。

 

 鋭い太刀のような、それでいて芯の通った一人の少年の思いを。

 

 二人の強い瞳をした男たちが、どうしてそのような瞳を持てるのかを。それが分かれば、もしかしたら父の気持ちを知ることもできるかもしれない。そして自分の中にある整理できない感情の奔流を理解できるかもしれない、と。

 

(そのためにも、明日はきちんと謝らないといけませんわ)

 

 あの男たちに、クラスメイトに。今まで自分が言ってきた非礼の数々の謝罪を。

 

 

 

 

 

 蒼き少女は悩む

 今までに出会ったことのない思いの少年たちを前に

 それが、少女にとって前へと進むべき糧となりえるか

 それが、少女にとってどのような思いになるか

 これからも悩み続け、探し続けるだろう




 どうも、土鍋ダイコンと申しまする。
 さて、二話同時投稿しました。
 今回はセシリアさんのみのお話となりまして、ほんの少しオリジナル?になっていたらいいです。なってるのかな?
 そういえば、気付けばUAが1800越えしていて、この作品を読んでくださる方がそんなにいるのか、と嬉し恥ずかしな気持ちでした。おかげで頑張って書きたいと思えるようになります。
 では皆様、年末を楽しく過ごせるように風邪をひかないように気を付けてください。
 最後に、この作品を読んでくださっている読者の皆様に、心からの感謝を。
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