「私がいない間にそんなことが・・・」
「そっ、これからは同棲することになってしまった魔王の娘ことアカーシャだ。複雑だろうがよろしく頼む」
戻ってきたリヴェリアにアカーシャを紹介する。神妙な表情で魔王の娘を見下ろす妻と現在の状況を微妙に感じ、複雑な気持ちを顔に出してる魔王の娘が対峙する横でラプラスが助け舟を出した。
「アカーシャのことは私に任せてもらおう。もしも悪さをするようなことをすれば責任を以て対処するよ」
「そうですか。そこまで仰るならば私から何も言うことはありません。でも・・・」
これだけは譲らないとアカーシャに強い意志を孕んだ眼差しを向けるリヴェリア。
「私の大切なヒトの心と体を傷つけるようなら、絶対に許さない。全身全霊で魔王の娘でも倒します」
「面白い、受けて立つぞエルフよ。【魔王の権威】が使えずとも、魔王の娘としての力は健在だ。私の可愛い従魔と相手をしよう」
「偶然ですね。私も魔法以外の力を身に着けてるところなので簡単に負けませんよ」
二人とも、俺の目の前で気になることを言わないでくれるか? 特にリヴェリアは何時の間に修行みたいなことをしていたの?
「ああ、そうだ。ラプラスに聞きたいんだが、これ扱うならどうする?」
宇宙の星屑を見せてラプラスの意見を乞う。
「それか。なんでも一度だけ願いを叶えるような物であるから、武器にでも防具にでも、アイテムとして望めばいいさ」
「精錬できるか?」
「闇神が創造した暗黒物質故に生半可な技術ではできない。神の領域に至った匠に聞いてみればどうだ?」
アドバイスを受けたので早速ヘパーイストスに相談しに向かった。
「こいつを精錬か・・・・・どう扱えばいいか」
「精錬自体は出来ないのか?」
「はん、無用な心配をするんじゃねぇよ坊主。お前の協力があって神匠に至れた俺に、鍛冶の技術において不可能なんてもんはない。扱いを知らないまま無邪気に大切な素材を粗末にしたくないだけだ。それとお前の要望を聞いてないぞ」
カウンター越しで相談に乗ってくれ、早速仕事に取り掛かろうとしてくれるヘパーイストスに意思を持つ攻防一体の武器を複数、デザインは任せる旨を伝えた。
「ふむ、その要望でこの『宇宙の星屑』の大きさだったら・・・これ一つで武器の大きさ次第じゃ30個は製作できる。ただし、求めてる攻撃力にはならないと思うがそれでもいいか」
「構わない。攻撃用アイテムとして永遠に使える物に製作が可能ならお願いする」
「未知の金属に挑戦できるなら鍛冶師として本望だ。ヴェルフと完成してやるから待っていろ。三日以内に完成してみせるぜ」
「今度は燃え尽きらないでくれよな」
ヘパーイストスに背を向け歩き出すと来客を知らせる鐘が鳴り、複数の上等な防具を身に纏っているプレイヤー達が近づいてくる。依頼を頼んだから二人の店を後に出た途端。「なんでだよ!」って叫び声が聞こえた。面倒事になりそうなので―――猛ダッシュした。
「うーん。申し訳ないと思うが来るのが遅く、運が悪かった自分達に悔やんでもらうしかないな・・・ん?」
中央区画の広場で一部賑やかな野次馬の人垣が築いていた。顔バレは面倒なので―――ラプラスに依頼して複製してもらったフェイクマスクで別人の顔になるアイテムを使った。姿も初心者用の格好だから誰も気づかれないだろう。完璧な変装したままで騒ぎの原因を確認してみたら。
「お茶の間の皆さんこんにちは! NWOの中から生中継を送りすることになったニューちゃんです! 本日から蒼天と日本のテレビにNWOの世界の日常と数千万人以上のプレイヤーの皆様の活躍を放送します!」
へぇ・・・もう始めたのか華琳。
ゲームの世界はゲームをしているプレイヤー、ユーザーしか知らない。プレイをしている本人達しか、していない他の人間達に熱く語ろうと本当の意味で伝わらない。だからNWOの世界を伝えようと、リアルから架空の報道局の者達に楽しく語ってもらう。これで蒼天のテレビ局の視聴率も上がるだろうな。
プレイヤーの活動も放送するってことは、有名なプレイヤーと接触するよな・・・・・となれば。家屋から入らず、他の町の畑から帰るか・・・・・。
「そしてこれはNWOの運営本社からの正式なお知らせです。初期から参入したプレイヤー、第二陣の新規プレイヤー、更にこれからNWOの世界に飛び込むプレイヤーの皆様には今後世界から注目される存在となります。よってプレイヤーの皆様のランクの格付けが正式に行われます!」
格付けだって? え、マジで・・・・・?
「なお、ランクの格付けは任意ですので強制ではございません。その場合は世界各国から認識されませんので、注目を浴びることが興味のないプレイヤーの方はNWOをこれからも楽しんでください」
あ、安心した・・・・・いや待て、俺の場合はランキングに入らないといけないだろこれ。華琳からもそんな話をされたばかりじゃないか・・・・・っ! あーメンドクセー!
「・・・・・俺だけなんだっけ? 第4エリアにすら行ってない初期のプレイヤーって」
レベルとステータス、スキルや称号に所持金やアイテム、NPCとのパイプが潤沢でも他のエリアに進んでないのも問題か。皆呆れられてるし・・・・・。
「はぁ、イカル達第二陣のプレイヤーにも出遅れるのは癪だし、本腰を入れて俺も前に進むか」
まずは南から進もうか! と、思った時にフレンドからのメールが届いた。ヘルメスからか? ・・・おお? 遅れた支払いの完済の準備ができた? よし行こうすぐ行こう!
「来たぞヘルメス。早速払ってもらおうか!」
「??? 誰あなた? 声はハーデスだけど」
「ああ、変装したままだったな」
フェイクマスクを外す俺に目を丸くするヘルメス。
「変装アイテム? そんなアイテム聞いたことも見たこともないわ。どこで手に入れたの?」
「抱えてるNPCの錬金術師が作ってもらったんだ。いずれ錬金術師のプレイヤーも製作できるだろうさ」
「非常に興味深い情報を抱えているのね。とにかく今までの情報料を支払うことが出来るようになったから一括で渡すわ」
ようやく渡される多額のGに満足して―――ニヤァと邪悪な笑みを浮かべる。
「で、俺から情報が欲しいかな? それなりに持っているけどまた破産させてやろうか」
「ど、どんな情報を抱えてるのか単語だけでも教えてくれる?」
おいおいそんな小動物みたいに怯えた顔をしないでくれよ。意地悪したくなるじゃないか。
「そうだな。じゃあ、最初は・・・・・ドリモール達の住処を発見した」
「―――っ!?」
「次はこれだ。融合の秘薬。装備同士の融合を可能にする新アイテムだ」
「―――っ!?」
「そんで、サモナーとテイマーしか入れない獣魔国という国の存在が獣魔ギルドで示唆された。その国の存亡を懸けた大規模のイベントクエストが発生する可能性がでてきたけど、現状売れるのはドリモールの居場所ぐらいだな」
さて、どうする? 愉快な気持ちでヘルメスに訊く。プルプル震える彼女は酷く葛藤、追い詰められた人の顔で答えを口にした。
「か、買わせていただきますっ・・・!」
「毎度ありー」
まぁ、あの坑道へ行くためにはドワーフ王の絡んだ案件のクエストがある。早々簡単にドリモールの住処には行けんだろうがな。そのこともしっかり含めて教えて数百万の情報料を得たのだった。
「あの、ところで融合の秘薬って何の素材で製薬されてるかわかる?」
「数は知らないけどオリハルコンが素材になってるらしいぞ」
「・・・・・他のプレイヤーが作れないんじゃないの?」
「そもそも、秘薬を作れる段階までプレイしている錬金術師がいるかどうか知らんがな」
話を打ち切り、ヘルメスから遠ざかる足を南へと進ませた。
だからこそ前以ってタラリアから買った情報がようやく役に立った。
南の町のフィールドダンジョン、地下水路を抜けた先にある第4エリアには、黄樹の谷底というフィールドが広がっている。そこは、伐採してもアイテムにならない、黄樹という木が縦横無尽に繁茂した、植物の迷路とも言えるフィールドのエリアボスの名前はガルーダ。名前の通り、巨大な鳥のモンスターである。まず飛んでいることも厄介だが、それ以上にガルーダの羽がおこす風圧が厄介らしい。理由はこちらの敏捷が大幅低下するうえ、継続ダメージが発生するのだ。
「まあ、その前に門番だがさくっと倒そう」
門番というのは、ボス部屋の前に陣取る大型モンスターのことだ。ボスを倒さないと、毎回湧く迷惑なやつだった。
ガルーダの門番はストーンマン。まあ、体長5メートル程のゴーレムの1種だ。ただ、弱点が解明されており、樹属性、土属性が弱点だった。しかも、体の何ヶ所かにある採掘ポイントで採掘を行うと、大ダメージを与えられると分かっている。そんな情報を頼りに―――せず。
「【咆哮】!」
「グルァッ!?」
「へいへいへい!」
不壊のツルハシ、ラヴァピッケルのみで弱点ポイントに硬直10秒間以内に叩き込んでは20秒以内で圧倒した。【悪食】を使うまでもないわ! そしてお前もだガルーダ!
「はっはっはー! ツルハシとピッケルだけでガルーダを倒したプレイヤーは俺だけだろうな!」
【飛翔】でガルーダに近づき【咆哮】で動きを止めた隙に、両の目玉を穿ち片翼を破壊して飛べなくすればがら空きな背中で打ち下ろし続けたのだった。倒した報酬は巨大な卵とガルーダの部位の素材。今となっては使う道はないから卵は取っておくにしても他は売っちまおう。
「やあ」
「うん?」
誰かに声を掛けられた。身長が180センチほどもありそうな茶髪の男性だ。ヒョロッとした痩せ形なうえに微妙に猫背なので、戦闘力が高そうには見えないな。眼鏡の奥の瞳は細められ、口も柔和そうに緩んでいる。どう見ても善良そうだ。男はボサボサの頭をポリポリと掻きながら、ゆるい感じで声をかけてきた。
俺が入ってきたダンジョン側の入り口から、人が入ってきたのか? だがしかし、それはおかしい。エリアボスの部屋はパーティごとに作成されるので、戦闘終了しようがフレンドであろうが、基本的には他のプレイヤーは入ってこれないのだ。
「こんにちは、僕はトーラウスっていうんだ。よろしくね」
「俺は死神ハーデスだ」
トーラウスと名乗ったNPCは非常にフレンドリーであった。俺と握手した後は、聞き返して来た。
「死神ハーデス君・・・・・。ピスコっていう男性を知っているかい?」
「もしかして、木材屋の?」
「そうそう! やっぱり君がハーデス君か! 僕はピスコの息子なんだよ」
なんと、以前花見を一緒にしたNPC、ピスコの息子だった。向こうは厳つい外見だったのに、こっちはナヨナヨタイプか。全然似てないな。まあ、ピスコは外見は厳つくても、喋り方は紳士だったから、性格面では似ているのかもしれんけど。
「父がとても喜んでいたよ」
「そうか、俺も楽しかったから何よりだよ」
「父が言っていた通り、君は信用できそうな人だね・・・・・。ねえ、実は少し困っていることがあってさ、よければ手伝ってもらえないだろうか?」
「内容によるんだけど?」
「僕は植物の研究をしていてね、今は雑草の図鑑の編纂をしているんだけど、助手が実家の都合でしばらく町を離れてしまっているんだよ。そのせいで作業が進んでいなくてね。その手伝いを探していたんだ」
「なるほど」
どうやら戦闘系の依頼ではないか?
労働クエスト
内容:雑草の鑑定と仕分け
報酬:15000G
期限:7日以内
「返事は急がなくていいよ。僕はこの先にあるサウスゲートの町に住んでいるから、もし受ける気になったら訪ねてきてくれ。地図には、僕の家の場所を書き込んでおくから」
トーラウスがそう言った直後、マップが自動的に立ち上がり、青い点が打たれる。多分、この第5エリアの町、サウスゲートの地図なのだろう。ただ、俺はまだ行ったことがないので、外壁を示す円と2本の大通り以外は何も描かれていない真っ白の地図だ。そこにマーキングされても、訳が分からなかった。
「それじゃあ、また会えるのを楽しみにしているよ」
「ああ」
「またね」
手を振りながら去っていくトーラウス。このクエスト、どう考えてもチェーンクエストの続きだよな? だとすれば、受けないという選択肢はないだろう。
「まあ、急がなくてもいいって言ってたし。町を軽く見て回った後でもいいか」
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
「ここが第5エリアの町、サウスゲートか」
第5エリアの町は、イーストゲート、ウェストゲート、サウスゲート、ノースゲートという名前だ。むしろ、ゲームはここからが本番で、魔境への門という意味なのではないかと言われている。
本当に今頃になってようやくたどり着いた俺って・・・・・。
第3エリアの町や精霊の街は幻想的で綺麗な、いかにもファンタジーな町だったが、第5エリアの町はまた違った姿をしている。
言ってしまえばリアル追求型? 海外旅行のパンフなどに出てくるような、世界遺産的な中世風の街並みって言えばいいのかね?綺麗な西洋風ではあるが、非現実的な雰囲気はなかった。
「うーんと・・・トーラウスの家は、町の外れか」
地図に付けられたマーキングを見ると、かなり奥まった場所にあるらしい。とにかくこの町のマップを埋めてからでも遅くはないだろう。
30分後・・・・・。
「ここだよな?」
裏町の細い道を通り抜けて俺たちがたどり着いたのは、一軒の民家だった。外見は、左右に建っている普通の家と変わらない。だが、地図のマーキングは確かにこの家を指し示していた。
「すいませーん」
呼びかけながら、軽くノックをしてみる。すると、すぐに扉が開いた。中から姿を現したのは、見覚えのあるヒョロ長の男性だ。
「おや、ハーデスさん。早速来てくれたんだね」
出迎えてくれたトーラウスに招かれて、家の中に足を踏み入れる。すると、そこには驚きの光景が広がっていた。まず、部屋が広い。多分、壁をいくつか取っ払っているのだろう。20畳くらいはありそうだ。その部屋の中には所狭しと、大量の草花が置かれている。いくつか置かれた木製の机の上は勿論のこと、壁や天井からもぶら下げられ、床のシートの上にもうず高く積まれている。
一応、入り口脇の壁際に置かれたソファ周りだけは無事なようだ。お客さん用なのだろう。というか、ソファ周辺以外は足の踏み場がない。しかも、この部屋に置かれている草、その全てが雑草であるようだった。植物学者で、今は雑草の研究をしてるっていう話だったが、これは凄いな。
「ささ、座ってくれ。お茶を用意するからね」
トーラウスは器用に雑草の間を抜けて、奥に消えていった。よくあの狭い場所を歩けるな。しかも雑草には一切触れず。何か特殊な歩き方でも習得してるのか? そうでなくても歩きなれた感じが強いな。
戻ってきたトーラウスが、俺にカップを渡してくれる。どうやらハーブティーであるらしい。さすが雑草博士。
「いただきます――おおっ? これ、ハーブティー?」
「ああ、僕の特製さ。どうだい?」
ハーブティーを口に含んだ俺は、驚きの余り思わず声を上げてしまっていた。
「この爽やかな香りはいったい?」
「ああ、レモンバームのフレッシュハーブティーなんだよ。乾燥させるよりも香りが楽しめるから、僕はフレッシュの方が好きなんだ」
なんだと? 今なんと言った? フレッシュの方が好き? 謎の爽やかさはレモンバームという未見のハーブだったとして、フレッシュハーブティー?
「つまり、フレッシュハーブティーが存在するんだな?」
「存在するねぇ」
「・・・・・どうやって作るんだ?」
「そうだねぇ。僕の手伝いをしてくれたら、作れるようになるかもよ?」
トーラウスはそう言ってにっこりと微笑んだ。これは、クエストを引き受けて成功させたら教えてやるってことだろうな。いいだろう。やってやろうじゃないか。その挑戦、受けて立つ!
「ぜひやらせてください。お願いします」
「うんうん。引き受けてくれて嬉しいよ。それじゃあ、最初の仕事だ。このテーブルの上に置いてある雑草を、仕分けてくれるかい?」
「これ、全部?」
ほぼテーブルを埋め尽くしている雑草を見た。
「ああ。採取場所から採ってきたんだけど、分別する時間がなくて。種類ごとに分けてもらえるとありがたいんだ」
「わかった」
早速鑑定を始めていく。仕分けの仕事は、最初はそこそこ面白かった。俺が知らないハーブがたくさんあったのだ。それらを鑑定しながら分別するのは、単純に勉強になった。鑑定した束の雑草を種別ごとに並べていく。
だが、それも1時間も経過すれば飽きてくる。2時間経てば、最早仕分けマシーンと化すしかなかった。
そして3時間後。ようやくテーブルの上に積み上げられていた大量の雑草の分別作業を終わらせることに成功していた。
「んー終わった」
凝っているわけはないんだが、腰や肩を思わず解してしまう。だが、俺は忘れていたのだ。労働クエストが、こんな短時間で終わるわけがないという事を。トーラウスが嬉し気に笑いながら、俺が分別した雑草を手に取っている。
「いやー、凄い早かったね。じゃあ、次はこっちのテーブルを頼むよ」
「え?」
「最初は様子見で少ない仕事を割り振ったけど、あの素晴らしい仕事っぷりなら問題なさそうだね。ぜひ頑張ってくれよ」
最初は少ない仕事? あれで? そうか。忘れていたが、これでこそ労働クエストだよな。
「・・・・・いいぜ。やったろうじゃないか」
1週間も先伸ばして最終日で一気に夏休みの宿題の消化に追われる学生みたいになりたくないからな。俺はその逆、全て初日で終わらせて残りは自由を謳歌する派だ。今日中に終わらせてやる!
そして日が落ちかける頃、全ての作業を終えた。
「終わったぞトーラウスー!」
「お疲れ様」
今日で何度目か分からない、時おりトーラウスが差し入れてくれるお茶を飲んでリフレッシュすることで、なんとか乗り切ることができたのだった。あと、作業の合間にトーラウスとの雑談も面白かった。植物系の質問をすると色々と答えてくれるし、発見もあったしね。おかわりを求めるとトーラウスがフレッシュハーブティーを出してくれた。
「助かったよ。本当にありがとう」
「いや、俺も色々と勉強になったから」
実はその作業の合間にした雑談の中にはトーラウスに籾の処理の仕方を色々と教わったのだ。専用の道具を用意しなくてはならないと思っていたんだが、石臼でどうにかなるらしい。
籾を石臼に入れておけば、後は放置でいいというのだから楽である。時間をかけ過ぎても、粉になるということもないそうだ。
籾はどうやっても玄米にしかならず、玄米や白米を長時間潰せば米粉になるらしい。いやー、風車塔を買っておいてよかった。あとは途中の工程で色々と工夫をすることもできそうだ。乾燥させてみたり、殻の剥き具合を変えてみたりね。・・・それは知らなかったがな。
しかもそれだけではない。何とクエスト終了間際に、新しいスキルを覚えたのだ。そのスキルの名前は『植物学』。というか、このスキルを覚えたからクエスト終了なんだろうか?
多分、雑草の鑑定数が関係していると思うが、鑑定する雑草の種類や品質なども影響するかもしれない。このクエスト以外でも習得可能かどうかも分からない。ともかく、これはかなり画期的なスキルであった。まず、鑑定できる植物がさらに増えた。なんと、今までオブジェクトだと思っていた一部の植物を鑑定し、採取、伐採できるようになったのだ。
例えば、サウスゲートにたどり着く前に通り抜けた黄樹の谷底。そこで迷路を形成していた黄樹である。トーラウスの研究所には伐採された黄樹の素材が置かれていたのだが、それも問題なく鑑定できるようになっていた。
「イエローウッドが実は黄樹だったとは・・・・・」
染料に使うための素材らしいが、未だに採取場所が分からず、NPCショップでしか手に入らないアイテムの1つだ。
「さて、それじゃあ報酬を渡さないとね。これを受け取って欲しい」
「1500Gだな。確かに」
安いけど、植物学スキルが報酬みたいなものだから問題ない。
「もう暗くなってるけど・・・・・。どうしようかな」
まずは植物学の効果を試してみるか。俺はサウスゲートの町から黄樹の谷底に戻り、フィールドを覆い尽くす黄樹の迷路を観察して歩いた。すると、今まで何もなかったはずの場所に、新たな伐採ポイントが出現していることを発見する。
普通の樹木は存在せず、今まではフィールドオブジェクトとしか思っていなかった黄樹の壁だ。あとは普通の伐採と同じ要領だった。トーラウスの家で見せてもらった、イエローウッドの欠片というアイテムが入手できている。
植物学のおかげで、新たな採取物が増えたはずだ。そしてまた新発見ができるな。
「いったんここでログアウトだな」
食事の準備をしなくちゃならんし、食べ終えたらもっかいログインして先に進もう。
そんな気持ちで俺はログアウトしたのだった。
数十分後―――。
ログイン。
「よし、行くか第二の地底湖へ」
既に他のプレイヤーの手によって攻略されているから、俺も楽勝で攻略できる。というか―――俺とイッチョウと攻略した地底湖と同じなんだよな。違いがあるのはユニーク装備が手に入るボスの有無だ。こっちの地底湖にはそんなボスがおらず、純粋に湖の中に潜んでいる中ボスを倒すだけだ。ウツボに似た魚型モンスター。陸にも上がっては蛇行して襲い掛かるどころか、湖の中にいる青い魚を捕食してHPを回復、赤色の魚は攻撃力上昇の赤いエフェクトを纏い、黄色い魚は麻痺状態を誘発させる状態異常の攻撃するというパターンを度々変えて数多のプレイヤーを迎撃してきた。俺もその一人になるが・・・。
「奇麗な湖を毒の湖に~」
時間をかけて湖をゆっくりと毒々しい紫色に塗り替えていく。回復を図ろうが、青い魚ごと毒殺すれば回復できまい。毒状態となって陸に上がったウツボは、赤いエフェクトを纏って突っ込んでくるも【溶岩魔人】に変身した俺に突っ込んで自ら丸焼きになった。
「はい撃破~」
倒したら地底湖は解放される。次に天井の穴へ潜り湿地帯に出れば地底湖の先にある第6エリアへ足を運び、直ぐにレイド戦を臨んだ。それも各フィールドの特殊ボスであるプレデター。俺は今回初めて戦うけどな。
その名もジャイアント・シルバー・クラブ。
要は、超巨大なカニである。銀色の装甲を持つ、体長20メートル超えのガザミだ。
月明りに照らされたその甲殻は美しくさえあるが、魔法のダメージを大幅に減少させる凶悪な効果を持っているそうだ。
「【
五体の巨大なモンスターを召喚して嗾けさせた。蠍がトライデントの尻尾を伸ばして蟹を突き飛ばし、吹っ飛んできた蟹の甲羅を鞭のようにし鳴らせ振るう蛇が叩き返し、転がる蟹の巨体を蹴り飛ばすゴーレムからパスされた赤鬼は金棒で思いっきり青鬼へ打ち返し、青鬼も同じように金棒で打ち返す・・・・・完全にリンチですわこれ。五体の召喚時間が過ぎる頃にはプレデターなる蟹のHPは5割しかなく、残りの5割は俺が【覇獣】と化して美味しくバリバリとHPドレインでいただきました。
そして次は―――第7エリアへ直行する。そしたら北と東、西のエリアも第7エリアまで進んでみよう。