バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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お化け屋敷

4日後。

 

今の俺は、東西南北にある第7エリアの町まで開拓して到達できている。

 

東の第7エリアにあるのは、鉱山の町。ドワーフがたくさん住んでいる、谷間に築かれた石と鉄の町である。周辺の岩山には、ガーゴイルなどが出現するが、鉱石をゲットするには最適の環境と言えるだろう。

この先の第8エリアは2つに分かれており、片方が火炎樹の山。全身から炎を噴き上げる不思議な木が生える山である。火炎系のモンスターが大量に出現するらしい。更にその先のエリアに進めば皆が知っている火山のダンジョンがあるドワルティアだ。

 

もう片方が、俺静電気山。磁力や電撃による罠が多く、金属製の武器だと苦労するそうだ。静電気を防ぐ薬もあるが、それを全員に使っているとかなりお高くなってしまう。それゆえ、軽装の戦士などが重宝されているフィールドだった。

 

西にある第7エリアの町は、オアシスの町。周辺は砂漠である。

その先は、岩石が行く手を塞ぐ岩石砂漠と、蟻地獄のような罠が大量に存在する流砂の回廊に分かれている。流砂の回廊は、買い取った情報にあった海苔の採取できるフィールドだ。その内行ってみたい。

 

北は森林の町。その名の通り、森林に埋もれるように存在する、エルフの町だ。高品質な弓などが売っていることで有名である。そして更にその先のエリアを進めばリヴェリアの故郷のアールヴの里がある。

第8エリアは、アンデッドやゴーストの徘徊する闇の山や森、擬態植物に注意が必要な捕食の森であるらしい。ここは、ホラーが苦手なプレイヤーにとって正直どっちも行きたくないだろう。

 

南は水路の町。まるでベネチアのような、ゴンドラで町中を行き来する水上都市である。観光と探索に訪れるプレイヤーの数が多いらしい。先は、泥炭地帯と巨大川というフィールドに分かれているそうだ。

 

 

―――ということで今日、北の第7エリアの町の先の捕食の森へ挑戦する。

 

 

「えと? 退魔用品が必要不可欠、なんだけ?」

 

タラリアの情報を頼りに霊系モンスターを倒すことが出来るアイテムを売っている店に向かう。大通りに並ぶ店の内の一つを見つけて中に入ると、NPCがいない店内には紙に赤色のよく分からない文字と記号が書かれた札のアイテム、封魔の塩というアイテムや【破邪の大盾】と【破邪の短刀】があった。

 

短刀は霊系モンスターなどに対して短刀での攻撃ダメージを増加させる効果があった。

また大盾は同じく霊系モンスターなどからの、攻撃ダメージをカットする効果があった

 

「・・・・・いらない気がする」

 

ほぼダメージを受けない防御力とスキルがあるし、魔法が通じる相手に短刀は不要じゃないかな。そう判断を下した俺は大量に退魔用品を購入して捕食の森へ向かう。どっちが捕食者なのか確かめてやろうじゃないか。【飛翔】で空を飛び西へと向かった。しばらくして、青白い女性の幽霊や違う幽霊達が迫って来たので回避行動取りながら飛んでたら、眼下にボロボロになった大きな洋館らしきものが見え始める。その周りは他の場所に比べ霧が濃く、全体をはっきりと確認することはできそうになかった。そこへ降りて半開きになってる扉を潜った。

 

辺りを見渡した。

 

随分と大きな洋館のようで、今いるエントランスらしき場所から、入り口とは別に正面と左右に扉が三つ。

さらに階段があり、二階にも扉が見えた。天井にはボロボロのシャンデリアがある。

また、壁に取り付けられている燭台の上で小さくなった蝋燭がゆらゆらと小さな火を灯していた。

 

うん、まさにホラーに相応しい演出と雰囲気だな。

 

右の扉まで歩いていき扉を開ける。すると、少し埃が舞い上がった後で扉の向こうに伸びる廊下が見えた。

念のため警戒の意味で、耳に手を当てて廊下の向こうに聞き耳を立ててみるが、特に物音はしなかった。

 

なので廊下を進んでいく。長い廊下には左に曲がることができるところがいくつかあった。

またそれだけでなく、部屋につながっているのだろう扉もあって調べる場所は多そうだった。

 

「どこから行こうかな・・・・・うわっ」

 

足に違和感を感じて下を見る。すると、歩き出そうとした俺の足を、地面から伸びる無数の透けた白い手が掴んでいたのである。手は少しずつ伸びて体を掴んでくる。

 

そして、道中にもいたあの青白い顔をした女性の霊が壁からするりと抜けてこっちに近づいてくる。

 

「【クイックチェンジ】! まさかすぐに使う時が来るとはな!」

 

血のように真っ赤な大鎌―――【ハーデスの大鎌】を!

 

 

『ハーデスの大鎌』

 

【DEX+25】

 

【AGI+10】

 

【破壊不可】

 

【無双乱舞】【血纏い】【狂魂】

 

 

【無双乱舞】

 

【STR】依存の無数の防御力貫通攻撃。50の数値ごと斬撃を放つことが可能。

 

 

【血纏い】

 

HPを消費した数値分の【STR】が上昇する。

 

 

【狂魂】

 

攻撃に成功したプレイヤー・モンスターに状態異常を付与する。

 

 

しがみ付いてくる足元を切り裂き、女性の霊も両断。倒せた感じはしないものの幽霊はすっと消えた。

今度こそ歩き出した所で足元が鈍い青色に光る。今度はなんだと思いながら受け入れる姿勢で見守る中、光は大きくなり、視界が真っ白になって・・・気づいた時にはどこかの部屋だった。

 

扉が外れてしまったクローゼットに、埃の積もったベッド。シーツはボロボロになっており、床はところどころめくれている。

 

「転移トラップ? うーん、ここの情報はあんまり調べられてないから攻略方法もいまいちわからん」

 

外へ出ようとドアノブを掴むが、ひねってもガチャガチャと音がするだけで扉は開かない。鍵穴もなく、開かない理由は分からなかった。

 

「ん・・・壊せるか? 試してみようか」

 

大鎌の切っ先を扉に向ける。

 

その時背後でギシッと音がして、俺は振り返った。

 

すると、まるで夜闇を固めて形作ったようなどこまでも黒い影がのっそりと起き上がっているところだった。

 

「霊相手に物理は通用するはずもなく、退魔用品の出番だな。はいペターっと」

 

お札に書かれていた赤い文字が光り始め、霊の表面を白い光が伝っていく。

光が霊の体を覆うにつれて霊は嘆きの声を上げ始めた。

 

「もっと張るべきか。塩も追加だ」

 

札を数枚追加、塩を振りかけると霊はダメージエフェクトを一度も出すことなく、白い光に包まれて天に昇って消えていった。

そして影が消えていくとともに後ろでガチャリと鍵の開いた音がした。

 

「開いたのかな? 鍵穴はなかったけど」

 

扉に近寄りドアノブをひねる。すると先程とは違い、ドアはするりと開いた。

 

「さっきの霊みたいなのを倒さないとダメなのか」

 

判ったことを口にし、また閉じ込められないようにと急いで部屋から出た。

 

「た、助けてくれぁあああああっ!!!」

 

「どはぁっ!?」

 

横から何が飛び付いてきた何かともみくちゃになりながらぶっ飛び、転がる身体が止まったところでようやく原因が判った。

 

「いきなり誰だっ・・・・・て、カワカミ-100代?」

 

「その声、ハーデスか? お前でもいいから私をここから連れ出してくれ!? もう嫌だこんなところにいるのはぁっ!!」

 

首が絞まるっ。防御力が高くても首はダメ、首はっ・・・・・!

 

「理由を知りたいけど、兎に角離れてついてこい」

 

「いやだっ、離れたくないっ! 直ぐそこに幽霊がいるんだ!」

 

「あ~確かに・・・いるな。血塗れの子供が」

 

「言うなよぉっー!! ひいっ? 今触られたっ、触られたところが冷たいっ!!」

 

お札を張って退散!

 

「お前、アイテムないのかよ」

 

「持ってるけど使えるか! 相手は幽霊なんだぞ!」

 

「データ相手に怖がるなよな。武神のくせに」

 

「武神でも怖いものは怖いんだ! 殴れる相手なら怖くないっ!」

 

殴れないわな。だって相手は霊だもの。

 

「ほら行くぞ。離れてくれないなら前か背中にしがみつけ」

 

「な、何で前なんだ・・・・・」

 

「頭の後ろに目があるわけないのに、音もなく幽霊に近付かれても判るはずがないだろ。その時はお前の背中か顔を触ってくるんだぞ、文字通り背後から。逆に前ならお前が後ろから来ていることを教えてくれるならすぐに対処できる。どっちがいい」

 

カワカミ100ー代は、凄く悩む前もなくコアラのように前から俺の腰に両足を絡め、両腕を首に回して胸を押し付ける感じで零距離の密着を選んだ。

 

「こ、これでいいか・・・?」

 

「ああ、動きやすくなった。行くぞ【超加速】!」

 

素早く洋館の中を駆け巡る。前は俺が、後ろはカワカミ100-代が幽霊の出現を確認できるから直ぐに退魔用のお札と塩で撃退行動が出来る。

 

「き、来てるぞ! 黒いのっ! ああっ、台所の黒い方だったら楽なのにぃっ!」

 

「よし、倒す」

 

「何でわざわざぁっ!?」

 

「この先行き止まりだったからだ。悪霊退散!」

 

「わぁあああっ!? 女の幽霊が、子供の幽霊が壁から出てきたあっ!」

 

【飛翔】で宙を駆け出口を探す最中、素朴な疑問をぶつけてみた。

 

「そういえばさ、お前ログアウトしないのか?」

 

「出来ないから逃げていたんだっ!」

 

・・・あっ、ほんとだ。しようとも思わなかったから気付かなかったわ。でも、それもできるようになったぞ。

 

「だっしゅーつ!」

 

俺は覚えていた道を最短で帰って、とうとうログアウト可能な場所まで戻ってきた。洋館の外に躍り出た俺達の目の前に見覚えのある顔が揃ってるプレイヤー達が佇んでいた。

 

「外に出たぞ」

 

「あ、ありがとうハーデス」

 

「どういたしまして」

 

戻ってきたことを安堵する俺達二人。

そんな俺達の背後から、冷たい腕が伸びまとめて抱きしめてくることなど気付かないのも無理はないよな。

 

「ひっ・・・・・!」

 

「んっ」

 

驚き一瞬固まったところでスキル獲得の通知がきた。

 

「えっと・・・・・【冥界の縁】? アイテムの効果が二倍になるスキル? ほぉ~、こいつはラッキーだな」

 

偶然にも獲得したスキル内容を確認する。その場にへにゃっと座り込んだカワカミ100-代も、同じスキルを手に入れることができているようだった。

 

スキルに書かれているフレーバーとして、時折背後からそっと手を貸してくれる誰かとの奇妙な縁というものがあった。

 

「う・・・・・そんな縁いらないぞ」

 

お前はそうだろうな。

 

「ハーデスか? お前もこのエリアに来たんだな」

 

「まぁな。それで、お前達はどうしてここに?」

 

ナイスガイが答えてくれた。

 

「肝試しのつもりでこの洋館のを利用して遊んでいたんだ。カワカミ100-代と直江兼続が最初に入って、帰りを待っていたんだよ」

 

「まさか、直江兼続じゃなくてお姉さまとハーデスが戻ってくるなんて予想外だったわ。直江兼続はどうしたの?」

 

「俺は元々ここに一人で来たからあいつは知らんぞ。やられたんじゃないか?」

 

カズコ達はメッセージを送り確認したら、まだ中にいて俺の側にいる彼女を探してる、とのことだった。

 

「完全なるすれ違いだね」

 

「でも、どうして二人は離れてたの?」

 

「転移の罠でどこかの部屋に飛ばされたぞ」

 

「わ、私と舎弟もそうだった・・・・・」

 

彼女の言葉で納得した様子の直江兼続のパーティー一同。

 

「お前らもここに来るのは初めて?」

 

「そうよ! せっかくの夏なんだからゲームよりもリアルで遊ぶつもりで、ここで肝試しをしたらしばらくログインしないことにしてるのよ」

 

「なるほどな。俺もたまには蒼天に帰ってみようかな」

 

そんな何気ない一言は、どうやらこいつらを刺激してしまったようだ。京・D・ブルーが距離を縮めてきた。

 

「学園長、旅人さんも蒼天に帰った?」

 

「そりゃするだろ。この時期は外国に飛び回る忙しい仕事があるんだから」

 

「ねえねえ、アタシ達が蒼天に行ってみたいと言ったら、やっぱりダメかな?」

 

何時かそう言うだろうと思ってたよ。案の定、俺の予想を裏切らないなこいつは。

 

「それは王達が判断することだ。俺からはイエスもノーも言えない。ログアウトしたら聞いてみるが、期待するなよ」

 

「頼むぜハーデス!」

 

「蒼天には強い奴がいるんだったら、是非とも挑んでみたいな。特に蒼天の空の上にいる化け物達と!」

 

カワカミ100-代も予想通りなことを言ってくれる。

 

「話は終わったな? 俺は次に行くから」

 

「今度、一緒にチーム組んで遊びましょうね!」

 

「またなハーデス」

 

おう、と手を振って俺は先に町へ帰った。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

「もっかい掲示板を見よっと」

 

このエリアで手に入る何かを調べる。改めて確認すると、透明な足場を作って空を跳ぶ靴がこのエリアで入手できるようだ。うーん、一応は取っておくか。【飛翔】で目的の場所へ向かった。

 

 

「あー、やっぱり人が多いなあ」

 

上空から下を確認すると、魔法やスキルのエフェクトがあちこちで煌めいていた。狙うモンスターはいわゆる霊型モンスターであり、全身が白く輝く骨でできている。

 

すっと消えては現れてを繰り返し攻撃を躱してくるモンスターで、当然物理は効かない。

 

「うーん・・・・・この辺りじゃ俺だとやりにくいか」

 

俺のスキルは広域殲滅と至近攻撃のどちらかがほとんどであり、こういった場面においてちょうどいい射程のものはないといってもいい。装備を替えれば戦えないわけではないが、人気のないところでしたいな。

 

「別のところでも出ないかな?」

 

俺はここを避けて別の場所を探すことにした。

 

幸い、目的のモンスターはある程度上空からでも確認できるくらいの光を纏っているため、探すことは可能だった。

 

「いなかったらここに戻ってこよう」

 

MPを補給してから俺は別の方向へ向きをぐるっと変えると、広いフィールドを外へ外へ、町から離れるように飛んでいく。

 

「いないかなー・・・・・うーん、もうちょっと探してみよう」

 

ゆっくりと飛びながら下をじっと見る。そうしてしばらくいったところで霧が濃くなっている山の近くまで飛んできた。

 

「ここは下が見えない・・・・・頂上の辺りだけ確認しようかな? 他のプレイヤーがいなさそうだし、何かいるとしたらそこだよな」

 

そうと決めた俺は高度を下げると少し開けた場所に降りた。

 

辺りを見渡しつつ山を登っていく。

 

そうして少しいった所で、霧の中に透き通る赤い骨で出来た霊型のモンスターが俺の前に現れた。

 

「ちょっと違うが・・・霊は霊だ」

 

別モンスターなのだから目的通りでないことは確定的なのだが、気にせずとりあえず倒してみることにした。

 

「効くかな【挑発】!」

 

試しに【挑発】をすると近くからさらに数体同じ見た目のモンスターが現れる。

 

「おっ、ラッキー! かーらーの、悪霊たいさーん!」

 

霊にお札を貼り付けると、お札に書かれていた赤い文字が光り始め、霊の表面を白い光が伝っていく。

光が霊の体を覆うにつれてHPはじわじわと減少していき、霊は嘆きの声を上げ始めた。

 

「おおー効いてる効いてる!じゃあこの塩もどうぞ」

 

塩を振りかけるとHPはさらにガクッと削れる。

そしてHPがゼロになると、霊はダメージエフェクトを一度も出すことなく、白い光に包まれて天に昇って消えていった。

 

「よし除霊成功! 素材は・・・・・あれ、少ない? ええぇっ、経験値は貰えてないっぽい・・・・・」

 

掲示板の出番。お札と塩による除霊では経験値や素材のうまみは得にくいが、スピードと倒しやすさを得ることができる?

 

これを知った俺はどちらを取るか悩んだものの、一度体験したお札と塩の楽さには抗えなかった。

 

「いっぱい倒せばいいんだ。一応アイテムはドロップするみたいだし」

 

近づいてくる霊に塩をばらまいて次々にダメージを与えていく。

 

「この調子でいこう!」

 

寄ってくる霊を片っ端から昇天させる。一体当たりの消費が少ないこともあり、買い込んだアイテムには余裕があった。そうして一日中除霊に勤しんだところで、工房を出して中に入ってログアウトした。

 

そうして毎日除霊を続け、現実ならば山の霊を全て除霊しきってしまうのではないかというくらい除霊したところで、俺の前にぽとりと靴が落ちた。

 

「おおおおっ! ようやくきたっ!」

 

ドロップした靴を拾い上げる。それにはところどころ赤黒い染みが付いており、何故か少しひんやりとしているように感じられるものの、今のイッチョウのブーツによく似たものだった。

 

「名前は・・・・・【死者の足】? 呪われそうだけど・・・・・大丈夫かな。レアって書いてあるからいいものだよな、きっと」

 

ブーツをくまなく観察してみたが、血が垂れてきたり、本当に中に死者の足が残っていたりはしなかった。

 

「スキル確認・・・・・」

 

 

【黄泉への一歩】

 

スキル使用時、各ステータスを5減少させ空中に足場を作る。

 

20分後減少解除。

 

足場は十秒後消滅する。

 

 

「うん? 何か、違うんだけど。まぁ、いいか」

 

インベントリに靴をしまうと、また近づいてきた幽霊を最後に倒して今日は帰ろうと考えた。

 

「よし塩とお札を・・・・・あれ?」

 

除霊しようと構えたところで近づいてきた霊は今までと違った反応を示したのである。

霊は赤ではなく青い光を発し始め、さらに、俺に背中を向けて離れていく。

目を凝らすと少し遠くで止まっている青い光が見えた。

ゆらゆらと揺れる光は俺を呼んでいるようにも感じられる。

 

「行ってみようかな。イベントかもしれないし」

 

それでも警戒しつつゆっくり青い光のもとへと歩いていく。俺近くまで来ると、霊はまた俺を導くように先へと進む。

 

「山を登ってる・・・・・」

 

霊に導かれるままに山を登り、遂に山頂へと辿り着いた。山頂付近はより濃い霧に覆われており、もはや一メートル先すらまともに見えない状態である。

 

「どこに行けばいい? あ、これ・・・・・」

 

足元にコツンと当たったのは地面に刺さった、木で作られたボロボロの十字架だった。近くには既に朽ちてしまった花束の残骸が転がっている。

 

「十字架と花束? 墓っぽいな」

 

辺りを見回しても濃霧で何も見えず、赤い霊が来るまでもない。墓の周囲を一周しても何もなく、隠し階段のような物も存在しない。木で作られた十字架を抜こうとしても抜けない。

 

「・・・・・合掌すればいいのか?」

 

目を閉じて手を合わせる。そんな俺の足首を突然地面から生えた白い手が掴んだ。

 

「そっちかぁー!!? 流石に俺でも驚くわっ!!」

 

そのまま足を引かれ、あるはずの地面が消えてしまったような浮遊感を覚える。

 

 

どこまでもどこまでも落ちていくような感覚に俺は無抵抗で成り行きに身を任せるしかないのだった。

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