バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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海底神殿1

 

「ヘパーイストス、完成したかー?」

 

「おう、昨日の内に完成しといたぜ。こんな金属を扱わせてくれてありがとうよ。いい経験になったぜ」

 

裏口から入り宇宙の星屑を預けたヘパーイストスから受け取ったそれは大きな球体だった。どんな形に製錬してくれるのかと思ったら・・・・・。

 

「球状にしたのか?」

 

「そいつはぁ仮の姿に過ぎない。攻防一体でお前の意思で臨機応変に形を変え働いてくれるはずだ」

 

「耐久の方は?」

 

「問題ねぇ。俺の全力の一撃を受けても罅一つ入らなかったぜ。元々製錬する前でも同じ硬さだったかもな」

 

よし、それならいい。人の頭にたんこぶを作る男の【STR】は信用できる。

 

「攻撃力の方はお前が確かめてくれ」

 

「わかった。礼を言うよ。代金の方は?」

 

「必要ねぇよ。どうしてもってんなら連れて行って欲しい場所がある。そこに案内してくれればいいさ」

 

水晶の? と訊くと専属鍛冶師は頷いた。それなら今すぐ連れて行ってやろうと提案するとヴェルフと一緒にドワルティアへ赴きヘパーイストスの願いを叶えたのだった。

 

「おお・・・ここが先祖が辿り着いた場所か! なんて壮観な場所だ。本当に水晶だらけで美しいな」

 

「すげぇ、世界にはこんな場所があったのか・・・・・冒険者達がボールのように吹っ飛んでいるんだが大丈夫か?」

 

メタスラ達が見つけた正規のルートから入って来た俺達と同様に他のプレイヤーも入ってきては、場所的に蠍の縄張りに入り込んだ命知らずの愚か者であるプレイヤーに群れで襲い、鋏で両断したり巨体を活かした突進で吹っ飛ばすか轢き殺していく。そんな光景を連れて来たセキトの背中に乗せたヘパーイストスとヴェルフの横に飛ぶ俺と見下ろしていた。

 

「ヘパーイストスでも倒せそうか?」

 

「一対一なら何とかなりそうだが。ああも、一度に群れで来られるのはちと命を覚悟しなきゃならないな」

 

「流石の師匠でも無理か」

 

先祖もそんな感じで群れから逃げ続けたんだろうか。

 

「採掘は出来そうか?」

 

「一度の振動で襲ってくるぞ。あんな感じで。それでも体験してみるか? 守ってやるぞ」

 

「んじゃ、頼むぜ」

 

最初から採掘するつもりで持って来たツルハシを肩に担いで言う鍛冶師。ヴェルフもヴェルフで、俺なら大丈夫だろうという信頼でツルハシを握る手に力を込めたのが判った。手頃の採掘ポイントを探し、見つけたら二人の鍛冶師は思いっきりツルハシを一度打ち下ろしただけで、水晶の蠍が複数も周囲から現れてきた。

 

「ほら、あんな感じでな。【身捧ぐ慈愛】!」

 

「速っ! もうっ、逃げ―――!? ・・・・・あれ、攻撃受けてるのに痛みがない?」

 

「俺から離れない限り、俺の防御力が二人にカバーしてるから攻撃は届かないぞ」

 

「はははっ! こいつはいい! 先祖でもできなかったことが出来るなんてよ! あの世にいる先祖に自慢話ができるってもんだ!」

 

なお、貫通攻撃は受けてるが、反射ダメージのスキルでそれ以上に蠍もダメージを受けてるがな。気分良くしたヘパーイストスは他の場所にも採掘をしたいという要望をして、俺はそれに付き合った。先祖を超えた、さらに超えんとするヘパーイストスとその弟子のヴェルフの背中を、しばらく見守ったのだった。

 

 

「ユーミル、急で悪いけどオリハルコン製の大槌を八本お願いできる?」

 

「・・・・・理由はお前の後ろに浮いている、その奇妙な『手』か」

 

「うん、そう」

 

「・・・・・わかった。お前に相応しい装備を整えてやる。その代わりに教えてもらいたい。お前の身に着けているその鎧はなんだ」

 

「黒薔薇ノ鎧とユーミルが用意してもらった天地開闢・人災を融合した」

 

「・・・・・伝説の装備が融合? 錬金術による賜物か」

 

「そう」

 

「・・・・・古代の鍛冶師と俺の伝説の装備が一つにするとは恐れ多いことを。だが、同時に感謝する。神匠の技術だけでは不可能な装備同士の融合。強化とは異なる技法を俺も編み出してみたくなった」

 

 

ユーミルに製作をお願いしてもらった後、ドワルティアを後にして南へ向かった。

第7エリア、水路の町。まるでベネチアのような、ゴンドラで町中を行き来する水上都市である。

 

「水路か・・・水面下を覗けば当然の水没した建物の屋根に、次の建物が建てられることを繰り返しているか」

 

都市の端は海。きっと他のプレイヤーは海の方まで探索していなさそうだから未知の発見ができるかな? 掲示板では水系に関するクエストが主で【水泳】や【潜水】のスキルは必須で、そのスキルが付与された装備も購入・強化も出来るらしいが俺にとっては旨味の無いので何もしない。海の探検を集中的にする。

 

「おー? こんなところに意外な人がいるよん」

 

誰かに向けられた言葉のそれは、とても聞き慣れた少女の声であって、俺の後ろから前に来た黒髪のプレイヤーがにこりと口元を緩めた。

 

「ようやく、本当にようやくここまで上がって来たんだねぇハーデス君」

 

「ずっと後ろにいるわけにもいかないからな。このエリアの常連かな、イッチョウ?」

 

「知らないところはどこにもない、って言いきれないけど水上都市でスキルと装備が手に入る場所は把握してるほどにね」

 

「じゃあ、海はまだなんだな」

 

少女・・・イッチョウが俺を見る眼差しが奇異的になり、ほう? と漏らした。

 

「初めて来たばかりの町並みより海の方へ興味を示す理由は何なのか教えてもらっても?」

 

「深海があるなら、そこまで探しているプレイヤーは少ないだろうと思ってな」

 

「なるほど。地上より海中の方が見つかりにくい未発見な何かがあると踏んでるんだね?」

 

首肯するとイッチョウは意味深に微笑み、こう言い出した。

 

「じゃあ、ハーデス君の気が済むまでお付き合いをするよ。きっとその予想が当たりそうだし」

 

「んじゃ、海へ向かうとするか」

 

「泳いでいくんですか?」

 

その問いに対して俺の視線は水路で移動するゴンドラに向いた。漕ぐよりも引っ張ってもらった方が早そうだなぁー。うちの精霊とペンギンに協力してもらおうかな。

 

 

 

 

ゴンドラのレンタルはダメだった。町の水路からゴンドラで海に行くのは許してもらえず、専用の船でなくちゃダメだった。これは俺から目をそらすイッチョウも知らなかった事実だったので。

 

溺死もしない俺達は海底散歩をすることにした。ルフレとペルカも連れて水族館より水族館な海中に泳ぐ魚や綺麗な珊瑚礁を間近で見ながら移動する。

 

「フムー!」

 

「ペーン!」

 

楽しそうに空を飛ぶように泳ぐ水の精霊とペンギン。あまり遠くに行くなと釘を刺してるからか、見える範囲で自由気ままに遊泳する従魔達をよそに俺とイッチョウは雑談しつつ、モンスターを倒しながら何かを探す。

 

そうして数十分ぐらい海底を歩いていたら、透き通った青い水の世界に水に侵食され遺跡と言っていいほどに古びて、ボロボロになってしまった建造物群を見つけたのだった。

 

扉の有無関係なく中に入れることから手分けして探してみることにした。ところが、収穫はゼロという結果に肩を透かした。移動してさらに向こうの水底にある倒壊した建物の方へ向かう。残骸になってしまったかつての町並みの中を泳いで進んでいくと、ボロボロになった太い柱が積み重なった神殿跡が見えてくる。もう既に魚や貝などの住処になってしまっている場所だが、倒れた柱の隙間からは魔法陣の放つ光が漏れ出ているのが見えた。

 

「ボスがいそうな予感っ」

 

「久し振りだね。水中で一緒に戦うのは」

 

「他にもユニーク装備が手に入るダンジョンがあるかもしれないな」

 

「私がもらっても?」

 

「どうぞどうぞ。それじゃ行くか」

 

魔法陣に足を乗せた瞬間、いつもと同じように体が光に包まれていき、俺達はおそらく神殿内部へと転移した。

 

 

光が収まり、辺りの景色が見えるようになるとは俺がキョロキョロと周囲の状況を、ルフレとペルカも真似する風に確認する。

 

俺達がいるのは淡く青い石材を中心に作り上げられた広い空間だった。壁には様々な位置に別の部屋へと続く通路になっていると思われる穴が開いており、階段や水路が張り巡らされている。正解のルートを探すのも一苦労だろう。

 

さてどっちにいったものかと相談を始める。

 

「どうする? どっちに行くか」

 

「そうだねこの子達に任せてみる?」

 

ルフレとペルカに視線を向けるイッチョウの提案に頷き俺から訊いてみる。

 

「フム・・・?」

 

「ペン」

 

通路はあちこちに伸びており、行けるルートは多い。さらに俺達の場合はそれすら無視した空中移動も可能なため、選択肢は無限大である。

 

ただ、俺達は今回の所は空中移動はしないことにした。今回のダンジョンはぱっと見たときに順路が分かりにくく、変にショートカットをすると、解くべきギミックなどがあったときにスルーしやすくなるためだ。そうなると結局戻る必要が出てきてしまうので、最初から用意された通りに進もうというわけである。

 

そんな通路を目の前に方針を決定したルフレとペルカはまずは真っ直ぐ伸びる道を歩いていくことにしたようで、先に歩きだしていった。

 

二人が進もうとしていた通路の先、床に青い魔法陣が展開され、そこから水の柱が発生する。そうしてできた水の柱を掻き分けて、無機質な石材をベースにパーツを水で繋ぎ合わせたゴーレムが二体姿を現わす。

 

「神殿の衛兵ってところかな」

 

「おおー、守ってるんだね」

 

「じゃあやってみよう。【クイックチェンジ】」

 

イッチョウも覚えてたスキルを発動するといつもの見慣れた青い装備から灰色を基調とし、所々黄色いポリゴンが発生している見たことのない装備が切り替わる。

 

「お、新装備?」

 

「そうだよん。このエリアで見つけてね。スキルもなかなか面白いよ?」

 

「じゃあ、今回の戦闘で見させてくれ」

 

「いいよ? そっちも新しい装備みたいだし、どんなスキルが付与されてるか見させてね」

 

「ああ、これ。ユニーク装備同士を融合させたもんなんだよ」

 

は? と呆けるイッチョウを置き去りに俺は盾を構えつつ【身捧ぐ慈愛】を発動し、イッチョウを支援する体勢を整える。

 

「後で教えてね、装備の融合なんて気になる!」

 

「わかったが後ろから撃つのは任せろ!【全武装展開】!」

 

俺が前とは違う兵器を展開したのを確認してイッチョウは一気に前に飛び出す。それに反応してゴーレム達も距離を詰めてきたかと思うと、パーツが水で繋がれている特性を生かして、両腕を鞭のようにしならせて勢いよく伸ばしてきた。

 

「おっ伸びるんだ?」

 

「大丈夫!」

 

イッチョウを圧倒的に上回るリーチ、それも二体からの攻撃だが、イッチョウは足を止めずに真っ直ぐに向かっていく。一つ目の腕を身を屈めつつ短剣で弾くと、武器を槍へと変形させ、地面に突き立て支柱にして飛び上がり、素早く短剣に戻す事で二つ目を躱す。

 

「おおー」

 

俺が後ろで歓声を上げる中着地して、タイミングを遅らせて襲いかかってきたもう一体のゴーレムの腕を対処する。

 

「今の俺は絶対防御だぞ?」

 

受けたダメージの90%を反射ダメージにしてゴーレムのHPを削る。

 

「ペルカ! 脚を狙え!」

 

「ペン!」

 

一方イッチョウは武器を短剣をスキルで大剣に切り替え、そのまま振り下ろしてゴーレムの腕を叩き斬ると、次の腕を大盾にして受け流し、武器を元に戻して前にステップする。

 

「はぁっ!」

 

俺の援護射撃も貰いながら、腕の間をすり抜けて斬撃を叩き込む。

 

今まで短剣では受け止められなかった攻撃も巨大な大剣や大盾なら安全に対処できる。

 

イッチョウはそのままゴーレムの背後に抜けると体を回転させ、その勢いのままに大剣で横薙ぎの攻撃を叩き込み、バックステップで距離を開ける。

 

短剣と比べて遥かに長いリーチは今までにはできなかった二体同時攻撃を可能にしたのだ。

 

怯むゴーレム二体を俺とイッチョウで挟んだ結果、一体は俺の方に一体はイッチョウの方に向かって攻撃を始める。

 

ゴーレムの中心が青く光ったかと思うと、水がレーザーのように勢いよく放たれる。

 

「水攻撃は効かないぜ!」

 

敢えて胴体でそれを受け止めてもダメージはない。むしろお返しとばかりに放たれた反射ダメージと兵器のレーザーがゴーレムを焼き払っていく。逆サイドのイッチョウも俺の【身捧ぐ慈愛】に頼ることなく回避に成功し、一旦は開いた距離を再び詰めにかかる。

 

「ハーデス君! 左手展開お願い!」

 

「分かった!【展開・左手】!【手加減】!」

 

俺がスキルを発動したのを見て、イッチョウは水流を避けた勢いのまま、空中へと【跳躍】によって飛び上がりゴーレムの真上をとって左手を下へ向ける。

 

「【展開・左手】」

 

イッチョウがそう宣言すると首のチョーカーが光り、イッチョウの左手に俺のものと同じ巨大な黒い砲身が出現する。どういうこと!?

 

「【攻撃開始】【虚実反転】!」

 

イッチョウの発生に合わせてチャージされた真紅のレーザーは、当惑してる俺の気持ちを露知らず真下のゴーレム二体を飲み込み焼き尽くす。

 

それは、俺もよく知る威力でもって、俺が弾幕によって削った残りのHPを刈り取る。ただし―――。

 

「あれ、倒しきれてない?」

 

「悪いな。【超加速】! 【精気搾取】!」

 

ゴーレムの懐に飛び込み零距離で触れる手はゴーレムのHPをドレインすることで今度こそ跡形もなく吹き飛んだ通路にイッチョウが着地すると、役目を終えた左手の兵器は黄色いポリゴンになって消えていく。

 

そうしてスキルを取得出来た俺は彼女の元に駆け寄った。

 

「どういうことだ? 部分的とはいえ複製されるとは思わなかったぞ」

 

「でしょ。って言ってもしっかり戦ったのは今回が最初なんだけどね」

 

「どんどん武器が変わっていって、全部上手く使えてるし。どういうスキルなんだ?」

 

気になってしょうがない俺の気持ちを知っていても、イッチョウは「秘密でーす」とにこやかにスキルの内容を明らかにしてくれなかった。ぐおおっ・・・・・! 凄く気になるぅー!

 

「・・・・・まぁ、その新しい短剣のみで、自在に多種多様の武器へ姿を変えることができる、そういうスキルなんだろうな」

 

「あれま、もう把握されちゃった。でも、まだ100点じゃないよ。とにかく、対人戦があるまではこの武器の変形は隠しておこうと思ってる。突然リーチが伸びたらびっくりするでしょ?」

 

「うん、すると思う」

 

「それはそれとして練習もしておかないとね。大きい武器は大振りになって隙も大きくなりがちだから」

 

扱い自体は短剣なため、それらの弱点をカバーする武器ごとの専用スキルは取得できない。上手く使わなければ、デメリットをそのまま受けたうえで、短剣の手数の多さと小回りが利くことを生かしたスキル群が腐ってしまうことになるだろう。

 

「最後の【虚実反転】はクールタイムがかなり長いから次に試すにはまた時間がかかるけど、見た通り使ったスキルをその時だけ本物にする感じ」

 

「だけどよ、左手だけでよかったのか? 全部使っても大丈夫だぞ?」

 

「私は脆いから反撃を受けた時に身動きが取りにくい全武装展開は危ないかなって。体を捻って躱すとか難しくなるしね」

 

「そっか、それもそうだな」

 

棒立ちで弾幕を張ることができるのも俺の防御性能あってこそである。イッチョウの場合、反撃で魔法一つでもその身に届いた時点で死んでしまうのだ。

 

「じゃあ今度からは一部分だけっていうのも使っていこうかな」

 

「そうしてくれると使いやすいね。誰かが使ったスキルしか【ホログラム】で再現できないから」

 

「さりげなく教えてくれてありがとうな」

 

まだまだ神殿の中に入ったばかりなわけで、二人は奥を目指して再び歩き始めたのだった。

 

「今度は私も訊きたいけど、さっきゴーレムの攻撃を跳ね返したよね?」

 

「反射のスキルだ。受けた90%のダメージを反射で返す」

 

「うーわ・・・100だろうと90だろうとちょっとした誤差でしかないから、厄介すぎる上に誰もハーデス君を倒せないんじゃない?」

 

「できるスキルはあるだろ。俺の天敵は俺だからな。だから俺を越えるためのスキルを集めなきゃならん」

 

さっき得たスキルも面白い。スキル【連結】はスキルを連結することが出来る。

うーん、どっかで試してみたいもんだな!

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