バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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海底神殿3

特段規則性があるでもなく、突然壁や地面に刺さる形で残された鱗を追って進んでいるうち、薄暗かった水中はさらに少しずつ暗くなり、見通しが悪くなる。

少し前からイッチョウはヘッドライトをつけて、言った通り細かな探索はイッチョウ中心になっていた。

 

「あ、また鱗あった」

 

「暗くなってもあれは見やすいからいいね。何も見えないってほどじゃないんだけど、何かあるかもっていつもより気を使うし」

 

イッチョウが少し先行したのにすっと追いつき、いつも通り鱗に何か特別なヒントがあったりしないか確かめていると、突然ズズっと地面に何かを引きずったような揺れを感じた。

 

「・・・・・ちょっと揺れた?」

 

「うん。気のせいじゃない」

 

下で何かが動いた気配。目的地はそう遠くはないようだった。

 

「周りも見にくくなってるし気をつけて。まずそうなら【身捧ぐ慈愛】は解除しても大丈夫」

 

「分かった。何かあったらいつでも声かけて」

 

「もちろん。頼らせてもらうよ。ペルカとルフレもな」

 

敵の気配に警戒を強めて更に進んでいく俺達は、周りが見にくいながらも、トンネルのようになっていた通路が終わり、広い空間に出たことを理解する。

 

「おー、暗い」

 

「・・・・・でも、何かいるね」

 

イッチョウが見ているのに合わせて、俺も下を向く。それに呼応してか、暗い暗い水の底で大きな黒い影が地響きと共に動いたのが俺にも分かった。

 

さあどうくるかと構える二人の前で水の底がぽつぽつと淡く光り始め、光は次第に影だった物を浮かび上がらせていく。

 

光り始めたのは道中にあったものと同じ鱗。と言っても抜け落ちた物などではなく、光の塊は水底からゆっくりと動き出す。

 

全身が淡く光る鱗に覆われたそれは魚と龍の混ざったような、数十メートルはあろうかという巨体だった。腕や足は小さく退化しヒレに近くなっており、触手や髭に見えるものが何本も伸びてうねっている。光る体が暗がりを照らす中、水底の砂を巻き上げながらそれは体を持ち上げた。

 

「おっきい!」

 

「何してくるか分からない、気をつけろ」

 

二人が戦闘態勢を取ったその時、水流と共にボスは一気に上昇する。その巨体に似つかない速度を見て、イッチョウは水を蹴り一気に加速する。

 

「【超加速】!」

 

「ついてこい!」

 

加速したイッチョウについていくことで直撃こそ免れるものの、ボスが移動することで引き起こした流れは俺達をそのまま押し流す。ボスと俺達の位置が反転する中、大きな尾ヒレが動いて、俺達の方に向き直るのが見えた。

 

「思ったより速い!」

 

「古代魚のように簡単には倒せないか。ここは水中で底がある・・・・・よし」

 

イッチョウに提案があると話す。信じる彼女は頷いてくれて、もしも突進が貫通攻撃だった場合は二人の役割が逆になる。再度突進してくるのを確認して、イッチョウは俺から離れて巻き込まれないようにして、確実に死角へ入り込みにいく。

 

「ルフレとペルカ。少しだけあいつの気を俺達から逸らしてくれ」

 

「フム!」

 

「ペペン!」

 

高速移動する2人は途中で枝分かれしてボスのすぐ横で弧を描き、非力で倒せずとも叩いたり嘴で突いては、追いかけられても互いがフォローし合って俺達の時間を稼いでくれる。

 

「【血纏い】! 」

 

短刀から大鎌に変えた俺は、HPを任意の数値まで減らし【STR】を高めた後、ボスへ真っ直ぐに突進していく。ルフレとペルカを追いかけるボスの横っ腹に【狂魂】を発生させた証としてか、禍々しいエフェクトを纏う大鎌から放たれた【無双乱舞】の効果と一緒に、複数に飛ぶ斬撃として【狂魂】が直撃する。

 

不自然に動きを停止したボスを一目見て再度動く。

 

「【クイックチェンジ】! 【反骨精神】!」

 

もう一度短刀に、今度は生命の指輪を日輪の指輪も変更してボスが何らかの行動の強制停止になっているのが成功しと把握し、【VIT】の数値を全て【STR】に変更。

 

「【展開・左手】! イッチョウ!」

 

「うん! 【虚実反転】! 【クイックチェンジ】! 【砲身展開】!」

 

イッチョウの背中に黄色のポリゴンが収束し、いくつもの砲身が出現すると、俺のそれと同じように火を噴いた。近距離から放たれた攻撃はボスを貫いて逆側に貫通し、ダメージエフェクトに混ざりつつ背中の武装と共に黄色い光に変わって消えていく。俺はようやく動けるようになったところ零距離で砲口をボスに密着させてレーザーを放つ。

 

「どうだ!」

 

赤い光がボスを貫くと、最後に一際強くボスの体が輝いて辺りを照らし、そのまま倒れる際の光が溢れその巨体は爆散するのだった。

 

「お疲れ。凄い、あっという間に倒しちゃったのはどうして? 防御力極振りなのに【STR】なんて1すら振ってないんじゃ?」

 

ルフレとペルカを抱きしめて褒めているところに訊かれるイッチョウの疑問に答える。

 

「【VIT】を【STR】に変換するスキルのおかげで物理的攻撃が可能になったんだわ」

 

「・・・・・防御力極振りが攻撃力極振りにもなれるってこと? うーわ、手の付けられない。数万の攻撃力のダメージが与えられるなんて」

 

【不屈の守護者】みたいな即死攻撃を無効化されちゃ、こっちもヤバいんだがな。ま、それは俺が持っていなければの話だがな。それと数万じゃなくて十万以上なんだよなぁ・・・・・。

 

「で、何かあるかな?鱗はすごい光ってるけど・・・・・」

 

ボスの死に際の光を受けて、残された鱗は綺麗に白く輝いており、薄暗かった水中もかなり見通しが良くなっていた。辺りをキョロキョロと見渡し持ち帰れそうな物を探すと、少し違った形で積み重なった白い鱗を見つける。

 

「これは持って帰れそうじゃないか?」

 

「本当だ。すごっいおっきいね」

 

「ボスがあのサイズだったからな。イズ達の手土産にしよう」

 

俺は落ちている鱗をインベントリにしまっていく。そうして光る鱗をどかしていくと、その下で何か別の物が光っていることに気がついた。

 

「何かある?」

 

「みたいだね。全部どかして確かめてみよう」

 

全ての鱗をインベントリにしまうと光っていた物の正体が明らかになる。

 

それは光の塊だった。特に実体があるわけでもなく触れると手はすり抜けていってしまうが、どうやらアイテムらしく、インベントリにしまうことはできるようだった。

 

「何だろうこれ?」

 

「レアアイテムかな?一つしかないみたいだし・・・・・」

 

「そうかも。じゃあイッチョウ」

 

「え、私? 私はいいよ、ハーデス君がもらって?」

 

「俺ばっかりもらってたら悪いって。鱗も貰っちゃったし」

 

これも俺のものとなると、イッチョウがこの戦闘で手に入れたのは少しばかりの経験値のみとなる。それでは釣り合っていないのではないかという訳だ。

 

「本当に私は何も貰わなくてもいいんだけどね。んー、じゃあさどんなアイテムなのかまず確認してみようよ。万一装備品とかなら考えるかも」

 

「分かった。じゃあ確認してみる」

 

光の塊をインベントリへと仕舞い込むと、それが一体何なのかを確認する。

 

「えっと・・・・・『天よりの光』だって。こんなに水の中なのに変な感じ」

 

「なるほどね? 説明分には何かある?」

 

「・・・・・以前の空の光とかなんとか。見てみる?」

 

「うん」

 

イッチョウもそれを見てみると、フレーバーテキストに位置するものが少し書かれているものの、装備品であったり、直接クエストに繋がったりはしないようである。

 

「ん-、やっぱりハーデス君が貰って。私はハーデス君に同行してここまで来た感じだからさ」

 

「そうか・・・じゃあ、代わりにこれをやるよ」

 

「ブーツ? 【死者の足】・・・・・【黄泉への一歩】。スキル使用時、各ステータスを5減少させ空中に足場を作る。20分後減少解除。足場は十秒後消滅する。ほう? もしかして幽霊が出て来るエリアで手に入れて来た?」

 

「もしかして持ってる口か?」

 

「ううん。何だか情報とは違うけれど、欲しいなーって思ってた装備が、ハーデス君が持っていただなんてね。ありがとう、これだったら喜んでもらうね」

 

喜々としてイッチョウは俺からブーツを受け取って装備した。

 

「因みに他にも何か手に入れた?」

 

これだな。装着すると俺の背中側から透き通った手が六本すうっと現れ、俺の斜め前の空中で静止する。

 

「手が増えた!? しかも六つも!?」

 

「装飾スロットを一つ使う【救いの手】という装飾品。右手、もしくは左手の装備枠を合わせて二つ増やすことができるんだ。今全部のスロットを使ってるから御覧の通り六つの手が浮いて六つの装備が持てる」

 

「こ、こんな装飾品があるんだねぇ・・・・・でも、装備のステータスとスキルって反映される?」

 

「するぞ」

 

「・・・・・ちょっと、私も欲しくなったから教えてくれるかな?」

 

首肯する俺は少女を闇へ案内するべく水中神殿を後にした。

 

 

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