バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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ノームの可能性

『ハーデス、僕らも【蒼龍の聖剣】に入ったよ。これからよろしくね』

 

「マジか。イッチョウから誘われた?」

 

『うん。本当はユージオをリーダーにギルドを作ろうと思ったけど、イッチョウさんからハーデスがギルドを作ったって聞いたからね。ユージオよりもハーデスのギルドなら強そうだから誘いに乗ったんだ』

 

「なるほどな。それなら今後とも俺のために働いてもらうぜ」

 

『お、お手柔らかに頼むよハーデス・・・。それと須川君達もハーデスのギルドに入ったからね』

 

「全員か?」

 

『うん』

 

イッチョウか。まぁ、好きにしろと風に言ったのは俺だから文句は言えないな。文句なんてないがまた濃ゆい仲間を・・・・・。

 

「なら、店舗兼ホームと日本家屋以外のマイホームに入らない説明は受けているな? それ以外だったら他のマイホームを利用していいからな」

 

『勿論わかってるよ』

 

そこで通信を切り、目の前の作業に集中し直す。本日は土曜の日―――ノーム狩りを始めようと土霊の里の試練の門へ足を運ぶ。

 

「そうだ。いい加減お前を進化させなくちゃな。とっくに25レベル越えてたし」

 

「ムー」

 

「という事で進化だオルト」

 

選んだ進化先はユニーク個体専用の進化ルートであるノームリーダーだ。

 

農耕、採掘の2つが上級になり、土魔術はやはり特化だ。追加スキルは守護者が確定。もう1つは植替え、育樹、栽培促成、水耕、土壌改良、農地造成、採掘変質、宝石発見から選ぶことができるようだった。やはり直接攻撃する能力はない様だな。だが、守護者というのが中々に面白いスキルだった。プレイヤーでも盾士などの転職先で覚えるらしい。

 

 

守護者:武器での受け、盾技能にボーナス。パーティメンバーが多い程、防御力上昇。守護者使用時、挑発効果あり。吹き飛ばし、ひるみ耐性あり。

 

「ムッムム~!」

 

オルトが光り輝き、進化を開始する。

 

 

名前:オルト 種族:ノームリーダー Lv35

 

契約者:死神ハーデス

 

HP81/81 MP92/92

 

【STR 26】

 

【VIT 25】

 

【AGI 25】

 

【DEX 24】

 

【INT 22】

 

 

 

装備

 

 

頭 【土精霊のマフラー】

 

体 【土精霊の衣】

 

右手 【土精霊のクワ】

 

左手 【土精霊のクワ】

 

足 【土精霊の衣】

 

靴 【土精霊の靴】

 

装飾品 【空欄】【空欄】【空欄】

 

スキル:【育樹】【株分】【幸運】【収穫増加】【重棒術】【土魔術・特化】【農耕・上級】【採掘・上級】【夜目】【栽培促成ex】【守護者】【水耕】

 

 

こんな感じだ。外見は――。

 

「あんま変わらないな。衣装は少しお洒落になったけど」

 

「ム?」

 

身長などは全く変わっていない。ただ、今までは農家の少年風の格好だったのが、商家の次男くらいにはなったかな? マフラーや服が小奇麗になり、ちょっとだけ刺繍などが施されている。

 

「調子はどうだね? オルトくん」

 

「ムッムー!」

 

おお、これまたちょっとだけお洒落な彫り物が追加されたクワを振り回す姿が決まってるね。ノリの良さも健在だ。進化しても性格などは今まで通りであるらしい。

 

「ノームリーダーになったことだし、お前の後輩を増やすぞオルト。」

 

「ムー!」

 

クワを掲げてやる気の意思を示すオルトと試練の門へ潜り一日かけて、五人の新しいノームをテイムしたのだった。最初から【水耕】を持っていたり【散水】【土壌改良】【農地造成】【育樹】のスキルを持っていたのは面白い。

 

「よろしくなお前達」

 

「ムー!」

 

「「「「「ムー!」」」」」

 

見た目が似ているから呼ぶ時がオルトの兄弟がたくさんだ。オルトーズの結成だな。

 

「ついでだ。ボスを倒しに行くか」

 

「ムー」

 

コクリと頷くオルトと新米のノームを引き連れ、既に攻略済みで情報公開されているボスは、俺にとってスキルひとつで勝てる相手である。そんな相手がいる隠しギミックもあっさりオルト達に解除してもらい、いざボスとご対面―――戦闘? 戦闘と呼べる戦闘なんてなかったけど? ボスがノームだろうと敵として襲ってくるなら容赦しないし。

 

「さてさてドロップアイテムは鉱石類と肥料・・・・・クワの素? 味の素みたいな名前だな」

 

銀鉱石や金鉱石の使い方は分かる。金鉱石は初めて見たけど、鉱石なのだ。

タラリアの情報だと土霊の肥料は、ボスから落ちるドロップアイテムの中で一番レア度の高い肥料らしい。他のプレイヤー、主にファーマー達も、これを入手するためにボスと戦うが何故か全滅するという曰くつき。帰ったら畑に撒いてみよう。

 

だが、クワの素ってなんだ? クワを作るためのアイテム?

 

「クワの素? タラリアの情報にも載ってないぐらい聞いたことがないな」

 

うーん、選択すると、使用するかどうか選べるな。選択先はオルト達か。

どうやら、ノームのクワを強化できるっぽい。でもこれはヘルメスの前で実演してみよう。

部屋の先へと歩き出す。ボスを倒したことで出現した広い通路を抜け、到着した先は狭い部屋だ。

そこには、大きな宝箱が置かれていた。開けると、中から光があふれ出し、部屋を包み込んだ。

予想していた俺は即座に目を瞑ったので問題なかったが、慣れないオルト達が悲鳴を上げている。

 

「ムー!」

 

「「「「「ムムー!」」」」」

 

目を開けると、オルト達は目を両手で押さえて悶えていた。まあ、放っておけばすぐに治るだろう。それよりも、報酬が気になる。確認してみると、インベントリに『土霊の試練突破の証』というアイテムが入っていた。これは、装備すると土属性耐性(大)の効果があるアクセサリーであるらしい。これがあると土霊の試練の周回効率が上昇するそうで、鍛冶師や採掘で稼ぐプレイヤーには人気があるそうだ。

 

ただ、譲渡、売却は不可能なので、他人に譲ることはできない。

 

インベントリを確認し終えると、宝箱が宙に溶けるように姿を消した。そして、その場所に大きな魔方陣が出現する。

 

帰還用の転移ポータルだ。

 

「目的も達成したし、戻ろう」

 

「ム!」

 

ポータルに足を踏み入れた。特に選択肢などは出現せず、自動で転送が行われる。

出現場所は、土霊の試練の最初の部屋だ。すると、その部屋に人影があった。

プレイヤーではない。ここのダンジョンは、パーティごとに分かれるからな。

 

「やあ、試練突破おめでとう」

 

そこにいたのはノームの長であった。あれ? 何かイベント発生した? 明らかに内心首を傾げる俺を見ている。俺に用がある? 何かのフラグを踏んだか?俺が悩んでいると、オルトがノームの長に駆け寄っていってしまった。足元にまとわりついて、何やら訴えかけている。

 

「ムムー! ムー!」

 

「うんうん。元気だね」

 

「ムム!」

 

まるで、仲のいい兄と弟のような姿だった。ノームの長も喜んでいるのか、オルトの頭を撫でてくれている。

 

「ちゃんと可愛がってもらっているね。いい主に出会えたようだ」

 

「ムー!」

 

オルトがこちらを振り返り、指をさしながらムームーと叫ぶ。悪口を言っている感じでもないから、きっと褒めてくれているのだろう。たぶん。

 

「そうかそうか。主が大好きか」

 

「ムムー!」

 

ピョンピョン飛び跳ねて笑うオルトと、それを見てにっこりと笑うノームの長。悪くない雰囲気だ。

 

「えーっと、どうしてここに?」

 

「君たちが試練をちゃんと達成したようだからね。祝福しに来たのさ」

 

「あ、ありがとう・・・・・?」

 

だがなぜオルトだけ? 他のノーム達に「行かなくていいのか?」と聞くが、ノーム達は遠慮するような感じで、その場から動かない。オルトのイベントであるということなんだろう。それにしても、どうして俺なんだ? 

 

オルトに関係がありそうだっていうのは分かるが、過去の攻略者の中でオルトだけが特別ってことはないと思うんだよな。ユニーク個体だって他にいるし、ノームリーダーだっているだろう。従魔の心だって、珍しくはないはずだ。

 

まあ、考察は後でいいか。とりあえず、このイベントを上手く成功させよう。

そう思っていたんだが、その後は特に大きな展開もなかった。

 

「オルト、これからも可愛がってもらうんだよ? 主とともに歩めば、きっと大きく成長できるからね」

 

「ム!」

 

「オルトの主よ。この子をよろしく頼む。これからも可愛がってあげていれば、君の役に立つだろうからね」

 

「ああ、わかってる」

 

「いい返事だ。それじゃあ、オルトとその主に幸多からんことを!」

 

え? それだけっていう感じだった。ノームの長が去って行ったあと、ステータスやインベントリを確認したが、特に変化もない。

 

「何だったんだ?」

 

「ムムー!」

 

あとでヘルメスに相談しに行ってみよう。俺は、その足でヘルメスの下へと向かった。

 

『称号「土精霊の加護」を獲得しました』

 

 

称号:土精霊の加護

 

効果:ステータスポイント2点獲得。土属性モンスターとの戦闘の際に与ダメージ上昇、被ダメージ減少

 

 

土霊の試練を出たところでゲットできた。だが、こっちはもう広く知られているものだから物珍しい称号ではない。気にせずヘルメスに気になることがあると言う旨を伝え、白銀座店の前で待ち合わせをする事にした。

 

「・・・・・ユニーク個体のノームをテイムしたのね」

 

「一日かけてな」

 

ヘルメスと合流した後にホームの中に入り、ホームとして機能している今の方へ招き座らせた。オルトにはテイムしたノーム達を日本家屋の庭へ連れて行ってもらい、作業をしてもらっている。

 

「それでも集めれないプレイヤーが多くいること知ってる?」

 

「他人の事情なんて知るか。こっちには幸運の精霊さんことオルト君がいるんだぞ?」

 

胸を張って誇らしげな顔を浮かべるオルトが目に浮かぶ。

 

「それで、相談に乗って欲しいってなにかしら」

 

「まずはこれ、『クワの素』ってアイテムだけどボスのノームから手に入れたんだ。テイムしたノームのクワ用に作用するものだと思うと推測してるけど、タラリアではこのアイテムのこと知ってたか?」

 

「いいえ。初めて見るアイテムだわ。『土霊の肥料』なら知ってたけれど『クワの素』なんて・・・・・」

 

初見のアイテムか。だとすれば何度でも手に入れるアイテムだよなこれ。

 

「知らないならしょうがないな。じゃ、この情報を買ってくれるか?」

 

「ええ、肥料よりドロップする確率が低いだけのアイテムなら誰でも手に入れるしね。買わせてもらうわ」

 

「それと、もうひとつ」

 

「え・・・・・まだ、あるの?」

 

急に不安そうな顔をするんじゃないよ。

 

「ノームの長の件だ」

 

そう言った次の瞬間。ヘルメスの「うみゃー」を堪能した後、俺たちは情報の確認に移っていた。

毎度思うけど、このあとに急に冷静になれるのはある意味すごい。ロールと素の使い分けが上手いんだろうな。

 

「土霊の試練を攻略したら、ノームの長が出現したってこと?」

 

「ボス倒して宝箱開いたら、ポータルが出現するじゃないか」

 

「うん。土霊の試練の最初の部屋に転移するやつね」

 

「それで転移した直後に、ノームの長に出会ったわけ」

 

詳しい状況を説明し、さらにノームの長との会話のログなども見せる。

 

「なるほど、そんなことが・・・・・。とりあえず、これは未発見情報ね」

 

「やっぱそうなんか」

 

「ええ。今のところ、同じような報告はないわ」

 

だろうとは思っていたが、やはり未発見のイベントだったか。

これは情報が高く売れるか? 発生条件とか全く分かってない情報だし、案外安いか?

俺の渡した会話ログを見ながら唸っていたヘルメスが、再び口を開く。

 

「このイベントの発生条件なんだけど――」

 

「何がトリガーだったのか、分からない」

 

ユニークで、従魔の心をもらえるほど好感度が高いっていうだけなら、他にもいるだろう。

クワの素か? ただ、クワの素が出た理由が分からなけりゃ意味がないけど。

 

「いえ、多分だけど、好感度じゃないかな?」

 

「好感度?」

 

「うん」

 

「でも、ノームの従魔の心をもらってるプレイヤーなんて、他にもたくさんいるだろ?」

 

第2陣の中にだって、早ければもう従魔の心をゲットしたプレイヤーもいるはずだ。それがトリガー?

 

「そもそもさ、好感度って見えないじゃない? だから、従魔の心を貰ったからって、それがMaxとは限らない」

 

「それは確かに」

 

俺がいない間にゆぐゆぐを精霊に会わせたサイナの時にも、好感度は上がったぐらいだ。現状で、最大値なのかどうか。

 

「ノームの長との会話ログを見た感じ、間違いないと思うんだよね」

 

俺もログを見返してみたが、言われてみると「可愛がってもらってる」とか「可愛がってあげてね」とか、好感度に関係ありそうなセリフが並んでいる。

 

「このゲームって、それなりに経ったじゃない?」

 

「リアルじゃ3ヶ月も経ってるな。中盤も中盤じゃないか?」

 

「それでもレベルもスキルも、まだまだ先がある。そんな中でモンスの好感度だけがこんな早くも中盤でMaxになるなんてあり得る? 終盤でなきゃあり得ないと思うのよ」

 

「頑張れば中盤じゃなくても初盤でもいけそうな気がするがな。でも、そうじゃないんだろ?」

 

「ええ。だから、私たちはこう考えてるわけ。好感度の上限が1000だとすると、従魔の心は100とか200でもらえるボーナス的なものなんじゃないかって」

 

「じゃあ、この先400とか500で、何か貰えるかもしれないと?」

 

「可能性はあると思うよ」

 

それは夢が広がる。それに、従魔たちを可愛がる甲斐もある。いや、何もなくても可愛がるけどさ。

 

「でも、好感度が高いっていうなら、それこそ他にもいるはずだぞ」

 

ノームは人気がある従魔だから、多くのプレイヤーがテイムしている。しかも、俺よりも余程可愛がっている人たちだっているだろう。ただひたすらノームを愛でるだけの動画とかもあるくらいなのだ。

 

だが、そう簡単な話ではないらしい。

 

「ノームは一番数が多い従魔だから色々と検証も進んでるんだけど、好感度を上げるには幾つかの方法があるみたいなのよ」

 

「好物をあげて、遊んであげるんじゃだめか?」

 

「それも必要だけど、畑が重要っぽいわ」

 

「畑・・・?」

 

「うん。畑の規模とか、育てている作物のレアリティに種類に品質。あとはノームが望んだ作物があるかどうか。いろいろな要素が絡んでいるみたい」

 

オルトも、畑に新しい作物を植えたりするときには楽しそうにしてるもんな。実際に、喜んでいるらしい。

 

「テイマーの中でも、ハーデスレベルの畑を所持している人はほとんどいないわ」

 

「まあ、初期から畑やってるし、運よく色々と手に入れてるし」

 

水臨樹に神聖樹、他にもレアな作物がそれなりに揃っている。米とかは水耕が必要だし、栽培している人は多くないだろう。

 

「どう考えても、オルトちゃんの好感度はノームの中でも一番だと思うの」

 

「じゃあ、やっぱり好感度が影響してるかね?」

 

「しかも、ノームの長の言葉をそのまま信じるなら、好感度が上がれば特殊な進化先が解放されるかもしれない」

 

「ん?」

 

「主とともに歩めば大きく成長できるとか、可愛がってあげてればいつか役に立つとか、それっぽいじゃない?」

 

「まぁ、言われてみれば。でもよ? ノームが畑を充実させればいいんなら、他の精霊たちはどうだ? 樹精にウンディーネ。シルフにサラマンダーの好感度を上げる方法は?」

 

「うーん、それがまだ確定じゃないのよ。ウンディーネに関しては、水関係の施設だとは思うんだけどね」

 

ウンディーネはノームに続いてテイム数が多く、こちらもそれなりに検証が進んでいるらしい。

 

「シルフ、サラマンダーは仕事場の充実に加え、それぞれの属性に関係あるものをホームに揃えることじゃないかとは言われているけど、確証があるわけじゃないわ」

 

「樹精は?」

 

「そっちはもうお手上げ。そもそも、絶対数が少ないし。ハーデスが知らないなら、私たちも知らないわ」

 

「そっか」

 

現在でも、樹精は全体で十数体程度しかおらず、激レアモンスとして皆の憧れとなっているらしい。

 

そこまで少ないとは思わなかった。二陣も入ってきたし、50や100はテイムされているものだとばかり思っていたのだ。

 

「というわけで、何か新情報があったら売りに来てね!」

 

「了解」

 

その後、称号の情報なども売ったんだが、ノームの長の情報が衝撃過ぎたせいか、ヘルメスはあまり驚いてはくれなかった。

 

「それじゃあ、精算に移らせてもらうわ・・・・・」

 

結構新情報を買ったはずなんだが、それでも700万Gもいただくことになってしまった。ノームの情報は皆が求めているため、非常に高いらしい。ゲームが進んで皆の所持金が増えたことで、情報の値段も上がっているんだろう。

 

「それで・・・もしかしなくても他にも情報とかあったりしない?」

 

「情報・・・・・全プレイヤーが手に入れられるアイテムなら一つ」

 

実演すると俺の斜め前に現れる白い手が六つも浮かぶのでヘルメスはぎょっと目を丸くした。

 

「え、なにそれ? 憑りつかれてる?」

 

「【救いの手】という装飾品アイテムだ。右手、もしくは左手の装備枠を合わせて二つ増やす効果があって、俺は三つ分も手に入れたから六つも装備を持てるようにできたんだ。装備のスキルとステータスは反映するが、操作は練習しないと実戦に使うのは難しいぐらいかな」

 

「なるほど・・・プレイヤーの強化に繋がる装飾品ね。メインとサブの違う職業の装備を六つも増やせるなら攻略も捗れるわ。それを入手する方法は?」

 

「第8エリアの食人の森の奥の山にいる赤い骨で出来た霊を全て除霊する勢いで退魔用品で倒す。その最中に青い光を放つ霊が現れるから、花束と木で作られた十字架の墓があるところまでついていく。そしたら地面に引きずり込まれた先で巨大な赤い骨の霊のボスと戦うことになるけど、最後は退魔用品で倒さないと【救いの手】は手に入らないから。それを三回繰り返せばこれだ」

 

黙って俺から話す情報に耳を傾けるヘルメスは、聞き終えると一息吐いた。

 

「ボスの強さは?」

 

「まず物理は絶対に通用しない。魔法が付加された物理攻撃なら通じるぞ。炎が一番かな? あまり長引くと自分の姿さえ見えなくなるほど周囲が真っ暗になって、色んな幽霊の手が襲ってくる。防御力極振りの俺ですらHPが1まで一気に減らされたから即死攻撃もして来る。パーティーで行くのが推奨だな」

 

「聞くだけでも中々手強そうな相手ね。というか、さらっと言ったけどやっと第8エリアまで進んだんだ?」

 

「・・・・・流石に行かないと、と思って」

 

遅かれ早かれ、結局は変わらないがな。やることなすことも含めてな。

 

「この情報は攻略組が盛んに幽霊退治しそうだわね。他の装飾品アイテムが装備出来なくなる点を瞑れば面白いアイテムだわ」

 

「攻撃力極振りのプレイヤーからすれば是が非でも欲しいだろうな。即死級の攻撃が八回もスキル無しで出来るようなものだし」

 

「確かに。何だかんだで極振りプレイヤーでもプレイが出来るようになってきたわね」

 

俺も疑似的に出来るんだけどな・・・・・黙ってよ。

 

「そう言えばドリモールの件はどうだ?」

 

「詰んでるわよ」

 

「む? テイムできてないと?」

 

頷くヘルメス。

 

「ハーデスの情報通り、ドワーフの鉱山の場所までは情報通りなんだけど。中に入るためには許可が必要でね。最近解放された水晶のエリアの様々な素材を採取・採掘して指定された数まで集めなくちゃいけないんだけど・・・・・」

 

「水晶の蠍とゴーレムに襲われて集めきれていないと」

 

「その通り。前線組や攻略組ですら歯が立たないモンスターの巣窟で足止めを喰らっているのよ。ドリモールが欲しいプレイヤー達は。うちのギルマスでも一気に群れで襲われて倒せなかったわ」

 

神妙な面持ちで視線を送ってくるヘルメスは、達観したような質問をしてきた。

 

「ハーデスなら余裕で倒せそうね」

 

「余裕どころか、あそこの水晶のモンスター達とはマブダチだぞ? 俺が壊れないボールとしてよく遊ぶんだ」

 

「・・・・・異常すぎるわよ。あなたの防御力」

 

「俺でも硬さだけでどうにかなる相手じゃないぞ。スキルも含まれてるんだ」

 

「そのスキル、他のプレイヤーでも手に入る?」

 

・・・・・フッ。

 

「今後もログインしてくる新規ならともかく、第二陣のプレイヤーでも無理だな。一回死亡して以降100万ダメージを蓄積しなくちゃならない鬼畜設定の条件で取得したものだぞ」

 

「・・・・・防御力極振りのプレイヤー以外無理なスキルね」

 

「単純な極振りだけでも無理だ。【破壊成長】っていう装備が破壊される度に【VIT】が増えるような装備のスキルがないと数年も掛かるぞ」

 

「なるほど、それがあなたの強さの根源なのね。因みに今の【VIT】の数値はどのぐらい?」

 

ヘルメスに秘密だと告げた後。話し合いを終えてお互い別れた俺はドワルティアの城に顔を出す。ユーミルに依頼した槌を受け取る期間が過ぎたかもしれない故に、顔パスしてユーミルと城の中で会いに行くと玉座でふかーい溜息を吐くエレンと会うことになった。

 

「どうした?」

 

「異邦の冒険者達に依頼した水晶の納品が一向に届かんのだ。冒険者が弱いのかモンスターが強いのか、あるいは両方なのか・・・とにかく納品が届かんのであれば仕事が溜まる一方だわぃ」

 

あー・・・・・そうなのか。でも、手助けしちゃ行けなさそうだよな。主に俺が倒して手に入れた素材を横流しにするような真似をだ。

 

「冒険者も弱くはないが、水晶のモンスターもまた強いのさ。俺も直接戦ってたからわかるぞ」

 

「むぅ・・・ドワーフの心の友も言うほどであるか。ならば、どうしようもないことか」

 

「依頼に出すほどだから水晶を求める依頼を他から受けたのか?」

 

「うむ、エルフからの」

 

あ、納得した。

 

「じゃあ、俺が集めてこようか? エルフ繋がりなら俺も手伝うよ」

 

「おおっ。頼まれてくれるか? ドワーフの心の友ならばすぐに集めてくれるな」

 

クエストが発生して、水晶の素材採取の納品クエストを引き受けた。

 

「・・・・・話が終わったな」

 

玉座の間に連れて来た張本人が静かに話しかけて来ては、俺に八本の赤と金色の二色の槌を渡してくれた。全てオリハルコン製だ。八本とも【STR+30】で【破壊不能】があり、八本中二本がスキル付きだった。

 

【破壊神の大槌】

 

【STR+30】

 

【大震】

 

【破壊不能】

 

 

【破壊神の大槌】

 

【STR+30】

 

【潰滅】

 

【破壊不能】

 

 

【大震】

 

30メートルの範囲内で対象を十秒間行動不能にする。再使用待機時間1分間。

 

 

【潰滅】

 

10メートル範囲内いるもの全てにこの装備の【STR】の二倍のダメージを与える。再使用待機時間1分。

 

 

「おお、強い! 水晶のモンスター相手にも通用すると思うぞこれなら」

 

「・・・・・また伝説の装備を融合する気か」

 

「ん? 多分すると思うぞ。」

 

「・・・・・ならば、もう一度作ってやる。その代わり、ここで融合する瞬間を見せろ」

 

ユーミルからの提案は取り敢えず了承して、ホームからオリハルコンを持ってきてもう一度頼んだ。

 

「そうだ。ユーミルも装備の強化が出来るんだよな? 強化に使う素材ってやっぱりオリハルコンだったりする?」

 

「・・・・・そうだ。望むなら強化する」

 

「じゃあ、また今度頼むよ。今はこの大槌で素材を集めに行ってくるから」

 

「頼んだぞ。ドワーフの心の友よ」

 

エレンからの言葉を背中に受けながら蠍とゴーレムを粉砕しに城を後にする。

 

 

宝饗水晶巣にはもう殆んどのプレイヤーの姿が見当たらない。モンスターが強すぎて倒せない原因で戦意喪失か心折られたプレイヤーは二度とこのエリアには行かないと宣言したと聞く。だけども、隠密で行動すればモンスターに襲われない発見をしたプレイヤーを筆頭に、音を立たせないよう行動するプレイヤーが増えたのだとか。しかし、今だけはそのプレイヤー達の事など知らない地龍と鉱石喰いが久しぶりに現れては暴れ回り、【金晶戟蠍(ゴール・D・スコーピオン)】と【黒晶守護者(ダーク・ゴーレム)】と【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)】をその無数の配下を呼び起こしたせいで三つ巴の死闘が勃発してしまった。

 

「哀れ。観光気分で来たプレイヤー達」

 

助けなどもう間に合わないほど洗濯機の中で回る洗濯物の如く、モンスターの戦場の渦の中でポリゴンと化して死亡した運の悪いプレイヤーが何人も見かけた。

 

それに比べて俺という奴は・・・・・。

 

攻撃を受ければ反射ダメージを受ける。

 

大槌を振るえば簡単に吹っ飛んでいく。

 

溶岩と堕天使のスリップダメージを受ける。

 

ボスじゃなくても俺より巨体な水晶の蠍と人形に蛇の群れを相手に生き残って攻撃を当てるどころか倒しちゃっているんだよなぁ。俺が鎧を破壊されるダメージを受ける度にモンスターからHPをドレインしてくれる指輪の効果でさらに乗算ものだ。

 

『ジャアアアアアッ!!!』

 

「お、矛先を俺に変えたか。お前等がいると納品クエストどころじゃないからかかってこいやっ!」

 

緋水晶蛇が同族や水晶蠍と水晶人形を巻き込んで突っ込んでくる。迎撃態勢に入ってた俺は八つの大槌を力強く振るったのだった。

 

 

とあるパーティーの視点

 

「なぁ、白銀さんって防御特化のプレイヤーのはずだよな。なのに大槌を八つも持っているってどういうことだ? スキルか、俺達の知らないスキルなのか?」

 

「いま掲示板で白銀さんのこと書き込んだらさ、第8エリアで最大六つも装備枠を増やせる装飾品アイテムが手に入る話題で盛り上がってるぞ。そのアイテムを発見したのも白銀さんだ。攻略情報もタラリアに流されてる」

 

「マジで? あれ、スキルじゃないのか・・・・・どうする?」

 

「・・・白銀さんみたいに大槌を揃えてこのフィールドのモンスターを倒せるなら、ワンチャン狙いで手に入れるのもアリだな」

 

「大盾も八つ揃えて防御力を上げる・・・・・悪くないか」

 

「装飾品の装備が付けれなくなるぞ。せめて二つぐらい残そうぜ」

 

「戦術の幅が広がってくるなぁ。次の対ギルド戦の時まで模索しよう」

 

「その為には手に入れなくちゃならないぞ。行くなら行こうぜ。他のプレイヤーも現地で手に入れようとしているだろ」

 

「争奪戦に熱が入りそうだな。一つでも手に入ったら他のプレイヤーより有利になる」

 

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