三日目の朝を迎えた他軍ギルド。攻撃班がオーブを奪いに人数を割けて行ってしまっている間は、残った人数で防衛しなくてはならないが、セオリー通り動かなけれなならないなのだ。
「くそ、昨日は散々だったぜ」
「【蒼龍の聖剣】に襲われるなんて運がないよな俺達」
「聞いたか? その【蒼龍の聖剣】は小規模ギルドを一切手を出さないで中規模と大規模のギルドにしか襲ってないって」
「中規模のギルドと大規模のギルドしか襲ってないって、なんでだ?」
「掲示板で情報が様々な憶測が行き交ってるけどよ。有力なの説じゃ小規模のギルドはオーブを奪われやすいから、奪った中規模ギルドと大規模ギルドを狙った方が集めやすいんじゃないかってさ」
「あー、俺等も何度か小規模のギルドに襲撃したけど既にオーブを取られた後だったもんな。だったらとっくに奪われてるだろうギルドよりも確実に集めてるギルドの方に襲撃すればオーブも集まるってことか」
「【蒼龍の聖剣】、よく考えたな。でもその分、奪われたオーブを取り返しに来たギルドから狙われやすいだろうに」
「俺達もそのギルドの一つだったろうが」
「そーだった。結果は失敗に終わってしまったな」
談笑しているところにガサッと藪が音を立てた。敵がオーブを奪いに来たと察知して警戒態勢に入って、向こうの出方を窺うと・・・・・。一人の男性プレイヤーが姿を現した。
「うげぇ!?」
「は、白銀さんんん!?」
「お、オーブを守れぇっ!!」
「人を化け物のように見た反応しないでくれるか。地味に傷つくぞ。せっかくこれをあげに来たってのに」
複数の目を持つ龍を彷彿させるフルフェイスで顔を隠すハーデスがインベントリから10個のオーブを無造作に相手ギルドに放り投げた。
「オ、オーブ・・・・・? しかもこんなに・・・・・な、何が狙いだ?」
「狙いはもちろんある。今まで通り行動をしてくれればいいだけだ」
「今まで通り動けって・・・意味が分からねぇ。そっちのメリットになるのかそれで」
「もちろん! お前達が無意識にしているこそが【蒼龍の聖剣】のメリットになる。それじゃ、頑張ってくれ。―――【飛翔】」
ハーデスは空を飛んでプレイヤー達の前からいなくなった。集めたオーブをそのまま残して。
「ど、どうする・・・・・?」
「オーブを取り返しに来る連中がここに押し寄せて―――あああっ! そういうことかぁっ!?」
察しのいいプレイヤーの叫びと同時に、オーブを奪われた複数のギルドのプレイヤー達が森の奥から現れ襲撃してきたのであった。ハーデスはその様子を上空から見下ろしていた。
「お前等、そっちはどうだ」
『作戦成功だよ!』
『こっちもだ。奪われたオーブを取り返しに他のギルド同士が交戦したぜ』
『こっちの被害を最小限に、敵の被害を最大限に。殲滅作戦を目の当たりにすると凄い効果ね』
大規模ギルドと中規模ギルドを中心に襲撃し、集めたオーブを自軍の得点にするのではなく餌として扱い他のギルドにばら撒いて敵同士を意図的に操り戦わせる。
「守り切れば大量のポイントが手に入り、手に入れば大量のポイントを得られる。どっちも得するんだ。俺達に感謝してもらいたいものだな」
『事の発端は【蒼龍の聖剣】だから恨まれるんじゃないかなー』
「酷い! 恨まれるようなことをした覚えはないのにっ!」
『本気で言っているならお前は飛んだ道化だぞ』
道化とは失礼な。
「とにかく、オーブを集めて他のギルドに渡せ。オーブ欲しさに勝手に自滅してくれるならこっちの負担が少なくなる。その間は俺達も他のプレイヤーを殲滅してギルドの数を減らしていくぞ」
『了解!』
『ひゃっはー! 殲滅だぁー!』
確実な勝利をものにしようと【蒼龍の聖剣】は総力で、全力で他のギルドに襲撃しにかかる。拠点を捨てて消滅させたギルドの拠点で休憩を挟みつつ夜になろうとも襲撃を止めなかった。
運営side
「・・・・・終わったなこれは」
「だな・・・・・【蒼龍の聖剣】を中心に他のギルドも便乗して、今の順位を固定するために他のギルドが消滅させられてオーブも奪わせなくしているし」
ゲーム外では運営陣が残りギルド数を表す表示を見つめていた。
「本当にこれは・・・・・もう終わっただろ」
明るく輝く数字は六という数字を浮かび上がらせている。
そしてそれらのギルドは全て現在十位以内であることが確認されている。
つまりもう十位以内に入るギルドは確定したということだ。
五日を予定していた今回のイベントは四日目の早朝には実質の終了を迎えていた。先程までは減り続けていたギルドの数表示は全く動きを見せなくなった。
「【蒼龍の聖剣】のプレイヤーはどいつもこいつも殺意高いなぁ!? おい!?」
「今回のイベントの見所編集して動画にするぞ。もうこれといったことは起こらないだろ」
男が周りに指示を出すと次々に膨大な量の録画データからこれはと思ったシーンが選び出されていく。
「五割近く【蒼龍の聖剣】が映ってるんだが・・・・・。死神ハーデスが思ったより目立ってないのが不思議を通り越して新鮮だな」
「できればそのまま大人しくしていて欲しいと願うのは我儘かな」
「無理でしょう。死神ハーデスですよ?」
「ダヨナー」
呟いた男の方に首だけを向けてそう言うと、呟いた男は額に手を当て椅子の背もたれに身体を投げ出した。
「まあ【蒼龍の聖剣】に引っかき回されたのがイベントが思うようにいかなかった原因か・・・・・」
「【炎帝ノ国】は十位だしな、順位予想もやってみていたんだが・・・・・まあほぼ当たらない」
【炎帝ノ国】は大規模のギルドだったために【蒼龍の聖剣】の標的の一つになっていた。初日からずっとオーブを奪われ得点を思うように稼げなかった上に全滅したのが原因だ。
ただ、密かにハーデスが何とか十位まで確定させる画策したので、生き残ることには成功していた。
「死神ハーデスの行動が読めるようになればなあ・・・・・」
それは多くのプレイヤーも思っていることだった。対策の立てやすい者ほど対処は容易になるからだ。
「無理なことを考えても無駄・・・・・それより次回の日数・・・・・考え直さないとな」
「だな、流石に丸二日余るほど加速するとは・・・・・」
プレイヤー達のやる気を読み切れなかったが故のミスである。
彼が次回のことを考えていたところで、思いついたというように一人の男が部屋の中にいる全員に聞こえるように言い放つ。
「なら一つ予想してみよう! お題は今の死神ハーデスが何をしているか! どう? 当たった奴には俺が一回奢るよ」
その提案にその場にいた全員が乗った。メリットしかないのだから当然である。
「少し前の録画データを見ればいけるか。オーブ周りしかないが・・・・・」
そう言って適当に選び抜いた【蒼龍の聖剣】の四日目の広間の映像を映し出す準備をし始める。
「なら、拠点にいないってのもありか?」
「いいんじゃね? それだと簡単に探せないからな・・・まあ多分拠点にいるとは思うが・・・・・」
「じゃあ予想開始! 思いついた奴は挙手!」
奢ると言い出した男が合図をすると早速何人かが手を上げた。
そして男が指示した順にそれぞれに予想を述べていく。
「ギルメン全員でかくれんぼ」
「機械神で空を飛ぶ練習」
「双子に人間お手玉をされている」
「【鍛冶】で作られた武器を齧ってスキルが得られないか試している」
「何だ、皆普通過ぎやしないか?」
「それもそうか・・・・・」
普通過ぎると言われたことで全員が死神ハーデスならばどんなことをするかと再び思考を巡らせた。
そうしてどんどん予想は混沌としていく。
「巨大化したドラゴンの口の中に入っている」
「何故かギルメン全員とPKで戦っている」
「いっそ巨大化した虫を齧る」
全員が口々に予想を述べていく。
そして粗方意見が出尽くして部屋が静かになったところで発案者が終了を宣言した。謎で妙な緊張感を抱きながら全員の意識はモニターへ注がれる。
「じゃあ・・・・・映すぞ」
「ああ」
一瞬の後、大きなモニターに【蒼龍の聖剣】が映し出される。
肝心の死神ハーデスは、【皇蛇】のスキルによる女体化+六対十二枚の堕天使の姿で音楽プレイヤーの演奏に合わせてライブをしていた状況だった。
それを見たところで動画はそっと閉じられた。
「あれも入れるか?」
「・・・・・ああ」
そのワンシーンはそっと見所集に加えられ、運営陣はそれぞれが何か理解を超えたものを見たことに対する処理へと移った。
運営がもう既に終わったと予想したのは正しかった。
四日目からゲーム内で戦闘は一切起こらずに平和に時間は過ぎていった。
そうしてランキングも特に変動することなく五日目を終えたハーデス達は通常フィールドへと転移した。
転移してから数秒後、各プレイヤーの目の前に青色のパネルが浮かび上がり今回の最終順位を表示する。
「今回も一位か」
「そう言えばハーデス君はエルフのイベントも一位だったね」
十位までならば報酬は変わらないためより上位を目指そうとはしていなかったが、大規模ギルドのオーブのポイントをまとめて手に入れることが出来たことが大きかった。そうしている内に最高ランクの報酬がパネルに表示される。
銀のメダルが五枚に木製の札が一枚。ギルドマスターである俺には全ステータスを5%上昇させるギルド設置アイテムも贈られた。
「『通行手形・梅』? 意味が解らん」
「どこかに必要な通行所のような物のことじゃないかな」
「それってどこなんでしょうかねぇ? これがないと通れない場所ってことだろ」
「意外と新大陸が第11エリアだったりして」
いやいや、それはないだろう的な雰囲気の最中。連絡が届いてきた。ノーフからだ。
「どうした?」
『えっと、あのさ・・・イベントで一位になったし白銀さんのギルドだから祝勝会でもしないのかってみんなが騒いで・・・・・』
「はぁ・・・・・何言ってんだそいつら? もちろんするに決まってるだろ。天空の城で祝勝会するつもりだから各自、夜の七時まで料理を5品を10人分用意しろと伝えておけ」
『わかった。皆に伝えておく』
暴走されちゃあ面倒だから祝勝会をすることになってしまったな。
「ということで料理できる俺達も用意しようか」
「いつもと同じだねー。じゃあ、ペイン達は食材集め頑張ってよね!」
「俺達の分まで作ってくれるってならしょうがないな」
「第10エリアのところで集めてみるか?」
「そうだね。それじゃあ行ってくるよ」
フレデリカに命じられて食材調達をしに日本家屋を後にするペイン達がいなくなると、俺だけ除いて他は女性だらけになってしまった。
「それにしてもハーデス君。ゲームの中で女の子になっちゃうなんて、どういう星の下で生まれちゃったのかな?」
「知るか」
「しかも凄く美人だし、なんか負けた気分だよ・・・・・」
何張り合ってるんだ?
「ハーデス君、イベント終わったし今後はどうするの?」
「精霊の数を増やそうかと思ってる。見ての通り庭園は豊かだし、他の生産も増やしてみたいから」
「賑やかになるわね。他のテイマーが羨ましがるんじゃない?」
寧ろうらやましがれと思っている。お前等には極めて難しいことだろうがなぁ? フハハハハッ!!
「その後は砂漠の方に行ってみたいかな」
「砂漠? ファーマーの人だったら海苔が採取できる砂漠エリアだけど・・・・・」
「海苔は他のファーマーと交換して手に入れて持ってるからいらない。純粋に行ったことないから行ってみたいだけだ。隠しギミックがあるなら見つけてみたいしな」
ピラミッドとか砂漠の迷宮とか。まだ何かあるかもしれない何かをこの手で解明してみたい。
「そんじゃあ、料理を作って祝勝会の準備でもしますかね」
【速報!】死神ハーデスは性転換者になる! PART1【TS発覚!】
122:プリンプリン伯爵
何度見ても美しぃ・・・・・姿そのものが完全に堕天使じゃないか。
123:お花畑
声もマジ好みなんですが。NWO、わかっていらっしゃる。
124:カマーバカン
性転換できるアイテムなら1000万だって払って手に入れたい!
125:カマンカマン
巨額を払うほどかよ? でも、気持ちだけはわかるよ。あの姿のフィギュアを売られているならホームで飾ってみたい。
126:ダークエンジェル
「我、堕天の王なり!」って出だしの声を聞いた時は心が震えたぜェッ・・・・・!
127:ブラックなエンジェルウーマン
あの人もこちら側かな? だったら是非とも誘いたいな。
128:††堕天使††
俺、この動画を見てあの人のファンになりました。本当に堕天使になれるなんて最高過ぎるこのゲーム。
129:ホワイトエンジェル
そもそも白銀さんって純白の翼を生やせるからな。そこ重要だぞ。
130:(堕)大天使
天使にも堕天使にもなれる・・・・・次は神になるつもりか?
131:ピッピチャン
噂じゃあ白銀さんは機械の神だとか聞いたけど。
132:エヴァンジェリオン
既に神であった・・・・・!?
133:コイチャン
最近の白銀さんは色んな属性があって個人的に次はどんな風になるか楽しみです。
134:バケバケ
ベヒモスにも変身できるもんなー。溶岩魔人にもなれるしー。次は神獣か守護獣的な変身をするかな?
135:ヌルンヌルン
・・・・・触手を生やせるスキル、無いかな。
136:プレインライン
おいそこ、変なこと考えるんじゃない。・・・・・ちょっと想像しちゃったじゃんか。
137:磯ノ巾着
ちょっと探してきます。
138:鍋奉行
おいどんも。
139:クラノスケ
クラーケンがいるから、俺はクラーケンをテイムしてきます。
140:ド変態ですが何か?
この変態共ォー!! (俺は装備と服を溶かすスライムを探すぜ!!)
141:オバップ
≫140 名前の時点でお前が言うな!!
142:アイドルオタク
見守り隊が動きかねない案件だぞ!
143:アイ・(LOVE)・ドール
≫140 心漏れてんぞ