「へい、視聴者諸君。一緒にクエストしてみたくはないかね」
『本当に一緒に? 白銀さんと受けられるのか?』
『マジで? 嘘じゃないよな?』
「今だけオアシスの町にくれば参加人数は無制限で俺と同じクエストが共有できる。ただ、集合時間は一時間以内だ。クエスト内容はルナマリア国の死守。報酬は称号『砂漠の義勇兵』だ。そして正確な場所は把握できてないから長く移動するかもしれない。それでもいいならしっかり準備をしてからここに集まってくれ」
『場所はまだ特定されてないのか。でも、クエストは参加したい』
『称号もらえるチャンスだ。これは参加しなくちゃ』
『サスシロ! やっぱり白銀さんはすげーわ!!』
『今からそっちに行くぜ!』
『参加するよ白銀さん!!』
予想以上に集まりそうな勢いで視聴者からの参加要望が多数だ。ギルドメンバーにも個人の自由でいいから一緒にクエストをしないかと誘ってみるか。【炎帝ノ国】もどうかな?
「おいペイン。ハーデスが黒竜退治のレイドクエストをしないかって誘いのメールが届いた。今からオアシスの町に行かないと間に合わなそうだぞ」
「そうか。また面白くなりそうだね」
「じゃあ行くか」
「本当にハーデスはゲームを盛り上げてくれるねー」
「ふふん、ハーデス君からの誘いに断る理由はないね。メイプルちゃんとサリーちゃん、イカルちゃん、マイとユイも参加するならフィールドボスを倒す協力をしてくれかぁ・・・・・了解♪」
「メイプル、ハーデスからのお誘いどうする?」
「参加してみたいかな! サリーと一緒ならどんな相手だって勝てるよ!」
「そっか。でも、第7エリアまで行く道中はフィールドボスを倒さないといけないから。イッチョウに頼んでみるよ」
「エスク、砂漠に行ってみよう!」
「ムー」
「お姉ちゃん、ハーデスさんから誘われてるけどどうする?」
「私達で役に立てるなら頑張ってみたい」
「そうだね。じゃあ、イッチョウさんと一緒に行ってみよう」
「【蒼龍の聖剣】のメンバー全員に誘ってるのか。参加は個人の自由・・・参加する以外ないだろこれ」
「音楽プレイヤーの彼女達も参加する意思があるなら一緒に連れて来るように? わかったぜ白銀さん」
「・・・【蒼龍の聖剣】からレイド戦の誘いのメールが届いた。【炎帝ノ国】の力も借りたいと」
「【蒼龍の聖剣】でも苦戦するほどのクエスト?」
「きっと私達【炎帝ノ国】と合同でクエストを臨みたいのだと思います。私は参加してもいいと思いますよ?」
「俺も賛成だぜ。新大陸の実装までスキルの熟練度とレベル上げ以外することはないからな」
「私も同感だ」
「俺もだ」
「ならば、これより【炎帝ノ国】は【蒼龍の聖剣】とクエストを臨む。各自一時間に内にオアシスの町へ集まるように」
こうして初めて訪れたエリアで発生したレイド戦に備え、【蒼龍の聖剣】のメンバーも誘ったところ。一時間以内にオアシスの町に集まったプレイヤーの数は数千人も超えて・・・・・いや、集まり過ぎじゃないか? 運営の対応がかかってるぞこれ。
「死神ハーデス」
赤を基調とした集団を引き連れた赤髪赤眼の女性の炎使いミィが、道を空けだす野次馬の間を通ってこっちに来た。握手しようと伸ばした俺の手をミィも手を伸ばして互いの手が握り締め合った。
「一緒に参加してくれて嬉しいぜ」
「こちらこそレイド戦のクエストの誘いに感謝する。共にクエストを達成をしよう」
「急増のレイドパーティだから、不手際が生じるだろう。ギルドメンバーや他のプレイヤー達とは連携を出来るだけするよう頑張ろう」
「ああ、お互いにな」
運営side
「多すぎだろぉっ! あんなに集まるんじゃすぐにレイド戦が終わってしまうわ!」
「どうしますか? クエスト開始まで30分もないですよ」
「設定を変更だ! ボスの強さを大幅に改変! 五倍だ!」
「わかりました!」
「これでレイド戦らしくなるといいですが」
「白銀さんの影響がここまで凄まじいとは。今後はサーバー分けした方がいいな。今回それが判っただけで対応がしやすくなる」
「ですね。一度誘っただけで・・・あ、一万超えましたね」
「だぁー!! 人数設定すればよかったぁー!!」
―――一時間後。
運営がどうなっているのか知る由もない俺達は時間制限が過ぎた瞬間、オアシスの町に集まった数多のプレイヤー達と西へ行軍を始めた。自然と俺の周りにはギルドメンバーが集まって、まだ初心者の枠のイカル達も参加に間に合って、【AGI】が0のため砂漠の空に飛ぶミーニィの背中に乗っている。
西に向かって帰ってこなくなったというNPCの夫の情報しかない俺は、それを信じる他ないからひたすら西方に一万人以上のプレイヤーを、セキトに乗っている俺の後ろに乗ってもらったミィと一緒に引き連れる。オアシスの町から歩いて30分も経った時だった。砂漠の景色が一変した。赤い色の砂漠が俺達を待ち構えたのだった。しかもそれだけじゃない。目の前で巨大な赤い砂嵐が激しく巻き起こっていた。
「このエリアにこんな場所が・・・・・」
「来たことが無いのか?」
「ああ、赤い砂漠と砂嵐などあったらすぐに情報が広まっているはずだ。・・・どうする」
どうするも何も・・・・・決まってるじゃん?
「砂嵐の中が怪しいと思うからな。ちょっと偵察できるプレイヤーをあの中に突っ込ませたい」
「正気か? 何もなかったら無意味だぞ」
「調べもせずにただひたすら西に向かうよりは有意義だと思うがな? 一回だけ俺を信じてくれないか」
「・・・・・わかった。お前を信じよう。こちらにいる【VIT】の高いプレイヤーを募ろう」
「俺んところは、砂嵐の風力を調べてみたいから風除けできそうなプレイヤーに手伝ってもらうかな」
ということで、【蒼龍の聖剣】と【炎帝ノ国】からは巨蟲のテイマーのエリンギと第二陣のテイマー、トンボ。大盾使いのベテランのクロム、その他のプレイヤーから十数人に砂嵐の中の偵察をお願いした。
「エリンギとトンボの巨蟲で風除けが出来るか頼む」
「わかりました。では行ってきますね」
「朗報を待っていてください!」
「ん? 俺達も行くぞ」
「一緒にくるのかよ」
当然じゃん。多い方が越したことじゃない。という事で出発! ミィには、嵐の中で何か発見したら全員で来るようにお願いした。イカルとメイプルも同行してもらう【VIT】に自信があるメンバーで砂嵐の中に突入した。当然動画配信もしてるぞ。皆も把握できるよう配慮だ。
「うおっ!! こいつはすげぇッ。砂粒が勢いよくぶつかってくる!」
「前が見えないな! 前衛は大盾を構えて前進、それ以外は大盾を上に持ち上げて、横に構えながら砂除けの壁を作り一つに固まりながら前に進もう!」
「「はい!」」
ガッシリと偵察部隊の俺達は手に持っている大盾で壁を作り、巨蟲の巨大な身体の間にいても俺達を襲う突風と砂から遮って移動する。セキトはエリンギとトンボを乗せて前に進行してもらってる。
「予想していたが、やっぱり砂嵐の影響で【AGI】が減少してるな」
「「え、そうなんですか?」」
「一応、俺もそうだけどメイプルとイカルも【AGI】0の防御力特化だから変化はないぞ」
「・・・・・それで総合ランク1位? はは・・・・・」
防御力は絶大なりー! とアホな考えをしてるとエリンギとトンボが砂嵐の中で瓦礫を見つけたらしい。しかも表面は彫刻されているだとか。それを調べるべく寄り道する。
「これは、遺跡の残骸か?」
「NPCの夫は伝説の秘宝を探しているって話だから、もしかすると古代の遺跡とかあったりするんじゃないかな」
「古代の遺跡と秘宝? お宝があるんですかね?」
「あるかどうかさておき、それを手に入れられるか否かがこれから辿り着く場所で確認しよう」
「おお、ワクワクしてきた!」
再度歩き始めてからも赤い世界の中で大小の柱の残骸、その昔に人が住んでいただろう石造りの家などが多く見つけるようになった頃に俺達は・・・・・巨大な建造物の門に続く階段へ辿り着くことが出来た。砂嵐の中心か、風の影響がなく無風の空間にいるようだったので壁を解き周囲を見渡す。盗賊団のアジトらしき木造の家が軒並みに並んでいて、石造りの建造物を完成させようとしているNPCの多くが働いている。ただし、両手首と両足首に拘束具が付けられているので奴隷として強制的に働かされているようだった。
「本当にあった・・・古代遺跡!」
「誰だそこのお前達!」
「盗賊団のアジトもな」
早速見つかり、警戒される。槍と剣を突き付けられ取り囲まれてしまった。赤いターバンを頭に巻いたNPCの腕には赤いトカゲの刺青が彫られている。
「ちょっと俺に話を合わせてくれ」
「わかりました」
セキトを前に動いてもらい代表として俺が話しかけようとすると、何故か盗賊達が3歩も下がった。
「どうして下がるんだ」
「き、貴様は何者だ!? 我々砂漠の赤トカゲ団の者ではないな!」
「砂漠の赤トカゲ団? じゃあここは砂漠の赤トカゲ団の拠点で間違いないか?」
「だったらどうした! 貴様等は侵入者として―――」
「撤退。相手をする暇ないから帰るぞ」
そう切り返す俺の速さにNPCの盗賊とクロム達が呆気にとられた。
「いいのか?」
「黒竜を討伐しに来てるのに盗賊と戦っている暇ないんだ」
「まぁ、それもそうだが向こうは襲ってくる気満々だぞ」
俺達を逃がさんと取り囲んでくる砂漠の赤トカゲ団の盗賊達。さてどうしてくれようか・・・・・。
「・・・・・うん?」
対処に悩む俺やこの場にいる一同も伝わってくる激しい振動。地震か、と思っても当然な縦に揺れる地面に立っていられず、宙に浮くセキトに乗っている俺以外の敵も味方も関係なく倒れる。きっとミィ達のところにも伝わっているだろう震動がますます増して、古代遺跡以外の建物は倒壊する最中。赤い砂嵐の向こう側から巨大過ぎる影が浮かび上がり―――俺達の目の前にそれが現れた。
「・・・・・蛸?」
に見える風船のように膨らんだ手足と胴体がない竜の頭部から伸びる八つの首と頭部が竜。全身が黒色で山のように大きいため、俺達を丸呑みできる。奴の登場と同時に地震が治まったのでクロム達は眼前の怪物を視認できた。古代遺跡は怪物に覆いかぶさるようにして隠れてしまった。
「【挑発】! 全員、NPCの保護を優先!」
「は? NPCを助けるってなんで・・・」
「もう戦闘が始まってるんだ。今この場にいるNPCはただの背景だと思うのか? 奴の餌で強化するためのギミックだったら厄介すぎるんだぞ。盗賊達も助けてやれ!」
「わ、わかりました!」
「【挑発】が出来る奴は触手のような竜を出来るだけNPC達から意識を反らし惹きつけろ!」
イカルとメイプルはセキトに乗ってミィ達のところへ向かってもらう。【挑発】をかけたこっちにデカい頭の竜が口を開いて―――黒い墨みたいな液体を吐き散らして来た。
「全力回避! 装備の耐久が減るかもしれないぞ! できないなら頭を守れ!」
「そりゃあ大盾使いにとっちゃあ厄介だな!」
広範囲に赤い砂を黒に染め上げるそれを被ってしまった味方は、何ともなさそうに佇んだ。
「自分の状態の報告!」
「えっ、あ、はいっ。・・・えと【VIT】が一定時間0になるようです!」
嘘だろっ!? それが取り柄の俺じゃ二発で死ぬわ!
「ヤバい、大盾使いだけで来たのが仇になったっぽい! ごめーん!」
「だったらベヒモスに変身して他の連中が来るまで時間稼ぎをしてくれ!」
「それもそうだな。【覇獣】! 【八艘飛び】!」
クロムの言う通りにして空中ジャンプして黒竜へ飛び掛かった。デカい頭部の上に目掛けて近づかんとする俺に全ての触手の竜が迎撃態勢に入ったのか、こっちに振り返って迫って来た。
「【咆哮】! 【悪食】! 【生命簒奪】! 【精気搾取】!」
そして信じられないことに、ボスも含めて今までモンスターがしなかったことをこのモンスターはしたのだ。どす黒いバリアを本体に覆うように展開、触手の竜もバリアを展開しては最凶の一撃を食らおうと残りの数本が懐に飛び込んで体勢を崩されたところ、零距離から攻撃、それを受けた俺は光に包まれた。
イッチョウside
ハーデス君が八本の足のような竜からの黒い光線に呑み込まれた瞬間を目撃したところで、赤い砂嵐を突破した私達。
「ハーデス君?」
「白銀さんがやられた!?」
「嘘だろ! あの人がやられるほど強いのか!」
「ハーデスさん!」
困惑と絶望を貼り付けた私達に八本の竜はこっちに振り返り、ハーデス君を倒した黒い光線を放とうとするモーションに入った。頭のデカい竜も八本の竜よりも比べ物にならない光量を集束してる。
「よ、避けろぉおおおおおおおおおおおおおおっ!」
―――無理だ。二万人以上が集まっている状況では、絶対躱せるはずのない一撃が放たれようとしているんだから。運よく全滅が免れてもよくて半数、最悪八割しか残らない戦力で戦わないといけない。しかもハーデス君抜きでだ。
「避けられないなぁ・・・・・」
半ばそう諦めかけていた時だった。私の視界に巨大な炎の竜巻に続いて大嵐、さらには空から巨大な隕石が3つも落ちて来た。攻撃をしようとしていたボスは防御態勢に間に合わなかった様子で、大きな頭の竜ごと全身で隕石に当たってしまった。
ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!?
大規模な爆発と衝撃波でこっちも少なくない人数が吹っ飛ばされる。隕石に直撃したボスのHPが二割程度減って勝てない相手ではないことを再認識された・・・・・ハーデス君がボスの頭の上に立っている姿と共に。
「うおおおおお! 白銀さんがまだやられていないぞー!」
「俺達も出遅れるな!」
「いけいけー!」
「本当の闘いはこれからだー!」
ハーデス君の姿を一目見ただけで士気が一気に高まり、ボスへ迫っていくプレイヤー達。【蒼龍の聖剣】も【炎帝ノ国】もこの流れに逆らわず攻めていく。ただ、不安要素がある。まだ私達はボスの能力を把握しきれていないことだ。
「お、おい! 黒い魔法陣が!」
誰かがそう叫んだ。それに気付いた時は私の横にも魔法心が浮かび上がっていて、武装したスケルトンが召喚されたっぽくてあちこちから阿鼻叫喚が聞こえてくる。スケルトンだけじゃない、ゾンビっぽいモンスターも交じっているようだね。