バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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第11エリアヘ

「~~~ってことで、【出遅れた者】の称号と高い資金力、ホームが三つないと紹介状が貰えない設定なんだよ」

 

説明をせがまれて仕方なくと日本家屋で教えることになった。納得した様子なんだが・・・・・。

 

「それで、何で一緒にいるのかな?」

 

フレデリカのその言葉の意味は、当たり前のように俺の隣にいるNPCに指して言っている。

 

「ハーデス様はルルカの雇い主ですから当然です。ハーデス様をまだ知らない場所へ案内するのがナヴィゲーションであるルルカの役目であり義務なのです」

 

知らない場所? どこなんだとそんな表情な皆にわかりやすく教えた。

 

「俺達全てのプレイヤーがまだ未発見のエリアやダンジョンのことだ。小人族を雇うとそこへ案内してくれる話なんだ」

 

「え、そんな案内してくれるの? それって凄いことだよん」

 

「前線組と攻略組が黙っちゃいないぞこれは」

 

ドラグの言う通りだ。小人族の存在が知られれば誰もが欲しがるNPCだ。

 

「だが、俺達みたいに小人族を雇うことが出来ないなら諦めがつくだろう」

 

「仮に直接奪おうとすると、とんでもないしっぺがしが待っているもんな」

 

「うん、それすら分からないなら本当にバカだよん」

 

超がつくほどな。

 

「ハーデス【出遅れた者】って称号の効果はなんだ?」

 

「今なら言えるが、レベルアップ時のステータスポイント取得量が3倍だ」

 

「3倍かよ!?」

 

「あ、最初のイベントの時にそんなこと言ってたね」

 

「そう言えば確かに。もうあれから数ヵ月か」

 

そうなのだ。もうそんなに月日が経っているんだよな。早いな~。

 

「因みに、イカルも【出遅れた者】の称号を持っているからホームを3つと高い資金力があれば小人族を雇える」

 

「・・・本当に第二のハーデスになっちゃうんだね」

 

「【勇者】の称号とか他にも必要だが、何時かそうなるのが楽しみだ」

 

ここにいないきっと畑作業をしているだろう少女に期待して不敵に笑む。

 

「ログインして初日から1週間もモンスターを攻撃せず過ごすのは普通無理だよな」

 

「ああ、俺なんて速攻でモンスターと戦ったぞ」

 

「ゲームの楽しみ方は様々だ。モラルやマナーに関すること以外、何も間違ってはいないさ」

 

「だけど、やっぱり知らないことが明るみなれば驚かされることが多いぜ」

 

それもゲームの醍醐味だろうよ。それも悪くない。

 

「まぁ? 【出遅れた者】の取得方法は教えないけどな。今後ともこのゲームの世界に来る後輩達には自分で気づいてもらいたいし、パワーバランスが崩れるのを避けたい」

 

「いや、もう崩れてるだろ。お前とお前の弟子の存在で」

 

「二人ぐらい別にいいだろ。それに【勇者】の称号を得ればお前等の同類となるぞ」

 

「ハーデスには負けるよ。偶然手に入れた称号の時点でキミの一人勝ちが決定したようなものだ」

 

「滅茶苦茶苦労したけどな! 最初のヒュドラなんて毒が通じない武器がない状態で戦う羽目になったんだからな!」

 

何でないんだと素朴な疑問をぶつけられ、毒で腐食して使えなくなったからだと言ってやった。

 

「最初からVIT極振りだからダメージなんか与えられなかったから・・・しょうがなくHPドレイン、ヒュドラの身体を噛みついて食ってダメージを与える他なかったんだぞ。数時間もピーマンみたいな苦い味を感じながらの苦労・・・・・わかるか?」

 

一同、脱帽。

 

「あ、一番美味しかったのは―――」

 

異口同音で「言わなくていい!!」と突っ込まれてしまった。何故だ解せん・・・・・。

 

「教えるが、モンスターに対するHPドレインで習得したスキルはあるからな。【悪食】もその一つだ」

 

「名前の時点で納得だよ!? 悪食以外なんだってのさー!」

 

「落ち着けフレデリカ。話を戻すとして小人族の彼女の案内で闇市場、オークションに参加して何か手に入ったのかまだ聞いていないが、良ければ教えてくれるか?」

 

問題ない。魔剣グラムを始め、様々な道具のアイテムと封印された吸血鬼を公開する。

 

「ちょっ、なんで裸の―――これ、なんなの?」

 

「おいペイン。魔剣だってよ。触ったら呪われそうだな」

 

「でも魔剣があるのなら聖剣もあるだろうね。何時か手に入れたいものだよ。・・・・・鑑定が出来ない?」

 

そう言えばしっかりと調べていなかったな。どれどれ・・・・・。

 

 

 

『呪いの魔剣グラム』

 

 

【STR+500】

 

 

スキル【呪蝕】

 

スキル【龍殺し】

 

 

 

【呪蝕】

 

HP500を消費することで装備が出来る。その後装備している間は毎一分間HPが100減少する。

 

 

【龍殺し】

 

 

竜・ドラゴン族のモンスターに対する戦闘時のみHP・MP以外のステータス2倍。

 

 

・・・・・なるほど。ある意味呪いだなこりゃ。

 

「何が判った?」

 

「最初にHP500払ってからじゃなきゃ装備が出来ないうえ、一分間ごとにHPが100も減ることぐらいは」

 

「は? そんな武器として成り立つ物かよ?」

 

「数少ないけど竜・ドラゴン族のモンスターに対してHP・MP以外のステータス2倍だがな」

 

「それでも微妙だろ。限定した対モンスター専用の武器だぞ」

 

使い道は限られているが、強い武器であるのは間違いない。『ハーデスの大鎌』と融合すれば強力な武器になるぞ。

 

「まぁ、ハーデスがいいならそれでいいじゃないか。個人的にはあっちの方が気になる」

 

ペインの視線は封印されし吸血鬼に向いていた。皆も釣られてみる。

 

「あれは一体?」

 

「古代に封印された吸血鬼だって。胸の釘を取れば封印が解かれるらしいぞ」

 

「モンスターなのか?」

 

「さぁ? 実際どうなのか俺にも分からん。試してみるか?」

 

と提案したら、ペイン達は戦いになるならと受け入れルルカには待ってもらい、吸血鬼を城のホームに運んだ。誰にも迷惑が掛からない石壁に囲まれた広い無人の場所で置いて、剥き出しの銀色の杭を掴んだ。

 

「じゃあ、抜くぞ?」

 

一声かけてから力強く抜いた。手の中の杭が消失し、封印が解かれた吸血鬼の瞼が開き始め・・・・・白髪を揺らしながら上げた彼女の瞳は危険なまでの赤い、とても赤い。その目を見た瞬間。アナウンスが聞こえてきた。

 

《プレイヤーが三大悪の一つ、真祖の吸血鬼を復活させました。全フィールドのモンスターは夜の間、真祖の吸血鬼の恩恵を得てステータスが倍となります。モンスター・NPCの『ヴァンパイア』が出現します》

 

《新エリア『吸血鬼の隠れ里』が解放されました》

 

《吸血鬼の封印を解いた死神・ハーデス様は神聖教和国から異端者の扱いを受けます。魔王・悪魔族からは称賛の声が挙がります》

 

・・・・・なんだと?

 

「三大悪って?」

 

「いま聞いた吸血鬼、他は魔王か? あとは何だろうな」

 

「そうだね。ところで、吸血鬼の方は動きを見せないのが不思議だ」

 

「でも、警戒はしといた方がいいね」

 

色々と気になる情報が流れた。さて・・・これからどうするか。

 

「・・・・・」

 

お、吸血鬼が初めて口を開いた。第一声の言葉は?

 

「お腹が空いたわ。吸わせてもらうわよ。・・・・・あなたの血を」

 

身体がコウモリと化した吸血鬼。ペイン達も襲うが一番襲われてる俺はコウモリに囲まれた中、吸血鬼が背後からいきなり現れて首筋に牙を立てられた。血の代わりに赤いエフェクトが吸血鬼に吸われると俺のHPが下がっていく。黙って吸われるつもりはないが、身体が動かないっ・・・・。

 

「―――ぷは、美味しいっ・・・。あなた、様々な物を血肉にしたのね」

 

「は?」

 

「目覚めの食事が、こんな素敵なものだとは知らなかった。気に入った。それにその指輪・・・・・分け与えた私の血を宝石にした指輪ね。あなた・・・魔王とどういう関係?」

 

「男の方か? 女の方か? どっちも知り合いだからわからないぞ」

 

「男の方よ。いえ、男の娘と言うべきかしら。可愛い服を着た姿で会った時はおかしすぎて笑ったもの」

 

想像難くない光景だな。

 

「それ、現在も継続中だ」

 

魔王の話になると心なしか雰囲気が和らいだ気がする。吸血鬼は俺から離れて囲うコウモリを一瞬で霧散させるとペイン達の無事が確認できた。そして彼女の白髪だった髪がいつの間にか赤く染まってた。

 

「そう・・・会ったことがあるのね。ならあなたは次期魔王となる勇者かしら」

 

「なるつもりはねぇー。ところで自分が全裸なの気付いてるのか?」

 

「あら、そう言えば・・・・・」

 

今更気づいたらしい彼女は、血色のコウモリを無数生み出しては赤いドレスに体を包んだ。

 

「これでいいかしら?」

 

「おう。で、人の血を堪能した吸血鬼さんは俺達と戦う意思は?」

 

「ないわ。寧ろ封印を解いてくれて感謝の念を抱いている。攻撃してこなければ私の方からも何もしないわ」

 

「世界には大いに影響を与えているようですがねー?」

 

皮肉を言えば、肩を竦める吸血鬼。

 

「何もしなくても、存在するだけでそうなってしまうのが真祖の力よ。魔王軍も夜になればますます強くなれるでしょうね」

 

「・・・・・あれが弱体化してた状態だと? じゃあ、お前が封印されていたのは」

 

「察しの通りよ。私は不死身の存在、人の身では決して私を討滅することが出来ない。だから封印された。もうされるつもりはないけど」

 

禍々しいオーラを迸る彼女が俺の手を取って赤い指輪に口づけを落とすと、指輪が一瞬だけ妖しく煌めいた。

 

「封印を解いたお礼よ。それと・・・・・」

 

今度はまた首筋に牙を立てた。けれど甘噛みでドレイン行為ではなかった。何をされた?

 

「あなたの血は凄く美味しかった。魔王にも期待されている人間ならマーキングをしないとね?」

 

「は?」

 

そう言われた次の瞬間。身体の半身が焼き付くような痛みが覚えたあまり思わず跪いて、何が起きたのか分からずまだ気づかない俺の目の前の吸血鬼は物凄く満足した顔でオーラに包まれ始めた。

 

「いつか『吸血鬼の里』に来なさい。あなただけは私の屋敷に招いてあげる。魔王の娘に渡すのが何だか勿体ない気がするし」

 

「それってどういう・・・っ、あ、待て!」

 

気になることを言うだけいなくなってしまって、なんとも言えない気持ちにされたそんな俺は指摘を受けた。

 

「ハーデス、顔にタトゥーだが刺青なんだか知らないが、落書きされたような跡があるぞ」

 

「・・・なんですと?」

 

日本家屋に戻り大きな鏡の前に立って確認した。噛まれた首筋を中心に顔の半分まで広がっている何と形容し難い紋様。それはどうやら手の甲まで続いていて、この原因が判った。

 

 

称号 始祖の祝福

 

 

夜間のフィールドで遭遇するモンスターの確率が減少。NPC吸血鬼の好感度上昇。

 

 

夜間の時だけ・・・・・う、うーん・・・・・問題ないか? 絶対ではないならまだマシが。そういや、指輪の方は?

 

 

『始祖シルヴァーズ・ベアトリーチェの指輪』

 

【血液捕食者】

 

【吸血操】

 

【HP+200】

 

 

スキル【吸血操】

 

HPを消費することで血を操作する。またモンスター・プレイヤーにダメージを与えたHPの10%回復する。

 

 

指輪の名前の変更と新スキルが追加された。でも、始祖の吸血鬼を召喚するスキルが無くなってる。本人が封印から解放されたからか? 

 

「ハーデス、原因はわかったか?」

 

「ん? ああ、始祖の吸血鬼の祝福の証だ。夜間に遭遇するモンスターの確率が下がるぐらいの効果がある」

 

「うーん・・・微妙? ハーデス君。その顏の刺青は消せないの?」

 

ポリポリと書いてもシールの類ではないから剥がれもしない。

 

「・・・消せない、祝福=呪いって感じで無理だな。見えない分、気にしなくていいがな」

 

闇市場・オークションに参加しただけでまた新発見してしまった。吸血鬼の隠れ里はこの大陸のどこに存在しているだろうか。

 

「ペイン達。ちょいと模擬戦に付き合ってくれ。指輪の検証をしたい」

 

「構わないよ」

 

トレーニングルームにてペイン達と4対1で勝負して指輪の効果を確かめたところ・・・・・強過ぎない? HPを消費するスキルは、身体から大量の赤い液体が出て死角からの攻撃でも流動的に操作できる血液が性質を変え、攻防一体の性能を見せてくれた。自分の意思で血の形を変幻自在に変えることが出来るらしいな。ただ、このスキルを解除しない限りはHPがどんどん減っていく。さらに広範囲に攻撃しようとならばさらにHPを消費しなくちゃいけないらしく、今のHPで広げられる範囲は10Mが限界だった。

 

そしてこのスキルの弱点は魔法で特に水だ。【海大砲】で操る血が文字通り水に流されてHPを消費するだけの結果になってしまう。耐久もあるようで硬質化した血は一定以上の【STR】であれば破壊されることもわかった。

 

「ありがとう。把握できた」

 

「厄介すぎるわその指輪。反射神経も影響しているのか、俺の攻撃が一撃も当てれなかったぞ。お前が一歩も動かずにいたってのによ」

 

「本当だよ!」

 

「水属性の魔法がかなり効くね~」

 

「力越しなら何とか突破できるって感じか」

 

「だが、まだまだ応用が出来そうな感じだった。ハーデスがその気になれば、もっと奥深い方法を見つけるだろうさ」

 

そうペインの言う通りだ。こいつは応用が利く。今回は【吸血操】の把握をしたいから単純な攻防をしたが・・・・・。

 

「うん、密かにその方法を見つけて驚かせてやるさ」

 

「できれば人間を辞めないでよねハーデス」

 

「そいつはどういう意味でしょうかねフレデリカさん。俺は変身する以外は人間を辞めた覚えはないぞ」

 

ニコリと笑って身に覚えのない謂れに異を唱える俺を、フレデリカは神妙な顔つきでこう言った。しかもドレッドとドラグが同感する言葉だ。

 

「人間がする事じゃないことをしている時点で怪しいんだけど―?」

 

「「ああ、確かに」」

 

・・・・・くそ、思い当たることが多すぎて否定できないっ!!

 

「ハーデス。検証が終わったらこれからどうするんだい」

 

「んールルカにまた案内してもらうつもりだ。まだ第10エリアから進んでいないんだろう?」

 

「そうだな。何かしらの条件やギミックがあると皆が探し回っているよ」

 

「もしくは第10エリアまでしかエリアがなくて、これから新しく実装される大陸が第11エリア相当のエリアじゃないかって話も聞くよ」

 

ふむ。だったら彼女に聞いてみる必要があるな。ルルカのところへ戻る俺達は、彼女に未開のエリアがあるか尋ねたその問いの返事が・・・・・。

 

「第10エリアの先の? ええ、勿論ありますよ」

 

「やっぱりか。他の冒険者が先に行く道を探しているんだが見つかっていないようなんだ」

 

「ああ、見つからないのは当然ですよ。あの先は大きな山々しかなく第11エリアは、第2エリアの獣人の村から進まないと行けませんよ?」

 

あそこからだとっ!?

 

「「「「・・・・・」」」」

 

あ・・・・・ペイン達が面白い顔で固まっている。散々探していたプレイヤーの一人だから、大きく後ろに下がったエリアからじゃないと行けない事実に気付かなかったもんな。俺とイッチョウもそうだけど。

 

「でも、今は獣人族が利用していた交易路にモンスターが棲みついてしまって、通れなくなっておりますよ」

 

「そいつは、他の方角もか?」

 

「はい、その通りなのです。ご案内いたしましょうか?」

 

と言うルルカにペイン達を見れば、行こうという念が籠った頷きをした。

 

「ルルカ。四方の第11エリアへ進める場所を教えてくれ」

 

「かしこまりました!」

 

「なぁ、ハーデス。あのネコバスで行った方が早いんじゃね?」

 

話が決まった直後にドラグが尤もなことを言う。でも、それは・・・・・。

 

「うんや、無理だった。プレイヤーが既に足を踏み入れた場所じゃなきゃ送ってくれないみたいなんだよ」

 

「ということは既に足を運んだことがある獣人の里以外の場所にも?」

 

「そうだ。それに他の場所でも獣人の里なのかもわからないから、移動は俺の従魔で行くぞ」

 

セキト、フェル、ミーニィの久々の出番だ。

 

 

―――獣人の里

 

 

久々に来ました獣人族の里! 村長の羊の人に一言挨拶をしてこの辺りに棲みついたというモンスターのことを尋ねると、長は急に困った顔をしだした。

 

「ええ、私達もあのモンスターに困っておりました。今は自給自足で何とか生活をしておりますが、やはりあの洞窟が使えるのと使えない差の違いは大きいです。勇者殿、どうかよろしくお願いします」

 

頼まれてもクエストが発生しない。珍しいことだが、念のために場所も教えてもらい記録動画を取りながら離れていたペイン達と合流して―――第8エリア分の距離を移動した先にあった洞窟に辿り着いた。

 

「ここか」

 

「やーっと着いたよ~」

 

「こ、腰が・・・・・」

 

「俺も腰がつらい・・・・・」

 

「一休みするかい?」

 

ペインの提案に俺達は賛成した。小休止ついでに茶菓子を出して、ほのぼのと少しだけのんびりと過ごした。

 

小休止後・・・モンスターの奇襲に警戒しながら洞窟に足を踏み入れるが、そこは特に珍しいものがある場所ではなかった。このゲーム内であればどこにでもある、普通の洞窟だ。天井からは無数の鍾乳石が垂れ下がり、足元は湿っている。かなり歩きづらいが、戦闘不可能というほどではなく、横幅は3人が並べるくらいはあった。道中には採取、採掘ポイントが点在し、そこで様々なアイテムがゲットできる。まあ、物珍しい素材はないが。ただ、キノコや草類は大荒原で入手できる場所は少ないので、そこはお手軽でいいだろう。

 

「お、キノコだ」

 

見つけた採取ポイントでキノコを採っていると、フレデリカが警戒の声を発した。

 

「モンスターだよ!」

 

「ついに出たかっ!」

 

フレデリカの視線の先には、大きな蝙蝠と黒い鼠。そして、黒い闇のようなものをユラユラと立ち上らせた、バスケットボールサイズの球体が転がっていた。ブラックバットとダークラットは分かる。あの球体が、闇虫か? 戦闘態勢に構えた途端・・・不意にその場で止まったかと思ったら、来た道へ踵を返して逃げだして行った。

 

「何で逃げる?」

 

「もしかして、吸血鬼の祝福の効果じゃない? 夜じゃないけど洞窟の中は暗いから」

 

「50%の確率でモンスターが逃げる称号もあるしな」

 

・・・・・ここに来て、それが今発揮しますかね? まぁ、楽なのは悪くないけど釈然としないぞ?

 

それからも歩く洞窟は、思ったより複雑な作りではなかった。分かれ道は数度しかなく、試しに俺達が分かれてどのルートでも最終的に辿り着くか調べたら場所は一緒になっていることがわかった。収穫物や経験値を考えると、俺たちにとってはあまりいい狩場ではないかな? 敵が強すぎるのである。おそらくイカル級のプレイヤーがパーティを組んで、やっと適正って感じだと思う。

 

回復薬だけは十分にストックがあるのに、それを使わずのごり押しで何とか進んできた感じだ。

そして、3時間ほどの探索の末、俺たちは最奥部と思われる場所に辿り着いていた。

 

「ルルカ、ここで最後だな?」

 

「マップは全て埋めましたし、残るはこの扉の先だけです」

 

「そうか。なら、調べに行くか」

 

「そうだね。今回は、これがあるから」

 

ペインがインベントリから取り出したのは、小さなオーブだ。青い光を放っており、神秘的な外見をしている。このアイテムは、超脱出の玉。使用すると、ダンジョンから脱出できるアイテムだ。最近は普通に出回っている、脱出の玉の上位互換であるそうだ(俺は初めて見た)。

 

何が超なのかというと、なんとこちらはボス戦の最中でも、効果が発揮されるらしい。つまり、ボスの力を見るためにとりあえず挑んで、負けそうになったら使用するという使い方ができるのだ。

死に戻りのペナルティなしで、ボスの情報を集められるという訳だった。レイドボス戦では使えないなどの制限があるが、面白いアイテムだ。

 

自分では使おうと思わんけど。何せ、メチャクチャお高いのだ。第10エリアの町で売っているんだが、1つ50万もするそうだ。高い・・・そんなの買うんだったら、デスぺナを受ける方がマシだろう。

 

ただ、今回は良いアイテムを宝箱からゲットしてしまったので、使うことにしたようだ。一度外に戻ってアイテムを預ければいいんだけど、それだと時間がかかるから。

 

まあ、使った時は代金を折半するということで話はついているし、俺もボスには興味があるから今回は挑んでみるのもいいだろう。

 

「そんじゃあ、扉を開けるぞ」

 

「ああ」

 

俺とペインを先頭に、俺たちは扉の中へと突入した。

 

中は、巨大なドームのようになっている。天井の高さは優に30メートルを超え、広さも200メートル以上ある。薄暗くていまいち広さが分かりづらいんだが、場合によっては300メートル以上はあるかな?

俺は、このホールを見てある予感しかしなかった。それは、ペイン達も同様だったらしい。

 

「なあ、こんだけ広いってことはさぁ・・・・・」

 

「やっぱり、そう思う?」

 

「ああ」

 

ボスフィールドというのは、大抵そこに出現するボスのサイズに合わせて作られる。小さいボスならフィールドも小さく、大きければフィールドも広い。

 

最低でも、ボスの動きが阻害されない広さがあるのだ。これからもそうとは限らないが、少なくとも第10エリアまではそうだった。

 

では、これ程広いフィールドが用意されている場合は?

 

その答えは、すぐに判明した。

 

「おいおい! なんかいるんだけど!」

 

「首が三つあるライオン?」

 

そのフィールドを先に進むと、闇の向こうに巨大な影が見えた。さらに近づくと、その正体が見えてくる。

そこにいたのは、金色の体毛が闇の中でも輝いている、巨大なライオンだった。まだ寝そべっている状態でも、その大きさは理解できる。

 

立ち上がったら、全長30メートルくらいはあるかもしれない。

しかも、首が三つあった。ケルベロスのライオンバージョン? あの大きさだし、明らかに強敵だろう。

 

さらに、俺たちを驚愕させた事実がある。

 

まだ戦闘状態に入っていないのに、赤いマーカーとHPバーがハッキリと見えていたのだ。これは、レイドボスの特徴であった。

 

「超脱出の玉って、レイドボス戦だと使えないんだよな?」

 

「はい」

 

「・・・・・とりあえず、洞窟から脱出しようか」

 

「ルルカも賛成です」

 

他の皆も異論無くレイドボスを見て逃げ帰ってきた俺たちは、洞窟の入り口でグーっと伸びをしつつ体をほぐしていた。別にアバターの体がコリを覚える訳じゃないんだけど、狭い場所から出ると無意識にやっちゃうんだよな。

 

「いやー、気の抜けない洞窟だったな」

 

「ですねぇ」

 

ただし宝箱は魅力的なんだけどな・・・・・。こういった洞窟では宝箱はランダム配置で、帰りは1つも発見できなかった。行きで2つも発見できたのは、奇跡に近かったのかもしれない。でも、中に入っていたアイテムはペイン達はいらないと俺に押し付けるのはどうかと思うぞ。

 

「それで、どうする? レイドボスを見つけてしまったぞ」

 

「絶対強いよな?」

 

「間違いなくね」

 

「鑑定結果は、サーベラスライオン。参加可能人数は5パーティ、最大30人だってさ」

 

レイドボスというのは、初回撃破がメチャクチャ難しい仕様だ。1回倒されると弱体化するんだが、弱体化前はどのボスもプレイヤーを相当手こずらせるらしい。いや、問題はあのモンスターよ。

 

「三つ首のモンスターにサーベラスの名前・・・・・ケルベロスの変わりは間違いないから、おそらく炎属性の攻撃をしてきそうだな」

 

「一目見て判ったのかよ?」

 

「あくまで可能性だ。もしかすると頭が3つあるから3つの魔法を使ってくる可能性もあるし・・・いや、それだったらヒュドラも同じか。でも、ベヒーモスよりは楽そうではあるな。―――わざと食べられて体の中から攻撃さえできれば、の話だがな」

 

予測する言葉を聞いたドレッドとドラグが、まるで人を悪魔を見るような目で見て来るのが遺憾だ。

 

「さて、そろそろ他のエリアの第11エリアに繋がる場所へ行こうか」

 

「そうだな。ルルカ、よろしく頼む」

 

「お任せください! 冒険者の皆様!」

 

ルルカの案内で俺達はその日、東西南北に存在する第11エリアに続く洞窟の発見と調査を長時間費やした。本当に誰にも見つかっていないらしい隠れ里に住んでいたNPC達とも交流した。

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