バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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火精霊の街と水精霊の街

イズと別れて畑に戻ってサイナと農業をするためファーマーの方で【農耕】のスキルを50まで上げてカンストしたら農耕・上級となってそのスキルから派生した育樹と水耕と言うスキルのどちらかを選べるという事実が判明した。

 

「サイナ、水耕ってあるんだから米でもあるのか?」

 

「可能性は高いかと思われます」

 

「んじゃあ、水耕を取得するから米が手に入ったら頼んだ」

 

ラボでサイナに【水耕】のスキルを譲渡した。それから農業関連のスキルをファーマーの職業に転職してから取得して全て譲渡する。【植物知識】に関しては森の中で名のある木材を伐採してもらって取得した。

 

「サイナは食事とかはするのか?」

 

「不要です。私達は機械神の力によって生み出された征服人形(コンキスタ・ドール)。この身が朽ち果てるまでマスターに仕えることをプログラムされております」

 

「どの機械神なのか分からないが一代目機械神と二代目機械神の力を受け継いだ俺もサイナ達のような存在を生み出せるか?」

 

「それはマスターの力次第でございます」

 

否定も肯定もしないか。MPもさらに増やさないとならないよな。

 

「もしサイナに一代目か二代目の機械神を譲渡したらどうなるかわかる?」

 

「一代目の機械神は装備を破壊して武器を生み出す能力ですね。それは私自身の身体を破壊しなければなりません。耐久値もすぐ0となって崩壊するでしょう。二代目機械神の能力は無尽蔵の科学のエネルギーでありとあらゆる機械を創り出すことが出来ます」

 

後半が何とも凄まじい返答だな。確かに俺が保有しているよりは有用だろうが、俺も使いたいんだよなぁ。サイナを見つめて

 

「サイナに機械以外装備することは?」

 

「可能です」

 

「冒険者が量産している装備も?」

 

「可能です」

 

ユニーク装備・・・・・いや、毒無効化のスキルを所持してヒドラのアレはHPをドレインにしなくちゃならない。サイナには出来ないから手に入れられることはできないか。となると・・・・・金が必要なわけで生産に力を注がないといけないか。それともスキルを売るか?

 

「錬金術か・・・・・レベルⅩⅩにしてあるから色々と作れるけど」

 

掲示板で調べてみれば、やっぱり回復薬が製作できる他にステータスを上昇させるアイテムも作成が出来るか・・・・・。でも、それらは始まりの町では売れなさそうだよな。だとすれば・・・・・ああ、そう言えばイッチョウが言ってたな。

 

「南に行ってみるか」

 

そうと決まればオルトを連れ町を後に一時間掛け、南にある広い地底湖に辿り着いたがその場で途中ログアウトして時間帯的にも帰ってくるオリジナルと交代するのだった。

 

 

学校から戻って夕餉を過ごし、ここまで進めた分身体がしようとしたことを引き継ぐ。地底湖の名を称するだけあって奥行きも広く水は綺麗な青色、永い時の中で出来上がった現実世界でも早々にない自然の芸術だ。この光景にゲームとはいえ感動する俺は周囲を見回す。

 

リアルであれば早々お目にかかれない、様々な形の鍾乳石が連なった大空洞。そして、底まで見通せる澄んだ水を湛えた湖。ただでさえ美しいその2つが合わさることで、冒し難い神秘さがその場を支配している。

プレイヤーの掲げる明かりに照らされた地底湖は、見る者に深い感動を与える事だろう。その場で地底湖を見つめ、神秘的なその姿を目に焼き付ける。

 

「初めてきたが、ここも釣りができるのか」

 

「―――そうだよん。しかも釣れた魚は調理ができる食用の魚だよ」

 

聞きなれた声がした方へ振り返ると釣竿を持ったイッチョウが朗らかに声を掛けてきた。

 

「ハーデス君もここに来たんだね。釣りをしに来たの?」

 

「地底湖には来たことが無かったからな。ここはどんな魚が釣れる?」

 

「まるで信号機のような色の背びれの魚が釣れるよ。ほら、これがそう」

 

見せてくれる魚のその色はカラフルだった。大きさや形はぼぼアユなんだが、その色合いはグッピーよりもさらに派手だ。鱗は赤や青、黄色の物がランダムで配置され、尾や背のヒレなどもドぎつい原色に染められている。

 

「味は?やっぱり美味いんだろ?」

 

「青ヒレの魚は美味しいんだけど、他はすっごく不味い」

 

「まんま信号機だな。まぁ、俺は釣りをするよりも直で獲りに行くよ。スキルレベルを上げるいい場所だし」

 

「あ、そっちが目的なんだね。頑張ってね。そのついで、青ヒレの魚を100匹ぐらい取ってくれると嬉しいな。魚料理を作りたいから」

 

「りょーかい。そんじゃ、行ってくるわ」

 

「あ、PT組もうよ」

 

「ん?いいぞ。オルトを頼んだ」

 

水の中へと泳ぐ。おー、地底湖の湖底も綺麗だな自分用の観賞するために動画モードにしておこっと。ん?何か突撃してくる魚がくるな。突撃ヤマメ?【パラライズシャウト】。

 

魚達の動きを観察して泳ぐコースを見つつ観覧気分で楽しみながら青いヒレの魚を狩っていくこと30分。イッチョウの要望の数を狩り終えれば、更に甲殻類はいないか湖底まで泳いでいるとある物が色々と見つけた。一つは光る珠だ。何だろうと掴み取って水面に浮上する。

 

「イッチョウ、これ見つけた」

 

「うわ、光の原因がそれだったんだ」

 

「原因?」

 

「湖から光が昇ったんだよ。だからその珠が原因だってこと」

 

なるほど、理解はしたがさっきまでちらほらいたプレイヤーが見かけなくなっているのは?

 

「どうなってる?」

 

「うん?何が―――」

 

「ムームーッ!!」

 

オルトが騒ぎ出した。何だ?と振り返ると水面から突き出た大きな背びれがこっちに近づいてきた。海の危険生物が現れるBGMが流れていたらピッタリなモンスターは突撃してきた。

 

「ギョギョギョー!」

 

ガンッ!

 

「ギョギョギョッ!?」

 

「「・・・・・」」

 

四桁の防御力の前じゃあ大きな突撃ヤマメでもダメージは入れられないようだ。ぶつかった勢いで跳ね上がって、陸の上に打ち上げられてビチビチと激しく跳ねるモンスターを神妙な顔で見つめ・・・・・。

 

「ええっと、倒してもいいのかな」

 

「いいんじゃないかな」

 

何とも言えない戦いの幕をイッチョウが下ろした。光る珠はイベントアイテムだったらしく、すでに消滅してしまっている。これからどうすればいい?悩んでいたら、いきなり視界に他のプレイヤーが現れた。まるで瞬間移動してきたみたいに。俺も驚いたが、向こうも驚いている。

 

「ハーデス君、さっきの原因は何だと思う?」

 

「俺は他の魚達を倒さず青い魚だけ百匹確保して、湖底も探してたら光る珠を見つけただけだ。イッチョウに見せようかと思ったら大きな突撃ヤマメと戦うことになった以上」

 

俺の事の経緯を聞き顎に指を添えて思考に入るイッチョウ。

 

「もしかして通常フィールドとボスフィールドが重なっていたのかも。レイドボスだったら他のプレイヤーも一緒に参加できるからね」

 

「そういうフィールドもあるのか?初めて知ったぞ」

 

「私も体験したわけじゃないけど知識としては知ってたよ。それで、何か変化とかあったりする?」

 

変化か・・・・・あるのか?インベントリを確認しても特に増減の変化はない、ステータス数値も問題ない。残るはフィールドだけで・・・・・。

 

「あ、あった」

 

「え?どんなの?」

 

俺は天井に指を差す。すると、岩の隙間から光の筋が伸びていた。ここに来た時、見える範囲で地底湖の中を一瞥していたから覚えている。天井に光の筋なんてなかったから。

 

「光の筋?」

 

陸に上がってイッチョウと近づく。道中、手に入れたヒカリ茸が3つ、これはラッキーだな。栽培したことが無い茸から意識を反らし岩の隙間から光の筋が伸びている方、崖に辿り着いた。改めて見上げると、かなり高い。

 

「窪みしか見えないけど、よく見ると入れそうな穴だ」

 

「この崖を這い上がってけば行けそうだね」

 

この瞬間を動画に記録して他のプレイヤーの奇異な視線を受けながら崖を登って狭い穴を潜る。細い通路を進んだ先に出口があった。そこから、明かりが差し込んでいる。

 

「イッチョウ、出口があるぞー!」

 

「隠しエリア?うわ、初めての経験だよん!」

 

ワクワクドキドキの気持ちでイッチョウと出口を潜る。 地底湖の先に広がる光景。そこは一見すると、背の高い草が生い茂る平原のように見えた。生えている草は葦に似ている?そして日差しが強い。

 

「おお・・・・・何かありそうな感じだ」

 

「地面は沼、ここ湿地帯のフィールドみたい」

 

「上空から進んでみよう。オルト、ありがとうな」

 

オルトを畑に送還した後、鷹に変身する俺の背中にしがみ付き空へ舞い上がる。

 

「本当に便利な装備だねー!それに上から色んな物が見られる上にここは私達の貸し切り状態!」

 

「俺達だけの秘密の場所ともいえるな。確かに、これは優越感も覚えてしまう。このフィールドに入れる条件も俺達しか知らないんだからな」

 

「うんっ!あ、カエルを発見」

 

「湿地帯だから不思議じゃないな。というかよく見つけたな」

 

「【遠見】っていうスキルを持ってるからね。望遠鏡のように遠くの物を見ることができるんだよ」

 

「何それ、俺も欲しい」

 

しばらく空の上からこの隠しエリアを調べ回った。その時だ、イッチョウが声を上げた。

 

「ハーデス君、採取ポイントがあるよ」

 

「どこだ?」

 

俺の顏の横から腕を伸ばし、視界に映る彼女の指す方へ降下する。本当に採取ポイントがあった。イッチョウが俺の代わりに採取した矢先、慌てた様子で教えてくれた。

 

「ハ、ハーデス君ッ、これ、(もみ)、お米だよ!」

 

はい米キタァーッ!

 

「イッチョウ、もっと探したい」

 

「勿論!未だこのゲームでご飯を食べたことが無いからね!」

 

イッチョウの目と空からの移動を合わせれば、他にも採取ポイントを幅広く見つけることが可能になる。それが現実のものとなると―――。

 

「ハーデス君、大麦を発見したよ!」

 

「これ、小麦!パンが作れるな!」

 

「サトウキビ!砂糖ゲット!」

 

「なぁ、湿地帯なのにトウモロコシがあるのは?」

 

「んー謎だけどいいんじゃないかな?このゲーム、色々と緩いし」

 

気にしてもしょうがないってことか。ゲームだし現実とは違うって拘っても楽しめないよな。

 

「トウモロコシ、醤油とバターがあれば美味しそうだ」

 

「醗酵しないと作れないよね。そんなハーデス君に朗報だよん。始まりの町で発酵樽って樽が売ってたよ」

 

「発酵樽?名前からして発酵が出来そうだな。醗酵スキルがあるなら取得して作りたいところだが肝心の豆がねぇ・・・・・」

 

どこで手に入る事やら・・・・・。

 

「じゃあ、俺からも朗報を授けようか。さっき潜水していたら湖底に扉があったぞ」

 

「え?もしかして、ダンジョン?」

 

「それかボス部屋かもな。あのデカいヤマメは中ボスだったかもしれん。【ユニークシリーズ】が手に入るチャンスかもしれないが、どうする?」

 

ま、尋ねるまでもないな。

 

「一度、戻るか」

 

「うん!」

 

来た道へ戻り、狭い通路の中へ潜り地底湖に戻る俺達。そして水中へ飛び込み俺が案内する。

俺とイッチョウが湖底へ潜っていき固く閉ざされている横穴の扉の前に近づく。短刀で鎖を切り裂いて中を開け放つと予想通りその穴は奥へ奥へ、深く深く伸びていて一緒に泳ぐイッチョウはそこを人魚と言ってもいい程の速度で泳いでいく。

しかし、途中で道が枝分かれしているのを見て俺達の動きが止まる。てっきり最奥まで一本道だと思い込んでいたためである。一人だとこれは骨が折れると思いつつ俺達は手分けして潜って枝分かれしている洞窟の中を泳いでいく。幾つも幾つも枝分かれた横穴を潜って十分も超えた頃、イッチョウと一緒に真っ白い大きな扉を通路の先に見つけた。

よし、と小さくガッツポーズをして来た道を引き返す。浮上するなりイッチョウとハイタッチをする。後は無事に勝てるかどうかだ。

 

「どうする、一人で挑むか?」

 

「ここまで来たんですから一緒にやりましょうよ。【水泳】と【潜水】スキルを取得したんですから、レベルも上げて万全にしておきたいんです」

 

「明日と明後日は火と水精霊の里に行きたいから今日と明々後日だけ付き合えるぞ」

 

ボス部屋のそれでも構わないと言われてしまい、扉を見つけてからその日の俺達は地底湖で【水泳】と【潜水】スキルのレベル上げに明け暮れるようになって翌日の朝。学校へ行くオリジナルの代わりに分身体の俺がログインし待ちに待った精霊の里の攻略へ挑む。

 

「ようやく火精霊の里に行ける日だー!」

 

「ムムー!」

 

「さて、今日は火曜日・・・火の日だ。『鋭角の樹海』がある南の森に行かなくちゃな。リヴェリア、精霊の里に行くがどうする」

 

「是非お供したいところですけど、これから向かう里にいるのはサラマンダーであれば私は足手纏いになるかと。魔法が樹木なので相性が・・・・・」

 

「守るから気にしないんだけど」

 

「その・・・守られる心の準備が出来ていないので、すみませんっ」

 

何故に顔から火が吹くほど赤くなる?しょうがない。無理やり連れて行って好感度も下がるだけなら連れて行かない方がいいか。丁度俺がログインしたことを気付いたイズからメールが届いたし。南の森に行くと返信してオルトだけ連れて行く。無人販売機のことはサイナとリヴェリアに頼もう。

 

「おはようハーデス。今日は精霊の所に行くんでしょ?私も連れて行って欲しいんだけれど」

 

「構わないけど妙にウキウキしてんだな?」

 

「鍛冶スキルがあるかもしれない火の精霊のところに行くもの。この日の為にテイムと使役のスキルを取得してきたわ」

 

「可能性の話だからな。そんじゃ、南の森のボスをさくっと倒しに行くか」

 

 

掲示板で調べた限りこの南の森のフィールドボスは、蜂の巣の形をしている。この巣が本体で、小型の蜂を次々と召喚してくるのだ。蜂そのものは雑魚なのだが、素早いせいで攻撃を防ぐことが難しく、まれに毒状態にされてしまうため回復がなかなか追い付かない。そのため、対応の確立されていない初期の頃は、回復アイテムを大量使用してのゴリ押しが一般的な戦い方だったらしい。

 

雑魚蜂をいくら倒しても本体に影響はなく、本体だけを狙おうすると無防備な背を蜂に襲われるという、中々ウザいボスである。だが、蜂も巣も火炎属性に致命的に弱く、巣は火で攻撃すると確実に燃焼状態になるらしい。燃焼というのは、火が消えずに残り、火属性の継続ダメージが入る状態異常だ。それ故、火炎属性を使えば、火に弱い巣をかなり早く倒すことが可能である。

 

さらに、誰かが製作した広範囲を攻撃する爆弾で蜂ごと巣を潰す方法が確立されてからは、初心者でも簡単に倒すことができるようになっていた。今ではあまりにも楽勝で倒せるせいで素材が大量に出回っており、ボス素材でありながら値が大きく崩れているほどなのだ。

 

それでもフィールドボス中で最弱と言われないのは、油断をすると死に戻る可能性が高いからだ。爆弾による自爆ダメージや、爆弾をケチったせいで倒しきれず、怒り状態で攻撃力の倍化した蜂軍団に袋叩きにされるプレイヤーも多いらしい。

 

―――【毒無効】の俺には通用しないがな!だからこそ俺は・・・・・。イズに蜂が向かわないよう【挑発】して試しに蜂の巣の中にあるかもしれないハチミツやロイヤルゼリーなど採取できないか試行錯誤してみた。

 

「うわぁ・・・・・」

 

ドン引きされてるかもしれないがな!結局、ボスだから採取しても手に入らずHPドレインで倒してみた。

 

「あ、巣がサクサクしてコーンみたいだ。中のハチミツの甘さも相まって美味しいぞイズ!ほら、食べて見ろ」

 

「ちょっ、こっちに来ないで!全身ハチミツ塗れで蜂までついてきちゃってるから!」

 

一時逃げるイズと戯れてもキチンとボスは爆裂魔法で倒した。ハチミツのドロップアイテムは手に入れたけどロイヤルゼリーは手に入らない。養蜂のスキルがないと駄目なのか?それと何故か【芳香】ってスキルを取得した。大方ハチミツ塗れの状態でモンスターの大軍を引き寄せたからかもしれない。ま、今はそれよりも第1エリアを突破して第2エリアの鋭角の樹海を進んでいった。道中で色々と採取は出来ているが、目新しい素材はない。この辺の素材はすでに次の街でも買えるかもだし仕方ないが。

 

「お、見えたな。あれが松明か」

 

木々の合間から、燃え盛る巨大な松明が見えていた。外見は本当に普通の松明なんだな。ただ森に生えている木と同じくらいデカイだけで。でも、これが火霊門の入り口で間違いないだろう。動画を録画モードにしてから松明の前に立つと前回の二つの精霊門と同じ感じでアナウンスの指示通りに火結晶を大松明に捧げる。出現した火霊門は、燃え盛る火の渦の姿をしていた。中々に迫力のある光景だ。

 

これに飛び込むのは、普通であればかなりの勇気がいるだろう。だが、俺は何の感慨も恐怖もなく、イズの手を引いてササッと門を潜ることにした。

 

「よくぞ参った、解放者よ」

 

出迎えてくれたのはサラマンダーの長だ。やはり火霊門の精霊はサラマンダーだったか。赤髪赤目、赤銅肌のややオリエンタルな容姿の男性の姿をしている。

 

そう、完全に男性型だ。いや、少年型と言った方がいいかな? 身長は150センチ程で、その顔にはまだあどけなさが残る。ただ、雰囲気が落ち着いているので、成人のようにも見えるから不思議だね。

 

上半身は体にピッチリフィットする赤いカンフーシャツ。下半身はややゆったり目のカンフーズボンだ。

 

ノームとサラマンダーが男性。シルフが女性。水精霊のウンディーネは―――おそらく女性だろうな。これで四つの精霊の性別が確定した。

 

 

たどり着いた火霊の街は、風霊の街とも土霊の街ともまた違った美しさがあった。共通するのは、幻想的で、リアルではお目にかかれないファンタジー感だろうか。

 

「おおー」

 

「ムムー」

 

「奇麗ねー」

 

オルトもイズも俺の隣で口をポカーンと開けて、初めて見た光景に見入っている。

 

火霊の街は、何というか明るかった。

 

「これは全てガラスなのか?いや、タイルも使われているか・・・・・」

 

火霊の街は、何もかもがガラスと磁器タイルでできていた。すりガラスや曇りガラス、クリスタルガラスなど様々な種類と色のガラスに、カラフルなタイルが組み合わされ、町が構成されている。

 

火霊門と街を結ぶ通路がかなり高い位置にあり、入り口からは街を見下ろすことができた。基本はすり鉢状の大きな空間だろう。そこにガラスとタイルでできたカラフルな家々が立ち並んでいる。空は、白いガラスのドームが覆っているようだ。淡い光がやわやわと降り注いでいる。

 

地面は、丁寧に均した土の上に、薄いガラスとタイルを組み合わせて敷き詰めたのだろう。カラフルな模様が描かれ、まるでモザイク画のようだ。歩いても大丈夫なのか少し心配になるが、町のオブジェクトは破壊不能だから大丈夫なのだろう。

 

街灯は細長い円柱状の透明のガラスだ。中では青白い炎が燃え、周囲を照らし出している。

 

全体的に派手だ。とは言え、嫌らしい派手さではない。オモチャの町とか、そんな雰囲気があるからだろうな。見ているだけでワクワクしてくる街だった。

 

ガラスの街を眺める。どこもかしこもキラキラしているな。ネオン街みたいだ。

 

「よーし、まずは街を見て回るか」

 

「ムム!」

 

「うん!」

 

火霊の街を歩いてまわると、サラマンダーの長よりもやや背の低い住人たちの姿を見ることができた。あれが進化前のサラマンダーなんだろう。やはり少年タイプだな。

 

ノームも個々に顔や髪型が微妙に違うが、サラマンダーはその違いがより大きい。カッコイイ系のサラマンダーもいれば、可愛い美少年タイプもいる。これは女性テイマーに人気が出そうなスポットだぜ。

 

いや、テイマーじゃなくても美少年が見放題なわけだし、普通の女性プレイヤーでも入り浸るやつが出そうだな。

 

店の種類はやはりそう変わりはないだろうが、とりあえず回ってみよう。だが最初に武具屋をのぞいても、目ぼしい装備はなかった。いや、性能的には強いんだが、俺は重戦士だから興味が惹かれるものがないのだ。まあ、ここは予想通りである。本命は素材や道具だ。

 

しかし、次に雑貨屋で種を探してみたんだが、目新しい物はあった。微炎草、ウチにはない植物だ。

 

ただ、その次に訪れた店には色々と面白い物が揃っていた。そこはガラス製品と、陶磁器の店なのだが、ガラスのペンダントやメガネ、ピアスのような装備品だけではなく、グラスやカトラリーなどの日用品なども売っていたのだ。風鈴なんて、風流でいいな。まあ、うちじゃ使えないけど、いつかホームを入手したら飾ってみるのも面白いかもしれない。

 

「食器はいいなぁ」

 

色とりどりのガラス製品や、色鮮やかな磁器。渋い色の陶器など、見ているだけでウキウキしてくる。どれもこれも欲しいが、オークションで散財したばかりだからな~。今は節約をせねば。

 

とりあえず、透明なガラス製のグラスを6つ、白い磁器製のティーカップとソーサーを6つ、茶褐色の陶器の湯呑を6つ買っておくことにした。どれも安物だし、この程度はいいよな?

 

「お次は薬屋か・・・。へえ、これは役に立ちそうだな」

 

次に足を踏み入れた薬屋で最も気になったのが、暑気耐性薬だ。これを飲むと、暑い場所でも大丈夫になると書いてある。暑い場所と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、火霊の試練である。絶対に火が燃え盛るダンジョンであると思われるし、この薬があったら攻略が捗るのではなかろうか?

 

「買ってみるか」

 

ダンジョンで色々と実験してみよう。いや、そういう耐性のスキルが手に入るかも?

 

「よし、この調子でどんどん行くぞ」

 

「ムムー!」

 

「で、お次はお馴染みのこの店ね」

 

ホームオブジェクトの販売店だ。やっぱり面白いな。

 

畑に使えそうなアイテムだと温室があった。しかもガラス張りのちょっとお洒落なタイプだ。

 

あとは炬燵、床暖房も珍しいだろう。まあ、今の俺には設置できる場所もないけど。

 

「それ以外だと、鍛冶とかガラス工芸用のホームオブジェクトばかりだな」

 

「炉なんて私にピッタリのオブジェクトだわ!」

 

「確かに。だが、今の俺達にはあの装備があるからな必要ないだろ?」

 

「そうねー。凄く便利過ぎて手放せなくなっちゃってるわ」

 

リストには炉や窯の名前が多い。火を使うとなるとこういうアイテムばかりになるのは仕方ないだろう。料理用の石窯などもあるが、やはり設置する場所がなかった。畑には、農業系か素材産出系のオブジェクトしか設置できないのだ。

 

「石窯・・・・・物凄く残念だ。ピザが作れるのに」

 

「私もよ。ホームがないと炉を買っても設置ができないもの」

 

「ん?じゃあ、どうやって鍛冶してるんだ?」

 

「お金を払って借りているのよ。鍛冶師専用のお店をね」

 

そんなこともできるのか。ん、待てよ?

 

「俺は生産職じゃないから知らないことだけど、プレイヤーは自分の店を持てるのか?」

 

「生産職のプレイヤー限らずね。畑を持ってるあなたも知ってるでしょうけど、ファーマーは無人販売機で販売もできるのよ。それと同じね」

 

「なるほど、専用なのかと思ったがそうでもないのか。とりあえず温室だけ買っちゃおうかな」

 

それから火霊の街を一通り見回った俺たちは、そのまま火霊の試練へと向かっていた。

 

「初見のダンジョンだ。気合を入れて、でも慎重に行くぞ」

 

「ムム!」

 

「ええ!」

 

足を踏み入れた火霊の試練は、なかなか面倒くさそうな造りをしていた。基本は、天井まで3メートルほどの洞窟型ダンジョンだ。だが、当然それだけではない。

火属性のダンジョンらしく、入り口から続く通路も、たどり着いた最初の部屋も、全ての壁が炎で包まれていた。しかも床の一部が赤熱して光っている。

 

「これって、床も壁も、触ったら絶対にダメージあるよな?」

 

「ム?」

 

「とりあえず床からチェックだ」

 

まずは足を乗せてみる。

 

「あ、熱い」

 

痛くはないんだけど、赤い床に乗った瞬間、足裏にひり付くような感覚があった。ストーブに指を近づけ過ぎた瞬間の、指先の感覚がなくなるようなあの状態である。

 

「ダメージはありか。次はもう少し長く行ってみよう。あと、次は手で触ってみるか」

 

屈んで、赤い床にタッチする。今度は慌てず、そのまま5秒ほど手の平を床に押し付け続けた。軽く煙なども上がって、なかなか演出も凝っているな。

 

赤い床から手を離すと、手の平が赤く燃えたように光っている。これが熱によるダメージエフェクトなんだろう。ただ、すぐに消えたので、燃焼状態になったわけではないらしい。

 

「ダメージは5秒で5か。同じぐらいか」

 

手の平でも、靴を履いている足裏でも、ダメージは同じだ。軽減効果があるような装備じゃないと無意味って事らしい。

 

「リヴェリアの言う通り、樹木魔法が使えない場所だな」

 

しかも毎度毎度燃焼を直していたら、かなり面倒臭いだろう。それに、水をかければ治るとは言え、インベントリには井戸水がわずかと、浄化水しか入っていない。井戸水はタダだが、浄化水を使うのはもったいなかった。

 

「大丈夫?VIT極振りでも状態異常の攻撃までは耐性がないとダメージが通るわ」

 

「んー、なら、燃焼状態でいたら【火耐性小】が取得できるんじゃん?一度試してみたい」

 

仕方ないなぁって感じで首を横に振るイズ。実験継続のお許しが出たらしい。では、早速実験してみよう。

 

俺は燃え盛る炎の壁に手を伸ばす。リアルだから、かなり迫力がある。

 

「ムムーッ!」

 

オルトが俺の後ろで応援してくれている。ありがとうな。でも怖くはないんだよ。

 

「おー熱っ、さっきよりも熱い、あっ、しかも火が消えない」

 

炎の壁の方は触っただけで燃焼状態になってしまうらしい。手が火に包まれている光景は、普通の人間からすればなかなか恐ろしいものがある。

こりゃあ、かなり難度の高いダンジョンだな。水を常備しておく必要がありそうだ。もしくは水魔法とその能力があるモンスターもだ

 

「ダメージは5・・・・・。タッチ1秒で3、あとは燃焼ダメージが少し入った形か?」

 

モンスターとの戦闘以上に、地形ダメージを気にしないといけなかった。というか、戦闘中に地形ダメージ、燃焼ダメージを食らう事態になったらかなりピンチかもしれん。となると、あの薬にがぜん期待してしまうな。

 

「次は暑気耐性薬を使ってみよう」

 

この暑気というのがどの程度の熱量を指すのかで、効果が変わって来る。単に熱い場所で涼しく感じるだけなのか、熱系のダメージを軽減できる程なのか。

 

現在、周囲の暑さはそこまでではない。まあ、周りが火で囲まれているわけだし、多少気温は高いと思うが、無視できる程度だ。

 

そう考えると、地形ダメージを防ぐためのアイテムだと思うんだよな。火霊の街で売っていたことからみても、攻略を補助するアイテムだと思うし。

 

俺は暑気耐性薬を一気に飲み干してみる。味はサイダーみたいだった。爽やかで、暑い日に飲んだらおいしそうだ。暑気耐性というバフが付いたのが分かるな。

 

「ていうか、この味どうやって再現してるんだ? この薬を作るための素材に秘密があるのか?」

 

むしろそっちが気になってしまった。だって、サイダーだぞ? もし再現できたら、色々な味のフルーツサイダーなんかも作れるかもしれない。

 

「おっと、効果が切れる前に実験だ。まずは赤い床だな」

 

「ムー」

 

俺が床に足を乗せるのをオルトが固唾を飲んで見守る。そこまで真剣になることじゃないんだけどな。イズにもガン見されてるし。

 

「・・・・・平気だな」

 

10秒ほど足を乗せていたが、ダメージを負うことはなかった。暑気耐性のおかげなのは間違いないだろう。次に炎の壁に手を突っ込む。

 

「ダメージは軽減されても、燃焼状態にはなるのか」

 

インベントリから取り出した井戸水をかけると、手を覆っていた火が消える。

 

「受けるダメージは減ってるけど・・・・・」

 

どうやら火の壁に触れたダメージが1点に減り、燃焼によるダメージは軽減なしという感じらしい。

 

「いいな、これがあれば攻略がかなり楽になるぞ」

 

「検証は終わり?なら、奥に行きましょ」

 

「そうだな、実験も済んだし、進むか。いや、待てよ。最初の部屋には隠し部屋があるのがこれまでのパターンだ」

 

「土霊の試練の時みたいな?それなら調べてみよっか」

 

風霊の試練、土霊の試練、ともにネックレスの入った宝箱が隠されていた。となると、この部屋にも宝箱が隠れている可能性が高いと思うが・・・・・。

 

「オルト、今回も分かるか?」

 

「ムー?」

 

「だめか?」

 

頼りになるオルトでも分からないらしい。ただ、オルトが感じることができないということは、土を掘った先に隠されているパターンではないだろう。

 

「となると、この炎の壁の先か?」

 

 隠し通路が炎で覆い隠されているパターンは十分あり得るだろう。

 

「よし、イズ水をぶっかける準備をしてくれ」

 

「何をする気なの?」

 

「身体を張って探すのさ」

 

井戸水をイズに譲渡。それから片手を炎の壁に触れながら沿って移動し始める。掌から壁の感触が無いところが隠し部屋があるという方法だ。燃焼状態を引き起こす炎を触れっぱなしだかダメージが継続してHPが減っていく。半周をした頃に、スカッと壁の感触がなくなってここかと顔も炎に突っ込めば小部屋があり赤い箱がひとつあった。箱に近づき開けると中には予想通り、攻略を有利にしてくれるネックレスが入っていた。

 

 

名称:鎮火のネックレス

 

レア度:3 品質:9 耐久:200

 

効果:【VIT+4】、燃焼回復速度上昇・微

 

 

アイテムを確認して直ぐにイズのもとへ戻った。

 

 

バシャッ!

 

 

そして、思いっきり水を掛けられる。

 

「見つけたのね?どんなの?」

 

「これだ」

 

「鎮火のネックレス・・・そこまでって感じね。でも、この先必要になるだろうから手に入れたいけど」

 

「単身で行くのは無謀だな。というわけでこれをあげるわ。俺はこのダンジョンの中で火の耐性を得れば

 いいだけだし」

 

ありがとう、とイズはネックレスを受け取って装備する。

 

「じゃあ、先に進むぞー」

 

「フム!」

 

オルトを先頭に、次の部屋へと進む。

 

「通路に罠はないか気を付けよう。落とし穴に火責めの罠だったらイズは助かるかわからんし・・・・・」

 

「怖いこと言わないで」

 

壁と、時おり赤熱している床が罠みたいなものだが落とし穴は厄介すぎる。

 

「さて、部屋の中には・・・・・何もいないか?」

 

通路から部屋をのぞいてみる。円形の部屋の中央には 直径1メートル程度の穴が開いており、そこから炎が立ち昇っていた。炎の柱と言うほど大きくはないが、篝火という程度には勢いがある。

 

モンスターの姿が全く見えない。だが、気配察知には確実にモンスターの反応があった。どうも、炎の中に隠れているらしい。どんなモンスターか分からないのは不安だな。

 

「モンスターがいるな。よし戦闘態勢!」

 

「ム!」

 

オルトがクワを構えて、ザッと一歩を踏み出す。やる気だね。

 

「頼もしいな。じゃあ、行くぞ」

 

「ムッムー!」

 

前衛タイプの俺達二人が部屋へと駆けこんでいった。そのまま周囲を警戒するように見回す。すると、部屋の中央の篝火から何かが飛び出す。

 

「出た――って・・・・・。小鳥?」

 

出現したのは手の平サイズの小鳥であった。羽毛の代わりに炎を纏っているが、どう見ても強そうではない。名前は、ファイアラーク。見た目から考えて火属性のモンスターで間違いない。

 

「一匹だけか。テイムは・・・・・?」

 

無理だった。風霊の試練のブリーズ・キティ、土霊の試練のストーンスネークと同じ、サモナー専用のモンスターなのだろう。

 

「じゃあ、倒すか」

 

水魔法を使えば楽に勝てるだろう。しかし、生憎そんな魔法もテイムしたモンスターもいない。地道に相手を調べながら戦って勝つしかなかった。すると、このモンスターが見た目通りの弱々しい小鳥でないことが分かった。

 

まず速い。しかも飛んでいるので、攻撃が全然当たらないのだ。向こうが上空にいる時は長距離攻撃をしなくてはいけない。

 

さらに攻撃を調べれば攻撃方法は2種類。嘴での突っつきと、火の粉攻撃だ。嘴は大したことが無い。速いので避けづらいが、ダメージは皆無。オルトも問題ないのだ。

 

だが、もう1つの攻撃方法である、火の粉がなかなか大変だった。こちらもダメージは低いのだが、確率でこちらを燃焼状態にしてくる効果があったのだ。

 

「ムッムッムーッ!!?」

 

「オ、オルトの頭が燃えてる!ああ、待てっ、動き回るなっ!水掛けるから!」

 

「こっちにおいで!こっち!」

 

テイマーとサモナーの鬼門だろここ。ヤバいなこれ・・・・・。

 

「オルト、イズと後方で待機!―――【咆哮】!」

 

逃走するか硬直になるか―――後者に陥ったファイアラークはポトッと地面に落ちて【シールドアタック】で倒して初戦の幕を下ろした。

 

「私、火の耐性のある防具を作るわ」

 

「オルトの防災頭巾を頼む」

 

布でゴシゴシとオルトの頭髪を拭くイズに心底からお願いする俺だった。

 

 

 

次の部屋には、予想通りというか期待通りというか、いつか出現するだろうと思っていたモンスターが俺達を待ち構えていた。

 

「狂った火霊だな」

 

「火結晶が手に入るわね」

 

今までの狂った精霊の例に漏れず、サラマンダーに似た背格好なのに顔がメチャクチャ怖かった。

やつれた雰囲気の細面に、丸い穴が3つ空いている。ボーリングの玉の持ち手っぽいって言えばいいか?鼻はなく、目と口があった場所が暗く落ち窪んだ穴となっているのだ。眼球はないのに何故か睨まれている気がするのは、俺がそう見えているからだろうか?

 

「どこの狂った精霊も相変わらず不気味だぜ」

 

あれが可愛い精霊になると思えん。ビフォーアフターすぎんだろ。

 

「まあ、ユニーク個体でもないし、普通に戦ってみるか」

 

運良く他に敵もいない。色々と検証するチャンスだろう。すると、意外に戦いやすい事が分かった。

狂った火霊の攻撃方法は火魔術と近接格闘なのだが、【悪食】で一発倒せるのだ。

次の部屋に進むと、2体の狂った火霊に加えて、新たなモンスターの姿があった。

 

「デカい岩にしか見えないが・・・・・。ワンダリングロック?」

 

それはバランスボール程度の、灰色の岩の塊であった。よく見ると、岩の表面に顔らしきものがある。こちらを睨む様な、ナマハゲっぽい鬼面である。サイズや色的に、いきなり自爆呪文をぶっ放したりしないか心配になる姿をしているな。

 

「オルトは火精霊と戦ってくれ。リズ、避けるだけでもいいから足止めしてくれるか?」

 

「ムッ!」

 

「ええ、戦いが苦手だからそれぐらいなら」

 

ワンダリングロックの攻撃方法は転がっての突進らしい。あの大きさの岩が突っ込んで来る姿は中々迫力がある。だが、俺は危なげなく大盾で受け止めていた。

 

「ゴロゴゴー!」

 

「んんー?」

 

受け止めたはずなのになんと、俺が吹き飛ばされた!待て、転がりの攻撃はノックバックの効果があるのか?とびっくりしながら部屋の壁際まで飛ばされていた。普通のダンジョンだったら、復帰にちょっと時間がかかる程度の話で済むんだが・・・・・。炎の壁故に炎の効果をもろに受け、燃焼状態になってしまっていた。なるほどな、いやらしいぜ。このダンジョンのギミックを利用してダメージを増加させてくる敵か。

 

「ハーデス、大丈夫!?」

 

「問題ない」

 

『スキル【炎上耐性小】を取得しました』

 

「火の耐性も得たところだ」

 

【八艘飛び】で俺はワンダリングロックに突貫して【悪食】で打倒した束の間に、俺は戦っているオルトとイズに加わって狂った火霊2体を撃破する。

 

「火の領域の中で戦うのってしんどいわね。それとさっきのスキルは?空を飛んでなかった?」

 

「【八艘飛び】だ。空中で八回まで空を跳ぶことが出来る」

 

「ムムムー!」

 

「お、オルトが採掘ポイント見つけたか」

 

「あら、じゃあ行きましょうかしら」

 

ピッケルを片手にルンルン♪とスキップする俺達。しかしこのダンジョンの中で採取できたのは、微炎草と火鉱石、銅鉱石であった。微炎草は畑で育てた物の方が品質が高いし、鉱石は土霊の試練の方がいい物が採れる。火鉱石はいい物なのだろうが、俺には売る以外の使い道がないし、目の色を変えて採る程の価値はなかった。

 

暑気耐性薬の材料が手に入ると期待しているんだが、どうだろうね?

 

「いや、待てよ。鉱石って確か・・・・・」

 

軽く調べてみると、火耐性塗料という物を作るのに、火鉱石が必要であるらしい。その色は赤とオレンジのマーブル模様で、非常に美しかった。この色だけでも、入手する意味はあるだろう。

 

「へぇ、防具にいいじゃない。ハーデス、これをできるだけ多く集めたいわ」

 

「ふむ・・・・・なら、火鉱石は少し確保しておくか。でもその前にちょっと休憩しよう」

 

「なら街に戻りましょ?ここに留まっていたらモンスターがまた湧くし」

 

イズと話し合って俺達は火霊の試練をまったりと攻略することにした。無理をせず、ある程度消耗したら街に戻り、暑気耐性薬を補充し、休憩も適度に挟む。そうやって何度かアタックを繰り返した結果、俺達は発泡樹という木がある部屋までは到達することができていた。この発泡樹は木材と、発泡樹の実が採取できる。そう、これが暑気耐性薬の材料だったのだ。まだ実験した訳じゃないが、名前から予想してもこれが炭酸の素だろう。上手くすれば炭酸飲料が作れるかもしれん。

 

「炭酸・・・・ハチミツ、あとパクチーとライムがあればコーラ作れるじゃん」

 

「え、たったそれだけでコーラ作れるの?何か複雑な名前が色々書かれてあった気がするんだけど」

 

「コーラ作りの簡易版だと思えばいいよ。よくあるだろ、意外な食材で意外な調味料と合わせるとアレの味に似ているって。その類だよ」

 

「へぇ、でも見つけるのは難しいと思うよ」

 

「わかってるさ。でも見つけてみたいな」

 

発泡樹のある部屋からもう少し進むと、運よく中ボスのいる部屋である。

 

「中ボスは火霊のガーディアン、ね。だとすればあの土霊門には土霊のガーディアンがいたかもしれないわね」

 

「色々と共通点があるからそうかもな」

 

中ボスは背中にある穴から、まるで噴火のように火の球をばら撒く獣タイプのモンスターらしい。一発一発に結構な威力があるようで、並みの盾だと壊れるかもしれないな。

その後も俺たちはユニーク個体のサラマンダーを求めてダンジョンに潜り続けたのだが、何度か二人がピンチに陥る場面があった。最もヤバかったのは、ワンダリングロック3体にかち合った時だろう。

 

基本は突進だけだし、いけると思ったんだけど。まさかあんな方法を使ってくるとは・・・・・。なんと、ビリヤードの球のように仲間に突進してぶつかり、互いの軌道を変えるという戦法を使ってきたのだ。

 

そのせいで防御と回避がずれ、俺とオルトが盛大に吹き飛ばされた。イズも死に戻りかけての後は後手後手に回り、辛勝であるがなんとか麻痺攻撃で動きを封じて確実に倒していった。

 

「・・・・・し、死ぬかと思った」

 

「ムムムー・・・・・」

 

「あの不規則な動きは反則だろ。俺も燃焼ダメージで死にかけたッ」

 

今後はワンダリングロックが複数いる場合は気を付けないといけないな。

 

そんなこんなで火霊の試練のウザさに辟易しつつも、ちょっと飽きて来たし、素材類もそれなりに集まったから、いい加減もう休憩でもしようとしたその時だった。

 

「でた!」

 

「でたわね!」

 

「「しかも2体!」」

 

遂にユニーク個体のサラマンダーが2体もレア出現していた。いやー、俺の日頃の行いの賜物だろうか。いいタイミングだ。普通のサラマンダーがオレンジの髪なのに対して、サラマンダーの長と同じ赤い髪だ。

 

「よし、先に結晶を手に入れよう。1つでもゲット出来たらイズの物だ」

 

「頑張ってねー!」

 

「ムムー!」

 

ふはははー!火結晶を置いて行けー!

 

そこからさらに1時間後。

 

「きたー!」

 

「ムムムー!」

 

ようやくユニーク個体と遭遇していた。今度は絶対に捕まえる。

【パラライズシャウト】で動きを封じてから文字通り狂った火精霊を体で拘束し、【手加減】でHP1まで削る。頃合いを見てテイムを始める。

 

「テイム! テイム!」

 

MPもかなり残っているし、麻痺が解ける前に成功したいところだ。そうやってテイムを繰り返すこと8回。

 

「テイム!」

 

「ヒム?」

 

「よっし!ゲット!」

 

予想外に速く、テイムが成功していた。やや可愛いタイプの顔をした、赤い髪の少年が俺の前に立っている。

 

着ている服は、上半身は体にぴったりフィットする、前で黄色い紐を使ってとめる形になっているノースリーブのカンフーシャツだ。

 

下半身はゆったりとしたカンフーズボンである。ズボンは一見タボッとしている様に見えるが、裾はきっちりすぼまっており、動きを阻害するようなことはないだろう。少林寺とかにいそうな感じだ。ステータス、早速チェックしてみよう。

 

 

名前:ヒムカ 種族:サラマンダー

 

契約者:死神ハーデス

 

LV1

 

HP:50/50

MP:48/48

 

【STR 13】

【VIT 13】

【AGI 7】

【DEX 14】

【INT 11】

 

スキル:【ガラス細工】【金属細工】【製錬】【槌術】【陶磁器作製】【火魔術】【炎熱耐性】

 

装備:【火霊の槌】【火霊の服】【火霊の仕事袋】

 

 

街を見て予想していたが、ガラスや陶磁器の生産系モンスターだったか。少し鍛冶なんかも期待していたんだけどね。でも、これで自前で色々な食器を用意できるってことだ。今からどんなものを作ってもらえるか、楽しみである。問題は、設備を揃えなきゃいけなさそうなところかな?

 

そこも設備の値段を見て決めよう。場合によっては、最初は安い設備で我慢してもらうしかないな。炉とか窯とか、高いイメージだし。

 

「どう?鍛冶スキルある?」

 

「残念なかった。工芸に関するスキルだけだ。鍛冶っぽい仕事をしてくれそうなスキルばかりなんだが、ほら」

 

「あら・・・本当にね。あ、【製錬】があるじゃない!鉱石をインゴットにできるわよ」

 

「でも炉がないぞ?」

 

「そうね・・・・・あ、私の店の炉ならできるんじゃないかしら?」

 

試したいイズの気持ちに応え、今度は彼女がテイムするユニークモンスター巡りを再開する。

 

それから火結晶集めもしてそれなりに手に入れた後は、火精霊の街を後にしイズの店に訪れていた。彼女の借りている店に来たのは初めてだがイズが製錬して欲しい鉱石は十中八九わかっている。

 

「ミスリルのインゴットはやはり売れる?」

 

「売れるわ。鍛冶師のプレイヤーだったら喉から手が出るほどにね。最高数十万は売れるんじゃないかしら。実際、ミスリル鉱石を手に入れたプレイヤーがいないのにそれがインゴットよ?価値は凄まじいに決まってるわ。でも、始まりの町で売れるかどうかはまだ何とも言えないわ」

 

そういうものかと半ば他人事のように聞いていた。そして素朴な建物、イズの店に辿り着いた。北西の大通りにあったとは知らなかったな。中に入ると、多種多彩な武器が飾られて壁には大小の盾、皮や鉄の鎧も売り出されている光景に、知り合いの職場に感嘆する。

 

「色んなものを作ってるんだな」

 

「鍛冶師だからね」

 

「やっぱり売れるものか?」

 

「プレイヤーの間で名が広まっている鍛冶師ほど売れ行きはいい方よ。私もそれなりに売れているわ」

 

βから有名人ってことか。

 

「ささ、カルラくん。ミスリルのインゴットを製錬してくれる?」

 

「ヒム!」

 

「その後にヒムカ、俺のも頼むわ」

 

「ヒム!」

 

任せろと言わんばかりに腕に力こぶを作るイズがテイムしたヒムカになかった鍛冶スキル持ちのサラマンダーのカルラと俺のヒムカはミスリル鉱石を10個ずつ燃え盛る炉に放り込んでいく。そして、二人が交互にだが作業は一緒に炉の中をかき回すこと約1分。俺の分も作ってくれたから2分も掛かった。

 

「ヒームムー」

 

「おお、インゴットが出来たのか?」

 

「ヒム」

 

「わ、凄い。品質★6で高い方じゃない」

 

ヒムカが出来上がったインゴットの1つを手渡してくれる。冷ましたりする作業は必要ないらしい。さすがゲーム、お手軽だ。

 

「でも10個で一つか。コストが悪くないか?」

 

「また集めれば問題ないわ。ハーデス、時間ある?」

 

上目づかいで訊いてくるイズ。苦笑いして頷く。

 

「しょうがない、付き合ってやるよ」

 

「ふふっ、ありがとう。よーし、できればインゴットは100個確保したいわ。善は急げ、行きましょ!」

 

つまり1000個鉱石を掘り尽くす気だと?・・・・・安易に請け負ってしまった。

 

「明日は水の日だから最後の精霊の街に行くよね?どんなオブジェクトがあるのか楽しみだわ」

 

「そのためにこのインゴットを売りたいな。な、採掘したポイントで採掘できるようになるのは一日一回か?」

 

「それは調べたことが無いわね。試してみる?一時間後か半日だったら一日に数回も採掘できるとすればその分鉱石の数が増えるし」

 

異議無し。その間、他のところに行って時間を潰せばいいだけだ。ヒムカを畑に送還して鷹になった姿でイズを背中に乗せてミスリル鉱山へ飛びだった。

 

翌日―――。

 

今日は珍しく祝日の日。よって学校は休みだ。平日の日に休めて遊べる環境は学生にとっては祝い事だろうな。ゲームにログインしヘルメスのところへ寄った。サイナとリヴェリアをお供にして。

 

「久しぶりだな」

 

「いらっしゃい!今日は水の日だから行くんでしょ?約束の物も楽しみにしているわ」

 

「そのために資金が必要になってな。これ、どのぐらいで買い取ってくれる?」

 

ミスリルのインゴットを一つ彼女の目の前に置くと凍結魔法を食らったように表情が固まった。

 

「・・・・・?おーい」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

両手で頬を摘まんで伸ばす。あ、柔らかい。でもってー彼女の唇に手を突き出した瞬間。

 

「イ、インゴもがっ!?」

 

「絶対に驚くと思ったわッ!」

 

これで前回面倒ごとが起きたんだからな!二度も同じ轍は踏まんぞ!

 

「・・・・・驚くなら他所でやれ。お前の驚愕の大声でこっちは他のプレイヤーに追いかけ回されたんだ。二度とここで新情報を回してやらないぞ。抑えきれないなら静かに驚け、いいな」

 

「・・・・・コクコク」

 

ならばいい。手を放せばまじまじとインゴットを品定めする眼差しで見つめだす。

 

「精霊の時も言ったと思うけど。インゴットなんて鍛冶師のプレイヤーの間じゃあブロンズ系、カッパー系の物しか流通していないの。アイアンのインゴットだってトップ鍛冶プレイヤーの中でも、ほんの一握りのプレイヤーがようやく作れるようになったばかりなの、それも低品質の物を。それがβでも手に入らなかった希少なミスリル、しかもインゴット。更に言えばこんな高品質なミスリルのインゴットなんて・・・。流通が限られているミスリルを持っているのはあなただけで、今の鍛冶師プレイヤーでも作れないでいるのにそれをインゴットにしてしまうなんて・・・・・」

 

怖い物を見る目で見られてまいか俺。そうすることができるようになったんだからしょうがないだろ。

 

「知り合いの鍛冶師が道理で喜ぶわけだわ。言っとくけどそれを可能にしたのはこいつだ。召喚ヒムカ」

 

「ヒム!」

 

火精霊サラマンダーのヒムカを召喚してヘルメスに納得させる。

 

「火精霊のサラマンダーのヒムカ君です」

 

「サラマンダーね!なるほど、生産系のモンスターなら納得できるわ。この子の情報を売ってくれるの?」

 

「最後の精霊をテイムしたら一括で売るさ。で、インゴットはいくら?」

 

「超希少だからね。武具店で商売してる知り合いが知ったら大騒ぎするぐらいだよ。今度紹介しろー!って」

 

「できれば内密に」

 

わかってるって、と苦笑いするヘルメスは買取の値段を提示した。

 

「1つ10万でどう?」

 

「数十万は売れると聞いたが、てっきり50万はいくかなって思ったぞ」

 

「他のプレイヤーにも売れるならいいんだけど、ほぼ独占状態でしょ?それにここは初期のプレイヤーが多い街だからね。このインゴットを活用できる鍛冶師のプレイヤーも少ない。価値は極めて高いけどまだ誰にも扱えないなら宝の持ち腐れって意味でこの値段なのよ。寧ろその知り合いの鍛冶師がこれで武具を作って売った方が更に倍の額で売れる方だよ」

 

・・・・・そういうものなのか?ま、俺は鍛冶師の専門プレイヤーではないから価値はあまり理解できない。それに彼女の言う通り希少でも扱えない物は放置されるのが珍しくもない。

 

「悪い、25で買い取ってくれないか?まだ見ぬホームオブジェクトが欲しいからさ」

 

「うーん、25万ねぇ。20万じゃダメ?」

 

「20万か・・・・・足りるだろうからそれで」

 

1つ20万で買い取ってくれた。

 

資金を得てホクホク顔の俺はヘルメスと別れて東の平原へと足を運ぶ。途中、イズと合流して―――。

 

「あ、ハーデス君。やっほー。ん?後ろにいるのは・・・・・誰?」

 

「売れたハーデス?ところで彼女とは知り合い?」

 

「ハーデス、どちら様ですか?」

 

イッチョウと偶然出会った瞬間に異様な雰囲気になった気がした。異なる視線が相手を見つめだす。

 

「初めまして、私はイッチョウだよ。ハーデス君とはリアルでも『とても』仲のいい友達だよ」

 

「私はイズよ。ハーデスとは『夜を明かす』まで一緒に楽しんでいるわ」

 

「私はリヴェリア・アールヴです。ハーデスとは『清いお付き合い』をしています」

 

・・・・・微妙に張り合っていないかお前ら?

 

「「「(理由は分からないけれど、負けたくない)」」」

 

「ハーデス君。この人達とはどういう関係かな?かな?」

 

「イズは鍛冶師のプレイヤーだ。だから一緒に採掘したり彼女の欲しがる物の為に行動をしてるんだ。リヴェリアは俺の畑で育ててる黄金林檎を譲る代わり、俺がいない時でも畑の手伝いをしてくれてとても助かっている」

 

「ハーデス、彼女との関係はなんです?」

 

「イッチョウとは歳は離れてはいるが本人も言った通り友達の関係だが。ある事情で同居しているし」

 

「え、同居?・・・・・通報した方がいいのかしら?」

 

運営に通報しようとするイズに本気で止めに掛かった。おいそこ、何嬉しそうに微笑んでいるんだっ。そう睨んで訴えればイッチョウが口を開いた。

 

「ハーデス君が嘘を言うか隠し事をするのかなーって、思ってたけど私達の関係を正直に言うから嬉しくて」

 

「同居しているだけで後ろめたい事なんて一切していないから当然だろうが」

 

「世間的には血の繋がりのない者同士の同居は世間じゃアレよ?両親は許しているの?」

 

「親公認だよん。寧ろ応援されている方だよー」

 

「・・・・・ハーデス、手を出しちゃダメだからね?許されているからって未成年と関係を持ったら犯罪よ?」

 

「出すか!出すとしてもイズのような成人だわ!」

 

というか、親公認ってなんだ?初めて聞いたぞ!

 

「あの、もう1人一緒に行くことになっているって人はどっちですか?」

 

「イズだ。さっきも言ったが彼女は鍛冶師だから鉱石と属性結晶を求めている」

 

「ハーデスと出会ってから本当に鍛冶師冥利が尽きることだらけなのよ」

 

「リヴェリアは風の精霊の里以降久しぶりに連れて来ようと誘ってきた。サイナは前回の反省を踏まえて俺と一緒に全線でイズとリヴェリアの護衛をして貰う」

 

「ふーん・・・・・。ね、私も一緒に行ってもいい?」

 

ん?

 

「【水泳】と【潜水】スキルのレベル上げは?」

 

「これから行く精霊の里ってところにあるならそこでもできるんじゃないかなって」

 

水精霊の里だから・・・ん、ありそうだ。断る理由はなくあっさり承諾する。こうして五人で四つ目の精霊の里へ赴くことになった。東の平原のフィールドボスはレスラーラビットというウサギである。その名の通り、プロレスラーの様に大きな体を誇るウサギだ。

 

「キシャシャウ!」

 

「ウサギって言うか・・・・・熊っぽいな」

 

2本足で立ち上がり、両手を上げてこちらを威嚇するその姿は、まるで白熊の様だった。耳が長くなかったら、本当に熊と見分けがつかないかもしれない。

 

「キシャーウ!」

 

「ふむ・・・・・」

 

「キシャー!」

 

「食べ応え・・・・・いや、モフり甲斐があるな?・・・・・ふふっ」

 

「キシャウッ?」

 

 

「いま、ボスモンスターが怯えませんでした?」

 

「食べ応えって聞こえたのは空耳よね?」

 

「気にしない方がいいよん」

 

 

レスラーラビットは速くて腕力も高いんだが、特殊な効果のある攻撃は2つしかないらしい。防御力も低いそうなので、パターンさえ分かっていればノーダメージでの突破も難しくなかった。

 

気を付けなくてはいけないのが、HPが半減してから使い始めるストンピングだ。

 

高くジャンプして、踏み潰そうとしてくる攻撃である。この攻撃の嫌らしいところが、ギリギリで避けても地面を揺らし、その振動でこっちの動きを阻害してくるのだ。

 

なので後ろに跳んで避けることで、攻撃も回避しつつ、振動によるスタンも回避するのがベストであるらしい。

 

うちのパーティで一番ヤバそうなのがイズだな。

 

それでも何とかストンピングを1発食らわずレスラーラビットをHP残り1割までイッチョウが追い込むことができた。

 

「あとちょっとで―――うん?」

 

ボスの中でも最弱に位置するレスラーラビットであるが、気を付けないといけない攻撃が2つある。1つが先程俺も食らったストンピング。もう1つが、追い込まれてから使用するウサギ天国と呼ばれる攻撃だ。

この技は全てのレスラーラビットが使う訳ではなく、30回に1度程度の割合で、使用してくる個体が出現するらしい。外見では見分けがつかないので、戦闘してみるまで分からないと情報には書かれていたんだが・・・。まさかその個体に当ってしまうとは。

 

「【挑発】!」

 

ウサギ天国。その名の通り、無数のウサギを召喚して、パーティ全体に一斉攻撃する技である。所詮はラビットなのでダメージはさほどではないし、攻撃後には消滅してしまうのだが、とにかくイッチョウ達に攻撃が向かわないようこっちに攻撃の矛先を向けさせる。

 

「「「ウサウサウサウサ!」」」

 

どこからともなく湧き出た40匹近い兎たちが、縦横無尽に飛び回ってこちらに蹴りを入れて行く。

 

 

「ノーダメージ・・・・・凄すぎるよん」

 

「というか、HPが一mmも減ってないのが異常よね」

 

「凄いですハーデス」

 

 

「【毒竜(ヒドラ)】」

 

激毒の攻撃を放ってレスラーラビットを毒状態にしてダメ押しに【エクスプロージョン】でとどめを刺す。

 

「え、もしかして爆発魔法?」

 

「違う、爆裂魔法だ」

 

「珍しい魔法を取得したんだね」

 

属性の魔法は珍しくもなく誰でも取得できるみたいだからだろうな。MPポーションで回復する。

 

東の平原を突破した俺達がいる蟲毒の森には、周辺に色とりどりの花が咲き乱れる、綺麗で深い泉があった。未だ泉の謎を解いたプレイヤーはいないが今ここに明かされようとしていた。

 

「あった。あれだ」

 

直径10メートル程の円形の広場になっている。その中心に、聞いていた通りの花に囲まれた美しい泉が存在していた。水仙の花と球根を発見できた。後で回収しよう。

 

「よし、ラスト行くぞ」

 

そう言って泉の淵に立ってみると――いきなり泉が光り輝いた。最初は太陽光が反射したのかと思ったが、明らかに泉自体が淡い光を放っている。

 

『水霊の祭壇に水結晶を捧げますか?』

 

「捧げる」

 

『では、水結晶を泉に投げ入れてください』

 

指示通りに水結晶を取り出して、泉へと投げ入れる。すると、さらに強い光が泉から天へと向かって凄まじい勢いで立ち上った。

 

「派手な演出キター!」

 

「何度見ても凄いわね」

 

「そうですね」

 

 

泉から立ち上る光の柱。

 

石でできた、古代遺跡の入り口にでも設置されてそうな、神秘的な雰囲気たっぷりの門である。門の表面には波に似た複雑な紋章が彫られ、神秘さを高めることに一役かっている。高さは5メートルくらいはあるだろう。

 

そんな門が、いきなり目の前に出現したのだ。

 

閉じられた門扉はすぐに石の扉がゴゴゴゴと開き始めた。良かった。自力じゃ絶対に開けられないからな。その直後、ワールドアナウンスが鳴り響く。

 

《精霊門の1つが解放されました》

 

『水霊門を開放した死神ハーデスさんにはボーナスとして、スキルスクロールをランダムで贈呈いたします』

 

《4種類の精霊門が全て解放されました。最初に、四門全ての開放を達成したプレイヤーに、称号『精霊門への到達者』が授与されます》

 

称号:精霊門への到達者

 

効果:賞金30000G獲得。ステータスポイント4の巻物獲得。精霊系ユニークモンスターとの遭遇率上昇。

 

称号をゲットできてしまった。しかもまたユニークモンスターとの遭遇率上昇効果である。多分、非常に有用なんだと思うが、効果は実感できてないんだよな。いや、賞金30000Gだけでも十分か。

 

インベントリを確認する。プレゼントボックスが入っていたスキルスクロールを開くと、出現したのは【水中探査】のスキルだ。うーん、知らんな。このゲームはスキルの数が膨大なので、初めてみるスキルまでは覚えてられない。

 

「とりあえず使っちゃうか。・・・んー面白いスキルだな」

 

自分の魔力をエコーの様に放ち、水中をスキャンするスキルだった。情報が3Dマップとして、俺のステータスウィンドウに表示されている。

 

レベルが上がれば精度も範囲もあがるらしい。面白いは面白いけど、俺にはあまり使い所が無いかもしれない。多分、水中で活動できる種族なんかには必須のスキルなんだろう。

 

「巻物開いたけどどうしたの」

 

「ランダムで取得できるスキルのものだったから開いたんだ。さて、中に入ろうぜ」

 

目の前の開いた門の先が見えなかった。暗くて見えないという訳ではなく、まるで水の中であるかのように、青い光がユラユラと揺れ動いている。俺達は門の中の青い光に飛び込んだ。体が水の様な物に包まれる感触があったと思ったら、次の瞬間には大きな広間の様な場所に出る。

 

 

石造りの神殿の様に見える場所だった。薄暗い部屋の四方には不思議な青い光を放つ玉が浮かび、部屋を神秘的に照らしている。

 

「おおおー」

 

「ようこそいらっしゃいました。解放者よ」

 

「わっ、誰?」

 

「私はウンディーネの長。貴方達を歓迎いたします」

 

部屋の中に瞬間移動して来たかのようにいきなり現れたのは、ウェーブのかかった水色の髪をポニーテールにした1人の美しい女性であった。着ている服は踊り子の様な薄手の衣装で、どこか大樹の精霊様に似ている気がする。あっちが緑なら、こちらは水色だ。

 

「ここは、何なんですか?」

 

「この場所はウンディーネの隠れ里。選ばれし者だけが訪れることが出来る、聖なる地です」

 

「なるほど、だから水霊門なんだねー」

 

「こちらへどうぞ、ご案内させていただきます」

 

「はい」

 

ウンディーネが踵を返して歩き出したので、俺達はその後について行った。ウンディーネは広間から続く通路を進んでいく。

 

狭い通路を抜けたその先には、先程までの石造りの薄暗いダンジョンの様な場所ではなく、天井も壁も床も、全てが白い大理石の様な物で造られた、美しい空間が広がっていた。ヨーロッパの町中にある噴水広場的なイメージだろうか? 多分、東京ドームより広いと思う。

 

壁や通路、天井、果ては階段や空中通路にまで滝や水路が縦横に設置され、水が止めどなく流れ続けている。さすが水の精霊の住処っていう感じだ。

 

そして、そこにはウンディーネによく似た美しい少女たちが大勢いた。普通に語り合う者も多いが、中には店の様な物を営んでいる者さえいる。

 

「ここは我ら水精霊の街。門を潜りし人間であれば、自由に行動することを許可します」

 

「ありがとうございます」

 

これは面白そうな場所だ。早速いろいろ調べたい。

 

「あの、幾つか質問があるんですが」

 

「何でしょうか? 答えられる範囲でお教えしましょう」

 

イッチョウが尋ねる。精霊の里に来たのは俺達の中で初めてだからな。

 

「えと、またここに来ようと思ったら、水の日に水結晶を捧げなくてはいけない?」

 

「いえ、日と結晶を一致させなくてはいけないのは最初だけです。一度入った者であれば、いつでも門をくぐることができます。ですが自力で門をくぐっていない資格者は弾かれるでしょう」

 

つまり、イッチョウも結晶を手に入れないとダメってことだ。他人を連れてくることはできないと。だけど気になる事があるな。

 

「他の精霊の里でも結晶一つで一人以上入れたのは何故なんだ?人数制限は無し?」

 

「それは属性結晶の品質が高いからです。貴方が捧げた水結晶の品質は4以上なのでこの里に入れたのです」

 

これは寝に耳に水な話だ。ヘルメスにも情報として売れるな。あと何か聞きたいことはあるか?だいたい聞いたと思うけど・・・・・。

 

「あ、もう一つ。あそこに魚がいるのが見えるけど、ここで釣りをしても?」

 

「構いませんよ」

 

精霊の住処の魚だ。何か面白いのが居るかもしれん。これも面白そうだ。

 

「では、私は入り口に戻ります。また何か聞きたいことがあれば、尋ねてください」

 

「わかりました。色々と説明ありがとうございました」

 

ウンディーネが頭を下げて去っていく。よし、さっそく探検だ。水霊の街はどこもかしこも美しかった。全てが白と水色の大理石で造られ、そこに流れる水の音が、まるで川のせせらぎの様に耳に心地よい。

 

その街を歩くのは、水色の美しい髪をしたウンディーネの少女たち。本当に幻想的だ。

 

「いやー、これぞファンタジー世界だねハーデス君」

 

「ゲームならではの綺麗さだし本当だな」

 

テンションが上がって来たイッチョウと周囲を見回しながら店に行ってみた。手近な店をのぞいてみると。

 

「ここは武具屋か」

 

「いらっしゃーい。ウンディーネの武具屋さんだよ」

 

売っているのは水属性の賦与された武具たちだ。結構性能もいい。その中で面白い装備が2つあったのでつい買ってしまった。

 

 

名称:釣り人の履物

 

レア度:4 品質:5 耐久:220

 

効果:防御力+11、釣りボーナス小

 

 

釣りスキルにボーナスが入る装備だ。防御力も上がるし、値段も8000Gと手が届く範囲だったし。これで釣りをより楽しめるだろう。それともう1つが、水霊のピッケルだ。

 

 

名称:水霊のピッケル

 

レア度:4 品質:6 耐久:400

 

効果:採掘専用、水中での採掘にボーナス

 

 

「面白いピッケルじゃない。耐久も高いし私買うわ」

 

「だな。俺も買おう。【水泳】と【潜水】スキルレベルも上がる旨味があるじゃないか」

 

イズが10本以上も買う程のこの効果で重要なのは、水中での採掘ボーナスだ。つまり、水中に採掘ポイントがあるってことだった。オルトは水中に長時間入れないと思うし、いざとなったら俺も採掘しないと。

 

 

次にのぞいた食材屋には、様々な魚が並んでいる。ビギニウグイにビギニマス、ビギニへラブナもある。ただ、それ以上に目を引いたのが、ビギニウナギにビギニエビ、ビギニシジミだった。何でもビギニを付ければいいと思ってんのか?にしても、もしかしてここでこの魚等が釣れるのか? とりあえずあとでトライしてみて、ダメだったら買っちゃおう。ウナギは1匹2000Gもするから、ぜひ釣りでゲットしたいところだ。

 

お次は道具屋である。釣り道具が充実していた。ここで水霊の釣り竿、水霊の魚籠、水霊の罠籠、水霊のルアー×2を買ってしまった。34000Gもしたが、これも初期投資だ。魚をバンバン釣り上げれば、美味しいごはんも食べれるし、すぐ買って良かったと思うさ。

 

「さーて、次のお店を見ようかな」

 

次の店に向かう。そこは雑貨屋だった。水鉱石で作った冷却作用のあるコップとか、面白いアイテムがたくさんである。その中に、俺の目を引くアイテムが置いてあった。

 

「水草の種?これって、何だ?畑で育てられるか?」

 

オルトを召喚して水草の種のことを聞くと首を横に振られた。

 

「ムー」

 

「無理なのか。設備不足? スキル不足?」

 

「ムム」

 

どうやら両方であるらしい。残念だが、今買っても無駄になりそうだ。育てる算段が付いたら買いに来るとしよう。その次は薬屋だった。普通にポーションなどが置いてある中、水中呼吸薬という薬が置いてある。飴玉の様な形状で、口に含んでいる間は水中で呼吸が出来るようになるらしい。

面白そうだが、結構高い。最も短い30分でも2000Gする。でも、いざという時のためにあってもいいだろう。どこで溺死する羽目になるかもわからないし。

 

「私も買っと。これ、ハーデス君がさっき言ってた【水泳】と【潜水】のスキルレベル上げに役立つかもだし」

 

「もう水中戦もあるってことだよな」

 

と言う事で1つ購入しておいた。他では見ない薬だし。その隣は食堂だった。

 

「ほう、ここは食堂か」

 

しかも、テイクアウトも出来るようだ。メニューを見ると、魚の塩焼きや、煮魚など俺でも作れそうなメニューが多い。アクアパッツァやブイヤベースなんかお洒落でいいな。帰ったら試したい。

 

どうしても我慢できず、ビギニアユの塩焼きを買ってしまった。700Gもしたが、メチャクチャ美味しい。これは簡単に作れそうだし、ぜひ真似しよう。

 

「最後は・・・・・待望の店キター!」

 

店の中には俺が期待していたホームオブジェクトを販売している!

 

「いらっしゃいませ! ここはホームオブジェクトを取り扱っておりますよ」

 

「ホームオブジェクト?」

 

「見せてもらおうか」

 

何も知らないイッチョウに説明をする。ホームオブジェクトとは、自分のホームに設置できる、様々なアイテムのことだ。棚やテーブルの様な生活に必要な物から、彫像や壁掛けの様な、美術品などもある。

 

普通はホームを購入せねば意味がないが、俺は一応畑がある。物によっては家ではなく、畑専用のオブジェクトもあるだ。

 

「へぇ、そうなんだ。どれも持ってない私には意味がないものだねー」

 

「ほうほう、なるほど」

 

畑に設置できるオブジェクトは4つあった。自動的に水を散布してくれるスプリンクラー。畑であればどこにでも設置できる井戸。あとは水耕用のプールに、水が常に涌き続ける泉である。

 

水耕用のプールがあれば水草を育てられるのかと思ったら、それだけでも無理らしい。アルトでさえスキルが足りていない様だ。

 

俺は取得可能なスキルの一覧を確認してみたが、それらしきスキルはない。多分、初期スキルではないんだろう。農耕のレベルを上げなくてはいけない物と思われた。

 

そして最後の『浄化の泉』だが、これがなかなか凄まじい。なんと、毎日50個、浄化水が採取できるのだ。調合に使える上、浄化水を畑に蒔くと品質を上げることも出来るらしい。

 

「水耕!やったぞ、これで籾、米を作れる!オルト、さっきの水草にはこれが必要だったんだな?」

 

「ムム」

 

「よし、なら是が非でも買おうじゃないか!」

 

「ム!」

 

オルトも賛成な様だ。畑も4マスしか使わないし、ぜひ買いたいよな。ただ、値段が20000Gもした。

 

いや、でも俺はほぼ毎日調合に浄化水を使う。それを考えたら、20日もすれば元が取れるはずだった。

 

「よし、買っちゃおう。全部5つ分だ」

 

「ム!」

 

「5つ!?結構な値段になるよ?」

 

「畑を充実するためなら散財は惜しまん!」

 

「ありがとうございます。ではこちらをどうぞ」

 

店員が差し出してきたのは、1枚の羊皮紙だった。泉の絵が描かれている。これは他の精霊の里もそうだったが、オブジェクトを設置したい場所にこの羊皮紙を置いて、設置と命じれば、たちどころに購入したホームオブジェクトが召喚されるんだ。今すぐ設置せずに、後で好きな場所に置けるのは非常に嬉しいな。畑に戻ったら、一番良い場所を考えよう。

 

「ホクホクした顔ねハーデス」

 

「これで4つすべての里のホームオブジェクトを買えましたし、畑も豊かになるでしょうからね」

 

「完璧にファーマー専のプレイヤーと逸脱してるよん」

 

俺に対してそんな感想を言ってくる皆にちょっとだけ釣りをしないかと提案する。了承した3人と水霊の街で釣りを始める。サイナも釣りスキルを取得してもらおう。

 

―――30分。

 

水霊の街で釣りを始めてから30分。釣果はそれなりであった。店で売っていた魚は全部入手できている。

 

手に入れたばかりの水中探査がメチャクチャ役に立った。魚群探知機の様に利用できたのだ。まだ精度が低いから魚の種類までは正確には分からないけど、魚の近くにピンポイントでエサを落とせた。

 

それでもビギニウナギは中々手ごわい。まだ1匹しか釣れていないんだ。

 

「よし。そろそろあがるか。オルト、罠籠を引き上げてくれ」

 

「ム!」

 

罠籠と言うのは、釣り場などで仕掛けておくと、獲物がかかるかもしれないというアイテムだ。何が取れるか、そもそも取れるかどうかも分からない運任せの道具ではあるが、うちには幸運持ちのオルトがいるからな。もしかしたらと思って購入してみたのだ。

 

「ムームムッ!」

 

「お、何か穫れたか」

 

「ム」

 

アルトが差し出した罠籠の中には、エビが1匹と、二枚貝が2つ入っていた。ビギニエビとビギニシジミとなっている。にしても、貝はどうやって罠に入ったのか。まあ、ゲームだし、深くは気にしなくていいか。

 

「やったな」

 

「ム!」

 

釣りも堪能したし、【釣り】スキルも取得できた。いよいよダンジョンに向かってみるか。

 

俺は一緒に釣りをしていた皆に声を掛け、ダンジョンに向かった。

 

ダンジョンへと続いているという扉の前に、1人のウンディーネが立っている。

 

「こんにちは。試練へ挑戦成されますか?」

 

「挑戦します」

 

「分かりました。ご武運を」

 

 

と言う事で、勢い込んで水霊の試練に足を踏み入れた俺達だったんだが、最初の部屋には何もいなかった。

 

「うーん、肩透かしもいいとこだね?」

 

ダンジョンの中は、先程の広場とはまた材質が違っていた。青みがかった、少しザラッとした手触りの石だ。

最初の部屋は12畳ほどの部屋になっていた。正面に先の見えない通路が伸び、左右の溝には綺麗な水を湛えている。

どうも水の中に光源があるらしく、部屋全体にユラユラと揺れる水の影が映し出されていた。これがまた幻想的で美しいのだ。正直、ダンジョンとは思えない雰囲気だ。

 

「水の中の光はどんな感じだ?」

 

この美しい光景を造り出す光源がどんなものなのか少し気になり、イズ達と一緒に溝の中を覗き込む。

 

「あれか。光の玉みたいなのが底にあるな」

 

「そうね」

 

皆も水の中に覗いてその美しさに感嘆の声を上げていた。

 

「それにしても深いな」

 

あの光源の深さを考えたら、水深10メートルくらいはあるんじゃないか?泳げないプレイヤーが落ちたら、それだけで死に戻るだろう。もしかしてこれもトラップなんだろうか?しかも、どうやら下はもっと広くなっているらしい。多分、左右の溝が下で繋がっているんじゃなかろうか?

 

「そうだ、こんなときこそあれだ」

 

「あれ?」

 

疑問符を浮かべるイッチョウの隣で俺は水中探査を使ってみることにした。

 

コーンというソナーの様な甲高い音と共に、水中の3Dマップが浮かび上がる。お、やっぱり下で繋がってるな。

俺達が立っている場所は実は橋の様な形状で、その下は水で満たされていた。それだけではない、どうやら橋の下に宝箱が隠されているらしい。3Dマップにはそういった情報も色違いで表示されるようだった。これは思った以上に便利だな。

 

「宝箱があるぞ」

 

「そうなの?というかよくわかったわね」

 

「さっきのスクロールで得たんだ。【水中探査】ってスキルをさ」

 

「すっごく便利なスキルじゃない。因みに宝箱の中は何が入っているのかわかる?」

 

「うーん、今までの経験だとネックレスと隠し宝箱を開けた最初のプレイヤーに宝石が手に入るんだよな」

 

誰かいる?と訊いてみればリヴェリア以外の二人は取ってきてもいい、とばかりどうぞどうぞと譲る仕草をした。3人で見つめ合って異様な雰囲気を漂わせていたとは思えない息ピッタリだな。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるな」

 

そう告げて俺は水中に飛び込んだ。そして気付く。下に向かって泳いでいくと、水中は俺が思っていた以上に広かった。俺の低レベルの水中探査スキルでは調べきれない程に。まだ、奥に向かって通路が伸びているんだよな。

もしかして、水中にもダンジョンが張り巡らされているのだろうか? これは中々攻略が難しそうなダンジョンだった。

 

「(宝箱発見!)」

 

宝箱は目の前だ。宝箱を開くと、中には1つのネックレスが入っていた。鑑定は後回しにして、とりあえず水上に戻る。

 

 

「空気のネックレスか。良いものじゃないか」

 

名称:空気のネックレス

 

レア度:3 品質:9 耐久:200

 

効果:【VIT+4】、呼吸ボーナス

 

 

どうやら、その名の通り空気を供給してくれて、潜水時間にボーナスが入るらしい。防御力は低いものの、このダンジョンの攻略にはとても役立つだろう。

 

さらにもう1つ、インベントリにアイテムボックスが入っていた。隠し宝箱を最初に開けたプレイヤーにボーナスが与えられるのはここも一緒のようだ。

 

開くと、青翡翠という宝石が入っていた。以前入手した緑翡翠の色違いみたいだな。これは良いものだ。

 

因みにこのゲーム内で、普通の宝箱は採取ポイントと同じで個人個人にポップする。なので、俺が開けた直後でも、他のプレイヤーは宝箱が無いと言う事態にはならないのだ。

 

「というわけで、【潜水】スキルにうってつけな装備品を手に入れた」

 

「便利な装備だよん!てなわけで、私も取りに行ってくるねー!」

 

「その次、私もいいかしら?」

 

二人も水中に潜ってネックレスを取りに行った。

 

「初めて会ったはずなのにあの二人は仲がいいですね」

 

「最初は不安だったんだがな。何で3人共不穏な雰囲気を醸し出したんだろうって。

 何か気に入らないとこあった?」

 

「だ、出してませんっ」

 

否定するが・・・俺からすれば出会い頭、友好的ではなかったのは明らかだった。原因は分からん。聞いたところでリヴェリアのようにはぐらかされるのがオチだろう。こういうのが女の問題なんだろうな。

 

二人が水中から宝箱を開いて戻ってきた後に、俺達は次の部屋に向かった。薄暗い通路を進む。そして、次の部屋に入った直後に遭遇した。

 

「ゴアア!」

 

作りが最初の部屋とほぼ同じだったんだが、水中からモンスターが飛び出してきた。新しい登場の仕方だな。

これじゃ、水中探査はまだレベルが低いから、そこまで遠くは調べられんし。まあ、倒せない相手ではないから問題はない。油断はしないがな。

 

「亀のモンスター?初めて見るモンスターだ」

 

名前はポンドタートル。小型の亀のモンスターだ。ただ、飛び出してきたときの身のこなしを見るに、亀でもそれなりに速く動けそうだった。そしてこういうパターンはもう把握している。あれはテイムできない類のモンスターである事だ。テイムに指定できないサモナー専用のモンスターってことだろう。ならば倒すしかない。

 

「【水無効】のスキルを持つ俺には水攻撃は通用しないがな。忌々しいノックバックはどうしようもないが」

 

「忌々しいっていったいどこで何が遭ったのハーデス」

 

「もうじれったいってぐらい遭ったんだよ。狭い通路でノックバック効果のある水鉄砲を食らって

 何度も吹っ飛ばされて前に進めないじれったさが。もう水棲モンスターとは戦いたくないのが本音だっ」

 

「ああ・・・・・うん、私もあれは心が折れ掛けたよん。ハーデス君に攻略の仕方を教えてもらってなかったら完璧に折れてた」

 

「(この二人をそこまで言わしめるモンスターって逆に気になる)」

 

小さい外見とは裏腹に、この亀がかなり強い。攻撃方法は突進と、口から吐く水鉄砲が主なのだが、突進してくる際は持ち前の反射神経で亀を蹴り飛ばす。だが亀なだけあって硬い。特に甲羅に隠れられると、攻撃が全然きかなかった。その間に微妙にHPを回復されてしまうのだ。

 

「ほー、回復する?いいだろう。この中でも回復できるならやってみやがれ【ヴェノムカプセル】!」

 

こういう物理防御力が高い相手には魔法、俺の場合は毒攻めだ!亀を毒で作った球体の中に閉じ込めてじわりじわりとHPを削っていく。

 

「うわぁ・・・・・受けたくない魔法だよ」

 

「無効化じゃない限り減り続けるでしょうね」

 

「よし、倒した!」

 

数分もせず倒した。とりあえずこの部屋を探索してみると、地上部分には何もない。だが、やはり水の中には何かがあった。潜ってみると、それは水草だ。せっかく見つけたんだし、今は育てられなくてもとりあえず採取しておく。

 

名称:空気草

 

レア度:3 品質:4

 

効果:口に含むと、潜水時間が伸びる

 

うーん。これって、どう考えても水中呼吸薬の材料だよな。できるだけ採取しておこう。あと、小さすぎて水中探査には引っかからなかったが、ビギニシジミもゲットできた。エビもいたが、速過ぎて全く捕まえられないが【パラライズシャウト】で麻痺させてから捕獲できた。

 

さらに水中を探索するが、さすがにこの部屋には宝箱はないな。ただ、水中にはやはり通路があり、前の部屋とも水の中で繋がっているようだった。勿論、奥にも続いている。水草を採っていると、ザブンという水音が聞こえたので上を見上げると、イッチョウが水中に飛び込んできているのが見えた。潜水して水草を引き抜くと、そのまま水中で採取を始めた。まあ、採取の手は多い方がいいし、ここは頑張ってもらおう。

 

水草とシジミをあらかた採取し終えた俺達は、次の部屋に向かう。すると、そこには恐ろしい形相の鬼女が待ち構えていた。イッチョウの口から「怖っ」と漏れた。水色の髪に、シースルーの羽衣。ウンディーネの特徴だ。だが、顔が鬼と見間違うほどに恐ろしい。つり上がった眉に、大きく見開かれた白目。頬はこけ、その顔には深いしわが幾重にも刻まれている。さらに口は堅く結ばれ、その奥からは歯ぎしりの音が今にも聞こえて来そうだった。

 

山姥とか、そう言った類とそっくりな顔である。名前は狂った水霊。これが狂った精霊という事なんだろう。ホラーが苦手な人は、夢に見そうだな。

 

どうやら1体だけらしい。しかもこちらには気づいていない。先制攻撃のチャンスだ。

 

「私が行ってもいい?」

 

「いいぞ。結晶を手に入れないとダメだし」

 

イッチョウは二振りのダガーを手にして駆け出した。接近する彼女に気づく水霊は水魔法を繰り出すが、完全に見切ってるイッチョウにはかわされて懐に飛び込まれた時にはあっという間に切り刻まれて水霊のHPを削りきる。

 

「ムム!」

 

「どうしたオルト?」

 

「ムー!」

 

戦闘終了後、オルトが何やら水中を指差している。俺はオルトの隣で一緒に水中をのぞいてみた。

 

「あれは・・・・・採掘ポイントか」

 

「ムッムー!」

 

「ん?オルト?」

 

ザブン!

 

オルトが飛び込んだ。見守っていると、オルトは不格好ながら泳いでる。そして、水中にある採掘ポイントへとたどり着いた。壁にできた亀裂の様な場所だ。その前で何度かクワを振るう。

 

そして、勢いよく水から上がって来た。全身びしょ濡れのまま、土下座するような恰好で息をゼーゼーと荒げている。やはり、水中は得意ではないらしい。泳げないと言うよりは、呼吸が続かないんだろう。

 

採掘の成果を確かめてみると、驚きの素材が入手できていた。

 

「水鉱石が採れてるもしかして、水鉱石の採掘率が高いのか?」

 

「ハーデス。私も採掘してくるわ」

 

俺も行ってみよう。オルトをリヴェリアに任せて、イズに続いて俺も水中に飛び込んだ。そして、買ったばかりの水霊のピッケルを使って採掘を行う。

 

ピッケルの効果か、水中でも抵抗なく振ることができる。

 

上に戻って確認してみると、水鉱石が3つ、錫鉱石が1つ採取できていた。やはり水鉱石が大量に採掘できるらしい。

 

「良い場所を見つけた。他に採掘ポイントはないか?」

 

そう思って部屋の中を水中探査で探ってみたが、この1ヶ所だけらしい。これは他の部屋もぜひ探してみなくては。

 

「じゃあ、次の部屋にいくぞ」

 

狂った水霊が複数いても勝てるだろう。イズとリヴェリアを庇いながらであるが、簡単に勝つよりはいい。

 

「「レッツゴー!」」

 

ノリがいいなイッチョウとイズ。次の部屋に足を踏み入れた途端、水の中から狂った水霊が飛び出してきた。このパターン、サメだったらもっと心臓に悪いだろうな。

 

「結晶を置いていけ!」

 

「ムムー!」

 

今度もテイムをせずに攻撃に専念してみた。スムーズに倒し【幸運】のおかげで水結晶ゲットできた。

 

「ねぇ、あの水の中に何かあるか調べない?」

 

「ああ、してみるか。さて、この部屋には何があるかな」

 

スキルで色々調べてみると、水中には魚影があった。なんとダンジョン内で魚が釣れるらしい。そのことを伝えてみるとそんな感じかと普通の反応をされた。

 

「一回だけしてもいいか?」

 

「いいよん。私もしてみたいし」

 

ぶっつけ本番ではないが水霊のルアーで釣りを始める。何度も繰り返し使える利点はあるものの、魚に取られたらアイテム自体が失われてしまう。もし一発目で取られたら大損である。

 

だが、水霊の街で買った物だし、この釣り場に合わないと言う事はないだろう。

 

「よっと」

 

水中探査で巨大魚の場所を把握し、その前にルアーを沈めしばしそのまま軽くしゃくる様にルアーを動かしていると、すぐに巨大魚が向かって来た。

 

「キター!」

 

「早っ」

 

水底に居た巨大な影が食いついた。俺はリールを巻きながら、巨大魚と格闘する。良い引きだが、俺からは逃げられないぞ。伊達に暇つぶしと釣りを長年していないんだからな!

 

そして5分後。

 

「ふん!」

 

俺はついに巨大魚を釣り上げることに成功していた。竿を思い切り引き上げた反動で、俺と同じくらいの大きな魚体が勢いよく宙を舞い、部屋の床にドシンと落下する。

 

淡水なのに、海水魚のハタやクエに似た外見をしていた。色は茶色地に赤い斑点だ。やっぱりクエっぽいよな。

 

「おおー、デカい!」

 

「このゲームにこんな魚がいるのね」

 

「さて、なんていう名前の魚か――あれ?」

 

赤マーカーが出てる。HPバーも表示されている。完全にモンスターの扱いなんだが・・・。ビチビチと跳ねまわっている魚モンスター。だが、突然その口から水弾が発射される。何とかかわしたが、やはりモンスターだ。名前はファング・グルーパーとなっていた。

 

テイムにも指定できる。いや、魚型は育成が難しいって聞いたし、今はいらないな。水中、もしくは陸上活動を可能にするための特殊な装備がなきゃ連れて歩けない上、ホームに水槽などが無ければ牧場に預けっぱなしにしなくてはいけないらしいのだ。

 

「【パラライズシャウト】」

 

そして戦闘がはじまる。そしてサイナの【悪食】で戦闘が終了する。麻痺攻撃で身動きができない上に水中から釣り上げられたせいで、本来の戦闘力を発揮できなかったからな。水中だったら強敵だったんだろうが・・・・・。

 

しかし、これは良いカモを見つけたんじゃないか?

 

「他の部屋でもこいつ釣り上げられたら、もしかして楽に経験値を稼げるかも」

 

弱くても、経験値はそれなりらしい。オルトとレベルアップしたのだ。進化はするかわからないが。

俺達はこの部屋にいたもう1体を釣り上げて撃破すると、早速次の部屋へと向かってみた。

 

「おっ、狂った水霊が2体だ」

 

俺達が部屋の中央に到達した瞬間に水の中から飛び出して来た。しかも、水中探査に引っかからなかったぞ。俺のスキルがまだ低いのか、そういうスキルを向こうが持っているのかは分からんが。

 

狂った水霊2体を撃破した後、ファング・グルーパーを釣り上げて撃破すること3体。これで全てのファング・グルーパーを倒した。にしても、もし水中を進んできてたら、計5体と戦わなくてはいけなかったってことだ。攻略するには水中の探索が必要そうだが、そのためにはより難度が高い戦闘をこなさなきゃいけないってことだろう。ま、俺にはしばらく関係ないか。今はテイムと結晶集めが優先だし。満腹度が減ってることを確認した俺達は、入り口に向けて撤退を開始した。まあ、戻るだけならすぐなんだが。

 

「うん?」

 

「アアアア!」

 

倒したはずの狂った精霊が目の前に居る。釣りに時間をかけ過ぎたか。でもパーティの誰かがダメージを負うこともなく倒せた。

 

「この部屋、また魚がいるな」

 

他の精霊の里もそうだったが1部屋につき、1時間くらいでリポップだな。狂った水霊さえいなければ部屋を延々行き来して魚狩りが出来る。まあ、今日の所は帰り道の奴だけ狙っていこう。俺は再びファング・グルーパーを1匹釣り上げ、止めを刺した。やはり超弱い。なのに経験値はそれなりで、俺、オルトもレベルアップできた。やっぱりレベル的に格上なのかもしれないな。その後、俺達はポンドタートル1体を撃破し、最初の部屋に戻って来たんだが――。

 

「あれ?狂った水霊だけども、羽衣の色が変なんだけど?」

 

イッチョウがそう指摘するのも無理はない。他の水霊が水色地に薄緑の模様が描かれた羽衣なのに対して、この水霊は薄水色地に藍色の模様が描かれた羽衣を身に着けていた。髪の毛の色も、他の狂った水霊に比べて明るめだ。

 

「ユニーク個体か。丁度いい、テイムしたいから手出しはしないでくれ」

 

「ムー!」

 

そして戦を始めて分かったことがあった。この水霊は範囲攻撃を持っており、【挑発】で固定してもイッチョウ達にまで攻撃が及んでしまう。皆には悪いが少しだけ待っていてもらうしかない。

 

「よし、あとちょっと」

 

ユニーク個体の狂った水霊のHPを残り1ほどに削ったところでテイムのチャンス到来。【パラライズシャウト】で麻痺している上、HPも残り僅か。テイムする好い頃合いだ。

 

「テイム。テイム。テイム。テイム――」

 

俺はテイムを繰り返すが、一向に成功しない。やはりレベルが上でユニーク個体。一筋縄じゃいかないな。

 

俺は彫像のように固まり、山姥の彫像のように見える狂った水霊にテイムを繰り返した。

 

「テイム。テイム。テイム――」

 

全然テイムできないなっ!それでもテイムを繰り返していると、水霊の麻痺が解けてしまった。

 

「アアアア!」

 

「【パラライズシャウト】」

 

瞬時で態異常攻撃に切り替えて再び麻痺状態にした後、余裕をもってテイムを再開したところで―――。

 

「テイム!」

 

「アアア――・・・・・」

 

水霊の体が一瞬輝きに包まれる。おお?上手くいったのか?

 

「フム♪」

 

変わったな~。鬼女みたいな顔だった狂った水霊が、町にいたウンディーネたちと同じような美少女に変化していた束の間、パーティが上限の為にテイムしたウンディーネはすぐに始まりの町の従魔ギルドの牧場へ転送された。

 

「これで全ての精霊をテイムしましたねハーデス」

 

「おかげさまでなリヴェリア。約束の物も手に入ったイズも更に鍛冶の腕が磨きかかるし、俺もここでやりたいこともできた。というか、これから増えるだろうな」

 

「何をするの?」

 

「結晶集め。他のプレイヤー達も欲しがるからな。ま、その分稼げるからいいけど」

 

暴利の限り尽くせそうだ。金はいくらあっても困らないのはゲームでも同じだからな。

 

「私達はタダで手に入れられたから嬉しい限りだわ。ありがとうねハーデス。今度お礼をするわ」

 

「イズからのご褒美か、何してもらおうかなー・・・・・あ、じゃあHPを増強する装備品がいいな」

 

「それでいいの?それなら丁度いい物があるからあげるわ」

 

『生命の指輪・Ⅷ』【HP+200】

 

インベントリに送られた指輪の内容に小首をかしげる。

 

「この・・・・・Ⅷって数値は?」

 

「それは【鍛冶】スキルで生産した装備にだけできる【強化】でついた数字ね。【鍛冶】の装備にはイベントの装備と違ってスキルは付けられないから、その代わりの利点よ」

 

「なるほど・・・・・」

 

「【強化】の成功率は【鍛冶】スキルのレベルで変わるけど・・・・・最大値のⅩに到達するのはかなりの運が絡むわ」

 

【鍛冶】をしていれば自ずと取得できるスキルのようだな。俺も時間があるときは取得してみよう。

 

「ありがとう、大切に使うよイズ。んじゃ皆、ダンジョンから出ようか」

 

「はーい」

 

始まりの街へ帰還してヘルメスに約束の最後の一つを、ヘパーイストスに属性結晶と鉱石を渡せばクエスト達成だ。

 

「おや、お帰りですか?」

 

「ん」

 

「またいらしてください。あの子のことよろしくお願いします」

 

「わかった」

 

ウンディーネの長とも言葉を交わすが、特にイベントなんかはなさそうだった。狂った水霊を解放したことで何かあるかと思ったんだけどな。いや、それでイベントが起きたらテイマーが優遇され過ぎか。

 

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