バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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一夜限りの祭りだワッショイ!

 

 

新大陸まで残り数日と迫ったある日。【蒼龍の聖剣】はある独自の催しの準備を進めていた。

 

「急いで祭りの準備をするぞー!」

 

「りょうかーい!」

 

「キャンプファイヤーに絶対必要な木材が水晶の樹木なんて贅沢ぅ~!!」

 

「料理班! 足りない食材は逐一報告だよー!」

 

「オルトちゃん成分が足りません!」

 

「ゆぐゆぐちゃん成分が足りない!」

 

「白銀さんに進言しなさい!」

 

「おーい、この辺りでいいんだっけー?」

 

集会場となっている天空の城のテラスで着々と進む祭りの準備は、お祭り騒ぎが出来ると積極的に取り組むメンバーがしている。組み立てる水晶の樹木を中心に外側は屋台で囲む、音楽プレイヤーが演奏するためのステージも完成間近だ。一方裏方では―――。

 

「ムー」

 

「おー、オルト。格好いいじゃないか」

 

「ム!」

 

生産職プレイヤーのコーディネートにより祭りにピッタリな衣装を身に包んだ俺の従魔達がいる。着れない従魔は羽織るか、鉢巻を巻いた姿だ。

 

「可愛いー!」

 

「白銀さんの従魔が私達の作った着物を着てくれるなんて感動だわ!」

 

「今日まで生産職でよかったと思ったことはないわ!」

 

「スクショしていい許可も貰ったし、たくさん撮る!」

 

オルト達に群がり黄色い声をあげる女性プレイヤーを他所に俺は絶望していた。二人の女性プレイヤーから突き出された夏の衣に対してだ。

 

「・・・・・イジメのつもりかおまえら?」

 

「え、えっと・・・・・」

 

「ハーデスにはこっちの方を着てもらいたいの! 女の子になって? 絶対に似合うんだから!」

 

「泣くぞ?」

 

何が悲しくて女用の浴衣を着なくちゃならないんだ。断固拒否し続ける俺としつこくねだるイズに第三者が介入してきた。

 

「ハーデス」

 

「うんぶっ!?」

 

いきなり口の中に何かを突っ込まれて、訳もわからないまま思わず飲み込んでしまった。こんなことするラプラスに目を丸くする。

 

「おま、いきなり何をっ。というか、何を飲ませた!?」

 

「新しい魔王の後輩のためのプレゼントが完成したのでな。それを飲ませただけだ」

 

「だからそれがなんなのか・・・・・ぁ?」

 

なんか、イズ達が大きくなったし俺の声が女みたいに高くなってないか? 待て、嫌な予感しかしないぞ?

 

「ふ、我ながら完璧だ」

 

「ハ、ハーデス・・・・・」

 

「・・・・・」

 

イズとセレーネが俺を見る目が変わる。無言で鏡がある部屋に移動して、自分の姿を確認した。

 

「えええ・・・・・」

 

鏡には床につく長い髪の半分が金と銀、真紅と蒼色の瞳のオッドアイ、そんな幼女が映っていた。いや、誰だよこいつ的な別人の幼女だわ。

 

そしてもとの部屋に戻り、ラプラスを問いだたす。

 

「元の姿に戻るのは何時だ」

 

「そういう変身のスキルだ。寧ろお前に得しかないぞ」

 

「なんでだよ」

 

「可愛い幼女なら誰にでも愛されるだろう?」

 

ふんっ! とラプラスの脛を蹴ろうとしたけどあっさりかわされた。くそ、身体的に足が短すぎて届かない!

 

「セレーネ。服の調整し直すわよ」

 

「大至急にだね」

 

やる気を出すな! くそ、変身スキルなら解除・・・・・。

 

「なんで解除できない?」

 

「一度死に戻らねば解除はできないぞ」

 

「おま、ふざけんなぁー!? 幼女に変身するだけのスキルかよ!!」

 

「そう悲観するな。その姿でなければ使えないスキルがある」

 

くそ、確かにその通りだよ! スキルの名前からして絶対に使いたくないけどな!

 

「それに、その姿ならば魔王として倒されても懸賞金は誰かの手の物にもならないぞ」

 

「・・・・・それ、本当だろうな」

 

「同一の名前などよくあることであろう?」

 

抜け穴を突いたってことか。さすが先々代の魔王様だよ。

 

「わかった。今は我慢するよ。サイナ、俺を守ってくれ。あっちの女冒険者達が俺を狙ってる」

 

「了解。マスターを守護します」

 

俺を抱えて安全な場所へと連れてってくれたが、肝心なことを忘れていた。

 

「ハーデス、できたわよっ!」

 

「今回だけ着てくれないかな?」

 

今日は祭りだったぁー!?

 

 

イッチョウside

 

 

フェンリルの背中に見たことのない浴衣を着た幼女が乗っかって来た。イズとセレーネが微笑んでいるのが気になるけど、まさかね?

 

「その子、誰? プレイヤーみたいだけど、年齢的ゲームを遊べないはずだよね」

 

「・・・・・俺だよ、ハーデスだよ」

 

「・・・・・今度は幼女になるスキルですか」

 

「・・・・・不意打ちでラプラスに変なものを飲まされて手に入れてしまったんだよ」

 

顔が暗い幼女のハーデス君の話を聞いて、同情してしまった。この人はよくとまぁ、ゲーム内でトラブルに好かれるなぁ・・・・・。

 

「でも、すごく可愛いね」

 

「うるさい! 嬉しくないよ! だから祭りの進行役はお前に任せるからな!」

 

「えー? その姿でやってくださいよー」

 

「リアルでお仕置きされたいか」

 

喜んでやらせていただきます。今のは幼女でも怖い。ガチの王様の顔と被った。

 

「イッチョウ、その子は誰ー?」

 

私と見知らぬ子と話してるから、気になってきたプレイヤーが集まった。なので教えてあげた。今日は祭り、無礼講だよねー!

 

「幼女になるスキルを手に入れたハーデス君だよー!」

 

「はいっ!? 白銀さんなのこの子!?」

 

「キャー! なにこの子、すっごく可愛い~!?」

 

「え、なに? どうした?」

 

「うお、めっちゃ可愛い子供がいるじゃん!!」

 

「幼女、だとッ!?」

 

「ロリの時代がついに到来か!?」

 

「・・・・・なんだ、この、胸の高鳴りは?」

 

「是非ともお名前を聞かせてくれないかな!」

 

「俺と一緒に写真を撮ろう!」

 

「いえ、最初は私と!」

 

あー・・・・・収拾か着かなくなった。ハーデス君から視線が痛いし。はい、何とかしますから許して。

 

「はいはい! 一番早く準備ができた人からお話でもスクショでもしていいから、早く祭りの準備をして!」

 

「わかりましたー!」

 

「待っててね幼女ちゃん!」

 

「お姉さんのこと待っててね!」

 

「うぉー! 急いで終わらせるぜー!」

 

群がってきたみんなが持ち場に戻り、ようやく落ち着いた。でも、背筋が冷たいのはなんでだろうか。

 

「・・・・・イッチョウ、覚えてろよ」

 

あれー!!?

 

 

 

イカルside

 

 

大きいお姉ちゃんじゃなくて、小っちゃいお姉ちゃんになったハーデスさん。とても可愛い! 可愛いったら可愛い! こんな妹がいたら毎日ぎゅーって抱きしめてるかも!

 

「お姉ちゃん、とても可愛いです!」

 

「・・・・・嬉しくないっ」

 

「えへへ、今度は私がぎゅーってしますっ」

 

私より体が小さいハーデスさんを抱きしめます! はー、柔らかいし好い匂いもします。スリスリしちゃいます。

 

「と、尊いっ!」

 

「天使、ここに二人の天使がいるっ・・・!」

 

「永久保存! これは永久保存だわ!」

 

「目に入れても痛くないってこういうことなのかな・・・・・」

 

「ああ神様・・・この出会いを巡らせたあなたに感謝します」

 

色んな人達が私達を見ていますけど、それよりもお姉ちゃんとこうしている時間が大切なので気にせず抱きしめていると、エスクとオルトちゃんが私達の真似をしてピッタリと抱きしめ合ったから、他の人達が凄く嬉しそうな声をあげた。

 

「お姉ちゃん、私のことお姉ちゃんって一回呼んでください!」

 

「・・・・・言わないと駄目か?」

 

「お願いします!」

 

物凄く言い辛そうに難しそうな顔をするお姉ちゃんでしたが、しょうがないと息を吐いてから言ってくれた。

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃん、だーいすき!」

 

 

ドキューンッ!!!!!

 

 

小っちゃいお姉ちゃんがとても可愛い笑った顔で私のこと大好きと言いながらお姉ちゃんと言ってくれましたっ!! すごい、いま胸に何とも言えない感覚がしました。これ、なんですか?

 

「「「ぐっはぁあああああああああああああああっ!?」」」

 

「た、大変だ!! 少なくない数が幼女スマイルで気を失った!?」

 

「お、お兄ちゃんだーいすきなんて・・・・・!」

 

「お姉ちゃんだーいすきなんて・・・・・!」

 

「「これ以上の嬉しいご褒美の言葉はないっ(ガクッ)!」」

 

「「「我、もう一片の悔いなし(ガクッ)」」」

 

「え、衛生兵! 衛生兵はいないか!? これ以上は対応しきれない!!」

 

「ダメだ! その衛生兵も胸キュン死に戻りしてしまった!」

 

「なん、だと?」

 

な、なんか大変なことが起きてしまったみたいです。大丈夫でしょうか・・・・・?

 

 

 

フレデリカside

 

 

「で、場の収拾が付かないし騒ぎになるからと私達のところに来たんだね」

 

「・・・・・そういうことだ」

 

「お前、一体どういう星の下で生まれたんだ?」

 

「今度は幼女になるスキルかよ」

 

「退屈を感じさせないねハーデスは」

 

ドラグの肩に乗る形でいるハーデスは私達に言われて、とても遺憾そうに顔を顰めてた。今私達はどこかのフィールドを歩いていた。祭りに使う足りないアイテムの補充のため、行動をしているんだー。

 

「祭りが終わったら元に戻る協力をしてくれ」

 

「その姿のプレイヤーを攻撃するところをよ、他のプレイヤーに目撃されたらぜってぇー誤解を受けるだろ」

 

「ああ、間違いなくな。やるなら決闘システムでやろう」

 

見た目が可愛くても中身は大人の男の人。うん、知らない人だったら間違いなく誤解を受ける図が出来上がってしまうね。

 

「ところで、幼女になるだけのスキルなの?」

 

「それ以外にも内包しているスキルもあるぞ」

 

へぇどんなの? 教えて欲しいって言ったらすごく嫌な顔をされた。

 

「名前が恥かしいから嫌だ」

 

「恥ずかしいスキルの名前があるのか」

 

「逆に何だって―――おい待て、無言で髪を引っ張るな! 地味に痛ぇっ!」

 

「知らない方が身のためだってことか。ドラグでわかった、聞かないでやるさ」

 

「でも、その姿になるスキルの名前ぐらい教えて?」

 

ハーデスは渋々【幼齢期】と教えてくれた。

 

「逆にこっちも聞くけど。お前等は冥界に行ったか?」

 

「通じている場所を探しているんだけどね。まだ未発見なんだ」

 

「もうハーデスに頼るしかない状態だ。そう言うことで頼んだぜ」

 

「わかったよ。大体の目星がついているからすぐに見つけよう」

 

さすが。頼りになるねー。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

【蒼龍の聖剣】の祭りの準備が終了した。始まりのタイムリミットは残り一分も切った。

 

 

「10!」

 

「9!」

 

「8!」

 

「7―――!」

 

皆でカウントダウンを切り数えていく。

 

「3!」

 

「2!」

 

「1!」

 

―――0ォオオオオオオオ!!!

 

「夏祭りの始まりだ! 他の人の迷惑にならない程度で盛り上がれー!」

 

「最初は従魔達の盆踊り大会! 音楽プレイヤーの皆さんよろしくお願いしまーす!」

 

巨大な櫓の上に大太鼓を設け、そこに一人音楽プレイヤーが立っており最初に太鼓を叩いたらすぐに夏祭り風の音楽が演奏され始め、場の雰囲気も祭りらしくなった。

 

「ラランラ~♪」

 

「トリリリー!」

 

「ムム!」

 

「キュイ!」

 

「クックママ!」

 

「―――♪」

 

「キュー!」

 

「ヤー!」

 

「ヒムヒム!」

 

「フマー!」

 

「フム!」

 

「モグモ!」

 

「メェー!」

 

「ヤミー♪」

 

「ピカッー!」

 

「ピィ!」

 

『―――♪』

 

《―――♪》

 

『にゃははー!』

 

俺の従魔達が櫓の周りで踊り始め、他のプレイヤーの従魔達も交じり始める。そんな誰も見たことがない光景に俺達は色めき立ち、スクショが捗ったのは言うまでもない。完全に保護者のそれだ。踊りに参加していないフェルとセキトは俺を背中に乗せて護衛中だ。

 

「続いてプレイヤーの番! 燃やせー!」

 

組み立てられた水晶の木材に火が放たれて燃え盛る。青と白が入り乱れた幻想的な炎から火花のように舞い上がる燐光は、淡く祭りの会場を照らしていく。

 

「おお、これは凄い! まるでホタルのように火花が光ってる!」

 

「きれー! クリスマスイベントにぴったりじゃない!?」

 

今は夏なんだがな。そんな野暮なツッコミは誰もせず、大きく燃える炎を囲い思うが儘に踊り始める。それから少しして皆がテイムした従魔と入り混じって二重の輪となり踊る。

 

「屋台班! そろそろ忙しくなるから頑張ってねー!」

 

「「「「「「「「「「はーいっ!!!」」」」」」」」」」

 

設けた屋台の中に待機する料理人プレイヤー達。無論、俺も参戦だ。構えるのは休憩所だ。ジュースから酒も豊富に飲める場所を設けて気軽に腰を落とせて休ませる役割を確保したのだ。というか、屋台で販売したら俺の従魔目的で、こぞって集まってくる輩が必ず出てくる。その配慮としてみんなと決め合った役割の話をしたら盤上一致で認めてくれた。だけど、俺自身が幼女になってしまったのは予想外だったわ。

 

「白銀さんも踊りましょうよ!」

 

セキトの背中に乗っている俺に誘いが掛かった。

 

「いや、いまの姿で踊れないから。髪も長いし地面に引き摺って踊りにくい」

 

「そういうことなら!」

 

「私達に任せてください!」

 

「あ、お前達は!? ただでさえ不人気なのに敢えて不遇職の一つを選んだ姉妹プレイヤー!」

 

美容師と理容師の二人。将来の夢の仕事がゲームでリアルに近く出来るからと、不遇職として認識されてる職業で遊んでる未成年の姉妹。

 

「白銀さんの出資金のおかげで培えた経験をお披露目しますね!」

 

「せっかく長い髪だから切らずに、ゲームだからこそできる髪型にしようよお姉ちゃん」

 

「そうだね。そのまま白銀さんと従魔ちゃん達の協力で宣伝してもらおっか」

 

「「ということでよろしくお願いしまーす!」」

 

・・・・・もう、好きにしてくれ。

 

―――10分後。

 

クスノキを購入したのみ現れるトトロのオカリナの演奏で音楽プレイヤーと交代させて休ませ、彼女らも祭りの雰囲気を楽しんでもらってる。

 

「可愛く、仕上がってますね」

 

「ホントに可愛い!」

 

「外国のお人形以上の可愛らしさだよ」

 

ゲームだからこそできるという理由で、人の長い髪をポニーテール&花弁のように結ってくれやがった。そしてそれが却って頭を重く感じさせてくれるのだが、地面に引きずるよりはマシだと納得したし、本当に実現させた二人に驚嘆したわ。

 

「俺の要望通りにしてくれてありがとうよ」

 

「どういたしまして。私達も今日の為に頑張れたわ。本当に夏祭りを実現しちゃう凄い人だよハーデスさん」

 

「音楽があってこそ盛り上がれるのさ。今回の夏祭りの主役は音楽プレイヤーのお前達だ。もう一度やる時はお願いするよ」

 

「公私の都合がよかったら喜んで」

 

握手をし合うと後ろから抱き上げられて、俺を取り囲む彼女等に弄ばれた。ツーショットもさせられたわ。

でも、本当に大変なのはここからだった。

 

「すみません! オルトちゃん印のハチミツジュースをください!」

 

「ルフレたんの足踏みぶどうジュースを!」

 

「アイネちゃんから手渡しされたぁー!!」

 

「クママたんの真摯な立ち振る舞いが好きすぎるー!」

 

「三大樹精さまのスマイルが眩しすぎ・・・るっ!」

 

「ベンニーアちゃん、可愛いー!!」

 

うちのオルト達目当てに休憩所に居座るメンバーが多すぎて、目が回るほど忙しい。正直猫の手も―――。

 

「フレイヤちゃん、可愛いねー」

 

「ほらほらーここがいいかなー?」

 

「にゃははー! 最高にゃー! もっとオイラを愛でて欲しいにゃー!」

 

・・・・・あんのクソ猫、もっと愛でられて人を集めろ! こっちの負担を無くせぇえええ!

 

「中々愉快なことになっているね恐怖の大魔王」

 

「愉快どころじゃない―――って、何でいるんだ?」

 

途中で聞き覚えのある声の方へ振り返れば、浴衣姿の魔王とルシファーが紛れ込んでいた。そのルシファーの俺を見る目がアレで嫌なんだが・・・・・。

 

「とある魔王からここで面白い催しをしていると話を聞かされてね。遊びに来たんだよ」

 

「楽しむなら今の内だぞー」

 

「そうさせてもらうよ。それにしてもあのヘルキャット、中々幸せな生活を送っている様だね」

 

誰がどこから見てもそう見えるだろうよ。

 

「そーいえば、獣魔国の防衛の時に魔獣の卵を孵化させていたな」

 

「今まで貯まりに貯まった卵を孵化させて消化する千載一遇を、逃すはずはないだろう? おかげで魔王軍の戦力も大幅に増えてこっちは嬉しい限りだ」

 

「そいつはよかったな」

 

「だけれど、キミの方が心配だ。未だ一人も魔王の配下がいないじゃないか」

 

「俺が結成させたギルドが魔王軍みたいなもんじゃないか?」

 

「ふむ、そう言われると確かにそうかもね。教会も先の一件でキミとキミに従う彼等を、魔王軍として定める方針でいるようだ」

 

うわぁー、なんともはた迷惑な。

 

「故にどうだい。彼等の為に戦力を増やしてやろうか。恐怖の大魔王の仲間に弱者がいては僕もそれなりに心配だからね」

 

「その言葉をあいつらに言ってやれ。女顔の女装魔王に心配されたら喜ばれるぞ」

 

「完璧に性別を反転できるキミにだけは言われたくないかな!」

 

「お前も性別を反転させてやろうか。ラプラスなら今すぐにでも用意してくれるだろうよ。性別反転の薬とか。今の俺の姿はそれでこうなってしまったんだよ」

 

「あ、そうなの? じゃあ、私もお願いして―――」

 

その瞬間。凄い勢いで魔王がルシファーの手を掴んで一人にさせなかった。させたら最後、本当の意味で男の尊厳を消失してしまう未来を悟ってしまったからだろうよ。同情するよ魔王。

 

 

 

 

独自に始めた【蒼龍の聖剣】の祭りも終幕に向かっていた。何時までも楽しい時間は続くことなどなく、満足したら人はそれ以上を何も求めず、何もしようともしないし飽きが来る。ならばどうすればそれを維持することができる? 簡単だ新しい刺激を与えればいい。それも、己の欲望が一気に湧き上がるようなイベントを始めればいい。

 

「よし、これで準備完了。ありがとうセキト。戻るぞ」

 

「ブルル!」

 

セキトに乗ったままホームの至る所に移動し、準備をし回った。それが終われば皆がいるテラスへと舞い戻る。着いたら大太鼓を設置している櫓に待機してもらった音楽プレイヤーの一人に合図を出した。

 

ドドンッ! ドドドドンッ! ドンッ!

 

「はい、全員注目! これからイベントを始めるぞー!」

 

出来るだけ大声をあげて意識と注目を一身に集める。軽く見渡し、聞く姿勢になっている皆を確認した。

 

「このまま何もせずお開きになるから、俺独自に考えたイベントを始める! なお参加は自由だ!」

 

「イベントってなに?」

 

「白銀さんのことだから絶対普通じゃないと思う」

 

「身内同士の試合・・・いや、それはないか」

 

「それしたら誰が白銀さん以外ペインさんに勝てるって話だよ」

 

「ということはなんだろうね?」

 

まだ誰も教えていないイベントを考察する面々に詳細を伝える。

 

「一気にやると大変だから男女に分かれて始める! 内容はスタンプラリー争奪戦! ここ天空の城のホームの至る所に俺の従魔を模したスタンプを置いてある。これから配る紙に全てのスタンプを押した先着10名のみ――俺の従魔の木製人形かスタンプを一つプレゼントしてやろう!」

 

「「「「「「「「「「―――っ!!?」」」」」」」」」」

 

「そしてスタンプの場所にはオルト達がいるから、スタンプの無断所持はさせないからな。そしてルールは―――」

 

 

戦闘・妨害行為は厳禁。

 

テイマーとサモナーの従魔の使用は有り。

 

制限時間は3時間以内。

 

代理人の行使は禁止。直接本人のみスタンプを押してもらうこと。

 

スタンプを押してもらう際は必ず一列になって待機すること。

 

プレイヤーのスキルの使用は禁止。

 

全てのスタンプを押したらゴール地点であるこの場のテラスに戻ること。

 

 

「以上! 質問が無ければすぐに男女別に分かれてもらうぞー! 質問はあるかー!」

 

「はい質問です! 白銀さん手製の人形って選べますか!」

 

「ポーズも望むならそれも選べれる!」

 

「はい! 代理人の行使は禁止だけど、連絡を取り合っての協力はセーフですか!」

 

「セーフ! ルールの説明で言ったが、スタンプは必ず本人じゃないと駄目だからな!」

 

「質問です! 白銀さん自身の人形が欲しいんだけど! 特に今の幼女の姿!」

 

「あ、それなら俺は堕天使の白銀さんがいい!」

 

「・・・・・欲しければくれてやるよ」

 

うぉおおおー! と喜び出す一部の男女のプレイヤー。いや待て、そんなに欲しいのか? 言葉悪いが気持ち悪いぞお前等。

 

「あー、これ以上質問されると長引くから強制終了! それじゃ、イベントに参加したい人は男女別に東と西に分かれて! しない人は休憩所のところで待機!」

 

催促すればほぼ全員が男女別に分かれだす。

 

「三人共、頼んだからね!」

 

「いつになくフレデリカが積極的だね」

 

「言ってやるなペイン」

 

「ま、こういうイベントも参加して楽しもうぜ」

 

 

「キキ、お願いね!」

 

「キー!」

 

 

「サリーちゃん。よろしくね?」

 

「貸し一つだからねイッチョウ」

 

 

「頑張るぞー! うぉー!!」

 

「絶対に手に入れるぞ、ウッドちゃんの人形ぉー!!」

 

「ポーズのカスタムも視野に入れてくれるとか・・・どうしよう、どう作ってもらおうか悩むわ!」

 

「必ずオルトちゃんの人形を私の物にするわ!」

 

「テイマーとサモナーに負けるつもりはないが、従魔の使用がアリだと厄介だな」

 

「白銀さん、わかってるわ!」

 

「こんなイベントなら大歓迎だぜ!」

 

音楽プレイヤーの皆にも協力してスタンプラリー用の紙を配って回る。それを受け取れば東西に分かれる男女のプレイヤー。サイナに大きな機械のタイマーを作ってもらい3:00:00の数字が表示される。程なくしてスタートラインがない位置についた皆に告げる。

 

「それじゃあ、合図を出すぞ! 位置について―・・・・・よーい・・・・・開始!!」

 

 

うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

わぁあああああああああああああああああああ!!

 

 

【蒼龍の聖剣】のギルドメンバー達が一気に駆け出した。テイマーとサモナーは自身の従魔の力を借りて移動している。あっという間にこの場からいなくなった皆の姿を、休憩所で大きく映し出すサイナが創造してくれた複数以上のモニターに映し出される。なお、休憩所にいるのは参加の意思がない戦闘職のプレイヤーと音楽プレイヤー達と【AGI】が低くて走りと移動が遅いプレイヤーのみ。

 

「さーて、純粋に【AGI】が高い奴が先に集めるだろうが、簡単に集めることも出来ない」

 

「どうして?」

 

「簡単に見つかる場所に置いてない個所がいくつもあるからだ。特に体が小さい俺の従魔はよーく探さないと見つからない」

 

「ああ、じゃあ・・・3時間なんてあっという間?」

 

「うーん、長く見積もって設定したつもりだ。早くても一時間以内は見つかると思うよ」

 

 

 

 

運営side

 

 

「独自でイベントをするなんて凄いですね。参加してるプレイヤー達が白熱してます」

 

「これもゲームの醍醐味ってやつなんだろう。自分達で考え、更にゲームを盛り上げてくれるプレイヤーはこっちとしてもありがたい」

 

「それにしても可愛いですね。性転換した白銀さんをマスコットキャラクターにしたら人気出るんじゃないですか?」

 

「そうだな。テレビのCМにでも放送したら確実にそうなってしまうかもしれないな」

 

「いっそのこと、白銀さんに協力を求めては?」

 

「検討しよう」

 

 

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