バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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新大陸へ

 

 

新大陸実装当日―――。メンテナスがまだ残り一時間と迫った時に俺は愕然としていた。それは運営側が提示した新しい情報の告知だ。

 

「あー・・・・・やっぱりこうなったー!! くそー! だから控えていたのにー!」

 

「控えていたってどれぐらい?」

 

「毎戦闘ごと10回以内だ」

 

「うん、これからもいつも通りになるってことね」

 

メンテナンス内容は一部スキルの弱体化とフィールドモンスターのAI強化。

対象となるスキルの名称はゲームの仕様上明かされてはいないため所持している者しか分からない。

そしてさらに残り一つ変わったことがある。

それは。

 

装備同士の融合成功率も修正された。まぁ、簡単に強力な装備に強化してしまうのは今後のプレイに影響してしまう可能性がないわけじゃないからしょうがないとして。

問題はスキルの方だ。

 

「まあ・・・目立ち過ぎればよくあることかな」

 

燕がドンマイドンマイと肩を叩く。

 

俺に関係する調整は主に一つ。

しかし、燕が言うには遠回しなのも考えれば三つ全てとのことだ。

まずスキル修正では【悪食】が修正された。

 

【悪食】の修正後の能力は一日十回の回数制限が付き、吸収出来るMPが二倍になるというものだ。

 

大盾に【悪食】を付与したメイプルで例えさせてもらえば、常時発動は変わらないため十回攻撃を大盾で受けた後は、闇夜ノ写は唯の大盾になってしまう。吸収できるMPが二倍になっているためある程度の魔力タンクにはなるだろうが弱体化しているのは間違いない。

 

次に、AI強化はモンスターが回り込んで攻撃してくるようになったり、場合により逃走する様になるというものだ。

 

これは俺達の再発防止だろうと燕は俺に話した。どういう意味か分からなくもない俺は溜息を吐いた。

 

「まぁいい・・・まだやりようはある。【絶対防御】のスキルが二度と手に入らないようにできなくしたわけではないからな」

 

「じぁあ参考に訊かせてもらえます?」

 

「簡単な事だ。絶対に逃げないモンスターと戦えばいいだけだ。例えば弱いボス相手にとかな。お勧めは毒竜だ」

 

「あー、なるほど!」

 

「さすがに運営もボスを逃走させるわけにはいかないからね。これはどうしようもないわ」

 

フハハハ、まだまだ詰めが甘いぞ運営ェー!!

 

「ふと毒竜で思ったんだが。瑠海、装備アイテムでデバフ効果が付くものって作れるか?」

 

「何でそんな物を?」

 

「簡単に耐性を進化させるお手頃な方法が出来ないかと思った」

 

「・・・・・なるほど。何かしらの耐性を得ることができる装備か、デバフ攻撃するモンスターを相手にして耐性を得るのが主流になってたけど、装備で敢えてデバフ効果を受けて耐性を得て、進化させる発想はなかったわ」

 

まだログインしてもいないのに生産職の顏になった彼女。

 

「ということで、試作品を作ってくれるか?」

 

「わかったわ! ふふ、楽しくなりそうー! まだ誰も生産していないデバフ装備を始めて作ったのは私だけなら思い切りたくさん作っちゃう!」

 

なお新大陸はやはり船で海を渡らないと行けないらしい。だが、その船を狙う海賊やモンスターとの戦闘は避けられないよう設定されている。そんなことが起きる場所は、予想していたリヴァイアサンレイドをしたあの無人島ではなかった。北の第12エリアだ。新大陸について運営側が記者会見をリアルで開いているらしい。俺たちはテレビの画面に注視する。

 

 

『NWOの新大陸はプレイヤー達にとって本気の戦いと遊び場になる。これから呼称されるようになる現プレイヤーがログインする旧大陸に存在する一部の隠しエリアと同等以上の強さのモンスターが跋扈しており、プレイヤーのスキルも新しい要素が加えられ、これまでとは一線を越えるやり込み感がプレイヤー達を刺激してくれるでしょう』

 

『質問です。新大陸と旧大陸の関係性はありますか?』

 

『あります。旧大陸は謂わば新大陸に向けの「ならし」です』

 

『「ならし」ですか?』

 

『「覇獣ベヒモス」「鳥帝ジズ」「皇蛇リヴァイアサン」のような三体のモンスターを越える最強種のモンスターが七体おります。そして世界の真実を解き明かす歴史や神話があります。これらと向き合うためにはEXクエストを発生させなければなりません。さらには新大陸にいる間、プレイヤーキラーが可能になり、プレイヤーに倒されると所持していた物が全てその場で落とします。当然、プレイヤーを倒した側にもデメリットが付き纏います』

 

『それはプレイヤーの間で問題が起きるのでは?』

 

『NWOはもう一つの現実世界であります。プレイヤーの問題はプレイヤーが解決してもらう方針ですが、過剰であればGMも介入します。その対策の一つとして、全プレイヤーの名前が頭上に表示します。それからプレイヤーを倒すPK行為したプレイヤーは名前の表示が赤くなります』

 

 

 

「だそうだけど、運営は凄いことをしてくれるな」

 

「そうねー。他にも新しい要素がたくさんありそうで楽しみだわ」

 

 

『なお、新大陸と旧大陸は全く別の大陸であるので旧大陸から持ち込めないモノは置いておくしかありません。マイホームや生産職のプレイヤーが利用している畑等が主にです』

 

 

「「えっ!?」」

 

「うわぁ、何となくそうだろうと思ってたけど悩みどころだねん」

 

 

『それでは、新大陸には文字通り一からプレイをする事になるんですね?』

 

『ええ、その通りです。旧大陸にはまだまだ解放されていないクエストや未確認のスキルなど数多くありますから、新大陸に行かず留まってプレイするのもプレイヤー達の意志で決めてもらいます』

 

『イベントの参加はどうなりますか? 旧大陸と新大陸に分かれたプレイヤー達はどちらかしか参加できませんか?』

 

『参加は可能です。しかし、どちらかの大陸に行き来しなければ参加は不可能なので全てのプレイヤーは大移動しなければなりません』

 

 

「大陸間での移動は大変だろ運営・・・・・」

 

「海を渡らないと行けないしその間の時間もかかりそうよね」

 

「新大陸にもホームを買って、旧大陸のホームとトランスポーターで行き来出来ないかな?」

 

出来たら嬉しいなぁ・・・・・。運営側の報告はそれからも続き、重要な報せはしっかりと訊いているとログインができる時間になってきた。

 

「どうする? 第12エリアに進んじゃう?」

 

「うんや、まだいいだろう。俺的にはこのタイミングを待ってた。リヴァイアサンレイドをしたあのエリアから南極を探してみたい」

 

「そっか、新大陸は一つだけとは限らないものね」

 

「うん、そうだ。だから水瓏でしばらく長旅をする。イズ、船の用意を頼む」

 

「わかったわ」

 

 

と―――話し合いながらログインし、イズと合流すると海人族が居るようになった無人島にあるドックへ向かい、青いパネルを操作する彼女が懐かしい水瓏を出してくれた。

 

「今更ながらなんだけど、こんな大型船でもインベントリに入れられるアイテム扱いされてる物か?」

 

「ちょっと違うわ。ほら、あそこ」

 

イズが指す方へ目を向ける。イベント中は何も直していなかった建物が新築に様変わりしていた。

 

「プレイヤーが作った船はあの中に保管できるようになっているのよ。今のところ私達【蒼龍の聖剣】だけ使用しているけど」

 

「そうだったのか。それは知らなかったな」

 

「素材を集めて一から作るとどうなるか、教えたから自前の船を持つプレイヤーが今後増えると思うわ」

 

イズの言葉に首肯する。水瓏に乗り込みサイナを召喚して彼女に船を動かすよう頼むと俺は自分の眼で船内の確認をしていく。

 

「素材全部で4000個分の船は二回り大きいな」

 

「ハーデスの要望通り潜水している時、海中の様子が判るようにしているわよ」

 

「ありがとう。新大陸実装に備えて、広い海中で新しい発見が出来そうだからな」

 

「生産用の素材アイテムが確保できるなら私達も万々歳だわ」

 

イズの案内で船内の構造が判明していく。ログイン・ログアウトできる個室と大広間。百人以上のプレイヤーに料理の提供ができる食堂と厨房。航海中に暇にならないよう遊具も備わってあって、何故かバーもあった。浴場も完備だ。船底では従魔達が退屈させないための解放された空間になっている。水晶だらけの空間ではなく緑の植物も育てられている。船の中で畑が耕せるなんてオルト達は嬉しそうだ。船底から二階のある部屋じゃあ水精霊のウンディーネ達専用の水場。流れるプールを中心に滑り台もありました! 波の出るプールや水場の遊具がたくさんあってプレイヤーも遊べちゃうらしいぞ!

 

「船なのにここまでできちゃうわけ?」

 

「できちゃったのよねー。だからこの時、セレーネと徹夜で夢中になって頑張っちゃった」

 

頭が上がらない思いになって感謝を込めて深々と頭を下げた。

 

「でも本当に探すつもり? 南極を。新大陸に行った方がいいんじゃない?」

 

「新大陸は商船しか行けれないなら俺は何時でもいいさ。それにこの船を手に入れた瞬間から行ってみたかったし、今探さないと何時探しに行くんだって話だ」

 

「一朝一夕で見つかる場所じゃないと思うわよ?」

 

「ふふん、百も承知だ! そんな俺に付き添ってくれるイズも優しいじゃんか」

 

そう聞くとイズは照れだした。

 

「だって、あなたと二人きりになれる機会だし一緒に居たかったから」

 

「・・・・・」

 

嬉しいことを言ってくれるイズを慣れた手つきで、お姫様抱っこして歩き始める。最初は驚いた彼女も直ぐに俺に身をゆだねて大人しく抱えられる。操縦しているサイナ以外、俺達しかいないため何時しか『そういう』雰囲気になった俺達は誰も知られない内に―――互いの想いが重なったことで結婚した。

 

ゲーム内で一週間。

 

南極へを目指す水瓏は寒い気候の海域に突入を果たした。サイナに呼ばれ艦橋から見えてくるのは白銀の世界の大地―――。

 

 

≪プレイヤーが新大陸の未開拓地【南極】に辿り着きました≫

 

≪最初に未開拓地【南極】を最初に訪れたプレイヤーに称号『南極海の海拓者』を授与します》

 

『初めて【南極】に辿り着いた死神・ハーデス様には、初回ボーナスとしてランダムボックスを贈呈いたします』

 

≪全プレイヤーに新大陸【南極】の位置を公開しますか? YES NO ≫

 

勿論YESをした。水瓏だから一週間も掛かったんだが、他の船ではそれ以上の時間になるかもしれないけど来たい奴は来るだろう。

 

「よーし、サイナ。俺は船から降りるぞ! 他の皆が来たら外へ案内してくれ!」

 

「了解しました」

 

ふははは! すでに他の新大陸に辿り着いているプレイヤー達よ、こっちはこっちで俺が一番乗りだぜ!!

そーれ、白銀の世界にダーイブ!

 

ぼふっ!

 

おおー、ふかふかの雪で冷たさが再現されているー! メダル争奪戦以来の雪の場所だ! つめてぇー!

 

「・・・・うん? 案の定の連絡だな」

 

しかも数が多い。一斉に通信状態にすれば相手はギルドメンバーばかりだった。

 

『ハーデス君 南極に辿り着いたかなー?』

 

「おー、ようやく辿り着いたぜ! 見渡す限りの白銀の世界! まだ何も見つけていないがこれから探索しに行くところだ」

 

『船で行かないと辿り着けない場所だよね?』

 

「俺の船、もとい【蒼龍の聖剣】の船である水瓏はホーム型だ。トランスポーターを介してくれば南極に停泊している水瓏の中に来れるぞ」

 

『おおー! マジっすかっ!? それじゃ今から俺も南極に行きます!』

 

『南極のモフモフや可愛いモンスターをゲットしてみせるわー!』

 

『【蒼龍の聖剣】が新大陸を全て攻略してみせるぜー!』

 

『でも、移動が大変そうだからスキーとかスノーボード、スノーシューズが必要じゃない?』

 

それもそうだな。俺は空飛べることができるから不便な足場は無視できるからいいとして。

 

「それと回復用のアイテムをたくさん持って来た方がいいぞ。ここ、スリップダメージが発生して現在HPと満腹度が一分過ぎれば10も減るわ、状態異常:氷結(小)になる。【AGI】が地味に減少するっぽい。専用の装備が必要になるな」

 

『うわ、それはキツイ。南極もそうなら北極もそうだよな』

 

『氷の耐性が付くまで耐えるしかないか』

 

『ギルマスー、更なる情報をお願いしますねー』

 

りょうかーい、と言って全ての通信を切った次はホットドリンクとポーションを飲んで、寒さ対策とHP回復してから配信動画ー。

 

「死神の宴を始めるぞー! 皆集まれー!」

 

 

『いえーい!』

 

『待ってましたー!』

 

『不定期に始まるこの宴は全裸で待ち構え続けないと見逃してしまう』

 

 

「いま南極にいるから全裸でいると凍死するぞー」

 

 

『南極!? さっきアナウンスを聞いたけど本当に実在していたとは!!』

 

『そこに何がありますかー?』

 

『めちゃんこ寒そう・・・・・』

 

 

「実際に寒い! HPと満腹度に【AGI】が減少する! プレイヤーとモンスターよりも極寒の大自然が脅威! まだ何も発見していないから皆で発見したいと思いまーす!」

 

 

『情報提供感謝』

 

『見たいモンスターは定番のペンギンとシロクマとアザラシ』

 

『シャチとクジラもいるかなー?』

 

『海洋生物はテイムできるのか?』

 

『出来ないモンスターは神獣ぐらいだろ』

 

 

「それじゃ、話はそこまでにして歩いてみたいと思う。しゅっぱーつ! 【覇獣】!」

 

 

ベヒモスとなって白銀の大地を宛てもなく爆走する。山もなければ谷もない、待ったいらな白銀の地平線が続く最中、数キロぐらいか? 走っていると途中で足場を失った。というよりも俺は雪で隠された落とし穴を踏み抜いたようで垂直に落ちてしまった。ただし、単純に落ちるものではなく、氷のロングスライダーに乗って縦横無尽に滑る状況に身を任せるしかなかった。

 

「うぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?」

 

 

『おおおー!?』

 

『目が回る―!!?』

 

『どこに行こうとしているんだー!?』

 

『やばい、凄く体験してみたい!』

 

『わかる』

 

 

途中、氷の滑り道が途切れスポーンと宙に放り出されるも次の滑り道に着地して滑る。

 

ドガンッ! ガガガガガガガッ!!!

 

「うん? なんだ?」

 

何か凄い衝撃音が迫って来てるのを気付いて、カメラを動かして実況してもらった。観ているプレイヤー達の声がすぐに阿鼻叫喚となった。

 

 

『な、なんだありゃあああああ!?』

 

『白銀さんもっとスピードを出せ! なんかのモンスターが口を開けて迫って来てるぞ!?』

 

『生物災害のゲームみたいな展開があるのかよ!』

 

『怖い! 怖い! 怖い!』

 

 

え、マジ? じゃあ【相乗効果】! 【超加速】! 【浮遊】! 滑るよりも飛んで移動する! それでも振り切れないようで、スキルの効果が切れるまで逃げるしかなかった。

 

 

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

「んなっ!?」

 

身体が、硬直した・・・! これ、【咆哮】かっ!? 浮遊していたからだが氷の滑り道に落ちて、転がりながら滑る羽目になってしまい、何かのモンスターに追いつかれてしまうのは道理で、鋭利な何かに突き刺されただけで【覇獣】が解除されてしまい、俺はそのまま出口の先の天井が見えないほど高い空間に放り出された。故にモンスターの全容が明らかになった。

 

背面が白、腹面が白色の身体が全長は100メートル、形状はクジラっぽい。

 

ただし、顔、頭部にヒレの部分は鳥の翼に模した水晶のような雪の結晶が覆っていて、鋭利な刃物と化しているのが窺え鈍器にも扱えそうだ。そしてあのクジラのモンスター、氷の絶壁に挟まれたこの広い空間の中で海の中に入るみたいに泳ぐ如く飛んでいる。そして俺は雪の大地に着地した。

 

「わーお、クジラのモンスターみたいだけどさ。ボスの種類的にどっちなんだろうな?」

 

 

『エリアボス? じゃなさそうだからレイドボスか?』

 

『レイドボスが途中でプレイヤーを襲うか? エリアボスだろ』

 

『仮にエリアボスだとして、今いる場所はどこかに繋がっているエリアなんだな』

 

『迫力ある。シャチとクジラが合体したような感じだな』

 

『レイドボス級のモンスターとして仮定するなら、一人で勝てるはずがない。でも頑張って欲しい』

 

 

オーケー、俺、頑張る。とフェルを召喚しながら意気込む俺に対してクジラの方は・・・・・舞うようにゆっくりと地上に降りながらその巨体を活かして突っ込んできた。・・・・・ん?

 

「こいつHPが表示されていない!」

 

 

『あっ・・・(察し)』

 

『じゃあ、どうやっても倒せないですねソレ』

 

『一方的な理不尽による戦いの果てに何があるんでしょうかねぇ』

 

『死に戻り確定』

 

『だ、大丈夫だよ!? きっとこの後はいつものように白銀さんがやらかしてくれるはず!』

 

 

何をやらかすってんだこの状況で?

 

 

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

だぁー!! また強制停止のスキルを使われたぁ!! あ、待って? そんな大きな口を開けて呑み込もうとしても俺は竜涎香にもならないってー!!?

 

「・・・・・あ、死んだ」

 

 

『お疲れ様ー!』

 

『でも、直ぐには死なないんじゃ?』

 

『内側から生のクジラ肉を食べられるって?』

 

『クジラ肉、美味しそう?』

 

 

呑気に言う視聴者のコメント欄を最後に見た瞬間。俺の目の前が真っ暗になり意識が一瞬途切れた。

 

―――否ァッ!

 

間一髪のところ、フェルに銜えられクジラから回避! その後すぐに俺の硬直化が解けて触り心地抜群な背中に乗らせてもらいつつクジラと距離を置く。

 

「逃げる! 出口を探してくれ!」

 

「グルルッ」

 

地面は雪と見え隠れしている石。壁は水晶のように透明な氷の壁。こんな場所に脱出口があるのかわからないが、とにかく探すしかない。

 

「フレイヤ召喚!」

 

飛べる猫も協力してもらおうとしたが、俺の予想を反する行動に出やがった。

 

『にゃあああー!? ご主人、アレは怖いぃー! おいら逃げさせてもらうにゃー!』

 

は? 何言ってんだお前? 主人を放って逃げ出そうとする猫の二股の尾を掴んで引き戻した。

 

「オイコラ、冥界最強がなにビビってんだ。しかも主人を見捨てるとはいい度胸してるじゃないか」

 

『勘弁してくれにゃー!? ご主人にはわからないにゃ!? アレは、聖獣の一種だにゃん!』

 

「聖獣?」

 

『魔獣と対なる存在が聖獣にゃん! アレは獣じゃないけど聖に属する存在! いくら冥界最強のおいらでも敵わない敵がいるにゃん!』

 

フレイヤの言い分を聞き、後ろに振り返る。おっと? 頭部か額かその辺りから極太の一本の角が、発光しながら生やしたではございませんか。あの角でベヒモス状態の時の俺を突き刺したのか。で、その角先が俺達を狙って・・・・・。

 

「聖獣って魔獣を許さない系?」

 

『おいらだって相成れないにゃ!』

 

 

―――ドンッ!

 

 

フェルが躱した場所に突っ込んだクジラが、角を自身を超える巨大にすると地面の中に沈んだ。いや、潜った?

 

・・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。

 

「・・・・・もしかしなくとも」

 

『突っ込んでくるニャ』

 

言われずともフェルはわかっておらっしゃる様子で、走っている途中で一気に跳躍した矢先に地面からクジラが飛び出して来た。しかもその後はサメのように無い背びれを代わりに回転する角を見せびらかしながら迫って来る!

 

「とにかくフレイヤには俺達が出られる脱出口を探してきて欲しい!」

 

『そのままトンズラしてもいいかにゃん!』

 

「場所を案内してくれるなら先に行ってよし!」

 

高速で飛び、出口を探しに空へ避難するフレイヤを見送る。そうしている間にクジラはどんどん迫ってきていた。同時にこの洞窟の深奥にまで移動していたのか、壁が見えてきた。

 

「一か八かだ。フェル、ギリギリ誘き寄せて壁に穴を開けてもらうぞ。ぶつかった勢いで外に繋げてくれるかも」

 

「ガウッ」

 

方向転換してクジラへ振り替える。クジラはすぐ目の前だ。地面を削りながら迫ってくる。壁を背にしてタイミングを合わせ・・・・・3、2、1・・・・・。

 

「【念力】! 跳べぇっ!」

 

力強く跳ぶフェルが通り抜けるクジラの背中を越えて着地。穴を掘る音が途中で途絶え、風を切る音が聞こえてきた。気になったからクジラが通ってできた長い空洞の中を進み、周囲を警戒しつつ出口に向かえば外と繋がっていたのだった。それにここから見渡す限りの白銀の大地―――。白い球状が幾つも縦に積み重なった不思議なオブジェクトがある場所に出られた。

 

「んー? どの辺りに出たんだ? 取り敢えず、地中から抜け出したようなのは確かだが」

 

完全に迷子な俺はフェルに訊く。

 

「モンスターとかいる?」

 

「・・・・・」

 

前に進むフェルが徐に雪玉のオブジェクトへ近寄り前脚で強く押した時だった。地面に落ちた雪玉がモゾモゾと蠢き、真っ白な球に円らな黒い瞳が開いてこっちを見上げて来るじゃないか。これがモンスター? 優しく添えるよう両手で二匹の玉状のモンスターを持ち上げるとわかった。短い胸鰭と尾鰭が一生懸命動かす仕草にほっこり。鑑定すれば『タマアザラシ』というモンスターらしい。

 

「「アーッ、アーッ、アーッ」」

 

「可愛い」

 

 

『可愛い』

 

『可愛い』

 

『可愛い』

 

『可愛い』

 

『超かわいい』

 

『超絶可愛い』

 

 

視聴者のコメントが可愛いの流れで画面が埋め尽くされていく。気持ちは分からなくないぞお前らと思っていると、一際高く鳴いたタマアザラシ。それに呼応して雪玉のオブジェクトや周囲の地面からタマアザラシがポコポコと姿を見せると何故かこっちに飛びついてきた。あ、これは・・・・・。

 

「ヒムカ召喚!」

 

「ヒム? ヒムー!?」

 

タマアザラシに群がられ、俺を中心に白いモコモコの塊が出来上がっていると思うだろう。しかし中心にいるからこそ、タマアザラシのひんやりとした冷たさが何倍にも増え、俺の身体も冷えるどころか凍結してしまったのだ。

 

後に召喚したヒムカに凍結した身体を融かしてくれて助かった。

 

「なるほど、ミツバチで言う蜂球って集団攻撃を受けるんだな」

 

 

『何それ?』

 

『一匹のオオスズメバチに対して数十匹のミツバチが球状に群がって、自身の体温を高めて中心にいるオオスズメバチを熱で殺すことを蜂球と言うんだ』

 

『へぇー×6』

 

『へぇー×2』

 

『ヘェー×4』

 

『ちなみに、アザラシにおしくらまんじゅうされた感想は?』

 

 

「耐性を高めてからもう一度されたい」

 

 

『ところでテイムをしなかったのは?』

 

 

「新大陸で一週間、モンスターを攻撃しないで過ごしたらどうなるかなと思っていまして。だから攻撃もしないし倒さずに南極の全てを見つける方針だ」

 

 

『えー? そんなことしたら出遅れるぞ?』

 

『せっかくスタートダッシュの状態で誰よりも早く情報を独占できるのに』

 

『勿体ない』

 

『無欲な人やなぁ』

 

 

「情報の独占? なにそれ? この配信を見てる時点で独占できると? してほしいなら今日はここまでにするけどいい?」

 

 

『あっ、ハイ。情報提供心からありがとうございます』

 

『楽しいことは皆にも分かち合わないとね!?』

 

『でも、出遅れるのは本当。いいの?』

 

 

「出遅れることで称号とか貰えるからいいんだよ」

 

 

『あっ、確信犯だ! 何かの称号を持ってるぞこの人!?』

 

『もしかして、第3エリアから先に進んでいなかった時期があったのは・・・・・』

 

 

「いや、それは単純に称号とは関係ない。初期の頃はのんびりと楽しんでいただけだし」

 

 

『一ヵ月以上も第3エリアすら進んでいなかったのにのんびり過ぎるのでは?』

 

『その間に白銀さんは色々な新発見をして来たんだから、濃密なゲームプレイをしていたのも事実だよ』

 

『出遅れテイマー・・・出遅れ重戦士?』

 

 

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