「王様、結局バラしてしまいましたね?」
「そらお前。他にも掲示板にプレイヤーがいるんだから隠せるようなもんじゃないだろ」
「元々教えるつもりだったの?」
「公開しないとは伝えたけど誰かには言わないわけじゃないからな」
話し合いながら海の幸をふんだんに使った鍋料理を囲って夕餉の時間を過ごす。南極も第12エリアも海があるから魚介類が食べたくなった。蟹の足を折って中身の肉をぷるんと殻から抜き取って吸い込むように口の中に入れて食べる。
「実際、港町はどんな感じなんです?」
「閑古鳥が鳴いてた。危険な海だから漁猟ができず、商売が上がったりで家の中に引きこもってる」
「なんだか、地龍の問題と似てるね?」
瑠海の言う通り。おそらく新大陸側の港町も似たような感じではないか?
「そう言うことだから、のんびりと待ってるよ二人とも」
「「わかった」」
そんじゃあ、ごちそうさまでした。片付けたら仮想現実に行きますかね。
レッツログイーン! あ、そのまえに・・・・・。
燕side
「話ってなに?」
王様が部屋に入って行ったのを確認するまで待って貰った瑠海さんに私はあることを言った。
「今月で夏が終わります」
「え? うん、そうね」
「私達学生は貴重な青春の時間を寝てゲームばかりしてよいのかと甚だ疑問なんです」
「つまり、彼と外出をしたいと」
話が早い瑠海さんに頷く。
「ぶっちゃけ、瑠海さんもリアルでも関係を進展させたいとは思いません?」
「・・・・・否定できないけど、私は居候の身だし恩人の王様相手にこれ以上のわがままはダメよ」
ふむ、遠慮してるんだこの人は。まぁ、気持ちはわからなくはないけどね。
「じゃあ、一緒に王様に言いましょう」
「何をだ」
うわっ、びっくりした!? 部屋に戻っていなかったの王様!?
「俺に何か言いたいことでもあるなら聞くぞ。俺も言いたいことがあるし」
「えーと、悪いことでもしましたか?」
「ほう? 無自覚に自分が何かしたこともわからないようだな?」
ま、待って、待って? 無自覚に私はお仕置きをされることしちゃった!? ヤバい、全然わからないよー!!
「冗談はさておき「冗談!?」明日予定がなければ三人で出掛けないか?」
「お出かけ? どこに?」
「そりゃあ祭りに決まってるだろ? 今は夏なんだしそろそろ家に籠らないで外出もしなくちゃ」
お、おおおー・・・・・王様も私と同じことを思っていたなんて、ちょっとどころかすごく嬉しい。
「はいはい! どこの祭りに行くんです?」
「悪いがゲーム関連の祭りだ。日本の国土の一部を蒼天の物にした場所で展示会や博覧会を建設した場所でNWO関連のJGE・・・・・正式名称はジャパン・ゲーミング・エキスポって名前の蒼天と日本のゲームを日本人向けに紹介する展覧会である。夕方までそこに遊ぶぞ」
「へぇ、初めて知りました。日本にそんな場所があっただなんて」
「ゲームに関して今年までほぼ蒼天と無関係だったからな。んで、俺は蒼天の王だから色々と知ることができるのさ。そこで様々な催しを体験すればNWOに関する景品がもらえるらしい」
「それはどんな?」
王様は質問した瑠海さんの顔を見ながら言った。
「わからん」
「「ですよね」」
ふとここである想像が頭に過った。
「NWOが関連しているなら、かなりの人が来るんじゃあ・・・?」
「だろうなぁー。右も左も、前も後ろにも行けず身動きが取れない状態で逆らえない人の波に身を任せるしかできないだろう。どれだけ広大な敷地を用意してもすぐにパンクする。蒼天から警備員を派遣するらしいが対応は常に後手に回るはずだ」
「・・・・・想像しただけで辟易するんですけど」
聞いてしまったら行く気がなくなった。なのにこの人は問題ないと断言した。ポケットからなんかゴールドカードを3枚取り出した。
「なんですかそれ」
「総合ランキングと職業ランキングで1位から1000位までのプレイヤーが予約するともらえる優待チケット。これがあれば最低二人まで他の人を招待できてかつ、チケットがある者だけ展覧会に入れる。持っていない人間はその翌日に地獄を味わう」
「はい? 何時の間にそんなチケットが予約していたんですか?」
「一ヵ月前だ。NWOの公式ネットに記載してたぞ。予約するために二人のIDとパスワードを勝手に拝借させてもらったがな」
私たちを驚かすためにあえて黙認した王様に呆れながらチケットを受け取った。
「今度から事前に言ってくださいよ」
「善処する。瑠海も大丈夫か?」
「えっと、あなたが問題ないなら」
「なんの問題がある? でもま、強いて言うなら・・・・・瑠海が着物姿になるなら、絶対に綺麗になるだろうからナンパする男達から守ることが多そうなぐらいだな」
あ・・・・・瑠海の顔がすごく真っ赤になった。この人はほんと、恥ずかしいことをさらっと言うんだよねぇ。
「王様、私は守ってくれないんですか? 可愛くないんですか」
「今さらなことを言ってもしょうがないだろ。あと、お前を守ることはない」
そう言いつつ私の手を握った。
「こうして手を繋いでやるから俺の傍にいろ」
「っ―――」
このっ、ギザったらしいことを言われて嬉しい自分がなんか悔しい!
「あ、祭りに行くとき顔はどうするんです? まさか、死神の格好で行くつもりじゃないでしょうね」
「さすがに不審者扱いされるわ! 髪と目の色を変えるよ」
「ああ、もしかして死神・ハーデスに?」
王様はいたずらっ子のように笑みを浮かべた。
瑠海side
翌朝。私たちは早朝から家を出て他県へと移動した。長く長く乗り物に乗って目的地へ向かう。
「私、住んでいた県から違う県に行くのは学校以来だけど蒼天はどうなの?」
「蒼天も修学旅行には外国に行きますよ。蒼天からすれば日本も外国です。王様に関しては―――」
「仕事であれば世界一周はするが、燕さん? 外でその呼び方は止めろ(ビシッ!)」
「あいたぁっ!!?」
「あ、それって私も例外ではないわね。ハーデスって呼んでも?」
何故か私には頭を撫でで燕ちゃんにはデコピンをした。凄く痛いのか額を抑えて悶える燕ちゃんを見て思ったことを口にした。
「妙に当たりが厳しくない?」
「蒼天の重役がこんなところにいると思うか? 正体をバレたら色々と面倒なんだよ。なのにこの子ったら変なところでボロを出す。こっちが冷や冷やするんだよ」
「それならどうして彼女を選んだの?」
「日本人であり、相応の実力者、誰にでも愛嬌とコミュニケーションができる、場の雰囲気に溶け込むことができるから」
場の雰囲気に? 首を傾げて疑問形に呟いたら彼は教えてくれた。
「燕の顏は可愛いよな?」
「え? うん、そう思うわ」
「だがな。顔の容姿が以上に整っていたりプロポーションが良すぎると不用意に人を集めてしまうんだ。学生として身分と正体を隠し、俺のフォローをしてもらうのにそれは不必要。自然体で人の中に溶け込めるような学生を傍に置きたいのさ」
「うーん・・・・・あなた自身が今の姿で変装してもダメなの?」
「気付く奴は絶対に気付く。そしたらそいつに警戒心と好奇心、面倒なことに蒼天の重役の人物だからと接触してくるだろう。だから仮面を被ってでも変装するしかない。それなのに露骨に正体がバレるような言動を・・・・・」
ああ、燕ちゃんの当たりが強いのは何となく理解できた。それから同時に気になることも。
「燕ちゃんだからあなたとこうしていられるのは分かったけれど、そのことに他の人達は納得したの?」
「・・・・・ぶっちゃけて言うとだな。ものすっごい抗議をされたわ」
「え? もしかして他の4人の方々が?」
「だけじゃなく他の配下の連中もだ。俺と一緒に居たいがために駄々をこなれたわ。あいつらは絶対だめだ。仕事どころじゃなくなる。蒼天から出したら確実に注目されるんだからよ」
どんな人たちなんだろう・・・ちょっと気になるのだけれど。燕ちゃんも同感なのか頷いた。
「そうですよね。あの人達は色々と凄いですもん。本当色々と」
「そんなに?」
「うん、そうだよ。雰囲気が違うし、人を引き寄せる力があるのと堂々とした言動に蒼天のトップに立てる才能や見た目の容姿やスタイルも含めて本当に」
「因みにこういう奴が他にもいる」
ハーデスが携帯の画面を見せてくれた。綺麗な長い黒髪をサイドテールに結んだかなり可愛くて胸も大きい女の子。ハーデスとツーショットで撮られている写真なのだけれど名前も知らない女の子は嬉しいのか照れているのかほんのりと顔を赤らめてる。
「そいつは蒼天の王の配下の一人だ。そういうレベルがたくさんいる」
「因みにこの子の歳は?」
「はーい、同じです。信じられないですよねー?」
ウソデショ・・・・・。私、女として負けちゃってる・・・・・?
「この子を一緒に居させれなかったの?」
「無理無理。役職に就いているしそいつの代わりなんて今はいない。何より俺を崇拝しているもんだから燕のようなフレンドリーな接し方は出来ない。その点、燕は俺の条件に揃ってるから彼女を指名した」
「えへへ」
こっちもこっちで凄く嬉しそうね。でも、ボロを出したら当たりの強いお仕置きを受けるなら嬉しさ半分涙半分なのかしら。何となく画面を横にスライドして、色んな女の子たちの写真を見て・・・!?
「ひゃっ!?」
「「ひゃ?」」
な、なにこれ・・・・・全裸の女性が横になっている半裸なハーデスと写って・・・・・!!
「どうしたの瑠海さん。もしかしていかがわしい写真とかあった? ・・・・・あったね」
「は?」
横から覗いた燕ちゃんの目から光が消えて怖いけれど、何より彼と彼女の爛れた関係を物語った証拠の画像に私は硬直し、彼は怪訝な顔で私から携帯を奪っては・・・・・。
「・・・・・へぇ」
「「・・・・・・」」
わ、笑ってないわ! 目が笑ってない!? なんか、空気が重いし彼の目も光が無くなって燕ちゃんよりも怖い! 燕ちゃんも同じ気持ちのようで引き攣った顔だわ。
「ふふふ、あいつめ・・・・・俺の寝ている間に冗談では済まされない悪戯をしやがってたのか」
「・・・・・事実、じゃないんですよね?」
「あ?」
「すみませんでした!」
燕ちゃんが秒で頭を下げて謝った! しかも彼から「こいつ等もよ・・・」と呟いていたのは聞こえない、聞こえなかったわ!
「んと、まだ着くまで時間はあるから・・・・・二人とも、現地集合ってことでいいか?」
「「わ、わかりました」」
「悪いな。それじゃ」
ハーデスが座った状態で私達の前から光に包まれていなくなった後。
「彼、どうしたのかわかる?」
「十中八九、私にデコピンした以上のお仕置きをしに蒼天に戻ったと思います」
「デコピン以上って・・・・・」
「説教程度なら幸せです。だけど、お尻を叩かれるお仕置きならその日は地獄を味わいます。信じられないでしょうけれど、あの人の平手はその気になればスイカを粉砕しちゃうほどの威力があるんですよ?」
スイカを粉砕って・・・・・もしも本当ならその子のお尻、破裂しちゃうんじゃ・・・・・?
「―――よう、お前ら。呼びかけに応じてくれて感謝する。ううん? 何を見て怖がっているんだ? 単刀直入に言うが全員お仕置きをする事案が浮上してなァ・・・全員お尻叩きの刑は決定事項なんで」
「わ、私達が何かしましたか!?」
「そ、そうよ? ちゃんと仕事だってしてるしあなたのお仕置きを受けるような事は一切してないわっ」
「一方的な横暴と権力は配下の者達に不満を抱かせるだけよ。それだけのことをする理由と証拠があるのでしょうね?」
「はいこれ、何でか知らないが身に覚えのない全裸のお前らと事後の写真が俺の携帯に保存されていました」
「「「「「「あ」」」」」」
「俺が高度な寝相でお前らを無理矢理抱いたとしてもまずありえないし、俺の意思でお前らと○◦○○した後なら百歩譲って勝手にこんなことしたことは説教だけで済ませるがさ・・・・・さて、お前らの言い訳を聞こうか? この世間には公できない爆弾の写真を人の携帯で撮った理由をよ」
「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」
「あるなら一回だけで済ませる。ただし、俺を納得させれなかったら十回だ。何も言わず甘んじでお仕置きを受けるなら十回だ」
「それ全部で結局十回じゃないですかー!?」
「あー、悪い。言葉が足りなかった。言い訳で納得させれなかったら片方ずつ十回、全部で二十回もするつもりなんだわ」
「ひっ!?」
「・・・・・素直にお仕置きを受けたほうがダメージが少ないわねこれ」
「言い訳なんて彼が許すはずがないものね・・・・・というか今更気づいた彼も鈍いわよ」
「普段携帯を使わないから気付くのが遅かったのであろうなぁ」
「聞こえてんぞ? 生意気なことを言うなら倍にしてやろうか。その道連れで皆にも倍だ」
「「「「「やめてくださいお願いします!!!」」」」」
「とにかくお仕置きは決定事項、異論は認めないぞ」
その日、とある建物から何かを叩く音が絶えずしばらくして、涙目の幼女から熟女の女性達が出てきたのだが誰一人理由を頑なに言わなかった。
「待たせた」
「お、お帰りなさい・・・・・あのどうでしたか?」
「うん、不届き者を成敗した。悪戯もしなくなっただろ。久々に腕が鳴ったよ。お仕置きの回数が回数だからさぁー」
「そ、そう・・・・・お疲れ様」
なんか二人が俺を見て怖がっているのは気のせいだろうな? 二人に何かしたわけでもないし。まぁいい話を変えよう。
「さて、これに乗れば目的地だ」
「はい、そうですね」
「まさか、これに乗って行くとは思いもしなかったわ」
集合場所はバス停、そこに停車している三階建てのバスの一つに乗るのだ。
「ここってもう蒼天の領土?」
「そうだな。日本の法が通用しない。日本と共有しているが蒼天の領土であるから日本の警察も入って来られないぞ」
「それを知って悪い人がここに逃げ込んだら犯罪の温床にはならない?」
ははは、面白い冗談を言ってくれるなこやつめ。蒼天がそんなこと赦すと思うか?
「それはないだろう。その理由もしっかりとあるし」
「どんな理由?」
「それを語るのはまた今度だ。前が空いてきたぞ」
バスに乗り込む人々―――俺達と同じプレイヤー&一般人が少なくなってきた。ゆっくりと俺達もバスに乗り、一番後ろの三人まで座れる背中合わせの座席に腰を落とすと目の前の座席に座る三人の大人と子供。・・・・・おや、なんか見覚えのある子供ではありませんか?
「えっ!? ハーデスさん!?」
「ん? やっぱりイカルか?」
「うわぁー!!」
動物の尻尾があれば千切れんばかり振っているだろう少女の顏が喜悦で輝きだした。しかも予想が当たったみたく名も知らない子供=イカルとの出会いは俺も嬉しかった。燕と瑠海もイカルを知っているから二人も話しかけるが、素朴な疑問を抱いた。第二陣のプレイヤーである彼女がランキング外の筈なんだよな。となると・・・・・。
「初めまして白銀さん。この子の母親でプレイヤー名はフラワーナイツです」
「やっぱりプレイヤーだったか。ランキングは1000位以内だからか」
「噂の白銀さんより下の下ですが、毎日ゲームをしていたおかげで夫と娘とJGEに行くことができたんですよ。それといつも娘がお世話になってありがとうございます」
「いやいや、こっちもイカルとは楽しくゲームをやらせていただいています」
「それと娘に多額のお金をお渡しになった件についても大変申し訳なくありながら感謝しております。今の私達がこうして娘と外出できるようになったのは白銀さんのおかげです」
「それこそ気にしないでくれてほしい。俺がそうしたかっただけだから。現実世界でイカルを幸せにできるのはご両親だけだからな」
「はい。本当にありがとうございます。ほら、あなたも」
「あ、ああ・・・ありがとうございます白銀さん」
人見知りな人かな? バスが動き出した中でさらに話が盛り上がれば夫の人もNWOを始める模様。10億の大金が娘によって手に入ったので仕事をしなくても豪遊をしなければ生涯遊んで暮らせるからか。
「ハーデスさんもJGEに?」
「勿論だ。イカルとは別行動になるが楽しもうな」
「はい! 今度お母さんたちと一緒に遊びに行ってもいいですか?」
「いいぞ。一緒に遊ぼう」
「ありがとうございます!」
ええこや。リアルのイカルは微笑ましい。ゲーム内で遊ぶことを約束をした俺達は和気藹々と会話の花を咲かせた。夫の方は仕事が平凡なサラリーマンなのだが、フラワーナイツは意外なことに彼の会社の社長の娘さんだった。社内恋愛をして結婚後、イカルを産んでも退社せずに働いてたが会社の経営が傾いて倒産の危機まで迫ったところ、俺の10億が棚から牡丹餅の勢いで転がって来て会社が建て直せたのだとか。
「さしつかえなければハーデスさんのご年齢と職業を教えていただきますか?」
「え? えーとすみませんが秘密ってことで。何分、蒼天は良くも悪くも注目を集めているから」
「そうですか。不躾な質問をしてすみませんでした」
「いえいえ、国家に関する仕事をしている身なので。この見た目の若さも周りからよく詐欺だと言われることが多いから」
「あら、そうなのですか? てっきり二十歳以上なのかと思いました」
「ははは、若さを維持する方法がありますから」
嘘ではない。だからそんな疑心な目で見るのは止めてくれるか二人とも。
「今度、社にお越しください。父にもお礼を申し上げたがっておりますので。あ、これが我が社の名刺です」
「わかりました。今度時間があれば必ず」
お、この会社・・・・・華琳と一緒に訪問しようか。
それからバスは海の上で造られた人工島の前で停車した。彼の場所と繋ぐ道がない。
しかし海底に設置された油圧伸縮する柱が海上で開くことで橋を形成する浮上展開橋。海底から白波を引き裂いて現れた巨大な板が開脚するように開かれ、等間隔に現れた同様のギミックが次々に連結・・・・・海上の展覧会へとつながる長大な橋が完成する。そんな様子がバス窓を覗く俺達の視界に飛び込んだ。
「うわ、凄い。蒼天ってこんな大掛かりな仕掛けも作れちゃうんだ」
「本場の蒼天にはもっと凄いものがございます」
「本当なんですか!? 蒼天に行ってみたいです!」
「うーん、蒼天へ行くには条件が難しいからな」
輸送船にスパイが紛れ込んだからな。そのせいでさらに厳しくした。おのれ原因を作った九鬼家のクソ従者老人ども。また何か仕掛けてこようならばおホモ達の映像を世界中に轟かしてやるからな。
『Welcome to Japan-Gaming-Expo !!』
「ひゃっ!?」
イカルが可愛らしい驚きの声を上げる。それは俺の心情でもあって財布から声がした。 ジャパニーズツクモガーミ?
いや違う、喋ったのは財布じゃない。その中に入っている優待チケットだ。どうやらJGE会場に一定以上接近することで内蔵された何らかの機能が動き始めたらしい。財布から取り出したカード型チケットから小人サイズのぬいぐるみのようなドラゴンのキャラクターがARホログラムによって出現しており、愛想のいい笑顔で明後日の方向を向いていた・・・・・あ、向きを直せと、はい。
『オイラはドラぞう! みんながJGEにいる間はオイラが案内するドラ、よろしくね!』
「おお、地味なところに科学力が使われている」
『今日来てくれた優待チケットを持っている人数はなんと2541人だドラ! JGEに来てくれたみんなありがとうドラ! その中の1000人のプレイヤーには後でプレゼントがあるから受け取ってね!』
「今思ったんだけど、ペイン達も来ているってことよね?」
「あ、それもそうだね。ハーデスに続いてランキング上位だし」
「見つけ甲斐があるな」
何せこれから中に入る場所は東京ドームをドーナツ状に幾つも連結させたメガフロート。五万人は収容可能にする能力があり、優待チケットを持つ千人と二千人の一般人が闊歩しても問題の無い広さの敷地だ。これが他の一般人だったらゾッとする。
「ゲームで例えるなら俺達はクローズドベータのプレイヤーだな」
「あー、一般人は明日から公開されるだよね」
一時間待ちは当然だろう。先行してJGEを楽しめる俺たちは優待チケットを得れる環境に感謝と幸せ者だ。今日まで頑張った甲斐があると思わせてくれることがあると願いたい。
「展示場内をバスが通ってるのかこれ。とりあえずどこから行こうか? NWOのブースから行く?」
「うん、賛成」
「一緒にやっているゲームだもの。行かない理由がないわ」
「私達も行きます!」
イカルも当然行く模様だ。こうして彼女と一緒に居ると少々物足りなさを覚える。それは―――・・・・・。
「現実世界にオルトが出てきたら面白いな」
「エスクも一緒に歩けれたらとっても嬉しいです」
「うーん、流石にそれは難しいんじゃないかな。って、ハーデス君とイカルちゃん・・・私にそんな目と顔を向けないで、二人の楽しみを濁した私が悪かったから」
「イカルちゃん、そんな顔も出来てたのね。すっかりハーデスの影響を受けちゃってるわね」
将来が楽しみだよ。と、いうわけで優待チケット持ちの大半が向かっているNWOのブースに来てみたわけだが。
「AR凄いなオイ」
「え、ちょっと待ってあれって・・・・・」
「うわぁ・・・・・」
そう、NWOブースへと到着したバスを出迎えたのは巨大なメガフロート・サイトの天井まで届くような巨大な女の像。今尚記憶に新しいNWOに三体のみ存在するモンスターの一体、皇蛇リヴァイアサンと戦った剣と盾を持った水晶の戦乙女であった。尤も、単なるARかつあくまでも飾りとしての再現らしく、一人で動くはずがなかった。
「・・・・・これを見た途端、俺の中ですごーく嫌な予感が覚えたんだが」
「あはは、さすがに気のせいじゃないかな?」
「とりあえず前情報で見聞きしたNPC画集とやら、を・・・・・」
「あ」
瑠海の視線が物販コーナーへと向き、そこで固まる。瑠海の動作に気づいたイカルも同様に視線を動かして・・・・・そして瑠海が固まった理由に気づいたのか短く声をあげた。
話が変わるようで変わらないが、この手の画集を販売する場合・・・サンプルとして何枚かの絵を先に見せる、という手法がある。どうやらNWO画集でも同様のようで、ゲーム世界内の画家達の作品というのも間違いではなく、一枚一枚が明確に違う筆で描かれていることはわかる、のだが・・・・・。
「タイトルは『堕天の魔王』『皇蛇の乙女』『月と従魔と幼女』・・・・・」
えー、まぁ、はい、うん。一枚目はあれですね。
俺は見た事ないけど・・・・・激しく覚えがあるマイクを片手にスポットライトに照らされたステージの上に立つ六対十二枚の黒い翼を生やした女が描かれてますね。
うー、うん、あー、おう。二枚目はあれですね。
俺は見た事ないけど・・・・・、激しく覚えがある頭に珊瑚を生やし腰に尻尾を生やした女の絵ですね。
ははは、あーうん。三枚目はあれですね。
これも見た覚えがない・・・・・・・・・・、激しく覚えがある地面に引きずるほど長い幼女が色んなモンスターの従魔に囲まれている絵ですね。
「「「・・・・・」」」
サンプル画像から目をそらしたいのにできない。燕たちの視線がこっちに向いているし目が遭うとなんか妙な気まずい雰囲気になっちゃうもん。俺が上や下に顔を向けても現実は変わらない。
いや、だって俺じゃん! 一枚目はオーブ争奪戦イベントのやつだし、二枚目はリヴァイアサンレイドの時に取得したスキルだし、三枚目はギルドメンバーと夏祭りをした際にラプラスにしてやられた時の姿だし・・・・・
「こ、こんなことも、あるんですね・・・・・?」
「・・・・・いっそ笑え。俺はこの黒歴史を抱えて生きなければならなくなったんだ」
「き、気にしちゃダメよ。」
いやほら、サンプルはあと七枚くらいあるしこんな偶然もあるのかもしれないというか・・・・・うわぁ、「蒼夜天の襲撃者」ってタイトルのこの絵、凄く見覚えのある奴が描いてあるように見えるぞぉ・・・・・。
「燕ちゃん・・・・・」
「タニンノソラニ、ソラニデス」
他人の空似ですねはい。あーでもこの、「海割りて」と「聖女の祈り」とか普通にイラストとしてほしいなぁ・・・・・見覚えのある襲撃者についてはノーコメントで。
「・・・・・まぁ、画集ならこの値段も妥当か」
6000円・・・・・ちと高いが、買って損はない、購入!!
数枚の一万円札を渡す手になんの葛藤もない俺たち。お前ら、俺の買って記念品にする気だな?
さっそくジャパニーズ資本主義最強の切り札が一枚消えてしまったわけだが、元々出費は承知の上でこの日の為に束を二つ持って来てある。ふふ、大人買いを久々に楽しめるぜ。なのでもう一個の目玉である自キャラの肖像画ってのが気になる。なるほど、専用のマシンでログインして・・・・・へぇ、「背景」「ポーズ」「装備」諸々を設定して肖像画プロマイドにするってわけね。そんで、使えるのは自キャラが行ったことがある場所や遭遇したことのある敵、持ってるor持っていたことがある装備にテイマーとサモナーならテイムした従魔を・・・・・・面白い。
これをこうして、こうやって・・・・・こうすれば・・・・・ポーズはプリセットから・・・・・これか? これかな? いや、こっちの方がいいな・・・・・。
「出来た・・・・・力作だ」
背景はマイホームの日本家屋と桜の木。色んな所にのびのびと色んな従魔達が過ごしていたり従魔同士が遊んでいる構図だ。
「イカル見るがいい。俺の力作だ」
「うわぁー!! オルトちゃんや他の子達が楽しそうにしています!!」
判ってくれるか。これは俺の宝物にしよう。一回五百円だしもう一枚作ってもいいかな、後ろ並んでないし。次は最高額であるホログラムスタンド(一万円)を購入して力作だ。燕と瑠海も俺と同じことしてプロマイドを作ってるしな。