「そういや、冥界へ行くことができる場所を探していないな」
日本家屋の縁から畑を見てふと思い出した。冥界に行くことが可能なあの指輪と使おうとインベントリを開いた。使い方は俺が冥界に行くことを伝えたアカーシャから教えてもらった。
「えっと【ゲート】」
装着してスキルを発動すると目の前の空間が渦巻いてぽっかりと穴が開いた。この先に冥界に住んでいる魔王の城があるのかー。案内人としてアカーシャ、従者としてサイナだけ連れて穴に足を運んで潜るよう入ると別世界が俺達を出迎えてくれた。
赤紫色の空。朝なのか夜なのか判らない。空に浮かんでいるはずの太陽と月がないからだ。なのに明確に周囲の景色が見えるのは魔訶不思議だ。光源はどこに?
「アカーシャ。今は朝なのか? それとも夜か?」
「冥界にそんな概念はないわ。悪魔は眠りたい時は寝て、眠たくない間は起き続けるの」
「それで仕事が成り立つのか?」
「そんなの人間と変わりないでしょう? 起きている数が多いなら起きている者同士が仕事をしたり交流できるわ」
一理あるが、太陽も月もない世界は暮らし辛いな。体内時計だけが頼りになるぞこれは。
「ほら、魔王城に行くのでしょう? 案内してあげるわ」
冥界の景色に意識が向いていたので足を止めて、石造りの城壁の前に立っていた俺達は先に歩くアカーシャに続く。城門を警護していた悪魔達はアカーシャはもちろん、俺達を見て敬礼した。顔パスは楽でいいな、と思いつつ初めて俺は魔王が統治する国に入った。
朝と夜の概念がない冥界の国は大勢の悪魔達が賑やかな雰囲気を醸し出し街中を跋扈している。これが今起きている悪魔達なのか、数も多い。建物の傍で露店を開いて商売している悪魔や購入している悪魔がたくさんいる。
「賑やかだな」
「代々の魔王が統治しているもの。閑古鳥なんて鳴かせないわ」
「悪魔の寿命って基本的にどれぐらいだ?」
「確か・・・一万年だって聞いたことがある」
「マジか。じゃあこの国にいるのは古代からずっと生き続けている悪魔達か」
「平穏に暮らしていれば確かにそれぐらい生きている悪魔はいるわ。大体は下級悪魔がそう」
下級悪魔か。じゃあ、中級と上級、最上級の悪魔もいそうだな。
「魔王は、あそこに?」
「そうよ」
多分この国の中心部だろう。そこに聳え佇む崖の上に黒い巨城がある。あそこまで徒歩で行くのかと思えば乗り物を乗り換えていけば近くまで着くと言うが。
「この国の通貨持っているのか?」
「・・・・・」
提案した自分の落ち度に気づいた様子で小さく「持っていない」と呟いた。
「ま、魔王の娘だから無料に・・・・・」
「無賃はだめだろ・・・・・ん?」
「とうしたの?」
城を見ていたら蠢く黒い何が城から出てきた? まるで集団飛行してる鳥や蝙蝠みたいだ。
「報告:マスター、あれはヘルキャットの群れです」
「ヘルキャット? 魔王軍が孵化した魔獣か。よくわかったな」
「ていうか、こっちに来てない?」
ははは、何を言うんだ。そんなわけ・・・・・。
『『『『『にぁーっ!!』』』』』
おおおー!?
魔王side
「魔王様、ヘルキャット達が脱走し城下町に殺到しました!」
「た、たすか・・・・・い、いや町の状況は?」
「まだ沙汰かではありませんが、急いで捕獲のために衛兵たちを向かわせます」
「ヘルキャットの捕獲は簡単ではないよ。衛兵では弄ばれるだけだ。こう言う時こそ適材適所の彼女に任せる。ヘルキャットの産みの母親に要請するんだ」
「は、はっ!」
「報告ー! 町にヘルキャット達が一ヵ所に集まっております! 周囲への損害や被害は皆無と思われます!」
「なんだって? 理由は?」
「まだ未確認のことですが、ヘルキャット達は何かに群がっている様子でした。それもすごく興奮して」
「何かに興奮して群がっている? ・・・・・あ、もしかして」
「魔王様?」
「少し様子を見よう。もしかしたら落ち着くと思うから」
「は、はぁ・・・・・」
だぁー!? なんだこのヘルキャットの群れー!! どうして引っ付く、擦りついてくる、ゴロゴロと喉を鳴らす、甘えてくる、でもなんでこのタイミング!?
「フレイヤ召喚!」
『懐かしの故郷のにおギニャー!?』
あ、一瞬で猫の波に呑み込まれた。使えないやつだな。というかこれ、どうすればいい? 誰か教えてくれー!
『止めるニャー! お前達、散れ!』
その時、大叱咤の声が響いて俺達一同の身体を一瞬でも硬直させた。群れるヘルキャット達が蜘蛛の子のように四方八方へ散らばって俺から離れた。あ、アカーシャも群がられたのか。髪がボサボサになってら。
『すまニャイ。我が子等が迷惑をかけた』
「・・・・・」
語尾に猫語をつける相手はネコバスよりさらに大きい黒猫だった。いや、下手したら玄武並みでは?
「えっと、どちら様?」
『我輩はヘルキャットの長、ブニャック。以後お見知りおきを人間界の魔王殿』
「ヘルキャットの長だったのか。俺は死神・ハーデス。こっちは俺の征服人形のサイナだ。さっきのヘルキャット達は何だったんだ?」
ブニャックは申し訳なさそうに片足で頭に手を置いた。
『子供らはお主から発する濃厚な負の香りに気づいて興奮してしまったのニャース』
「負の匂い?」
『我輩等ヘルキャットは恐怖のエネルギーによって生まれ、恐怖のエネルギーに惹かれる。お主は人間界で数多の人間達から恐怖を抱かれている。故に人間達から向けられるその恐怖のオーラがお主の身体から濃く染み出ているのを我が子達は嗅ぎ取ったニャ』
・・・・・恐怖の大魔王に恥ずかしくない理由だったよくそがっ。
「ということは、お前も・・・・・?」
『ニャー、対象が違うニャ。我輩ほどのヘルキャットはもっと大きな生き物の恐怖のエネルギーを好むニャ。例えばベヒモスとか』
「え、あのベヒモス? 倒せるのか?」
『我輩のパンチにかかれば邪龍も軽く空まで吹っ飛ばせるニャー』
強いですね!? 冥界最強の魔獣、伊達じゃなかったか!!
『でも、そんな我輩でも悩みぐらいはあるニャン。我輩達が恐れられ過ぎて我が子の育児がままならないニャン』
「あー、その話は少しだけ聞いた。恐怖のエネルギーが必要なのに集まらずヘルキャットが生まれにくくて絶滅寸前だとか」
『その通りニャン! だから効率性を考えて魔王軍に加わったニャン。おかげでたくさんの我が子が生まれて万々歳ニャ! 我輩の決断は間違ってなかったニャン!』
うわーい、と両手をあげるブニャック。そのままこっちに振り落とさないでくれよ?
『魔王殿の娘と人間界の魔王殿のおかげニャン。我輩とても感謝感激ニャ。そこで人間界の魔王殿には折り入ってお願いがあるニャン』
「なんだ?」
『我が子は冥界ではなく人間界の方が生まれやすいようニャン。だからあれからまたたくさん産んだ我が子の卵を預けてほしいニャン』
『EXクエスト ヘルキャットの孵化』
・・・・・なんですと? あ、手が自然とOKしちゃった。その瞬間、肉球を掲げるブニャックの手から無数の光が。インベントリを確認する。
「・・・・・あのブニャックさん? 数が多すぎるのです」
『人間界の魔王殿ニャら楽勝ニャンよ。傍らに置くだけだお主から恐怖のオーラを卵が吸収するニャ』
「それなら冥界の魔王は?」
『ニャー・・・・・魔王殿は恐怖のオーラが薄すぎるから我が子が産まれにくいニャン。お主の方が格別に人間達を恐れさせる素質があるニャン』
そりゃ恐怖の大魔王ですからねー!!!
「孵化するまでどれぐらいだ?」
『順調に産まれるなら三日後ニャ』
「その後はどうすればいいんだ?」
『我が子を自由にしてほしい。冥界だけでなく人間界にも増やしたいニャ』
「それならいいが、ヘルキャットを仲間にしたい冒険者がいたら?」
『我が子を可愛がってくれるなら構わないニャ』
親がそう言うならそうしよう。だが、ふと思い付く。
「俺以外の人間が卵を渡して孵化させるとしたらどのぐらい掛かるものだ?」
『その人間が放つ恐怖のオーラ次第だニャ。どんな形でも同族を十人殺したら孵化するかも。それと人間がモンスターを倒した際に得られる強さの糧も吸収するニャン。でも、お主の方が最も早く生まれるからよろしく頼むニャン』
無言で頷き、ふと本題を思い出した。
「魔王城に行かなくちゃ」
『ニャ? 魔王殿に会いに行くなら乗せてあげるニャン』
「それはありがたい。二人とも。乗るぞ」
「ブニャックの背中に乗ることができるなんて・・・・・」
「催促:乗りましょう」
黒い大きな背中に飛んで乗り、ブニャックが翼を羽ばたかせて城まで連れていってくれた。おーあっという間に着いたな。
『では吾輩はこれで』
「ありがとうなー」
送ってもらったブニャックと別れ、アカーシャに招かれた魔王城の中は王座の間まで赤い絨毯が通路に敷かれ、剣士や重戦士の装備をした甲冑がたくさん立ち並んでいた。これは動くのかと訊けば防衛システムの一つで動くらしい。
「中身はゴーストだから光魔法以外の攻撃は効かないわ」
「えげつないな。装備が破壊されても問題ないのか」
「勇者を疲弊させるためだから。こっちよ」
どこに行っても甲冑の像が並んだ断っている。どれだけあるんだと数えて百体目のところで王座の間に続く扉の前で立ち止まった。それにしてもここに来るまで誰とも会わなかったな。そのことについて尋ねれば。
「城には最低限の人数しかいないわよ。何時だって勇者と魔王が戦うのはこの城の中だから、二人の戦いに巻き込まれるならいない方が安全でしょ?」
「それはそうだが、静かすぎて寂しい気もするな」
「この辺りだけよ。他の所に行けば衛兵ぐらいは多くいるもの。さ、入るわよ」
縦長の大きな扉に触れるアカーシャ。華奢な腕と手で一生懸命押して開けようとするから俺とサイナも一緒に押して開ける。中に入れる隙間ができると、体をねじ込んで王座の間に侵入した時。
「ようこそ人間界の魔王。冥界の魔王であるこの僕が皆を代表して歓迎するよ」
「・・・・・。・・・・・。・・・・・どうも」
・・・・・突っ込んでいいのか? アレを指摘したらダメなのか???
「告:冥界の魔王はイイ趣味をしているようですねマスター」
「・・・・・人が悩んでることを言っちゃったなサイナ」
「疑問:本当に目の前の人物は魔王なのか疑う以外あるのですか」
「・・・・・顔が顔だけに凄く似合っているんだよな」
ピンクと白の可愛らしいゴスロリと頭にカチューシャを付けてる魔王。俺でも可愛いと思ってしまうほど似合っているのだから魔王の妻=ルシファーの趣味は極まっている。もう魔王なんて止めて魔法少女になったらどうだ?
「聞こえてるよ?」
「いや、当然の疑問だから聞こえないように言ったわけじゃないし。大体魔王の椅子に座っているんだから男物の服ぐらい着たらどうだ。プライベート以外でもそんな感じなのか?」
「・・・・・妻に全部僕の服を捨てられて以来、彼女の趣味で造られた服しかないんだよ」
新しく買えば? もしくは依頼するとかと言いかけた言葉を喉から出ないよう留めた。そんなことしない魔王ではないだろう。それでもルシファーによって阻まれて女用の服を着せられているのだろう。
「魔王城にいるのに威厳の欠片もないなんて」
「・・・・・最近は先代の魔王に性転換の薬の作製の依頼をしたようで、僕に飲ませようとして来る始末なんだ」
「どっちが魔王ですかね?」
「僕もそう思ってきたところ・・・・・」
哀れ魔王。どんよりとした空気を背負う女装した彼(女)に同情を禁じ得ない。
「アカーシャが女として生まれてきてよかったな。男だったら目の前の父親と同じ末路を辿ってたぞ」
「複雑・・・・・」
母は強し。誰にも母親に逆らえない魔王一家の事情を垣間見た気がする。
「んっ! ヘルキャット達の件はすまないね。助かったよ」
「群がれていたのか?」
「いや全然。やっぱり僕より魔王の素質があるんだよ。僕の後輩は恐怖の大魔王って名前が広がるぐらいだしね」
全然嬉しくねー・・・・・。
「ヘルキャットの長に卵の孵化を頼まれたがな」
「そうなんだ。それなら成功した暁には長から感謝されると思うから頑張ってくれ」
他人事みたいに・・・いや魔王か。ああ、そうだった。
「魔王、冥界と人間界と繋げられないか? 俺以外の冒険者にも冥界に行きたがっていると思うから」
「その件か・・・人間界とそう簡単に繋げれないのさ。冥界と悪魔の敵、聖教和国の侵攻の糸口になり兼ねないから」
あー・・・・・そういうことなら無理な話だったか。だったらこの話はなかったことに・・・と思ったが、魔王の口が意外な事を言い出した。
「そうだね。丁度いい感じの試験を設けれそうだから、その試験をクリア出来たら冥界の名誉国民として冥界と人間界を行き来できるようにしてあげるよ」
「それは太っ腹だな。試験の内容は?」
と質問した俺に魔王はこう言った。それを聞いて思わず苦笑を浮かべた後にこんな提案を述べた。
「さぁ視聴者の皆さん。恒例の死神の宴の始まりだー! 暇人どもよ集まれェー!」
『ウェーイ!!』
『待ってたぜこの時をォー!!』
『今回も大爆発な予感がするぜ俺は・・・っ!』
『爆弾案件じゃなかったことあったか?』
『いや逆にそうでなければ汚い花火が打ち上がらないぞここは』
『さてさて今回はどんな情報が公開されるのですかねー』
「やー、相も変わらず出待ちしていた視聴者さんどうもありがとうな。早速公開するが聞く姿勢は整っているかな?」
『はよはよ』
『すでに全裸体勢で降ります』
『俺なんて眼帯と黒ひげで樽の中に入るぜ』
『何故に樽』
『あ、それは懐かしいな』
『知っているのか?』
『あとで教えるよ』
「そうだな。懐かしい玩具が出てきたところで発表しまーす。最初にこれ、なーんだ」
『???』
『黒い、卵?』
『モンスの卵?』
「大正解。ただこれ、通常のモンスターのじゃなくて冥界に住んでいるモンスターの卵だ。しかもヘルキャットの卵だ」
『あの美しいニャンちゃんの!?』
『うわ、図鑑に載ってないモンスターはレアすぎる。もしかして冥界と行き来出来るようになったとか?』
『まだじゃね? アナウンスを聞いてないぞ』
『ということは白銀さんだけ手に入れられるのかよ』
『なるほど、自慢話ですか』
「はいはい、まだ話の途中なのに決めつけないでくれよ。俺はこれだけとも言っていないぞ」
『ん? ってことは・・・・・』
『カメラの視点が変わって・・・・・んんん?』
『え、何あれ。黒い卵がたくさん・・・・・』
『まさか、まさかなの?』
『これ全部・・・?』
「イエス! 見えるこれら全部ヘルキャットの卵! 全部で一万個あるぞっ!!」
『はいぃいいいいいー!?』
『一万個のニャンちゃんの卵だと!?』
『マテマテ!! 嘘だろ? 』
『モンスの卵は普通、イベントでのメダル交換やオークション、従魔同士でしか手に入らない筈なのになんでそんなに持ってるの!?』
「絶滅危惧種のヘルキャットの長に預けられてな。俺なら三日で孵化することが出来るってことでEXクエストを受けたばかりによ」
『EXクエストなのか。その数を一人で孵化させるの大変だろ』
『そもそも、どうしてそんな話をするんだ?』
「冥界に行きたい人ー手を挙げて」
『はい』
『挙手』
『ばんざーい!』
『はーい!』
「そうだろ? そんなプレイヤーのために魔王に直談判したら条件を出してきた」
『魔王に直談判』
『恐れ知らずな』
『サスシロ!』
『サスシロ安定だけど、条件って?』
「俺の手伝いをしたプレイヤーには冥界の国に行き来することを許される【名誉国人】の称号が与えられるっぽい。称号なのかは不明だけど俺の手伝い、つまりはヘルキャットを皆の手で孵化してくれればお互いWin-Win」
『え、私達が孵化したらヘルキャットちゃんは?』
「卵をテイムするんだから皆の従魔になるだけだが?」
『ウソッ!? そのまま貰っていいの!?』
『しかも称号貰えて冥界にも行けるなら、こっちが特しかないじゃんか!』
『欲しいー!』
『白銀さんどこ、どこにいるの!?』
「予想通りの反応をありがとうな! だけど、何事もうまい話だけじゃないから!」
『ってことは俺達に何か大変な思いをすることになる?』
『金か? 金ならいくらでも払うぞ!』
『白銀さんは億万長者だから端金はいらないと思いま~す』
「説明するぞ! まずヘルキャットの卵は時間経過で孵化しない。必要なのは経験値だ。モンスターを倒した際に得られる経験値が卵に吸収されるらしいんだ」
『へー私達の経験値が必要なんだ?』
『それってどれくらいだ?』
『かなり必要だろ』
『そう言えば、白銀さんのヘルキャットは玄武を倒した直後に生まれたから・・・・・』
「かなーりの経験値が必要になるかな。でもって他にも方法があって・・・・・同族をどんな形でも十人倒せば孵化するかもと言ってた」
『それはつまりプレイヤー同士の戦いで十人倒せばいいってこと?』
『PVPを促すクエストだな』
『長々とモンスターを倒し続けるか、プレイヤー同士戦うか』
『PKもありならさらに大変だー』
「それを承知の上で欲しいなら卵をあげまーす。因みにその際は俺の従魔達から手渡して貰う予定だから」
『嬉しいさ倍増!』
『ゆぐゆぐちゃんと触れ合える機会!』
『クリスちゃんと握手できる場所はどこですか!』
『最近噂の天使ちゃんも会えますか!?』
「全員だ! この事は掲示板にも載せてくれよ。先着順から卵をあげるからなくなり次第終わりだから! 後から来ても渡せないから文句は言うなよ! それでも欲しいならヘルキャットの長と会えるよう頑張れ!」
『そのヘルキャットの長ってやっぱり猫なの?』
『というか、白銀さんはどこにいるんだ? 卵の方は建物の風景が見えたけど、今はなんか後ろが真っ暗なんだが』
『まだ冥界にいるんですかー?』
「いまマイホームにいるぞ。それと暗いのは・・・・・」
『・・・・・黒い物体?』
『大きいですねー』
『なんか、動いてないか?』
『黒いところにいたのか。でもその黒いのは?』
「この黒いの、ヘルキャットの長だ。おい、起きてくれ」
『は? このバカデカいのが猫なんて・・・・・』
『うわっ! 目が開いた!? いや目もデカいな!』
『待て待て、起き上がったその猫、山並みに大きいぞ!?』
『欠伸した口もデケーなオイ!?』
『うっそーん』
「はい、起きてくれたこの黒猫さんがヘルキャットの長で、なまえはブニャック」
『よろしくニャン。我が子を大事に可愛がって育てて欲しいニャン』
『喋ったァー!?』
『あ、はい。大事に育てて幸せにしますお義母さん』
『こんな猫がこの世に存在していたなんて・・・・・』
『まさかだと思うけど、ブニャックお義母さんをテイムしたのか?』
「ハハハ・・・ベヒモスをワンパンするほど強い魔獣だぞ? 出来ると思ってる?」
『アッハイ』
『トンデモ猫だった件について』
『最強のお猫様だったとは失礼しました』
『お供えは魚がいいですか?』
「ブニャック、お供えして貰うなら何がいい?」
『ニャ~・・・人間界の食べ物は食べたことがニャイ。人間達がくれるなら貰ってあげるだけニャ』
「だそうだ」
『よし、お猫様の初めては俺が貰う』
『ズルいぞ! 俺が先だ!』
『マタタビ入りのお水をあげよう!』
『あの巨体で酔わせてどうするんだよ!?』
『そこはほら、お触りがしほうだいで』
『絶対死に戻りする未来が待ち受けてるから止めておけ』
「まぁ、そう言うわけで明日から五日間。第11エリアに続く洞窟の前で一日先着順千人ずつ卵を朝9時~1時間、夜10時~1時間まで渡すから楽しみにしてくれ」
『よろしくニャー』
『はーい!』
『よし、先にスタンバイしてよう!』
『貰ったその後は適当なプレイヤーとタイマン勝負!』
『負けないぞー!』
「それと、絶対に混雑するだろうから順番待ちする時は列を作って喧嘩せずに並ぶように頼むよ。他のプレイヤーの邪魔にならないよう気を配ってくれ。俺一人じゃあ隅々まで把握できないから」
『お互い気を付ければ大丈夫でしょ』
『気を付けようとしても迷惑なやつは必ず出てくるからそうでもないだろ』
『列に割り込むやつとかいるよな』
『マナーのないやつも必ずな』
「うん。だからお願いするよ。それとその時、魔王ちゃんも手伝ってくれるから頼むよ」
『魔王ちゃん!』
『おおー噂の魔王ちゃんの手渡しもあるのか』
『是が非でも会いに行くぞ!』
『うわ、明日はイベント並みに盛り上がりそうだ』
「後そうだな。説得すればNPCの男の娘も手伝いをしてくれるかもな」
『ははは、NPCに男の娘がいるわけないでしょ』
『いや、だか白銀さんだぞ。何かしらの発見をするのが有名だ。最初にNPCのエルフを仲間にしているんだからさ』
『・・・・・あの、その男の娘は美少女で?』
「生まれた性別を間違えたんじゃないかってぐらい、可愛いぞ。当の本人は女の子の服しか着られない生活に嘆いてたが」
『どんな生活をすればそんなことに・・・・・?』
『うわ、興味津々だー』
『明日が楽しみだ!』
「それじゃ、死神の宴はここまで! 視聴者のプレイヤー達。明日はよろしくなー!」
『おおおー!!』
『あれ、第11エリアのどこに行けば?』
『それは明日見つけたプレイヤーが位置情報を教え合えばいいじゃん』
『そうだな』
『早速今から張り込みだ!』
『ブニャックお義母さんを生で会いたいなー?』
『わかる』