バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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その後

オリジナルの代わりに分身体の俺が続きをやることになって、インベントリに採取尽くしたその後。毒竜の洞窟へ戻るためにまた潜水しなければならないんだが、ベヒモスがいたこの洞窟を採取しながら調べてみれば、あの巨体が通れるような通路を発見した。その先へ進む道中はモンスターはおらず、外へ続く出入り口にまで足を運べた。ただ、螺旋を描いて上を目指す感じで一時間も歩いた。

 

「ここは・・・どこだ?」

 

洞穴から出れば果てしない森を一望できる山頂らしき場所。マップを開いて確認すると、秘境の未開拓地としか表示されない。これじゃ帰り道が分からんな。

 

「うーん・・・・・・取り敢えず動くか」

 

機械神を展開、オルトを抱えて空を飛翔する。行く当ても変える場所もないままずっと空を飛び続けていたら突然辺りが真っ暗になった。夜の時間帯になった?いや、これは・・・・・。

 

 

空を覆い尽くすほどの影と俺が重なっている!!?

 

 

首を動かして肉眼で確認すると・・・・・視界に飛び込んできた影の正体が襲い掛かってきた!緊急回避して距離を置くと影の正体の姿が拝められた。姿は超巨大な二対四枚の翼を持つ鳥。身体の羽の色は真っ黒で同じ空の下で飛ぶ者を狙う猛禽類の眼は確実にこっちを捉えている。

 

「げ、もしかして・・・・・ジズだったりする?」

 

危険な赤い色に染まる怪鳥が目を見張るほどの速度で空を駆け、こっちに突進してきた。オルトを抱えながら追いかけられる側として―――否、毒竜(ヒドラ)と【全武装展開】してフルパワーで攻撃を開始した。

 

・・・・・だが、巨大怪鳥を包んでいる赤い光によって魔法と実弾、物理攻撃が全て弾かれてノーダメージの結果を見せつけられた俺は、翼で打たれ地面に叩きつけられてく地面を滑るように吹っ飛ばされた。機械神が消失して元の鎧の状態になってしまった。HPも今ので残り一桁だ。

 

「くそったれっ・・・・・!」

 

ポーションで全回復をしても安心する間もなく、突然発生した巨大な竜巻の渦に閉じ込められて真上からジズが襲ってきた。地面を駆けて回避しようが現時点で俺より速度を超えた飛行でくる怪鳥は、赤いエフェクトを纏って真っ直ぐ降りてくる。あの状態は攻撃が無効化される。なら・・・・・!

 

盾を構えて防御態勢の俺とオルトに突っ込んでくるジズとの衝突するまでの時間はあっという間だった。鎧ごと盾を粉砕し、竜巻の壁に吹っ飛ばされてそのまま風の勢いに逆らえず、海のように流されるがまま巻き上がれられ空へと放り投げだされた。

 

「あれ、まだ生きてる?―――なら!」

 

地上からまだ生存している俺にジズが追いかけてきた。身体にあの魔法と物理を無効化する赤いエフェクトが纏っていない。もしやチャンス?手を突き出した。

 

「【エクスプロージョン】ッッ!!」

 

ベヒモスですら煙幕にしかならなかった魔法は、今じゃレベルⅩの爆裂を放って怪鳥を攻撃。初めて聞く怪鳥の悲鳴を聞きながら【機械神】を纏って出来るだけ早くこの場から離れ、身を隠せそうな岩の隙間に飛び込んで息を殺す。怪鳥の見失った俺を探す気配を感じた直後、木々を全て薙ぎ払う嵐が目の前で発生した。この辺り一帯の森林を全て薙ぎ払って吹き飛ばす気か!流石にこれは死んだかと悟った―――。

 

「こっちです!」

 

「は?」

 

「早く!」

 

―――この岩の隙間に俺以外の誰かがいた。暗くてわからないが声の主に従ってさらに奥へと進んだ。一拍遅れて激しい風が切る音と共に衝撃波が襲ってきたが、更に下へと続く洞窟の中まで攻撃は届かなかった。

 

「・・・・・あなた、あの怪鳥と戦っていたとは驚きましたよ」

 

暗くて足下すら見えない闇の中を歩るく。俺を呼んで助けた者の話に耳を傾けた。

 

「あの鳥は何なんだ?」

 

「遥か古代から存在している怪物です。私達、いえ、世界中の人類の天敵であり災害の象徴・・・・・名前はジズ」

 

やっぱジズだったか。

 

「ジズは風を操り支配します。なので空を領域とする彼の怪鳥は自分の領域に入った輩は絶対に許さず、殺すまで執拗に攻撃をしてくるのです」

 

「そうなのか。それは知らなかった」

 

「あなたは本当に幸運です。この洞窟の付近にいなければあのままジズになぶり殺されていたでしょう」

 

「この洞窟は? どこに繋がっている?あ、俺の名前は死神ハーデス」

 

「私はライグ、猫人(キャットピープル)族の戦士です。そして、これからあなた達を案内する場所は、かつて人間達を追われた精霊と共に暮らす獣人族の里です」

 

闇の向こうから光が見え、その光が差し込む出入り口に進むとそこは・・・・・始まりの町にある大樹ほどの大きさの樹木を囲むは、綺麗な湖。立派な石や木の家を作って生活を送っている他、吹く風に乗って聞こえてくる鉄を叩く鎚の音、クワを振るって農作業してる大勢のノームが伺える。湖にはウンディーネ、大樹の付近にシルフが飛んでいる。獣人族の里なのに精霊達がいるのは不思議だな。でも、その獣人族も見渡せばどこにでも見かける。色んな獣人がたくさんだ。里の中を案内してくれる彼に話しかける。

 

「本当に精霊がいるんだ」

 

「彼等は遥か昔からこの地で共に暮らす同胞です」

 

エルフの王族の話でも昔精霊は人間達の悪行に耐えかねて自分達の里に引っ込んだって聞いたんだがな。昔からこの里に暮らしているのは、外の事情を知らないのか?

 

そしてここまで案内して横に立つ戦士は、獣の特徴である耳と尻尾以外は人と変わりない姿をしていた。あんな一寸先も真っ暗だった洞窟の中を悠然と歩けて行けたのは猫の目だからなのか?

 

「なぁ、ノーム達は自分達の里に引き籠っているのは知っているのか?」

 

「知っていますよ。悪用しようとする人間達から守らんと古代の善き心の人間達が精霊達の為に戦ったことを。その中には私達獣人族も共に戦いました」

 

「それは知らなかった。・・・・・だとすればお前達獣人族も人間に警戒しているのか?」

 

「察しのいい人だ。その通りです。精霊達は自然を育む特別な存在ですからね」

 

「なら、少なくとも人間を警戒している筈だ。なのにどうして声を掛けた?」

 

「あのジズとの戦いの中で戦士として戦っていたあなたは、悪い人間ではないと思ったのです」

 

見られていたのか。よく巻き込まれずにいたその身体能力も獣特有なのだろうかね?洞窟の方へ振り返る。

 

「この里に繋がっている洞窟はここだけか?」

 

「いえ、他にも複数ありますよ。私達が歩いたこの洞窟は人間の町に近い方で、よく人間に変装して人間の町で金銭と物資を売買しています」

 

人間の町に近い・・・・・だと?

 

「その人間の町とはどの辺り?そもそもこの里はどの辺りにあるのか把握してる?」

 

「私達の里は毒竜(ヒドラ)というモンスターが巣食うダンジョンがある山の裏側に位置しております。人間の町とはあなた達人間で言う第2エリアの東からここまで1時間も掛かる場所だということは」

 

・・・・・ここまで来る際、ジズに吹っ飛ばされたから結構遠い場所まで来ていたのか。

 

「よかったらこの里で見学したり何か売買してください」

 

「具体的に何が売られているのか教えてくれる?」

 

「そうですね。道具や食材はもちろん、精霊達の結晶などもありますよ」

 

「属性の結晶!?精霊達の里でしか入手できないんじゃ・・・・・」

 

「昔からある物なのでどういった経緯で入手、売買されているのかは謎なので説明はできません。しかし、かなり貴重なものなので値段は高いです」

 

驚きの話だが、これはかなり貴重な情報なのは確かだ。

 

「因みに、俺以外の人間達もかなり大勢だろうとこの里に来ても問題は?」

 

「私達や精霊、この里に危害や迷惑を掛けないのであれば私達獣人族は歓迎しましょう」

 

受け入れは大丈夫か。マナーは当然だが、ヘパーイストスのような好感度に関わってるのではなさそうでよかったよ。と言うことで早速―――獣人族のNPCに話しかけよう。あわよくばもふもふさせてもらいたい!と野心を秘めて話しかけてみれば、納品クエストが多いことが分かった。木材が欲しい、食べ物が欲しい、届け物をしてほしい、手伝って欲しい等のクエストばかりだ。それを何十回も繰り返してこなしていくと、軽装備の鎧を着込んだ戦士の獣人族のNPC達がどこからともなく近づいてきた。一人は狼族、もう一人は犬族、最後の一人は虎族。

 

「物見遊山のつもりで来たよそ者だと思っていたが、どうやら違うようだな。お前のことは長に報告してある」

 

「長?」

 

「人間の来客は初めてだからな。しかしだ、精霊にまつわる言い伝えもある故に俺達は全ての人間に警戒心を抱いている。この里の精霊に手を出す輩であれば即刻立ち去ってもらうつもりだった。しかしお前はあの化け鳥に臆さず戦ったそうじゃねぇか」

 

ライグから話を聞いたのか。

 

「長はそんなお前と話がしたいと申された。ついてこい」

 

と、数人の戦士達からの接触で俺はこの里の長と対面をすることになってしまった。長がいる場所は大樹に絡みついている蔓の上を歩いたら、大樹の枝を支えにしたログハウスがあった。門番はおらず扉を開けて中に入り、二階に繋がっている階段を上ってすぐ目の前、真っ白な羊毛を蓄えてる羊が机の前で椅子に座って出迎えてくれた。

 

「長、件の者をお連れしました」

 

「ご苦労様、あとは休んでていいよ」

 

「「「はっ」」」

 

ここまで連れてきてくれた三人の戦士達は階段を降りていってログハウスを後にした。

 

「来てくれてありがとう。私はこの里の長を勤めているウールだ」

 

「初めまして、死神ハーデスだ」

 

温厚そうな性格をして微笑まし気に見てくる。

 

「ここに来る最中にジズと出会ってしまったようだね」

 

「戦っても現状勝ち目はないと判断して逃げようとしたけどな」

 

「あのモンスターは大陸を蹂躙するという覇獣ベヒモスと同格の強さを誇っているらしい。逃げ切れるだけでも奇跡的だ」

 

それでも何時までも逃げてばかりではいられない。何時か倒さないと駄目だと思うがな。

 

「その実力を買って君にお願いしたい事がある」

 

「お願い?」

 

「うむ、まず近い内にこの里は滅びる」

 

「え、滅びる・・・・・?」

 

いきなりシリアスな展開に・・・・・どうして滅びる?

 

「理由は?」

 

「覇獣ベヒモスが目覚めた。この里まで轟くベヒモスの咆哮や暴れ回る奴の足音が聞えて来たのだ。私達はベヒモスの襲撃に近々この里を捨て新たな新天地に移さなければならない」

 

ベヒモスが活動をするから?・・・・・えっと、タイムリーな話だよな。俺の目の前に青色のプレートが浮き出てくる。クエスト【獣人族の護衛】かEXクエスト【大陸の覇獣討伐】。・・・・・EXクエストの方にYESを押した。

 

「あーと、ベヒモスの心配はないかもしれないぞ」

 

「どうしてだい?」

 

「ここに来る前に偶然出会ってしまって・・・・・倒してしまったんだ」

 

その証拠にとベヒモスの素材一式を見せるとウールの顏が驚愕一色で染まり限界まで目を開いた。

 

「ベヒモスを倒した・・・・・君が・・・・・?」

 

「ん、ということで里は滅びないし新天地に行かなくても大丈夫だから安心してくれ」

 

「・・・・・」

 

押し黙ったウール。首を捻ってどうしたんだ? と思っていると。

 

「―――勇者よ! 今晩はベヒモスを倒した君のための宴をしたい!どうか宴に参加してくれ!」

 

ウールが涙を流しながら告げたと同時にEXクエストが終了したものの、報酬はない。代わりにまた別のクエストが発生した。

 

 

『獣人族の宴』

 

プレイヤーを百人以上獣人族の里の宴に参加させること

 

 

YESしてウールの誘いに応じ、問うた。

 

「俺の友達も呼んでいいか?」

 

「勿論だとも!今夜は無礼講、宴なのだからどんどん呼んで大いに楽しんでもらいたい!」

 

そう言って俺達を置いて外へ出て行ってしまった。百人か・・・・・まぁ、問題ないな。

 

 

 

ログハウスを後に大樹を背後にしてフレンドコールする。相手はタラリアのヘルメスだ。

 

「ヘルメス、ちょっと協力して欲しいんだけど」

 

『何かな?』

 

「獣人族の里の行き方を他のプレイヤーに教えて欲しいんだ。」

 

『獣人族の里!?また新しいエリアを見つけたっての!?』

 

「ああ。そこでベヒモスを討伐した俺のお祝いとして今夜、獣人族が宴を始めるんだ」

 

『へ、へぇ・・・そうなんだ。うん、いいわよ?』

 

「俺も動画配信で更に人数を集めるからお願いな」

 

ヘルメスに獣人族の里の場所と注意事項を教えた後は配信の準備をすると、カメラの役割になる光球がふわふわ浮かぶ。この光球が俺達を撮影して、皆さんにお届けする、らしい。淡い光の光球には小さい黒い点があって、これが向いている方向を撮影している、とのことだ。光球そのものは配信者である俺を自動追尾して、思考を軽く読み取って俺が撮りたいものを撮ってくれる。で、その光球の上には大きめの真っ黒の板みたいなものがある。ここに、誰かが書き込んだコメントが流れてくる、という形だ。一応設定で、視界にそのまま表示されるようなこともできるらしいけど、俺だけ見れても仕方ないからこの形式にした。題名は死神さんIN宴会が始まるよ全員集合!てなわけで配信開始。・・・・・お、もうコメントが来た。

 

 

【死神の宴会って何だ?って思って見に来たら白銀さんじゃん!】

 

「どーも、死神ハーデスだ。以後よろしく」

 

【白銀さん宴会するんですかー?】

 

「俺が、と言うより宴会するために百人以上のプレイヤーが必要なクエストが発生してさ。是非とも協力してほしくて」

 

【どこでするんですか?】

 

「今夜、獣人族の里で」

 

【 】

 

【 】

 

【 】

 

 

その後、無言投稿が大量に流れる。

 

 

【白銀さん!獣人族の里を見つけたってマジですか!?】

 

「ようやく無言投稿が終わったと思えば開口一番の質問はそれか。偶然見つけたけど本当だぞ」

 

【死神って誰のことかと思えば白銀さんの初配信だとはビックリしたよ!】

 

「・・・・・なぁ俺の名前って白銀って定着してねぇか?」

 

【いや、それはしょうがない。「白銀の先駆者」って称号を貰ったでしょ?名前も碌に知らないから髪の色と先の称号の名前が同じだから皆して白銀さんって呼んじゃうんだよ】

 

【それよりも獣人族の里はどこ!?まさか第3エリアの先だったり!?】

 

 

「いや、第2エリアだってさ。ここまで案内してくれた猫人族(キャットピープル)・・・知らない人に分かり易く言うと猫耳と尻尾を生やした人間の顏と身体の獣人族の青年から聞いたよ」

 

【意外とご近所だった!白銀さん、第2エリアのどの方向に行けば!?宴に参加するよー!】

 

【可愛い獣人ちゃんはいますか!?】

 

「ああ、いるぞ・・・・・お、丁度良くウサギの耳を生やした獣人族だ。こんにちはー」

 

【バニーちゃん、バニーちゃんじゃないかぁっ!】

 

【ば、ばるんばるん・・・・・っ!】

 

【笑顔も可愛いよぉっ・・・・・】

 

 

「おー、獣人族の子供達もいる。おーい子供達ー」

 

【キャアアアアア!!!カワイイー!!!】

 

【ああ、抱っこも出来るなんて羨ましい!第2エリアのどこなの!どこなのよ!?】

 

【早く私もそこに交ざりたいー!】

 

 

「で、場所はタラリアから情報を売ったから買ってくれ」

 

【わかった!】

 

【ようやく獣人族の里に行けるぞー!!】

 

【白銀さん情報提供ありがとー!】

 

「じゃあ、配信はこれで終わりに―――」

 

【終わりにしないで!?さっきからすんごく気になるのが映っているから!何で獣人族の里にノームやシルフちゃん、ウンディーネたんがいるんだ。白銀さんのモンスか?】

 

「違う。昔からこの里に暮らしているんだってさ。テイムは出来ないから来てもするなよ。獣人族達の好感度が一気に下がるっぽいからさ」

 

【えええ・・・・・でも、欲しいィ】

 

 

うーん、属性結晶がまだ流通されていないからか。ならば・・・・・更なる情報を明らかにしておくか。道具屋に訪れて視聴者達に見せつける。

 

 

「ああ、そうそうこの里のショップ・・・・・四つの属性結晶が売ってあるぞ。ほれ」

 

【ちょっ!?】

 

【待って!!!え、何で獣人族の里に結晶が売られてんの!?】

 

【場所をはよ!はよぅ場所を教えて白銀さん!】

 

 

他のコメントも獣人族の里の場所の特定の催促ばかりだ。その中―――。

 

 

【白銀さん、質問いいですかね。一時期、白銀さんやノームの頭に毛玉を載せていた件について】

 

「毛玉・・・・・ああ、ミーニィのことか」

 

【ミーニィ?モンス?】

 

「大樹の精霊降臨イベントを覚えてる?その時に精霊から卵を貰ったんだ。で、孵化したのがミーニィ」

 

【ああ、そうなんだ?どんなモンス?】

 

「ピクシードラゴン。まぁ、成長しても小っちゃいドラゴンだと認識してくれ」

 

【ドラゴンンンンッ!?え、ドラゴンって毛なんて生えてるの!?】

 

「空想上の怪物だから設定は何でもありなんじゃない?意義や疑問については運営に言ってくれよ」

 

【いやいや、ピクシードラゴンってβの時はいなかったぞ】

 

「正式版ではいるらしいぞ?ただ、どこにいるのか分からないし、かなりの運がないと一生遭遇すらできないってNPCから教えてもらえた」

 

【ミーニィは強い?】

 

「普通に強いかな。魔法スキルばかりだけど、小っちゃくてもドラゴンなんだなぁって改めて感嘆するぐらいは」

 

【獣人族の里はどこですか白銀さーん!!!】

 

「タラリアに情報を提供済みだ。でもって、ここに来るまで空から探すのは止めた方がいいぞ」

 

【その理由は?】

 

「ジズって巨大な怪鳥に襲われる。多分あれ、ベヒモス並みのレジェンドモンスターみたい」

 

【ベヒモスと同格のモンスター!?】

 

【第2エリアにそんなモンスターがいるなんて初めて知ったぞおい!】

 

【そのベヒモスを単独で倒した白銀さんでも倒せないぐらい強いってことはレイドモンスター?】

 

【でもおかしいだろ。レイドモンスターなら戦ったら勝つか負けるまで逃げられないんじゃ?】

 

「あ、そうなの?ダメージを与えられない感が凄い物理と魔法を完全に無効化するスキルを使ってくるんだよな」

 

【何それムリゲー。誰でも勝てないモンスターを出してどうするんだ運営】

 

【まだ先の事なんじゃないか?そのジズとレイド戦をするのは。因みにベヒモスはどうやって見つけたんだ白銀さん】

 

んー、これはまだ教えられないかな?

 

「それについてはタラリアに売る予定だ。―――毒耐性がないとプレイヤー全員死ぬ場所を攻略しないと行けないけどな。攻略できたとしてもベヒモスともう一度戦えるかもまだ謎だし」

 

【どんな場所に行ったんだよあんたは!?】

 

他のコメントも何故か呆れる文字が投稿されていく。

 

「更にはここスキルショップ。色んなのが売られてるぞ。でもこれ全部、上級職のスキルしかない」

 

【ちょっ!!?】

 

【上級職のスキルスクロールって!?】

 

【かなり凄い発見だよ白銀さん!!】

 

【さすシロ!】

 

何ださすシロって、意味が分からん。

 

「全部一つ30万G以上するけど皆の懐の具合はどう?」

 

【全部高すぎるー!!】

 

【でも欲しいのは確か。ちょっと資金集めを頑張るか】

 

【白銀さん、もうちょっとスキルスクロールを見せてください。主に剣士の】

 

「それを応じたら他のプレイヤーも便乗して探させるだろうからお断りさせてもらう。自分で見てくれ」

 

【ただいま第2エリアの空からの偵察をしてまーす・・・・・って、本当に巨大な鳥のモンスターがいきなり襲ってきやがったぁっ!?】

 

【あ、マジなんだ。人柱ご苦労、今地上からでもその様子が・・・・・え、何あの嵐、馬鹿デカすぎるだろぉっ!?】

 

【ぎゃああああ!!嵐に巻き込まれるぅっー!】

 

【ああ、嵐に巻き込まれる人ってこんな体験をしてきたんだなー】

 

【ジェットコースターなんて可愛いと思うぐらい激しすぎるッッッ!!!】

 

【HPが見る見るうちに減っていくし装備の耐久値がかなりヤバいことにー!?】

 

おー、阿鼻叫喚の嵐が巻き起こっているなー。だから言ったのに、空から探すのは止めておけって。

 

「何だか配信を見ている暇もなさそうなプレイヤーがいるので短い間だが配信は終わりにするわ。因みにこれから第2エリアに行こうとしているプレイヤーの皆、そっちはどういう状況?」

 

【巨大鳥のモンスターが空飛んでいたプレイヤーを蹂躙して、地上にいる他のプレイヤーの存在に気付くと嵐を起こして殺しにかかってきている。白銀さんが倒せない理由はこれだよな?】

 

「そうそれ、一定時間の無敵モードっぽいのもあるし戦うならまず、機動力も兼ねてる翼を奪わないと駄目だね」

 

【デスヨネー。あ、軒並みに哀れなプレイヤーの皆を倒したからか巨大鳥が去っていった】

 

【これから捜索の続きに入りまーす】

 

「おー、皆ガンバレー。それじゃ、初配信はここまでにするよ。皆頑張って獣人族の里まで辿り着いてくれ」

 

配信動画を止めて里に繋ぐ通路へと赴く。ジズと出くわした森に戻ってそのまま東方面に数十分も歩いていくと最初のプレイヤーと出会った。

 

「あ、白銀さん!」

 

「一番目だな。このまま真っ直ぐ進んで岩の隙間を探せば獣人族の里に行けるぞ」

 

「よっしゃー!」

 

意気揚々と走り出していくプレイヤーと別れては、また他のプレイヤーと出会い行く道を教える。

ところが、空を飛んで移動するのは止めろと教えられている筈なのに信じられず機械の町で購入した飛行アイテムを使って空からの移動するプレイヤーが多い。―――だから二対四枚の翼を持つレジェンドモンスターのジズの再来は当然のようにやってきた。

 

「自業自得だとして放置だな」

 

鷹の衣を纏って鷹の姿で低空飛行する。空の領域までじゃなければ襲ってこないだろう?地面スレスレなら問題はない筈だ。とまぁ、その予想は正しくジズに狙われることもなくそのまま機械の町までひとっ飛びできた。ここに来た理由はもちろんサイナ専用機を買うためだ。あの誰も手出しが出来ないでいる1000万Gのアイテムをな。無事に購入して始まりの町の俺の畑に戻る。

 

「ムー!」

 

「ヒムヒム!」

 

「フマー!」

 

「フム!」

 

「―――!」

 

「キュイキュイ!」

 

うちのモンス達が一気に押し寄せて来た。おおう、何事だ?引っ張ったり押したりどこかへ連れて行こうとするので不思議に思っているとサイナが来て教えてくれた。

 

「マスター、卵が孵化しそうです」

 

「そういうことか!どっちだ?」

 

「両方です」

 

「わかった!」

 

納屋へ顔を出すと、二つの孵卵器にセットしてある卵の2つにひびが入っていたのだ。それも一周しかけている。俺達は孵卵器を納屋の前に出して様子を見守ることにした矢先に、卵と孵卵器が青白い光を放つ。

 

「眩し!」

 

思わず目を覆ってしまう。それにしても、どんなモンスが生まれるのか? ハニービーとリトルベアの卵だからな。蜂か熊か。それとも全く違う何かなのか。

光が治まると、卵の殻と孵卵器は光の粒となってキラキラと輝きながら消滅していった。残されたのは、1匹のモンスターだ。

 

「熊、だな」

 

だが、目の前でこちらを見上げている円らな瞳の熊は、派手な黄色の体毛だ。黄色い熊と言っても、「ハチミツ食べたいなー」とか言いそうなメタボ熊ではなく、完璧にテディである。黄色いテディベア。それが卵から生まれたモンスターの姿であった。

 

大きさはオルトよりちょっと大きい程度かな。熊とはいえ、前衛を任せられそうには見えないが・・・・・。

 

『従魔術のレベルが上がりました』

 

『使役のレベルが上がりました』

 

へえ、卵を孵すと経験値が入るのか。まあ、ある意味テイマーとして一番大きな行動だしな~。でも、これで従魔術と使役はⅩⅠだ。それと、従魔術がⅩに上がると、モンスター・ヒールという、自分の従魔限定の回復術が使えるようになるのだ。サクラとオルトの壁がより硬くなる。ま、そんな機会は滅多にないだろうけど。おっと、今は目の前の黄色いテディベアのが重要だ。

 

「撫でてもいいか?」

 

「クマー」

 

そっと触れたその毛並みは、完全にヌイグルミだった。フカフカで、ミーニィとはまた違った気持ちよさがある。

 

「おおおお、新たなモフモフがっ!」

 

「クーマー」

 

すっげえ可愛いな。でも、戦闘ができるのか本当に不安になる外見だな。とりあえず鑑定をしてみよう。

 

 

名前:未定 種族:ハニーベア Lv1

 

契約者:死神ハーデス

 

HP:27/27 MP:18/18 

 

【STR 10】

 

【VIT 7】

 

【AGI 5】

 

【DEX 8】

 

【INT 4】

 

 

スキル:【愛嬌】【大食い】【嗅覚】【栽培】【爪撃】【登攀】【毒耐性】【芳香】【養蜂】

 

装備:なし

 

 

えーと、ハニーベア、ハニーベア・・・・・既出の魔物だった。トップテイマーが発見した最近の新種のモンスターか。前衛もこなせるステとスキルな上、生産も出来るなんて有能じゃん。俺と同じ【芳香】持ってるし。

 

「クマー?」

 

「お、何だ?」

 

「クマクマ」

 

「ムム」

 

「――!」

 

「キュイキュイ」

 

何やら従魔たちが訴えてくるな。特にクマは俺の手にそっと自分のヌイグルミハンドを添え、じっと見上げてくる。何かを訴えているようだ。

 

「うーん? どうした」

 

「クックマ!」

 

次は何やら怒っている? ああ、そうか。

 

「もしかして名前か?」

 

「クマ!」

 

「うーん。そうだなー」

 

どうするか。こんな可愛いヌイグルミが生まれるとは思ってなかったからな。

 

「―――よし、お前の名前はクママだ!」

 

「クマ!」

 

片方が終わったから今度はもう片方のモンスターの番だ。

 

「待たせたな」

 

「ヤー♪」

 

クママの隣に居たのは、小さな小さな女の子だった。いわゆる妖精的な外見である。ただ、羽はないが。フワフワのクセの付いた背中まである赤い髪と、エルフの様な長い耳。

 

着ているのは、体にフィットした青い半袖半ズボンの服(へそ出し)と、ポンチョの様な茶色いマントだ。アンデスとかの民族衣装風だ。

 

まるで動くフィギュアって感じだが、そのニパッと花が咲いたような笑顔は、人形にはありえない温かみを感じさせてくれる。

 

名付けをするようにアナウンスが聞こえたので、名前がない様だ。ユニーク個体の両親から生まれても、ユニークになるとは限らないらしい。掌を上にして差し出してみると、妖精はその掌にピョンと飛び乗る。近くで見てみると、やはり可愛い少女だ。

 

「名前を付けてやらないとな」

 

「ヤー♪」 

 

「羽はないけど、妖精みたいだしな・・・・・。可愛い名前で・・・・・。よし、お前の名前はファウだ」

 

「ヤー♪」

 

 

名前:ファウ 種族:ピクシー Lv1

 

契約者:死神ハーデス

 

HP:15/15 MP:25/25 

 

【STR 4】

 

【VIT 4】

 

【AGI 10】

 

【DEX 12】

 

【INT 9】

 

スキル:【演奏】【回復】【隠れ身】【歌唱】【聞き耳】【採取】【跳躍】【火耐性】【火魔召喚】【夜目】【錬金】

 

装備:妖精のリュート、妖精の衣

 

 

武器は持っていないが、楽器を装備している。しかもスキルは演奏に歌唱だ。もしかして吟遊詩人みたいな戦い方をするんだろうか? 吟遊詩人の歌は本人が戦闘に加われない代わりに、全体へのバフ、デバフを可能にする。非常に役立ってくれるだろう。

 

回復もあるし、小さいと侮ることはできないな。火魔召喚はどんな能力なんだ? 字面からすると、火に関係する使い魔みたいなのを呼び出す能力だとは思うが。

 

どんな能力か尋ねてみると、ファウが火魔召喚を使ってくれた。いわゆる鬼火的な火の玉がファウの前にポンと出現する。ファウが命令する通りに動く様だ。これは面白い。それにファウの演奏中でも攻撃できるってことだし、相性も良さそうだな。

 

あと、生産技能孵卵器のおかげで、錬金もある。何が嬉しいって、これで生産作業の助手が出来た事だ。いい従魔を引いたぞ!

 

「よろしくな、ファウ」

 

「ヤー♪」

 

「ムーム! ムーム!」

 

「クーマ! クーマ!」

 

「キュイーキュイ!キュイーキュイ!」

 

オルト達が、俺とファウの周りを奇妙な動きで回り始めた。祝いの舞と言ったところか。すると、ファウが俺の肩に腰かけ、ポロロンとリュートを爪弾き始めた。

賑やかな酒場か何かでかかっていそうな、軽快な音楽だ。その音に合わせてファウが歌い出した。会話は出来なくても、歌うことはできるようだ。良く通る声で「ランラ~♪」と歌い続けている。

オルトたちも楽しくなってきたのか、ピョンピョンと飛び跳ねる様な激しい踊りになって来た。サクラは体を揺らしながら手拍子だ。ただでさえ賑やかだったのに、さらに賑やかになりそうだな。まあ、嫌いじゃないけどね。

 

「遅れたがオルト、ほいジュースだ」

 

「ムム!」

 

オルトは満面の笑みで、オルトを見て、ふと思いついた。

ジュースはあげたけど、もう一杯あげられないのか? テイムモンスには1日1回食事をさせないといけないが、2回以上あげてはいけないとは書かれていなかったはずだ。何度も。それこそ1時間に1回とか食事をあげたら、ずっと倍速で仕事をし続けてくれるのだろうか?

 

「あげてみるか。オルト、ほれ」

 

「ム?」

 

「おう。飲んでいいぞ」

 

「ムム!」

 

俺がジュースを勧めると、オルトは嬉しそうにゴキュゴキュとジュースを飲み干した。やっぱり何度でも食事を与えられるみたいだな。これは大発見だ。

 

「クマ」

 

「キュイ」

 

「お前らそんな目で見るなよ。勿論忘れてないぞ。ほら、ちゃんとあるから」

 

「クマー!」

 

「キュイッキュイー!」

 

複数回、一日三食も与え続けるとなれば結構な量の食糧が必要となるな。

 

「ムムム~!」

 

「ん?どうしたオルト?」

 

なんというか、雄叫び? その場で拳を握りこんで声を上げ始めた。しかもその体が僅かに光っている。

 

今にも「〇〇〇〇の事かー!」って叫び出しそうだな。

 

「ムムー・・・・・ムッ!」

 

「おわ!何だ?」

 

オルトがいきなり右腕を天に向かってバッと突き出した。一層強い光が、右の手の平から発せられる。そして、光がそのままオルトの手の平に集まっていく。

 

「何か発射しそうなんだけど一体なんだ?」

 

直後、強い閃光がビカリと発せられる。その後、まるで光が結晶化したかのような、美しい宝石がオルトの手に握られていた。

 

「オルト、何だったんだいったい?」

 

「ム」

 

理解できない俺に、オルトが手に持っていた宝石を手渡してくれた。

 

「くれるのか?」

 

「ムー」

 

 

名称:従魔の心・オルト

 

レア度:1 品質:10

 

効果:従魔の心が結晶化した物。売却・譲渡不可

 

 

ほう。これは何だ? 聞いたことが無いアイテムなんだが。品質が10っていうのも凄いし。売却も譲渡も不可能という事は、自分で使うのかね。なんか意味深な名前だよな。

 

「うーん、レシピを確認してみようかな」

 

すると、錬金レシピの中に、従魔の心を使う物を発見した。

 

「素材は、従魔の心に宝石か」

 

従魔の心は譲渡不可。

 

「宝石・・・・・」

 

結晶は宝石ではなく、魔石というカテゴリーだった。普通の宝石じゃだめなのか?どこかで買うしかないか? 

それとも獣魔ギルドか。とりあえずギルドで話を聞いてみて、進展が無かったら掲示板を調べよう。

ということで、俺は獣魔ギルドへ向かった。今日もバーバラがニコニコと受付をしている。

 

「どうも」

 

「いらっしゃいませ。本日のご用件は?」

 

「これを見てもらいたいんですけど」

 

「まあ、従魔の心ではないですか」

 

やはりバーバラさんなら知っているらしい。

 

「これについて聞きたいけど、教えてもらえる?」

 

「そうですね。では、まずはこちらのクエストをお受けになられては?」

 

 

ピロン。

 

 

特殊クエスト

 

内容:従魔の心をバーバラに見せる

 

報酬:2000G、宝石をランダムで1

 

期限:なし

 

 

「こんなクエストがあったのか。勿論受けよう」

 

「はい。ではクエストを達成されましたので、こちらが報酬です」

 

もうすでにバーバラに渡してあるからな、即行で達成だ。

 

 

『報酬2000Gと、緑翡翠を入手しました』

 

 

名称:緑翡翠

 

レア度:4 品質:★5

 

効果:素材。観賞用。

 

 

レア度4か、かなり良い物貰ったぞ。これならオルトから貰った従魔の心のレシピに使うに相応しいだろう。

 

「それで、この従魔の心の使い道だけど」

 

「すいません。詳しくはお教えすることはできません。ですが、1つヒントを」

 

ヒント?

 

「獣魔ギルドのランクを7まで上げてみてください」

 

「・・・・・それだけ?」

 

「はい」

 

うーん。具体的なことは教えてもらえないか。だが、これだけハッキリとランクを上げろと言われたんだし、いっちょ頑張ってみますか。ランクを上げるにはクエストをこなさないといけない訳だが・・・・・。今すぐこなせる依頼はそう多くない。普通に考えたら、常設クエストをこなすのが一番いいんだろうな。

 

常設クエストというのは、貢献度が1しかもらえない代わりに、何回でも受けられるクエストの事だ。勿論、毎回貢献度が貰える。通常のクエストは、一度クリアすると消滅するか、次からは貢献度が貰えなくなるのだ。

 

テイマー用の常設クエストは、特定のモンスターをテイムして、ギルドに納品するという物だった。掲示板ではテイムモンスを売るこのクエストをやり過ぎたら、何かマイナスがあるのではないか? という疑問が語られていた。テイムモンスを蔑ろにする行為になるのでは? 自分のモンス達の好感度が下がらないのか? とか色々な意見があるようだ。

 

ただ、俺的には大丈夫なのではないかと思う。そもそも、他のジョブの常設クエストは、どう考えてもマイナスが無い物が多い。特定のアイテムの採集とか、そんな物ばかりだ。そんな中で、テイマーの常設クエストにだけ致命的なマイナス要素など入れたら、ゲームバランスが明らかに変だし。

 

また、テイマーの代名詞とも言えるテイムスキル。このスキルのレベルを上げるには当然このスキルを使いまくらなければいけない訳だが、その過程でテイムしたモンスが増えすぎてしまうというテイマーが多く居た。そうなると、いざちゃんとテイムしたいモンスが出現した時に、テイム枠が残っておらず、泣く泣く倒さなくてはならないなどという事態もあり得る。

 

言い方は悪いが、必要のない無駄なモンスターをギルドで売却するのは、テイマーの基本スタンスと言えた。売る度に自分のモンスターの好感度が下がっていたら、誰もテイムスキルのレベリングなんかできないだろう。

 

まあ、テイム不可能なボスなどにテイムを無駄撃ちするという方法もあるらしいが、普通はそんな真似できないからな。テイム枠が一杯の時なら絶対にテイムが失敗するので、MPの続く限りテイムを使い続けられるが、どうも入手できる熟練度が半減してしまうらしい。

 

「俺も未だにテイムスキルが低レベルなままだし。ここは常設クエストをこなしまくるか」

 

貢献度獲得にテイムスキルのレベリング。さらにはモンスを売って資金も稼げる一石三鳥のクエストだからな。問題はクエスト自体の報酬が少なめなくらいだろう。

 

「さて、今日の捕獲対象は・・・・・灰色リスか。よし、時間まで今日はランク上げだな」

 

 

その前にある物の調査だ。毎度おなじみの鍛冶屋の裏口から入り、炉の前で弟子と作業をしている大男に声を掛ける。

 

「ヘパーイストス、見てほしいんだが」

 

「なんだ、こっちは忙し―――」

 

「ベヒモスの―――」

 

「詳しく聞かせろ」

 

作業と鎚を放り出して俺を逃がさんと肩を掴んできた。今の動きはなんだ?ほら、弟子のヴェルフが気味悪がってる顔をしてるぞ。

 

「ベヒモスだと?あの怪物をどうした?」

 

「倒してベヒモスの胃の中にあった装備を手に入れたけど」

 

「素材は?」

 

「・・・・・」

 

 

『ベヒモスの豪皮』『ベヒモスの牙』『ベヒモスの爪』『ベヒモスの(たてがみ)』『ベヒモスの角』『ベヒモスの尾』

 

 

「ふぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「「気持ち悪い声を出すなよっ!気持ち悪い!!」」

 

―――数分後。

 

VITがメチャクチャ高い俺にたんこぶを作らせるなんて・・・・・。本当のことなのにヴェルフと揃って頭を殴られた。

 

「また俺の爺さんの話だがな。ベヒモスってのは一定の周期で目覚め地上のありとあらゆる生物を喰らい、王国を幾つも滅ぼす悪魔のような大怪物なんだ」

 

「周期ってどのぐらいだ?」

 

「三百年に一度だって話だ。実際本当かどうかわからないが、とにかくベヒモスは過去の冒険者でも討伐はできず何国も滅ぼしてからようやく眠りにつく」

 

豪皮の感触を確かめるように撫でるヘパーイストス。ものすっごく熱い眼差しを向けてだ。初恋の相手を見るような目つきだぜ?気色悪いにも程がある。

 

「同時にこの『大陸の覇獣』ベヒモスの出現に呼応するモンスターが二体いる。『海の皇蛇』リヴァイアサン、『空の鳥帝』ジズ。こいつらが人間界を荒らし回るもんで、世界各国に点在する冒険者ギルドは人類の悲願として『三大クエスト』を準備している」

 

「・・・・・」

 

「その内の一体をお前が倒すなんてな・・・・・」

 

「素材はやらんぞ」

 

真顔で言うとヘパーイストスの身体が硬直した。ベヒモスの素材に向けていた首をこっちに向きながら作り笑いで話しかけてくる。

 

「な、なぁ?物は相談だがこれで装備を作る気はないか?これならかなりいい装備が・・・・・」

 

「ない。今の話を聞いて残りの二体のモンスターを倒した装備で作って欲しい思いが湧いたところだ。それに」

 

「それに?」

 

「俺はこっちの方を教えてもらいたいんだよ」

 

ベヒモスの胃の中にあった複数の装備、腐食も溶けてもなく風化した状態のをインベントリから出して床に置く。それらを一目見て、怪訝な目つきで手に取って調べるヘパーイストスは唸るような声を発する。

 

「・・・・・こいつは・・・・・」

 

「喰われた人間の装備品だけど、それ以外何も残ってなかったのにそれだけがあったのが不思議でさ。何かわかる?」

 

「むぅ、ベヒモスに喰われて有機物無機物関係なく消化されて跡形もなく残っちゃいない筈だ。なのに原形を保ったまま300年以上もせずに残っているなんざ普通はあり得ないことだ。ならば、これらの装備は普通の素材じゃないもんで作られたに違いない」

 

それは?と質問するとヘパーイストスは指を2本立てた。

 

「オリハルコン。そしてヒヒイロカネ。長年ベヒモスの強力な胃酸に耐えたこの2つの金属が有力候補だ。どれも永久不変で折れることも壊れることも一切ないと聞く。お前が今装備しているもんもオリハルコンで作られたもんだからこそ、ベヒモスの胃の中にいても決して溶けることはなかっただろ?」

 

破壊成長のおかげでな。そういう意味で首肯する。

 

「アダマンタイトは?」

 

「あれは簡単に壊れない意味で永久不変だが、主に加工して使われるのは金庫や建造物だ。武器にも使われるが希少性ではないからな。まぁ、こんな都市や国から最も離れた町じゃあ絶対に手に入らない代物ではあるが」

 

「そうなのか。んじゃ、それらの装備は元の状態に戻せれる?」

 

また唸るヘパーイストス。

 

「復元するには相応の素材が必要だがその前に研磨する必要がある。だが、オリハルコンやヒヒイロカネを素材に創り出された武器を研磨するための道具はうちにはねぇ。そんなもんを手にするとは思っちゃいなかったんだからな」

 

研磨できる道具・・・・・あ、ベヒモスを倒した報酬にあったあれならどうだ?

 

「ヘパーイストス、これは?」

 

『???』

 

名前が???で詳しく表示されていない詳細が不明なアイテム。ずっしりとした重さと金属の輝き、光沢を発するそれはヘパーイストスの手に渡った。

 

「・・・・・何かの金属か?」

 

「それもベヒモスから手に入った。風化した装備と一緒だったことから何かの縁があると思うんだ」

 

品定め、謎の金属を触診するように触って職人の目で確かめるヘパーイストス。鍛冶師として長年経験を積んだ男の中で何か察したのか風化した装備とそれを持って工房内のテーブルに置きだした。ヴェルフと一緒に彼の傍に寄って見守った。

 

「・・・・・この感触、もしかすると」

 

謎の金属の上に載せた風化した装備に手を添えて―――擦り付けるように押し出した瞬間。眩い金色の火花が迸った。一瞬だが、まるで地上に星屑が散らばったような光量で思わず目を見開いた。俺達よりも至近距離にいたヘパーイストスはしばらく押し黙って謎の金属を見つめた。

 

「こいつは・・・・・砥石だ」

 

「「砥石!?」」

 

「ああ、間違いない。それも何でも研いでしまいそうなそんな気をさせる万能な砥石だ。どうしてベヒモスから手に入れたのか謎だが、こんな物質はこの世にそうそうあるもんじゃねぇ。・・・・・なぁ、坊主」

 

真剣な眼差しで俺を呼ぶ。直感的にヘパーイストスが言いたいことを分かり一つ頷く。

 

「それが砥石だって言うなら、譲るよ」

 

「ありがとう。恩に着るぜ坊主」

 

二ッと深い笑みを浮かべた後、早速風化した装備を研磨し始める。

 

「研磨が終わるまで時間が掛かる。お前のタイミングで顔を出してくれ」

 

「わかった。期待してるよヘパーイストス」

 

「おうよ!」

 

鍛冶屋を後に外へ出る。あんなアイテムがあるなら、残りの二体も倒して手に入れるのも悪くないな。

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