スキルを取得したことで解散する感じだったが、せっかく海人族の島にいるということで観光がてら歩き回ってみた。海に囲まれた島で販売している物は海産物や漁に使う道具、こんな物まであるのかと水槽まであった。
「おいハーデス。水槽なんて買うのかよ?」
「食材用に保管、もしくは魚を一時的に入れてスクショするために」
「なるほど。陸だけが全てではないということか。俺も買ってみよう」
「スクショコンテストってバラバラで動くことになりそうだな」
その時はその時だ。うーん、一番大きいサイズだとアロワナぐらい大きい魚しか入らなさそう。生産職に頼めばもっと大きいの作ってもらえるか?
「クジラを観覧できる巨大水槽が欲しい」
「「とんでもないことを言ってくれる」」
「だが、それがハーデスだよ二人共」
妙に納得されているが俺に対する印象は何なのか敢えて聞かないぞ。視界の端に入り込む水晶の戦乙女の巨大な銅像。あの辺りはリヴァイアサンと激闘を繰り広げた場所だったな。
「ところで三人はくまなくこの島を探索した?」
「うんや、していないぞ。島を一周したが特に珍しいもんも変わったもんも見つからなかった」
「何か気になる事でもあるのか?」
「うーん、俺の勘が山の方に何かありそうって」
「ハーデスの勘か・・・隠しエリアやダンジョンを見つけた実績があるから確認してみるのもいいだろう」
乗り気なペインの発言で俺達は巨大な銅像の方へ向かって歩き始めた。辿り着くまでの道のりは迷うことなく進み、途中で隠れるように構えてる売店に寄ると『水々肉』という肉のアイテムがあって全部買ってみた矢先。
「・・・・・お客さん、そこまで買ってくれるあんたに折り入って頼みがある」
「うん? なんだ?」
「前まで別の島で過ごしていた時期があって、島の者達には内緒で世話していた家族と会えないでいた。今こうして戻れたんだが、もうわしは遠くに歩くこともままならなくなってしまった。悪いが代わりに見て来てくれんか」
店主からの頼み。クエストは発生せず。善意の行動で初めて発生するものなのか。
「よしいいぞ」
「すまないねぇ」
NPCの教えてもらった場所へ俺達は島の反対側の、海に面した断崖絶壁に口が空いている洞穴の存在を知った。
「こんなところに洞穴があったのか。中も相当広いな」
「採掘と採取ポイントがあんぞハーデス」
そうみたいだな。後でやるとして今はこっちだ。
「なんか、この丸みが帯びた空洞・・・リヴァイアサンの大きさと同じじゃないか?」
「自然に出来た物ではないことは確かだね。こう、内側から出てきたような感じがする」
足場があるとはいえ海水が足首まで入っている。この先は海水で溜まっているなら水中戦になるかも。用心して進む俺達は足を止める理由が出来てしまった。すり鉢状の洞窟の底でどくろ巻く見覚えのあるモンスターがいた。眼下から見下ろした俺達は軽く驚いた。
「マジで?」
「いや、サイズ的には小さいから・・・子供か?」
「どうするハーデス」
「家族を見て来てほしいって言われているだけだから、これで頼みは成立したと思うけれど」
あの店主が島の住民に内緒で世話していた理由も納得だわ。
「取り敢えず報せに戻ろう。進展があればまたここに戻ることになると思う」
「そうするか。んじゃ、戻ろうぜ」
ドラグが先に来た道に戻ろうとして歩いた時、背負っていた武器が壁とぶつかった。
キィーン・・・・・。
「「「「・・・・・」」」」
静かに洞窟中に響く音の音色。思わず俺達は息をひそめ静かにして不注意で音を鳴らしたドラグを見た。
「・・・・・あーすまねぇ」
「・・・・・それは何の謝罪だ?」
「・・・・・起こしちまったようだ」
こっちを、正確には俺達の背後を見て言うドラグ以外後ろへ振り返ると、体を伸ばしてこっちを見る体が蛇で頭がドラゴンのモンスター・・・・・リヴァイアサンが睨んでおりました。
『ギュォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
あーですよねー?
「ドラグ、後で性転換の処刑だかんな!!」
「ちょ、それは止めろマジで!!」
「今回は責任を取れ。このリヴァイアサン、HPがないから死に戻りする羽目になる」
「頑張ってくれドラグ」
ちっくしょうー!? と叫ぶドラグの声を聞きながら大盾を構えたところでリヴァイアサンが口を開けて【海大砲】を放ってきた。散開して2・2・でリヴァイアサンの周りを走る。あ、こっちを向いた。
「【挑発】って、うわっ!?」
体が小さい分、動きが早いリヴァイアサンジュニア。凶悪な牙で噛み付きながら突っ込んできた速度に間一髪避けた。というか、よく体を伸ばせるな? 水がないの・・・・・に?
ドドドドドドドッ!!!
リヴァイアサンジュニアがいた地底から大量の水が間欠泉のごとく出てきて、その中に体を沈めた状態のリヴァイアサンジュニアの姿が改めて知った。しかも俺達が入ってきた通路からも海水が流れ込んできて水が溜まり増え続けているじゃないか、
って、じゃないっ。ウォーターカッターみたいな圧力をかけた水の斬撃を体を
くねらせながら360度全方位に放ちやがってきた! 身を屈んで何とか回避する俺とドレッド、ペインとドラグは下に落ちてかわしたか。すり鉢状態だけど、滑らかじゃなくて少し段差がある壁だから蟻地獄のような脱出不可能なことにはならない。
「おーい! どうするこれから!?」
「どうしようもないだろこれー!! 脱出不可能な戦闘を強いられているんだからぁー!?」
あ、こいつ。蛇みたいに地面を這ってペイン達に襲っていきやがった!? HPがない相手と戦っても・・・・・くそ、ドレッドはもうペイン達のところに駆けつけてるがダメージは入らないだろう。事実、ペインとドラグがスキルを使っているがリヴァイアサンの子供だけあって防御力も高いか平然としている。まぁ、HPがないからだろうがな。なら、同じこれはどうだ。
「【皇蛇】!」
『ッ!!!』
グルンッ!! とペイン達から鎌首をこっちに振り向けてきたリヴァイアサン。
「うぉっ、すごい勢いでこっちに反応した? したよな?」
「リヴァイアサンのスキルに反応したかもな」
ドレッドがそう言う。スキルに反応するモンスターって。いや、そういや【身捧ぐ慈愛】関連のクエストをしていたら悪魔モンスターも女神の力を反応してたな。となると・・・・・?
「とう!」
崖下に跳び降りて着水する俺にだけリヴァイアサンが、先程の荒々しさと打って変わって大人しく顔を寄せて来る。こいつの世話をしていた店主の方法は多分・・・・・。水々肉を取り出してみた。
「こいつを食えるかー?」
脂だか水だか判らない肉から滴り落ちる液体を落としながら見せびらかす。お、リヴァイアサンが鼻をひくつかせて匂いを嗅いでいる。ゆっくりと至近距離まで顔を近づけてくるリヴァイアサンは少しだけ口を開けて凶悪な牙を覗かせる。えと、俺まで食おうとしないよな? なんて心配をしていたがどうやら杞憂だった。そのまま口を開けた状態で停止し何かを待つ姿勢のリヴァイアサン。その様子を見て胸中で安堵し、肉を口の中に放り込むと咀嚼して呑み込むリヴァイアサンがまた口を開けて、もっと食べさせろと目で訴えるかのように俺を見つめる。・・・・・よしっ。
「たくさんあるから食べろよー」
取り敢えず全部出して口の中に放り込む。ゆっくり与える暇なんてないからな。
って、一口で全部食べやがった。
『ギュオオオオオオオオオッ!!』
あれ、満足した? リヴァイアサンジュニアが通路に突っ込んで行ってしまった・・・・・いや、これはっ。
「お前らー! 今のうちだー! 【超加速】!」
「そうだな。ペイン、ドラグを引っ張りながらだ」
「わかった。耐えてくれドラグ」
「え? は? あ、待―――!」
先に脱出を図る俺の後にドラグを引っ張りながら【超加速】で通路を駆ける二人。後ろから悲鳴が聞こえてどんな顔をしてるのか気になるが、外へ脱出した俺達は洞穴の横道に出て安全な場所まで走った。
ダダダダダダタッ・・・・・!!
「ふぅ・・・・・この辺りでいいかな?」
「そうだな。ドラグがへばっているから」
「・・・お、お前ら・・・・・もっと・・・・・」
「生き残ることが優先だドラグ」
とにかく何とかなったかな? 大海原に飛び出たリヴァイアサンジュニアはこれからどうなるのかわからないが。目の前の海面からリヴァイアサンが出てきてこれからどうなるのかもわからないがな。
「えーと・・・・・あたっ」
綺麗な青い頭部を俺にぶつけるように、擦り付けてくる。甘えてるのかさておき、この大きさで甘えられるのは大変だ。リヴァイアサンジュニアを撫でてやると離れて、今度は舌で顔を舐められた。その後、リヴァイアサンジュニアは大海原へと目指して移動する姿を俺達は見送った。
「で、何か手に入ったのか?」
「今回はなにもないぞ」
「どっちもか? 珍しいこともあるんだな」
「そうだね。純粋な頼みを全うしたのかもしれない。さっきの店主の所に戻ってみよう」
ペインの提案に賛成する。来た道に戻る形で真っ直ぐ水々肉を売っていた店へと訪れる。
「店主、いる? いたな」
「・・・・・お、おおっ!?」
「え」
何故か【皇蛇】スキルで性転換したままの俺を見て店主の全身が打ち震えた。
「子供の頃以来です、お懐かしゅう・・・・よもや、また相見えることになるとは・・・・・海の守り神様っ」
混乱するこっちのことなど気付かない店主は滂沱の涙を流し目の前で跪く。
「あなた様との交わした約束を最後まで守れず申し訳がないっ。お預かりしていた大切な子供を最後まで守り切れず長い間島を離れてしまった」
「・・・・・」
あー・・・・・大体察したぞこれ。レヴィアタンに乗っ取られる直前かそれ以前か定かではないが、自分の子供を店主に預けて安全な場所で育てさせたのかもな。チラっとペイン達に目を配れば無言で頷かれた。そのまま話を合わせていけと。難易度が高い・・・・・アドリブでいくしかないだろこれ。それっぽく言って話を進めるしかない。
「・・・・・いえ、あなたはしっかり約束を果たしてくれました。私の子供は元気に大海原へと旅立った姿を確と見る事ができました。あなたのおかげです。私の代わりに育ててくれて感謝いたします」
「守り神様・・・・・!!」
「あなたの頑張りに報いることができない私をどうか許してほしい。私はもうこうする事しかできない身となりました」
店主を優しく胸の中に抱擁する。
「死した私はこの世におりません。しかし最期だけあなたに感謝の言葉を送れないことだけが心残りだった。今私はこの冒険者の体を一時的な依り代として顕現している状態です。ですのであなたに感謝の言葉を送らせてください。―――ありがとうございます。あの時の心優しい人の子。死しても私はあなたを見守り続けています。どうか幸せで・・・・・」
「守り神様・・・・・っ!!」
スキルを解除して本当にリヴァイアサンの魂が俺から離れた風に・・・・・うん? 店主の後ろに透明な女性が・・・・・。
(ありがとうございます。私の代わりに人の子に感謝を・・・・・我が子を独り立ちさせてくれて・・・・・)
リヴァイアサン・・・・・?
(これで心残りが無くなりました・・・・・あなたに大いなる水神のご加護があらんことを祈ります)
透明な女性が天へ昇って姿が見えなくなった。
『スキル【水神の加護】を取得しました。これにより【皇蛇】が【海竜神】に進化しました』
【水神の加護】
VIT異存の三つの水球が破壊されるまで水属性の全ての効果が二倍になる。
【
一日に一度だけリヴァイアサンの力を意のままに扱うことが出来る。
MPを消費して水魔法を行使出来る。
・・・・・・おう、凄いのが手に入ってしまった感がある。また水々肉を大量に買い直すと店主と別れペイン達と少し離れたところで告げた。
「スキルが手に入った」
「よかったじゃないか。最後は思いもしないことになってたがな」
「幽霊が出てくるとは思わなかったぞ」
「あの女性はリヴァイアサンかな? ハーデスとそっくりだった」
そっくりかどうかはさておき、その通りだと教える。ペイン達にも見聞できていたようだな。
「ハーデス、どういったスキルなんだ?」
「うーんと・・・・・うん、それは秘密ってことで」
「そうか。まぁ、直ぐにわかるだろうからいいがな」
それはきっと正解だドラグ。その内に見せる機会がありそうだわ。
「んじゃ、寄り道しちゃったけど山の方へ行ってみるか」
「そういや、最初の目的はそれだったな。リヴァイアサンの存在で忘れてた」
ということでしゅっぱーつ!
再度山を目指し俺の勘であてもなく捜索した。上ったり下ったり、地面や木々など注意深く見て探しているとロッククライミングが出来そうな壁に辿り着いた。だがその壁には穴があった。
「気になる穴ではありませんか?」
「何とか入れそうな穴ではあるが・・・・・どうするよ?」
「中を覗いても真っ暗で何も見えやしねぇな」
「奥まで続いているのかもね。入ってみよう」
その意見には異論はなく、先ずは誰が最初に入るか決めるところだが。
「ドラグ、行ってこい」
「俺が最初かよ。【ⅤIT】が高いハーデスから行けよ」
「性別転換の罰を受けたいならそれでいいんだぞ?」
「あー・・・くそ! マジでやらされるぐらいならこっちのほうがまだマシだ!」
判断力と実行が速くて助かる。頭から穴の中に身体を突っ込んで潜るドラグを見守る俺達。身体の半分まで入ったところで動きが止まった。・・・・・うん?
「ドラグ? どうした?」
「・・・・・挟まった」
「挟まった? じゃあ、戻って来い」
「・・・・・動けね。引っ張ってくれねぇか」
頼んだ手前、何もせず突っ立っているだけなのは申し訳ないからドラグの両足を掴んで、思いっきり引っ張った―――。
「・・・あれ? んー!!!」
「ハーデス? 抜けないフリしてるのか?」
足腰に力を込めて踏ん張って引っ張っても抜ける気配が一切ない。何でだ? と思っている俺にドレットが訊いてきた。
「いや、本当に抜けない。ふざけているんじゃなくて本気で力を込めて引っ張っているんだが」
「俺も手伝うよ」
ペインも買って出てくれて、ドラグの片足を持って俺と同時に引っ張った。だけど、一緒に引っ張っても抜ける気配が微塵もない。
「・・・・・ハーデスの言う通り、ドラグが抜けないな」
「マジでか。じゃあこの岩壁を壊して抜いてみるか」
「ところがどっこい、破壊不能のオブジェクトなのでできません」
不壊のツルハシを用意して岩壁にぶつけても発掘が出来ない仕様になっている。
「じゃあ、装備を外せばいいんじゃね?」
「あ、その手があったか」
「・・・・・もうしてるがそれでも身体が挟まって抜けれねぇぞ」
と、ドラグからの返答に俺達は腕を組んで悩んだ。
「何かのイベントが起きる前兆かな」
「こんな間抜けな格好で起きるイベントって何だって話だがな」
「もう少し見守ってみよう。それでもダメなら運営に問い合わせしよう」
「マジかよおい・・・・・」
俺が催促したとはいえ、哀れな生贄となったドラグからげんなりとした表情を浮かべたのが脳裏に過った。
―――5分後。
運営に問い合わせたところ、バグではありませんのでプレイヤーのプレイに何らかの支障は生じません、と運営からの返答からしばらくした頃。
「お」
「どうした?」
「称号とスキルが手に入ったぞ」
5分も嵌った状態で称号とスキルが?
「そのスキルで出られるか? もしくは自力で?」
「ちょっと待て・・・自力は無理だな。―――【小型化】」
【小型化】? おー、ドラグの身体が子供サイズになって穴から出てきた。こっちに振り返ったドラグは・・・・・うん、身体が小さくて顔が大人のドラグだな。
「ドラグ、面白い姿になってんな」
「あ? 何が面白いのかよ」
「顔がそのまんまで身体が小さくなった感じになってるぞ。若返ったわけじゃなくてな」
マジかよ・・・・・と頭を垂らして落ち込むドラグ君。
「それで、称号は何て名前なんだ?」
「・・・・・【嵌る者】だよ」
「名前通りのまんまだな。【小型化】して何らかの影響とかある?」
「あー・・・・・【AGI】が+50に増えるが【STR】がその分逆に下がる。しかも解除しない限りはずっとこのままだ」
ドレッドが質問してドラグが教える光景を他所にペインが自ら穴に嵌りに行った。次はドレッドにして最後は俺だな。となるとプレイヤー用のスキル【大型化】か【巨大化】があるよなこれ? 【嵌る者】と【小型化】が並列して手に入るなら・・・・・身体を大きく求める振る舞いをすればいいのか? ということは・・・・・。
「おい、ハーデス。何をしているんだ?」
「スキルの検証!」
「・・・・・背伸びしてか?」
「単純な振る舞いや行動がスキル取得に繋がるかもしれないからな! ペインが【小型化】スキルを取るのと同時に試しても損はないだろう!」
背筋をピーンと伸ばして、両腕も上に伸ばしてそのままの姿勢を維持する俺。そんな俺に呆れの眼差しを向けるドレッドとドラグに気にせずペインが称号とスキルを取得するまで続けると。
『称号【大きさを望む者】を取得しました。スキル【大型化】を取得しました』
予想通り・・・・・!
【大型化】
使用する間はプレイヤーの身長が50cm伸びると共に【STR】が+50、【AGI】が-50になる。再使用時間は1日。
この説明を見て不敵な笑みを浮かべてしまうのは仕方がないだろう。
「ふっふっふ・・・・・手に入れたぞ、どっちも」
「「なん・・・だと・・・!?」」
「俺も称号とスキルとが手に入ったよ。ハーデス、なにが手に入ったのか教えてくれるか?」
「称号は【大きさを望む者】、スキルは【大型化】だ。効果はドラグの【小型化】の逆バージョンだよ。身長と【STR】が+50も増えるが【AGI】は-50も下がる。ってことで証明の為に―――【大型化】!」
取得したばかりのスキルをお披露目すると、身長が高くなった実感がした。
「なるほど。確かにハーデスの身長が伸びた。次は俺も試してみよう」
この瞬間、俺達は2つの称号と【大型化】と【小型化】のスキルを取得することになった。これ、イカル達にも教えておこっと。この島に来れるかわからないが、【大型化】はどこでもできるからすぐに取得できるからな。