バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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天界

 

落ちる階段に追われながら駆け上る俺達はそれからも体力の続く限り登った。視界の端に白いドラゴンと戦う銀色の狼の戦闘が映り込むが足を止めている暇はないし余裕もない。太陽に続く階段は途中で螺旋状になり、俺達の傍に通り過ぎる白いドラゴンとフェル。焦燥に駆られそうになりつつ階段を登ると俺達は別のエリアに切り替わるエリアに足を踏み込んだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・こ、ここってどこだ・・・・・」

 

「はぁ、はぁ、はぁ~・・・・・つ、疲れたぁ・・・・・」

 

このぐらいで疲れ果て・・・・・いや、日頃から運動していないからバテるのも早いだけ? とにかくこれ以上階段を登ることもなさそうだ。フェルがどうなったのかわからないが。

 

『プレイヤーが「天界」エリアに辿り着き解放しました』

 

アナウンスを聞いた俺達は首を傾げた。

 

「天界だってさ」

 

「え、天って・・・ええええ???」

 

「マジで神がいるのか?」

 

気持ちはわかる。何せ俺達は弾力ある雲海の上に立っているが人? が住んでいる町は見当たらないからな。

 

「さっき解放されたってアナウンスが聞こえたんだが、どうやって地上に戻れるんだ?」

 

「落ちるしかないんじゃないか? それか天界の原住民の協力を求めるかだ。俺、魔王だからできなさそうだなぁ・・・・・」

 

「と、取り敢えず休んでから行こう。ここでログアウトしても大丈夫だと思う?」

 

「問題はないだろ。ただ、モンスターがいる考慮をすればログアウトは安全な場所でしたほうがいい」

 

歩くよりもミーニィの背中に乗って探した方がいいしな。というわけでミーニィを召喚して【巨大化】のスキルで身体を大きくしてもらったその背中に乗る俺達。

 

「なぁ、最初からこのモンスターで行ったらよかったんじゃ?」

 

「途中で疲れて落ちるぞ」

 

「やっぱりか。で、どうして真っ白な装備に天使の姿になっているんだ?」

 

「原住民への第一印象をよくするためだ!」

 

「魔王の印象を無くしたいなら倒されればいいのに」

 

「アホ言え! そんなことしたら俺の所有しているもんが殆ど失うじゃんか! そしたら俺はもうこのゲームを引退するぞ、もうやってられっか! 的にな。しかもお前、従魔まで譲渡される形で俺から奪った後のことを考えろよ」

 

最後は忠告とばかりに重戦士にそう告げる。何のことだとばかり訳が分からなさそうに俺を見るので溜息を吐いた。

 

「俺から奪ったお前は、俺の従魔のファンを全員敵に回すことになり兼ねないぞ」

 

「「あ」」

 

「俺を倒すのがイベントだからしょうがないとしても、白銀さんの従魔を奪ったって印象を抱かれてもおかしくない状況だぞ」

 

「いやでも、正式な報酬だしそれは・・・・・」

 

「それで従魔のファンプレイヤーがニッコリ笑顔で納得してくれると思っているなら、現実を甘く見ない方がいいぞ。掲示板を見てみろ」

 

二人はその通りに掲示板を見て、従魔ファンのスレの会話内容を見て・・・・・青褪めた。

 

「ヤ、ヤバい・・・・・処される、これ、本気だ・・・・・」

 

「白銀さんを捕まえたところを見た? は? 従魔を奪ったプレイヤーの暁には晒してでもこのゲームから追放してやるって、白銀さんを狙うプレイヤーも全員晒すって・・・・・」

 

「な、そこまでするのかってぐらい本気なんだよそいつ等。さすがの俺もドン引きするわ。レベルのリセットを守るために俺を倒す代わりが、ファンからの壮絶な粘着執着行為をその身で受けることだ。ストーカー行為も喜んですると思うぞ。たかがゲームなのにでもだ」

 

そんな光景を繰り返すプレイヤー達を想像すると、うん、顔が引き攣るな。

 

「「すみませんでした」」

 

そして俺を狙った二人はミーニィの背中で土下座をして謝り出した。よし、説得成功だ。

 

謝罪を受け取ってからそれなりに時間が経った頃、雲海に聳え立つ山のような形をした雲に町が建っていた。ようやくNPCに会えると踏んだ矢先に俺達の目の前に閃光が飛んできて大盾で防いだ瞬間に爆ぜた。

 

「うおっ、なんだ!?」

 

「大丈夫か白銀さん」

 

「爆発の耐性は備わっているから問題ない。さて、ようやくお見えか」

 

空から降りて来る純白の翼を持つ白い衣を着たイケメンの男。その手には淡い光を纏った弓が握られている。

 

「私の矢をここまで掻い潜った且つ天界に踏み込んだ下人は初めてだ」

 

「あそこまで攻撃されちゃあ、どんな相手なのか気になるだろう。鳥みたいに簡単に射止められるほど甘くはないぞ」

 

「それは失敬。煩わしく飛ぶコバエでなく鳥のつもりでいたとは」

 

「そのコバエすら満足に撃ち落とせなかったな。手抜きにしては下手くそじゃないのか?」

 

「足掻く様を見てみたかったのだよ。中々楽しませてもらった代わりに今度は・・・・・む?」

 

こいつの性格がよーくわかったところで男は怪訝に目を細めた。

 

「・・・なんだそれは、とても信じられん。下人ごときが各主神の祝福を受けているだと?」

 

称号のことか。プレイヤーの称号を見抜くことができるNPCなんだな。

 

「ちっ、土足で天界に来れるだけの器の下人か。神獣と精霊とも深いかかわりを持っているのも気に食わん」

 

「言いたいことは何となくわかるが、ここ天界まで来れた実力も認めて欲しいもんだよ」

 

「ふん。だったら私と戦って―――」

 

「くぉらああああああああああああああああああああああああアーポローンッ!!」

 

野太くバカでかい怒声と共に雷が目の前の男を丸太のような太い腕でラリアットをかました。突然のことで俺達は硬直、ポカンと口を開けてしまった。

 

「こんのアホンダラ!! 地上にあれだけの矢を放ってからに!! 何やらかしてんだ!!」

 

「・・・・・」

 

「おい聞いてんのか!!」

 

今の一撃で白目剥いて口から白い塊が抜け出そうになっている男に怒鳴るのは、身長が5メートルもある巨大な人間。白髪と白い髭を蓄える筋骨隆々の老人とは思えない生気を感じさせる。

 

「・・・・・あの、そいつ、気絶してる」

 

「あん? なんだこの程度で気絶とかするのかこのモヤシめ。鍛え方がなっとらんな―――おん?」

 

今俺達に気付いたとばかりな反応をされた。こっちを始めて向いた老人は物珍しいものを見る目で見た後、不敵に笑みを浮かべた。

 

「ほほう、下人の者共か? よく天界まで来られたものだな! 今まで一人たりともこの天界に来なかったというのに!」

 

「ちょっとばかり神話に触れたから」

 

「なるほどなるほど・・・だがそれだけではないな。主神達の祝福を享け賜わっておるではないか。これまた珍しい」

 

アーポローンと呼んだ男を雲の上の町の方へ軽々とゴミのようにポーンと扱って投げ捨てた老人。

 

「天界へようこそ下人達よ。ここは神々が住まう下人達からすれば神聖な世界へ」

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

天界、神々が住んでいる下人・・・地上の人間、下界、人間界といくつも呼称がある俺達が活動していた世界と隔絶していた世界に運よく辿り着けたらしい。飛行能力があっても天界に辿り着くことは一部を除いて不可能らしい。その一部が太陽にまで伸びていた階段のことだ。あれは神々が人間界に降りるための階段で、広い世界の中で一つしかないらしい。しかもランダムで消えたり出現するだとか。

 

「がっはっはっはっ! そうかお前、人間界の魔王か! 魔王が天界に来るなど天界始まって以来の珍事だな!」

 

豪快に笑う老人に、名前はゼーウスについていく。雲の町中に入ることができた俺達は珍獣を見る目つきなNPC達の視線を一身に浴びる羽目になっている。

 

「ここまで来たんだ。地上に戻る前にゆっくりするがいい」

 

と言うお誘いを受けて町中に入らせてもらったが、聞けば天界にもモンスターの類の生物がいるほか、家畜の生物も存在しているとか。

 

「アポーロンがすまなかったな。天界は娯楽が少ないから地上から飛んで来る生物を射抜いて退屈を凌いでいたのだ」

 

「俺達を退屈しのぎで・・・・・?」

 

「とんでもねぇ・・・・・」

 

「じゃあ、そういう自分は何をして退屈を凌いでいる?」

 

「そりゃあお前、天界には別嬪の女神がいるのだぞ。わしのごんぶとの槍で毎朝毎夜貫いておるわ」

 

とんでもない下ネタが返され、この場に女性メンバーがいなかったのが幸いだった。

 

「神々は天界に降りることは?」

 

「ないな。一度下りたら最後、神の力を封印され下人と同程度の力しかなくなる。そういう世界を主神達が作ったのだ」

 

「不便・・・いや、天界で生きるのが飽きているなら不完全で不条理な世界を楽しむのも悪くないと思うんだがな。刺激で満ち溢れているぞ?」

 

「刺激・・・・・それは楽しいものなのか?」

 

さて、それは断言できないな。どう感じるのか本人次第だ。

 

「俺達も異方から来た身だ。個人的な感想を言わせてもらえば・・・楽しいぞ?」

 

「そうか、楽しいのか。主神達が創造した世界・・・・・この目で確と直で見てはおらんな」

 

「そうだったのか? じゃあ、いつか直接降りて見てみるといいぞ」

 

なお俺達は露店で売られている物を冷やかし&物色している。天界でしか育たない植物や作物は大変興味がございます。

 

「天界ではお金は?」

 

「G〈ゴット〉だ。地上から来たお前達は天界の金など無一文だろう。地上で得た物資を今持っておるならば買い取ってやるぞ」

 

「え、本当に?」

 

「インベントリに何があったっけな・・・・・」

 

軽戦士と重戦士が所持品を確認するように俺も手持ちのアイテムを見直す。

 

「うーん・・・・・宝石肉でもいい?」

 

「食材でも構わんぞ」

 

と言う承諾を得たので取り出した宝石肉の大きさにゼーウスは感嘆の息を漏らした。

 

「天界でもこの大きさの肉は見たことがないな。作ってもらえばさぞかし美味な肉料理となるだろう。100万Gで買い取ってやる」

 

「お、ありがとう!」

 

手に入った金で早速作物を売っている露天に足を運んだ。そこで店を構えているNPCが声を掛けてきた。

 

「いらっしゃい下人さん。天界でしか手に入らないものがたくさんあるよー」

 

「地上でも育てることができる?」

 

「うーん、それは実際に植えて育ててみないと私も分からないな。育てることが可能でも品質が下がるかもしれないしね」

 

「なるほど。でもせっかく来れたから記念に全種類を買いたい」

 

「毎度あり! じゃあ、ちょっとばかり色を付けるよ。あ、なんだったら地上の作物を持ってるならそれと交換でもいいよ」

 

物々交換が可能とは。うーん、作物か・・・・・逆に何があるのか調べないと交換はできないぞ。

 

「普通に買取でお願いする。天界の作物を全部知った上で交換がしたいから」

 

「慎重派だね。でも何でもいいからねー」

 

「被ってもいいのか?」

 

「たくさんは困るけど一個二個程度なら被ってもいいよ」

 

「そうか。じゃあこれで」

 

虹色の実と交換をお願いしてみるとNPCが驚きの声をあげた。

 

「おや、神獣達の為に用意させた虹色の実じゃないか」

 

「え、天界にもある?」

 

「元々は天界に群生していた植物だからね」

 

いいことを聞いた。地上でも育てることができるならたくさん買い占めたいところだが天界にもホームオブジェクトはあるかな? ゼウスに聞いたら。

 

「あるぞ。見に行くか」

 

「是非とも」

 

軽戦士と重戦士の二人もその後、武器屋を見てみたいと申した。ゼーウスの案内で目的の店に入ると、語彙力が失うほどすごいものばかりだった。

 

「なんだ、これ? 店主、これはなんだ?」

 

「そいつは『天の恵み』と言ってな。定期的にこの雲に水を吸わせりゃ自動的に降る雨が作物に水を与えるのさ。その水で育った作物はより美味しくなるぜ」

 

「この雲だらけは?」

 

「天界じゃ雲でしか育たない物もあるからな。雲畑と言うんだ」

 

「じゃあ、これは?」

 

「雲の道だ。足場がもふもふするだけじゃなく、量次第ではどんな形にも変えられる」

 

くっ・・・・・どれもこれも欲しいオブジェクトばかりじゃないか! 他にもここでしか手に入らない物がたくさんあって100万だけじゃ足りないっ。

 

「ゼーウス、お金が足りない。稼ぐ方法はないのか?」

 

「無いことにはないが下人に仕事を与える物好きな神はそうおらんぞ」

 

「それ以外では?」

 

「そうだなぁ・・・天界は娯楽が少ない。神でも予想できん娯楽が出来れば稼げるかもしれんぞ」

 

神でも予想外な娯楽か・・・・・。・・・・・ダメだ用意しようにも天界までの移動方法が確立できない以上どうすることもできないぞこれ。

 

「地上と天界が行き来できる環境だったらなぁ」

 

「それはさすがに無理だな。神々が住まう世界にお前達が来ただけでも奇跡的なのだ。今回は特別に案内しているが、本来は許されないのだぞ?」

 

「あー、そうなのか・・・・・じゃあ、さっきの肉をもっと買い取ってくれたりできる?」

 

「まだあるのか。それならこちらの言い値で買い取らせてもらうがよいか」

 

「ここにある商品を複数揃えて買える値段でも構わない!」

 

とゼウスと交渉した末に俺が望むだけの個数のホームオブジェクトを買い込めた。その後は予定通り武器屋に訪れると天界の神匠が作った品々はどれも凄かった。神の剣、神の盾や鎧など・・・・・待ってくれ、なんだ、この装備。軽戦士と重戦士もこの異様過ぎる装備を見て一緒に言葉を失ってた。

 

「ほう、それに目を付けるとは」

 

店主、この店を経営している神だがトンデモ装備を遠い目で見上げた。

 

「これはいったい、そもそも、なんでまたこんなものを作ろうと思った?」

 

「・・・・・若気の至りで作ったのが間違いだった。あの時の俺はどうかしていたんだ」

 

「・・・・・もしかして、他にも若気の至りで作ったものが?」

 

「あるにはある。俺の恥ずかしい作品がな」

 

なんだか興味が湧いたから見させてもらうと、うん、色々と突っ込みたい物が多くあった。

 

「なにこの、巨大な猫じゃらし・・・・・え、連続ダメージ?」

 

「まって、釘バットなんてネタ武作れるのか!?」

 

「血染めの巨大鋏・・・・・ウッ!」

 

「この武器、装備した1秒後に自壊って、なのにこの攻撃力・・・・・」

 

「なんで箒とデッキブラシにモップまで武器になってんだ!!」

 

「頭装備にバケツまであんぞ」

 

もう口に出さずにはいられない武器と防具がたくさん眠っていた。うーん、神匠なのに無駄な技術力を・・・・・。

 

「あのー、これって購入できる? 地上で使ってみたい」

 

「使う気なのか。正気か?」

 

特に多段ヒットする猫じゃらしを揺らしは、面白いの一言。彼は苦悩の表情でこう答えた。

 

「失敗作もいいところの作品を使いたい物好きが下人にいるとは」

 

「失敗作だろうと作られた瞬間、武器にも存在意義があるんだよ。これを見て下人の鍛治師達はビックリしながらも凝り固まっていた偏見や常識を見直す一躍にも買ってくれるよ」

 

「・・・・・失敗作でも、か」

 

そんな発想はしたことがないように店主は目を丸くしては、小さく笑みを浮かべた。

 

「面白い下人だ。神匠の俺に失敗作を諭す下人と出会えるなんて思いもしなかった。改めて自己紹介をさせてくれ。俺はファイタンだ」

 

「死神・ハーデスだ」

 

握手を交わしあったその時。神と友好を交わした称号が貰えた。

 

「そこまで物好きに使ってみたいなら、失敗作だから金はいらない。好きなだけ持っていけ。失敗作だが、性能だけは確かだ」

 

「わかったありがとう!」

 

ヤッホーイ! 失敗作の神の作品ゲットだぜ!

 

 

 

「会話で武器をタダで手に入れたぞあの人」

 

「コミュニケーションの怪物なのか」

 

「おーい、お前達も貰っていいってさ。失敗作限定だけど欲しい物があるならいまのうちだぞー」

 

「「え、俺達も? あざーす!!」」

 

 

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