イズside
スクショコンテストとアイテムコンテストのイベントはハーデスが不在のまま終わってしまった。三つの部門で選出される最初に公開されたモンスター部門では、1位だったのはハーデスの従魔が集合して和気藹々な光景、2位は空飛ぶ巨大なクジラとリヴァイアサンが戦っている写真、3位は神獣だらけのスクショ・・・・・全部ハーデスが関わっている物ばかりで何だか納得しちゃった。
ギルド専用のスクショ部門のコンテストは、ハーデスが強制的脱退させられたために本命が欠けた状態ではパンチ力がない結果となり入賞すら入らなかった。テイマーのプレイヤーが揃って「運営! 余計なことをするな!」って怒鳴っていたのが凄く印象的だった。でもほんと頑張ったのに残念な結果だわ。
個人部門では何故か性転換したハーデスが一位だった。なんなの、堕天使エロメイドって・・・・・。
一方アイテムコンテストでは・・・すごい、セレーネが一位だったわ! 私はその次の2位!
「おめでとうセレーネ。やったじゃない」
「あ、ありがとう。私が一位だなんて、今でも信じられない」
自分の得意分野には誰にも負けないという気持ちが強いセレーネと褒め合い、更に他の人のアイテムを確認した。
「あら、これは珍しいわね〈従魔の絆環〉って」
「うん、従魔と合体が出来るスキルが使えるなら、これからテイマーが増えるかもね」
しかも5位と割と高くランキングに食い込んだ。これ、ハーデスが関わってたりしているかしら?
「で、流したけど3位はNPCが作った装備同士を融合させる秘薬ね」
「NPCもコンテストに参加できるんだ」
となると、神匠の鍛冶師NPCが参加していたら負けていたかもしれないわね。
「4位は、へぇハーデスの従魔の木彫りじゃない。凄くリアルに塗装もされているわ」
「すごいね」
本職の木工プレイヤーのトップを差し置いて高いランキングに食い込んだハーデスに感嘆する。いつの間に彼はこんな作業をしていたのだろうか?
「さてさて、報酬は何かしらね?」
「うん、入賞したプレイヤーはメールでプレゼントが送られるって。あ、もう来てた」
私の方もそうだった。送られた報酬は『神秘の護符』。所持しているだけでアイテムを生産する際の個数が3つに増える上に全てのアイテムの効果が2倍になる・・・あらやだ、すごくいいじゃないこれっ。
「セレーネ、私はいいアイテムだったけれど貴女は?」
「えっと・・・テイムモンスターだった」
真っ白な光の玉から小さな翼が生えた、妖精とも精霊ともつかぬものが浮かんでいた。少し困惑した表情のセレーネに質問を投げた。
「へぇ、可愛いじゃない。どういったモンスターなの?」
「えっと・・・実際に見てもらった方がいいかも」
と言うからセレーネのテイムモンスター、フェイの凄さを拝見させてもらったら。凄く有用的なものだと知って、『神秘の護符』よりも彼女のテイムモンスターが欲しくなったのは言うまでもない。どこで、どこにいるのかしら・・・ハーデスに頼んで見つけてもらわねば!
ゾクリッ。
「どうした白銀さん?」
「いや、なんか殺意的な何かを感じたような気がした」
「殺意的なのは無理もないと思う。魔王だから狙われているし」
いや、そういう類とは少し違うような・・・・・ま、いいか。スクショとアイテムコンテストのイベントも終わったし、今は俺を狙うだけのイベントが残っている。天界に居座り続けるのもいいが、長居は出来ない感じのエリアみたいだからなぁ。
「そろそろ地上に降りるかー」
「そうだな。一度モンスターと戦わせてもらったが・・・・・ありゃあ無理だ」
「敵わねぇ・・・敵わねぇよ・・・・・何だよレベルが500って」
うん、そうだったのだ。神が住まうエリア外では化け物クラスが蔓延っていた。主に巨人で全員武装していた。しかも当たり前のように防御力を貫通する攻撃をされた日には俺もお陀仏にされた。ダメージを与えれたとしても一ミリもHPゲージが減っていないのが絶望の始まりに過ぎない。
「倒せたらよかったんだがなー」
「白銀さんが踏み潰された瞬間を見た俺達も絶望したけどな」
「弱体化しているって本当なんだな」
弱体化する前でも勝てる気がしないがな。レベルが高すぎるんだよあいつ等・・・・・。
「ま、色々とここでしか得られないものが手に入ったし個人的には満足だ」
「それな。みんなに自慢できるぅー」
「地上に戻ったら俺は自慢するんだ」
ということでゼウスに地上に戻ることを伝えると短く「そうか」と言った。
「短い間だが普段と違う時間を過ごせて楽しかった。お前達と出会えた今日を思い出にしよう」
「また来て会いたいところなんだけどなー。また天界に来れることできる?」
「お前みたいに主神達に見守られた下人ならば来れることはできるかもしれん。が、ここは神々が暮らす天界だ。今回だけ天に続く道が出現してそこから来たお前達は運が良かったが、天界は安易に来れないところだ。まずは主神達に認められるよう努力をするのだ」
「認められたら?」
「地上にいる神獣に頼めば天界に連れて行ってくれるだろう。が、その前に全員を実力で認めさせねばならないがな」
あ、意外と何とかなる。
「で、地上に戻る方法は・・・・・」
「そうだな。ないことにはないが、選択権を与えようか」
「選択?」
頷くゼウスは三本の指を立てた。
「一つは自力だ。まぁ、ここから飛び降りるか自分で飛ぶかだな」
「俺は出来るけどこの二人は無理だな」
「「できる方が大概なんだが」」
そう言うスキルがあるんだよ。
「もう一つはペガサスに乗って地上に戻る。これはお前達にとってかなり難しいだろう。棲息している場所は巨人どもが蔓延っている場所のさらに奥にいるからな」
「天界にいるんだペガサス。最後は?」
「自分達で翼を作る事だな」
翼を作るって・・・イカロスじゃあるまいし。
「どうやって作るのか教えてもらっても?」
「それこそ、ペガサスの羽を集める必要がある。どうするかお前達で決めるがいい」
相談タイム開始。
「自分で作るなら、空を飛べるアイテムかスキルあたりが手に入りそうな予感するぞ」
「それってなんの生産する職業なんだ?」
「作るにしてもレベルが足りないぞ」
「じゃあペガサス自体を狙う? 道中は巨人と絶対に戦うことになるんだが」
「「ムリムリ」」
であらば一つしか残されていないわけである。
「自由落下して地上に戻ることにした」
「そうか。だが、せっかく出会えた下人だ。これを送ろう」
不意にゼウスからそう言われた俺達はアイテムを貰った。
『タラリア』
装備中は飛行可能になる。
「え、こんなアイテム貰ってもいいのか?」
「構わない。それはあのアポーロンのバカが迷惑をかけた詫びだと思ってほしい」
そう言えばもう意識を取り戻してもいい筈なのに顔を見せて来なかったな。ま、また来た時に顔を出せばいいかな。俺達は有翼のサンダルを装着、穿いてみると小さなサンダルの翼が大きな光翼と化して展開した。
そして―――俺達は天界から飛び降りた。風邪を切る勢いで落ちながらもサンダルの翼が羽ばたき鳥のように俺達を飛ばしてくれる。
「いやっほうー!!!」
「きんもちぃー!!」
初めての飛行を体験する二人が地上に降りるまで楽しんでいたのは言うまでもない。MPを必要としない飛行できるアイテムはあるけど、移動しながら戦える点では『タラリア』の方が便利だ。イズとセレーネに頼めば量産できてしまうかな?
「それじゃお前ら、またどこかで会おう」
「今度は戦いに挑むからな!」
「今回は貴重な体験をありがとう白銀さん!」
二人と別れそのまま始まりの町まで飛んで行く。着くと俺は早速タラリアに足を運んだ。
「ヘルメス、売りたい情報があるんだけどいいかな?」
「・・・・・その、翼が生えたサンダルのことかしら」
「アイテムの名前は『タラリア』って言うんだ。見ての通り飛行能力が備わっている」
「な・・・・・!」
「ヘルメスがこのアイテムを持っていないなんておかしいよなぁ~? ヘルメスって名前を返上しなくちゃいけなくなるんじゃないか?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら天界の情報を売ったら、何故か涙目で今にも泣きそうなヘルメスを置いてマイホームへ戻った。
「オルト兄弟集合!」
「ムー?」
呼び掛けに応じたノーム達が集まってくれると、天界で得たファーマー用のオブジェクトと作物を出して早速取り掛かった。『天の恵み』は畑に設定すれば自動的に動いて畑に水を与えてくれるようになった。
「この雲畑なんだが、どこがいい?」
「ムー」
話し合いを始めるオルト達が出した結論はホーム以外の畑で設置することになった。
見守り隊side
「おい、白銀さんが来たぞ」
「スクショコンテストのモンスター部門では堂々の一位だったな。トップテイマーは伊逹じゃないか」
「ギルドの方は残念だったがな」
「【蒼龍の聖剣】が入賞すら逃したのは衝撃的だったよな」
「・・・・・なぁ、なんかわたあめみたいなのを畑に設置し出したぞ」
「ノームがそこに何かの種を蒔いて? 埋めて? みたいなことをしているな」
「???」
「白銀さん、今度は何をどこで見つけたんだ・・・・・気になってしゃーないぞ」
「待て待て、畑に雲を出したぞ。何で消えないんだ」
「あの雲に水をかけ始めて・・・は? 畑に水を撒き始めたぞ」
「お、白銀さん追いかけの侍風のプレイヤーが来たな」
「おーっす白銀さん・・・・・なんだその雲みたいなのは」
「新しく見つけたエリアで手に入れたファーマー用のオブジェクトだ」
「え、マジで? そのエリアって俺も行けれる?」
「絶対に無理だ。ベヒモスとジズ、リヴァイアサンを倒して勇者の称号とスキルを集めて、神話関係の称号を手に入れる。その上で四神を倒さないと行けないぞ」
「・・・・・白銀さんみたいな強いプレイヤーじゃなきゃダメなエリアって」
「そんなエリアの外にはもれなくレベル500のモンスターがいて、試しに挑んだら踏み潰されました俺です」
「レベル500!?」
「一蹴されたぞ。現時点で誰も倒せないや。でも、それなりに得た物がある。その一つがこれだ」
「えーと、それって俺達の分もあったりする?」
「勿論。欲しいなら売るぞ、物々交換でもいいからな」
「あざーっす!!」
【農業】農夫による農夫のための農業スレ36【ばんざい】
:NWO内で農業をする人たちのための情報交換スレ
:大規模農園から家庭菜園まで、どんな質問でも大歓迎
:不確定情報はその旨を明記してください
:リアルの農業情報は有り難いですが、ゲーム内でどこまで通用するかは未知数
92:佐々木痔郎
今回も白銀さんから凄いものを交換してくれた俺からの報告だ
93:タゴサック
どんなすごいものだ?
94:佐々木痔郎
雲のオブジェクトだ。一つは『天の恵み』と言う雲を畑に設置して雲に水を雨雲になるまで与えると、自動的に畑に雨を降らして水を撒いてくれる。しかもその水で育った物の品質が高くなる
95:ノーフ
雲が水を撒いてくれるオブジェクト? それってどこで手に入る?
96:佐々木痔郎
ファーマーの俺達じゃ絶対に行けない。なんせ三体のレジェンドのレイドモンスターを倒して、四神も倒さないと行けないエリアだから。白銀さんはどうやらそういう正規のルートではなくて裏ルートから運よくそのエリアに行けた模様。
97:チョレギ
裏ルートって?
98:佐々木痔郎
空高く飛んでいたら太陽に続く足場を見つけたんだってさ。何とその先には神々が住んでいる天界だったのが驚きだ
99:セレネス
天界!?
100:つるべ
いやまぁ、冥界もあるんだし天界もあるんだろうとは思ったけど
101:チャーム
とうとう天国まで行っちゃったのかぁ・・・・・
102:つがるん
天国に行くには地獄を体験しろとは鬼畜かな
103:ダイチ
それで、他には何と交換ができたのか教えてもらっても?
104:佐々木痔郎
他は『雲畑』。地面の畑じゃなくて地面の代わりに雲が畑になる。その雲畑しか育たない作物があるから今植えているところ
105:プリム
天界の食べ物はありますかー?
106:佐々木痔郎
あるぞ。ただ、旧大陸の通貨と天界の通貨が違うらしくてな。手持ちの物と換金しても残念ながら全員分は買えなかったと嘆いておりました。
107:チチチ
揃えようとしてくれている辺りイイ人なんだよあの人は
108:タゴサック
天界の種はどのぐらいある?
109:佐々木痔郎
10種類以上はある。が、欲しいなら白銀さんではなく俺のところで交換してやるぞ
110:ネネネ
なんで?
111:佐々木痔郎
あの人ギルドから脱退させられた上に魔王として他のプレイヤーに狙われているだろ。のんびりとしていられないから頼まれたんだよ
112:タゴサック
ああ・・・無防備な所を狙われたくないからか
113:つるべ
運営もとんでもないイベントを始めるな。全プレイヤーのヘイトを一人のプレイヤーに集めるなんて
114:チョレギ
魔王だから、だろうね。魔王だから倒して当然みたいなアニメや小説、ゲームはありふれてるし
115:プリム
なんだか白銀さんが可哀想です!
116:ダイチ
そう言う同情的な意見も少なくはないだろうが、運営も予想外だったろうな
117:チャーム
その心は?
118:ダイチ
どうやって魔王になったのかは知らないけど、全プレイヤーが魔王討伐をするイベントなんてかなり難しい条件じゃなかったかなって。ほら、魔王の弱体化が確認されたってワールドアナウンスで聞いただろ?
119:ネネネ
あ~そんなこと言ってたような・・・・・?
120:セレネス
そうか。白銀さんが弱体化しなければイベントも発生することが無かったんだ
121:ノーフ
弱体化する条件もかなり難しい筈だった?
122:タゴサック
だが、死神・ハーデスは?
123:佐々木痔郎
白銀の先駆者であるからして、極めて難しい条件をも難なくクリアしてしまうサスシロな人だ
124:ダイチ
つまり、悪いことをしていないのに自業自得的な感じになっている状態
125:プリム
え、えっと・・・・・どんまいです!
126:チチチ
あの人、ギルドに戻ってくれるのだろうか?