久しぶりに戻ったマイホームの中、テーブルに置いた『ドラゴン族の財宝』を前に座り初めて使おうとしていた。
「さてさて、何を選べれるのかな~?」
宝玉に触れると目の前に立法的な映像が浮かび上がって最初に金額が浮かび上がった。しかも100万・1千万・1億と3つの選択ボタンがある。これを押せばいいのかと最初に100万の方を押してみると別の画面に表示されては999万Gまで買える装備やアイテムなどが閲覧できるようになった。
「へぇ・・・ユニークまであるのか」
999万までの物がこれなら最高額の1億の方は? 興味が湧くのはすぐだったのは必然的で1億を選択すると相応の物がたくさん揃ってあった。
「おおお~・・・・・これはっ」
とあるアイテムのフレーバーテキストを見て、俺がこれを手にするために用意された運命だと感じた。それからも俺の防御力極振りのプレイで理に適った物を探しては買い込んだ。中にはとてもとても興味深いものもあった。
『魔戒ノ魔盾』
【VIT+12】
【冥鏡ノ破魔】スキルスロット空欄
ブラックホールを大盾にしたみたいな真っ黒い中に煌めく星々が輝いている、そんな盾のスキルもまた重戦士で大盾使いのプレイヤーだったら欲しがるだろうスキルだった。
【冥鏡ノ破魔】
MPを支払った分が相手の【INT】より下回る場合に限り魔法を無効・反射する
ま。これは選ぶ選ばない人が分かれるだろう装備だ。MPがなければ話にならないスキルだしな。限定されたが【悪食】と相性が良いスキルだと俺は思うから購入したほかにも。
『天外変化』
【MP】+50
【VIT】+20
【大魔砲】
銃、2つの盾、大剣が一つに合わさったような装備。大剣が銃にも使えることはできるが、メインかジョブに『ガンナー』をセットしなければ装備することもできない設定がされている。【大魔砲】はぶっちゃけMP依存のスキルでMPが高ければ高いほど【INT】関係なしに威力が高い一撃を放てることはできるも、30秒のタメが必要だと言うデメリットもある。
『龍鱗ノ鉤盾』
【STR】+20
【VIT】+15
【龍爪裂】
これまた面白い。円盤型のタワーシールドに龍の鉤爪が刃のように備わっていて、防御から攻撃に転ずるとタワーシールドが大型の爪の鎌となるようだ。鎌の形も龍の鉤爪みたくなるのも格好いいと思う。スキルの方は相手の【VIT】の数値を無視して一撃を与える貫通攻撃。
その他にも装備同士ではなくアイテム同士を一つに融合して新しいアイテムにする装置や、まさかこのアイテムから買えるとは思わなかった『宇宙の星屑』まであった。
「・・・・・」
うず、と好奇心が沸いた。複数のアイテムを融合するとどんな未知のアイテムが出来上がるのか気になった。
「ふふふ、これはやらなければ損でしょ」
早速やろうと俺の楽しみを邪魔するプレイヤーが現れるまで三十秒。逃走するためネコバスにランダムで遠いエリアへ運んでもらった。
北の第8エリア 捕食の森
「もう逃げ場ないぞ死神やろう!」
「もう観念して俺達に倒されろ!」
「お前のモノは俺のモノにしてやるから安心してくたばれ!」
「年貢の納め時だ死神・ハーデス」
身体を縛る鋼鉄製のワイヤーと全身からダメージエフェクトを漏出する俺を囲む戦闘系プレイヤー達。物理攻撃なら対抗できるが、貫通系の遠距離攻撃―――ガンナーとアーチャーに四方八方から攻撃されては持ち前の防御力は紙当然だった。
細やかな抵抗として女堕天使となって危険な赤黒いサークルを展開しているが、サークルの外から攻撃できる職業のプレイヤーに酷く苦しめられている。しかも拘束用の道具まで用意してくれるとは!
「いくら防御力特化のお前でも天敵の貫通攻撃の前じゃ成す術もないようだな!」
「従魔を召喚しようと無駄だ。お前ごと撃って攻撃してやるからな」
「対に俺達がトッププレイヤーの一人を倒す日が来た!」
「公開処刑用の動画を配信しているからな。無様な姿を全てのプレイヤーに見てもらう覚悟はしておけよー」
うーん、こいつら・・・完全にナメていらっしゃるな。最初は何人かコンキスタドールやヘルキャットを使役して俺を見つけてきたが、その後はどっちも俺が【機械神】と魔王だからという理由でそれ以上の協力を拒んだ時は俺と向こうのプレイヤーも初めての反応に驚いたものだ。
でもま、後は本人達でこーしてじわじわと甚振っているわけなんだが。くそったれ、あのガドリングガンの威力は厄介すぎだろ! 数十秒で【不屈の守護者】が発動させられるなんて!
「そこのお前。そのガドリングガンでレジェンドモンスターを倒せるだろ。何でここにいるんだよ!」
何人もいるガドリングガンを装備しているプレイヤーの一人にツッコミを入れたら、相手が返答をしてくれた。
「壁役が役に立たないんだよ! しかも弾代だってバカにならないんだ、協力をしてくれる代わり弾代を払う約束をしてくれているからここにいるんだ」
あー・・・そうか。ガドリングガンって見た目通り重装だし【AGI】も極振りプレイヤー程ではないが下から何番目か遅い方だろうし、守る盾役が紙装甲だったら回避も困難か。
「俺ほど壁役がいなくなったらお前は一生、レジェンドモンスターを倒せないままになるけどいいのか? 弾代もそいつらの百倍は払ってやるぞ。それだけ払える金を俺が持っていることも知っているだろ?」
「百倍・・・っ」
ガドリングガンを下げてあっさりと葛藤するガンナーに、背後から忍び寄る複数のプレイヤーが武器を突き付けて脅しをかけた。そうされたら最終的に従うしかなく銃口を俺に向け直す。地上がダメなら上空は? と視線を上げれば飛行アイテムで俺の真上を旋回しているプレイヤーの姿がたくさんいる。うーん徹底してかなりの連携だな。それに有志を募ったから100人以上のプレイヤーが集まるとは。飛行アイテムどころか、魔獣やコンキスタドールも駆使してくるなんてプレイヤー達の本気を感じさせてくれる。
「随分と余裕だな。自慢の防御力も健在だからか」
「まだ三桁しかないけど、お前らじゃ俺を倒せないのは確かだ」
「だろうな。あるプレイヤーの話じゃあ、50以上もスキルを持ってるって言うし、お前の防御力極振りの秘訣も【絶対防御】のスキルだってこともわかってる」
「で?」
「そのスキルの習得方法を開示するなら1日命を先伸ばしにしてやらんでもないぞ」
あー、あいつら喋ったか。ま。困るほどではないが、習得の方法だと?
「【絶対防御】を知ってるなら、その情報を公開したそいつらも知ってると思うんだか? 教えてもらえなかったのか?」
「・・・あいつら、それしか知らないって一点張りだったのに、やっぱり知ってて隠していやがったか!」
「はっはっはっ、今頃はどこかのエリアでモンスターとじゃれあっているだろうな。ま、AIが強化された今じゃ、工夫次第で手に入るがそう簡単に手に入らないだろう」
目の前の連中は人徳がなかったようだ。ざまぁーだな。苦虫を噛み潰したような顔をするプレイヤーの別の討伐組のプレイヤーの一人が「さっさと全部のスキルの習得方法を教えろ!」と怒鳴り付けてきた。
「いや、全部は無理だろ。お前らじゃ勝てないベヒモス達レジェンドモンスターから得たスキルとか、四神の玄武達とか、俺がしたEXやユニークのクエストがまた出来るのかもわからないんだぞ?」
『・・・・・』
途端に沈黙する。そのぐらいのレベルで手に入ったスキルを自分達が手に入れるなんて無理って悟ったか?
「俺から全部奪えるのだって一握りだし、結局そいつ一人に嫉妬することになるんだから意味があるとは思えないなぁ。そんで俺の従魔を奪ったプレイヤーは従魔ファンに嫌われる」
「テイムモンスターなんて興味はない。後で捨てるだけだ」
「女型のモンスターでもか?」
「・・・ああ」
少し間があったよな。悩んだろ絶対。まぁ、それはどっちでもいいとして。何かさっきから言いたげなプレイヤーがいるな。
「そこのお前、何か言いたいことがあるなら聞くけど」
「へ? 俺? え、いや、姿が女堕天使で女声なのに一人称が“俺”なのが・・・・・俺、堕天使ファンなもので」
「演技をする状況だと思っているのか? 緊張感のないプレイヤーめ」
「す、すみません・・・・・」
見ろ、その理由でちらほらと呆れているプレイヤーがいるじゃないか。だが・・・ふむ、ここが俺の死に様となるならば最後の演技をしてやろうか。
「―――いいだろう」
何か仕掛けて来る、そう感じたプレイヤー達は何時でも攻撃が出来る構えに入った。兜の緒を締めたように。密かにHPを全回復しながら宣戦布告する。
「我は王、堕天の王にして魔王なり! この私に挑むプレイヤー達よ心して懸かれよ? 次に死んでいるのは私ではなくお前達かもしれないからな!」
「はっ、縛られた状態で何ができる。言っておくがそのワイヤーのアイテムは時間制限付きなのがネックであるが、完全に対象を封じることができるんだ。もってあと一分ってところだろうがお前を倒すには十分な時間だ」
「スキルが封じられていなければ私の勝ちなのは変わりない。アイテムの使用も同様」
インベントリからバスケットボール程の金の玉を取り出した。初めて見るアイテムに周囲は最初に疑問を抱いた間に金の玉はぐにゃりと形を変えてワイヤーに縛られている俺を卵のように包み込んだ。
「ッ!! 撃て!! 拘束時間が過ぎれば逃げられるぞ!!」
貫通力があるスキルや武器を駆使して金の卵ごと俺を攻撃する合図を出したプレイヤーの声。だが、このアイテムの前では銃弾も無下に終わる。
『宇宙の星塊(小)』
たくさんの宇宙の星片が一つになった暗黒物質の姿。所有者の願いに臨機応変で姿形を変えるようになった。神と神を司る者と宇宙の星以外、不変に不動で不滅の星の前ではどうすることもできない。
アイテムだから奪われるリスクはあるものの、このアイテムの前ではガドリングガンの弾でも―――。
ドルルルルルルルルルルルルルルルルルッッッ!!!
「なんだあの金の玉!? ガドリングガンでも傷一つ付かないなんてどんだけ硬いんだよ!!」
「貫通効果のあるスキルでも通らないぞ!! どうなっているんだ!?」
「直接攻撃するにもあの魔方陣みたいなのがダメージを与えて来るから近づきようがない!」
「くそったれ、拘束時間まで籠るつもりか!」
その通りだ。だからその時間まで待っていると、ワイヤーが消失してようやく解放された俺はあるスキルを使った。それが使える職業もここに来る前に変更しておいてある。
「【闇影の兵士】」
数には数を、だな? 使ったら使い捨てのように消失してしまうが集めればいいだけだ。そう―――今まで倒して来た俺の戦歴に等しいモンスター達が広大になった俺の影から真っ黒い姿で這い出てきた。その中にはベヒモス、ジズ、リヴァイアサンの姿もいる。金の玉の防御を解いて元の形に戻しながら周囲を見て把握した。
「黒い、モンスター!? いきなりどこから現れた!?」
「待て待て!! 巨大なモンスターがいるぞ!!」
「はっ!? よく見たらベヒモスとジズにリヴァイアサンじゃねーかよ!!」
「死神やろうがテイムしたってのか!? 冗談すぎるだろ!!」
「うわぁああああ!? 水晶のモンスターまでいるぞ!!!」
「む、無理だ!! こんな数相手に勝てるはずがない!! 俺は逃げるぞ!!」
「ま、待てよ!!」
「最初から俺達が追い回して倒していい相手じゃなかったんだ!!」
阿鼻叫喚、我先へと逃げるプレイヤー達の想像が浮かぶが・・・・・ここまで俺にしてくれたんだ。俺も同じことしても問題はないよなー?
「蹂躙し喰らい尽くせ。一人残らず逃がすな」
全ての闇影の兵士と化してるモンスター達が咆哮を上げながら動き出し、逃げるプレイヤーの背中から襲い掛かる。空にいるプレイヤーは鳥系のモンスターに襲われて飛行アイテムを壊されるか地面に叩き落とされていく。うーん・・・100人規模相手にそれ以上の数のモンスターがたった一回で消失してしまうのはコストに合わないスキルだな・・・・・。数と強さが揃えばこーなってしまうから制限と設定したんだろうけど。
「あ・・・この光景、魔王達も見ているんだっけ?」
冥界―――。
「魔王様、あの血濡れの残虐の魔王が数多の同胞を蹂躙しておりますな」
「ハーヴァ、とてもいい顔を浮かべているじゃないか」
「悪魔の生を得た者として、彼等の絶望と恐怖、阿鼻叫喚は私達悪魔にとって娯楽以上のご褒美ですから。城下町の民達もここからでも聞こえるほど歓声を沸かせております。四魔も他の魔王達も例外ではないでしょう」
「そうだね。あー、やっぱり彼にはこの冥界の魔王になって欲しかったかな。僕よりも魔王の素質があるよ。それにあの森の場所は・・・・・」
「ええ、間違いなくあの森でありますでしょう。だとすればあの種族の者達も黙ってはおりませぬ」
「ちょっと経験者として心配だけど、彼なら問題ないかな。特に彼女に見初められた証を刻まれているし杞憂に終わるか。だったら僕達は僕達で目の前のことを集中しよう」
「いよいよですな。我等の地上進出も」
「うん、僕の悲願も叶う時がもうすぐだ。彼はそれまで頑張って欲しい」
・・・・・なんか、不名誉なこと言われた気がしなくもないが、程なくして捕食の森らしく俺を討伐しに来たプレイヤーが闇影の兵士達によって死に戻りされてほぼいなくなったようだ。探知系のスキルでも確認できている。こんな隠し玉と言えるスキルまであってまた使われるなら襲わなくなるかな? というか、闇影師たちの行動範囲ってどこまで? ちょっと調べ・・・・・。
「ん?」
元々霧が漂っていたのにそれ以上の濃霧がさらに俺を包み込んでいく。同時にサークル外の周辺に怪しげな人影が複数のどこからともかく現れてきた。俺を背に向ける彼等のマーカーは青、NPCだ。間違って入ってこないよう堕天使化を解こうと・・・・・。
「たくさんの血の匂いと私が施したマーキングが感じるから来てみたら、やっぱりあなただったのね」
背後から女の声。それも久しぶりに聞く声であって、振り返ると吸血鬼の女王が赤いドレス姿で俺に微笑みを向けていた。
「え、あの時の吸血鬼? なんでここに・・・って、ダメージは大丈夫なのか? このサークル、敵味方問わずダメージを与える【滅殺領域】なんだが」
「名前からして系統:悪の魔法ね。それなら大丈夫よ。前にも言ったでしょう? 私は不死身、いかなる攻撃も通じないって。寧ろ私に対する悪系統の魔法や攻撃の類は無効にするから通じないわ。でも、私以外の話だから消してくれる?」
何気にチート染みた身体能力、種族の恩恵なのか判らないがこの吸血鬼には全盛期の俺でも敵わないだろ。堕天使化も解いて改めて挨拶を交わす。
「久しぶり、元気そうだな」
「あなたもね。まさか、里の近くで騒ぎを起こしていたのがあなただとは思いもしなかったけど」
「里? 吸血鬼の?」
「それ以外何が・・・ああ、場所を教えていなかったから解からないか。なら、あの時の口約束を果たしましょうか」
華奢な手を俺に伸ばす。その手を包むように掴むと彼女はもう片方の手で濃霧に向かって突きだす。すると濃霧と目の前の景色がぐにゃりと空間ごと歪んだと思えば、濃霧が霧散して捕食の森とは別のエリアと化した。
「・・・・・目の前、だったのか?」
「近くにある様で実際に遠い。まるで夜空に浮かぶ満月の如くよ。その間の距離を結界で歪めたのを消したの。そしてこの辺りの捕食の森は偽りの姿、もう吸血鬼の里内よ」
―――目の前に高い城壁と鉄製の柵の門があるステージに切り替わった。
「改めて自己紹介しましょうか。私は真祖シルヴァーズ・ベアトリーチェ」
「死神・ハーデス。今じゃ悪魔族で恐怖の大魔王になってしまった元人間さ」
「どうやらそのようね。ふふっ・・・人の人生って本当に不思議。勇者から魔王になった人間を二度も見ることになるなんて。だから人間に対する興味が尽きないわ」
俺の手を引いて開く門の向こうへと歩み出すベアトリーチェ。
「いらっしゃい、ようこそ私の里へ」