バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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目指せ新エリア

 

吸血鬼の里の門から出てすぐ、ベアトリーチェが張った結界から出ると「あ」と互いが声を漏らす展開になった。吸血鬼の里を探しているヘルキャットを連れたプレイヤーと出合い頭に鉢合わせしたんだ。

 

「白銀さん!? 今、どこから・・・まさか、その先が吸血鬼の里!?」

 

「あー、うん、そんなところ。運がいいな。情報を流していいから頑張れよ」

 

「え、俺が流しても!? サスシロー!!」

 

やめぃ! と心中でツッコミを入れつつ退散する。後目で背後を見れば俺が出てきた結界の中へ入り消えるプレイヤーと魔獣の姿が見えた。後は勝手に里の場所を見つけて入るプレイヤーが増えることだろう。

 

「・・・・・ん? 俺の位置が常時マップで表示されているんだ。里の場所も分かるんじゃ?」

 

「補足:始祖吸血鬼ベアトリーチェの結界は存在を隠す効果がある模様です。里の中に入る間はマスターの特定位置される効果が働いていないかと」

 

俺の呟きにサイナがとんでもないことを言ってくれた。うわー、それ本当だったらベアトリーチェの力を借りたくなるぞ。

 

「いや、ラプラスの力も借りてそうしてみるか? できるかどうか聞かないと分からないけど」

 

転移門を出してホームへ戻る。さっそくうちの従魔とじゃれているルルカを地図を見せて場所を特定してもらいに近づいた。

 

「『深淵の森』・・・ですか」

 

居間で渡した地図と睨めっこをする。いつもなら直ぐに案内できると自信満々で言うのに、眉根を寄せて難しい顔をするルルカは初めて見た。

 

「知ってるか? その先に幻の都があるそうなんだが」

 

「幻の都? もしやアレクサンドレアのことですか!?」

 

いや、そこまでは知らない。だがしかし、テーブルをに乗り上がらんとする勢いで立ち上がるのルルカの反応を見ればかなり有名な場所のようだな。

 

「詳細を頼む」

 

「未だナヴィゲーターであるルルカ達ですら直接足を運んだことがない場所が複数あるんです。その一つがアレクサンドレア。かつて栄えていた都であったのですが、何時しかその存在や名前も忘れ去られてしまったある日、ナヴィゲーターの小人族の先輩が偶然その存在を知って探索したのが始まりです。しかし―――」

 

「実在している事だけわかっても、場所は今日まで特定できなかった、か?」

 

首を縦に振って頷くルルカ。

 

「その通りです。なので、古都アレクサンドレアの存在を隠す『深淵の森』もルルカは今日まで知りませんでした」

 

「む、深淵の森もか」

 

ルルカすら知らない森・・・隠しエリアだな? となると直接行ったことがあるあの吸血鬼にもう一度教えてくれるか頼むしかないな。

 

「因みに吸血鬼の里と吸血鬼の国は?」

 

「そこまで単独で見つけたのですか!? ううう・・・・・ルルカはナヴィゲーター失格ですっ」

 

どーやら吸血鬼の国も行ったことがない一つだったみたいだ。しょんぼりと落ち込むルルカを励まして慰めている俺の後ろから、テーブルに置いてある地図を手に取った誰かさん。

 

「・・・ふむ、深淵の森か。懐かしい場所を残した地図があるとは思いもしなかった」

 

「ラプラス?」

 

「後輩。もしもこの森に行くなら案内してやってもいいぞ。あの森の先にある都は中々景色がよかったからな」

 

大先輩の元魔王が俺にそんな提案をして来た。てか、行ったことがあるのか!

 

「何か霧の龍がいるらしいぞ」

 

「ああ、いるな。まだいたのか、あの龍」

 

そして当たり前のように知っていると。あ、そうだ。あれを見せないとな!

 

「ラプラス、お土産を用意したぞ。見てくれ」

 

「何を見せてくれるのだ?」

 

インベントリから吸血鬼と交換してくれた絵画を取り出す。

 

「―――じゃーん! ラプラスが描いた絵画!」

 

「んなっ、はあああああああああー!!?」

 

「ゼロ、これがラプラスが描いた絵なんだろ?」

 

「はい。不要な記録データをゴミ箱からリサイクルした結果。100%マスターがまったく才能がないにも関わらず描いた絵画と一致します」

 

心底から驚いているラプラスの隣にいる最初の征服人形ゼロですら認める下手な絵画。やっぱり本人の描いた絵画だったか。何時だったかラプラスの絵画を飾ることを言ったから実現にしないとな。

 

「サイナ。これ玄関の壁に飾ってくれ」

 

「かしこまりました」

 

「待てっ! よりにもよって飾るではない! 私に渡せ!」

 

「イヤです。我は俺の物だからどう扱おうが俺の自由だろ。言っとくけどあれはコレクションの一つにするから、勝手に盗んだり壊したら許さないからな」

 

絵画を渡したサイナは玄関の方へ。ラプラスの方はその場で四つん這いになって暗い影を落とした。

 

「・・・く、後になって何か恥ずかしくなったから探し回って処分したのに、まだ見つかっていない絵画の一つが手の届くところあるのにどうすることもできないとは・・・!!」

 

「そりゃあ魔法と錬金術を極めた凄い人が描いた絵画だぞ。絵のセンスの良し悪し関係なく偉人が描いた物を後世にコレクションとして遺すのは当然だろ」

 

ほら、それよりも案内しろ深淵の森へ。お、アカーシャとリヴェリア、久々に一緒に冒険に行こうじゃないか。たまにはNPC達だけのパーティとチームの構成は悪くないだろう。

 

・・・・・でもさー。

 

「こーも、堂々とついてくるとはな」

 

エルフのリヴェリア、魔王の娘アカーシャ、元魔王『魔神』ラプラス、征服人形ゼロ、征服人形サイナ、ナヴィゲーターの小人族ルルカ。2チームで行動していると俺達を尾行するプレイヤーが増えてきた。きっと俺がどこかで何かサスシロ案件で仕出かすに違いないと踏んで、便乗かおこぼれを貰おうとするか、俺を討伐しようとするプレイヤーだろうか。

 

「ハーデス、邪魔であるなら追い払うか?」

 

「実害はないから放置かな。それにこれから行く先に龍がいるとは思わないだろうから」

 

「霧の龍、でしたかあなた。ウッドドラゴン以外のドラゴンは初めて見ます」

 

「勇者時代のお父様も行ったことがない幻の都ってどんなところなのか興味ある」

 

「幻の都アレクサンドレア。ついに小人族の悲願の一つが達成できます!」

 

好奇心と意気揚々なNPC達と連れて歩く場所はまたしても捕食の森だった。ラプラスが吸血鬼の里がある場所とは正反対の方角で俺達を案内し、霧が漂う森の中を歩くこと30分ぐらいだろうか。ステージの毛色が突然変わった。

 

「霧の色が、紫?」

 

捕食の森の霧とは異なって紫色の霧が壁のように漂っている。こんな場所、他のプレイヤーが見つけているだろうに。どうしてこんな目立つ場所を誰も気づかないんだ? ラプラスが言う。

 

「この霧が霧の龍から発しているもの。しかも猛毒だ」

 

「毒の霧って、それじゃリヴェリア達が入れないぞ?」

 

「私が何の対策もしていないとでも? お前達これを付けろ」

 

ラプラスは何かのマスクとなんか特別性みたいなウェットスーツを三つ、毒耐性がないリヴェリア達に渡した。

 

「【毒無効】を一時的に得る道具だ。いつかこんな場所に通るかもしれんと作って用意した甲斐があった。無駄にならずに済んだな」

 

「流石先輩。頼りになるよ」

 

「絵の才能がなくても、こういうことに関しては優秀なのです我がマスターは」

 

「ゼロ、余計なことを言わなくていい!」

 

ただし疑問がある。

 

「どうしてウェットスーツ? なんでウェットスーツまで?」

 

「この霧はただの毒の霧ではないのでな。身に付けている物も腐蝕してしまう厄介な効果があるのだ」

 

「え、そうだったのか?」

 

「すぐに使え物にならなくなるわけではないが、装備の耐久力が気づかない内に減っているなら冒険者も困るだろう? その点、お前の装備はそうならない効果があるし私は自前の魔法で問題ない。征服人形に至っては毒そのものが通用しない」

 

おおー、流石サイナ達。二人に拍手を送るとドヤ顔を浮かべた。うん、お前が凄いのは最初から分かっているぞサイナさんよ。

 

「ラプラス、俺の質問の答えを聞いていないぞ」

 

「む? あれを着れば耐久力が無くならないのだが」

 

「普通に服にできないのか? 未だにこんな服を着なくちゃいけないのかってリヴェリア達が当惑しているんだが」

 

「―――ふっ、私の悪戯心がこうしろと囁いたのさ」

 

つまりワザとウェットスーツに仕立て上げたのかよ。

 

「ラプラス君。魔法でしてあげなさい。」

 

「いや、それは既に肉体がない私だから服だけ防げばいいだけの話であって、肌から毒素を吸収してしまうこの者達のことを考慮した故でウェットスーツにしたのだぞ」

 

・・・? だからつめ先と足の指先までスーツで隠し、防護マスクをつける顏以外の全ての肌の露出を無くしたのか? ラプラスだから問題ないのと俺自身も【毒無効】で毒は聞かないからの理由を訊いたリヴェリア達はサイナが用意した機械の囲いの中で着替えるしかなかった。

 

「・・・・・うん、これから海の中に潜るわけでもないのに、凄い違和感だ。寧ろ場違いなところでその恰好をしたら不審者だな」

 

「は、恥ずかしいです・・・・・」

 

「ううう・・・・・」

 

「こうでもしないと幻の都に入れないとは・・・!!」

 

ボディラインがハッキリと浮き彫りしている三人は羞恥で顔を赤く染めた。髪もスーツで隠し、目と鼻と口だけ隠さずマスクで防護する美女美少女達・・・・・。

 

「準備はいいな? では行くぞ」

 

ラプラスが先に紫の濃霧の中へ。俺達も続いて霧の中に潜り込みラプラスの後を追いかけた。すると、全ての鎧がダメージを受けた証の赤いエフェクトを漏出し始めた。マジで装備にダメージを与えるのかこの霧―――【VIT】を上げられるいい環境じゃーん。にしてもそんな霧の中にも草木が生えているのは当然だとして南米に咲いているような植物や食虫植物、幹が太くて長い花が大きい白い斑点の蕾状態の植物があればラフレシアまで群生している。

 

「ふむ、後輩の装備がダメージを受けているな。相変わらず防御力だけは凄まじい効果を発揮する」

 

「俺にとっちゃ、そのおかげで長生きできるんだからありがたいことだ。呪いで他の装備と替えることができなくても後悔はしないだろうな」

 

「実際にそんな呪いがあるから気を付けるのだぞ。呪術師という呪いに長けた者が少なからずいるのだからな」

 

「それ、どうやったらなれるんだ?」

 

「それはアレクサンドレアに着いてから教えよう」

 

俺達を包み込む霧の中で地面から生える木々を避け―――待て、伐採が出来るポイントが浮かんでいる木々が何気にあるぞ。見たことのない木だ。

 

「ああ、言い忘れていたが深淵の森の木々には安易に傷つけないことだ」

 

「理由は?」

 

「擬態している植物のモンスターが至る所にいるからな。採取や伐採できるように見せるモンスターがそれだ。そして決して騒がず、走らず、静かに歩くのがモンスターを刺激させないコツだ」

 

そうなんだー。と他人事のように聞いて肝に銘じた俺達なのに、全身から赤いエフェクトをまき散らすように漏出するプレイヤー達が走って来た。

 

「あ、いた!?」

 

「おいこら死神! ここはどんなエリアなんだよ! 装備の耐久力が減るエリアなんて聞いてないぞ!」

 

「この先のエリアに何があるんだ!? 早く教えてくれ!」

 

「やばい、猛毒状態から劇毒になって―――!!」

 

お、おい・・・今知ったばかりのしてはいけないことをオンパレード・・・・・あ。

 

「あっ」

 

視界に映るプレイヤーの背後に佇む樹木に鋭い目と凶悪な木の牙が生え、擬態を解除した樹木のモンスターが―――。

 

「え、うわっ!? た、助けてくれぇー!!」

 

「な、なんだ!?」

 

「あっ、あいつ木のモンスターに喰われたぞ!」

 

「ていうか周りを見ろ!! 俺達いつの間にかモンスターに囲まれてるぞ!?」

 

「新種のモンスターかよ!! くそ、装備の耐久値とHPが減っているのに!!」

 

あっという間に阿鼻叫喚となった。そしてその通りに俺達も植物のモンスターに囲まれている。根で足代わりにして歩く植物のモンスターまでいるんだから、追いかけられるのは目に見えている。

 

「ラプラス、こういう時は?」

 

「空に逃げるのが得策だ」

 

「なるほど。リヴェリア、頼めるか?」

 

「わかりました。彼等はどうしましょう?」

 

うーん・・・・・どうしようもないな。

 

「あいつ等も冒険者だ。自分達の意志でここに入ったんだから死ぬ覚悟をした奴らに手を貸すことはない。時にそれは相手を侮辱してしまうこともある」

 

「とても覚悟した人間の言動をしているようには見えないのだけれど」

 

シッ、アカーシャ。それは言ってはイケナイ! リヴェリアの魔法で俺達を幾重の幹が絡み合い太い足場となった樹木に空へ打ち上げられる形で避難した。下から聞こえる悲鳴と怒声、あと俺に対する罵倒も聞こえてくるが、霧の中に入った時点でわかることなのに霧から出て、対策してからチャレンジしなかったお前らが悪いということで。

 

「にしても植物のモンスターか。何匹かテイムしてみようかな。ラプラス、オススメのモンスターいる?」

 

「それを私に訊くのはどうかと思うぞ。何でもいいと言うなら、樹精もいるのだからアルラウネかスクーグスローがお前にピッタリだろう」

 

「・・・それ、見つける方法とかあるわけ?」

 

「あの中から探す他あるまい」

 

またの機会にしよう。・・・・・そろそろいいか? 戦闘音が消えて沈黙したし。リヴェリアに降ろしてもらうようお願いした。樹木の足場が下がってプレイヤーもモンスターも無人と化した場所に戻った。

 

「誰もいないわね。この辺りのモンスターは強いの?」

 

「弱くはない。状態異常の攻撃をする植物のモンスターもいるからな。・・・・・ハーデス、何をしている?」

 

「一応、無意味だろうがお守り代わり? と道標だ」

 

サイナに頼んで掘ってもらった地面に虹色の実を置いた俺に対してラプラスは呆れ顔だった。

 

「神獣の供え物をそのようにする者はお前以外いないだろう」

 

「アレクサンドレアに着くまでこうする」

 

「おい」

 

さーて終わった。さっさと行こうか、案内よろしくラプラス!

 

 

―――なお、ハーデス達がさらに奥へと言った後。虹色に輝く地面に埋まった実に近づく女型の植物モンスター。綺麗な輝きと甘い香りに好奇心と興味が湧いて実の表面を口で齧った途端。

 

『リィー!!』

 

思わず叫んでしまうほどの身の味が美味しかった。その声に反応した周囲に擬態していた他の植物のモンスターも虹色の実から発する匂いに誘われ、群がって食し養分を吸い始める。すると植物のモンスター達の身体に変化が起きた。それを知った時のハーデス達は心底愕然とするのはもう少し後のことである。

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