かなり歩きながら虹色の実を地面に置いて霧の龍がいる場所へ向かった。あとどれぐらい歩くのかと思った矢先に森がない開けた場所へ出れた。そしてその中心に大きなモンスターがいる。顔はドラゴン、前脚というか手か? 後ろ脚がなくまるで人魚のように胴体と尾しかないが人魚にはない翼が生えている。そんなドラゴンは眠っているかのように瞑目している。
「あれが?」
「ああ、霧の龍だ」
ラプラスも認める霧の龍。だがしかし、しかしだ・・・・・HPがないモンスターなのは聞いておりませんよー?
「戦う必要、ないよな?」
「倒さずともよい。奴に力を認めさせれば通してくれる」
「認めさせるか。随分と簡単に言ってくれる」
聖属性の空飛ぶクジラを思い出す。結局ダメージを与えることができなかったし、いつか必ず一矢報いる思いが今もあるのにクジラの次は龍だとか・・・・・最初から全力で行くしかないだろう。
「頑張るか」
最初に足を前に運んで地面を踏んだ矢先。EXクエスト『霧の龍』の青いパネルが目の前に浮かび、OKを捺すと霧の龍がカッと瞼を開き鋭い眼光をこっちに向けながら体を起こし、臨戦態勢の構えを取った。
「【機械神】! 【飛翔】!」
装備が破壊兵器と化した状態で空を飛び、霧の龍に攻撃を開始した。まぁ、当たってもノーダメージですよねー!?
「くっ!!」
口から極光の光を光線のように放って来た。こいつ、光の属性じゃないだろうな!?
「ラプラス、訊いてないけどこいつの属性は!?」
「既存しているどの属性にも当てはまらない『無』だろう。そう言うモンスターは同じ属性の相手か攻撃でなければ一切通じないのが決まっている。私でもその攻撃を食らったら死ぬ覚悟をしなければいけない」
【堕天の王】のスキルでも突破されるのか? だとしたら厄介すぎるじゃないかっ。
「『無』の属性・・・・・【エクスプロージョン】って属性は何だ!」
「『無』に該当する。そしてエナジードレインも『無』だぞ」
へぇ、そう言うことなら何とかなるな!
「霧の龍、勝負だ!」
「グアアアアァァァーッ!!」
馬鹿の一つ覚えのように飛ばしてくる光線に向かって、【機械神】を解除しながら手を突き出す。
「【悪食】!」
光線を二倍になるMPに変換しつつ霧の龍へ突っ込んで目と鼻の先まで近づけたが、俺の手が届く直前に空へ飛ばれて躱され【飛翔】で追いかける。というか【機械神】もどの属性でもないんじゃないのか? 単純に龍だから防御力が高いだけなら納得するけどよ。
「とにかく、攻撃あるのみ!」
と意気込む俺を嘲笑うかのように濃霧を発生する霧の龍。空中で止まり周囲を見回し龍を探すが発見できない俺の身体が激しい衝撃に襲われる。くそ、当たり前のように防御力を無視する攻撃か! 今のでもうHPが【不屈の守護者】が発動する一割になったじゃんか! そっちがそう来るならこっちは・・・・・!
「【金炎の衣】! 【大嵐Ⅰ】!」
霧を晴らすには空気を乱す風! 火砕旋風と化した大嵐に濃霧に乗じて隠れていた霧の龍の姿を捉えることができ、逃がさないよう【大竜巻】で閉じ込めた上―――。
「【相乗効果】―――【悪食】【アルマゲドンⅢ】」
【悪食】の効果が付与された巨大な隕石が大竜巻に落ちてきて霧の龍を押し潰した。その間にHPを全回復させて土煙が立ち籠る下を見下ろす。相手は龍、ドラゴンだ。この程度で終わるはずがない。というかHPがないから倒せないけどなー。
『グオオオオアアアアアアー!!!』
「だろうな。お前が認めるまでとことん攻撃してやる」
フレデリカside
ハーデスの公開処刑を見て思わず身体が動いて捕食の森まで来てしまった。もう済んでしまったけどゲーム内じゃ連絡が取れないから一度顔を見て安心したい私にペイン達はついてくる。
「あいつがいるのはこの先のようだな」
「紫色の霧ってなーんか毒を食らいそうじゃねぇ?」
「俺達なら問題ないさ」
ここは私達でも知らない場所。ハーデスを倒すためだけのクエストを受けて探知マップを手に入らないと多分見つからなかった場所。いざ中に入ると装備から赤いエフェクトが漏れ出した。
「なんだこりゃ? ・・・げ、装備の耐久値が減少してんぞ」
「HPは減っていない。ということはこの霧は装備の耐久値を減らす毒の霧ってことだ」
「壊れない装備は、どうやら耐久値が減らないみたいだ。耐久値がある装備を外して進むしかない」
初期装備だけで歩かないといけないなんて危険な森だよねー。ハーデスの装備は【破壊成長】だから逆に居心地がいいなんて言い出すでしょ。武器以外の装備を外して初期装備で濃い紫色の霧の中を進むにつれて変なのを見つけてしまった。
「虹色の、木?」
「草と花も虹色になってんぞ」
「どーなってんだこりゃ?」
そう、虹色に輝いている植物が生えていた。でも、それはここだけみたいで奥の方の植物は虹色じゃないのがとても不思議だった。
「ペイン、なんか穴があるぞ」
「ハーデスの奴が何かしたんじゃないのかこれ」
「植物を虹色にして何がしたいのさー?」
「わからないが、もしハーデスがした事でこれを繰り返しているなら、道標になっているんじゃないかな」
道標? この虹色の植物の群生が? とにかくここで立ち止まって悩んでもしょうがないからハーデス探知マップを見ながら進むと、また虹色の植物を見つけることができた。それから何度も虹色の植物の群生を発見できたからペインの言葉通り、私達の道標になっていると確定した時。
ドガァアアアアアアアアアアンッ!!
近くで凄い音が聞こえた。丁度私達はハーデスがいる付近にいたからここまで爆発音が聞こえたんだ。
「相変わらずの威力だな。【エクスプロージョン】か?」
「ってことは、モンスターと戦っているに違いないな。どうするペイン」
「当然、俺達も戦うよ」
案の定なペインに異を唱えない私達は、ようやくハーデスがいる同じ場所に足を踏み込んだ。
「よっし、終わったぁー!!!」
何か達成感のある叫びをしながら両手を挙げる後ろ姿のハーデス。そして彼の目の前にはドラゴンみたいなモンスターが佇んでいた。でも少しして霧になって消えていなくなった。
「ハーデス!!」
「ん・・・・・? あれ、ペイン達。どうしてここにいるんだ?」
「お前を探しに来てここにいるんだよ。主にお前の妻が心配症でな」
ドラグ、何時もそれをネタにして私の魔法を食らうパターンを忘れていないよね? こっちに来てくれたハーデスは私を見て苦笑して謝って来た。
「ああ、公開処刑の動画でも見てしまったか。心配かけたなフレデリカ」
「・・・別に、どうせハーデスなら簡単にあしらって返り討ちをするって心配していなかったよ」
「その割にはいの一番に捕食の森へ駆けだして行ったよな?」
「しかも凄い怒り顔だったな?」
「それだけハーデスのことが好きだってことさ二人共」
カァァァーと顔が熱くなって赤くなった自覚をしながら私は全身を羞恥で打ち震える。
「そういやお前。あの虹色の植物は一体なんだよ? なにしたんだ」
ドラグの質問にハーデスはキョトンとした顔で小首を傾げた。
「虹色の植物? 虹色の実を置いた以外何もしちゃいないぞ」
「なるほど。あの穴は虹色の実を置くためのものだったんだな」
穴の理由はわかったけど、虹色の実を置いた理由は何かと聞くとペインと似通っていた道標の為に置いたらしい。じゃあ、あの実が何らかの理由で周囲の植物が虹色になっちゃったってことかな。
「それにお前らならもう知っていると思うが、ここ深淵の森の植物は植物に擬態しているモンスターだらけだからそれなりに苦労しただろ。装備の耐久値がへるんだしさ」
・・・・・えっ?
「「「?」」」
私もペイン達もハーデスから言われたモンスターの特徴に疑問符を浮かべた。だからかハーデスはこっちの反応に不思議がっていた。
「ハーデス、俺達はここに来るまでモンスターと戦っていないぞ」
「え、そうだったのか? じゃあ普通に素通りしたのか。俺もそうなんだけどあいつら、採取や伐採、騒がしくしたりすると襲い掛かるってラプラスから教えてもらったんだよ」
ラプラス? 一人で来たんじゃないんだって思っているとリヴェリアとアカーシャ、ラプラスにルルカ、征服人形の二人が森から出てきた。
「ハーデス。認めてもらったなら先に行くぞ」
「そうだな。それじゃ、俺達は先に行くけどお前らはどうする」
そう言われて私達は顔を見合わせる。目的のハーデスと会えたし私的には満足なんだけどね。
「さっきのモンスターは?」
「ああ、霧の龍か。認めさせたら報酬に色々と貰えたから一度限りの早い者勝ちな挑戦だったかも」
その『色々』が非常に気になるんだけどなー。
「そのうちの一つが、まさかのマイホームなんて信じられるか?」
「マイホームって・・・・・」
この森の中にマイホームなんてあるの? って私の想いを気付かないハーデスは先に歩き出して行ってしまうから私達も追いかけて行った。てっきりあのモンスターと戦うことになると思ったのに、私達が霧がない広い場所を通り過ぎてもモンスターは出てこなかった。一度きりってイベントみたい、そしてどんなマイホームを手に入れたんだろうか。本人もまだ見たことが無いようで凄く楽しそうにしている。
ハーデスと合流した私達は濃い霧の中を進み、そして突然視界が開けた。
「ここは・・・」
陽の光が降り注ぐ白い古城。視界に飛び込む眼前の光景に私は言葉を失った。ラプラスがとても懐かしむ言葉を漏らし出した。
「久しぶりに来た。ああ・・・長い年月を経て滅んでしまったか。だが、美しさはいまだ健在で安心した」
「古の都アレクサンドレア。かつて書物で名前だけは読んだことがあります。しかしここは、書物では決して描ききれない美しい都です・・・!!」
「「・・・・・」」
都の周囲には広大な田畑が広がり、豊かな肥沃の地であるのが一目でわかる。古の都アレクサンドロア、ついに到着を果たしたハーデスは達和気藹々で観光気分に切り替えたようではしゃぎだした。
「ついに、ついに・・・・・ナヴィゲーターの悲願の一つを達成しましたぁああああああ!!!」
「リヴェリア、アカーシャ、サイナ。俺のホームに負けないいい都じゃないか!」
「ええ、とても美しいです。この世界にこんな素敵な場所があるのですね」
「冥界じゃ見られない綺麗な光景・・・・・お父様が地上の進出を目指す理由がこれなのかな」
「祝:マスター、おめでとうございます」
ハーデス達が私達を置いて子供のようにはしゃぎ都を見回った。
「まるで外国にある古代の遺跡に来た気分だよ」
「古都アレクサンドレアって名前らしいなここ」
「まさかだが、これ全部ハーデスの新しいマイホームになったってことか?」
「俺達も見て回ろう。俺も見てみたいからね」
うん、私もここまで来てしまったら見たいかな。先に行ってしまったハーデス達を追いかけ、一緒に見て回ることにした私達は、本当にハーデスのマイホームとなった古都アレクサンドロアは国としての機能は失っていてもホームとして活用できることはわかった。流れる川や広い湖もあるし森もある。もしかしたらNPCが売買しているマイホームよりかなり最上級のマイホーム何かじゃないかな。城の中も探索すると手間暇かけて掃除をすれば再利用できる居住空間も、工房も大食堂も図書館もあった。これからハーデスがこのアレクサンドレアをどう活用するのかな?
「そろそろ夕飯の支度をしなくちゃいけないから、ここらで帰るよ」
そう言うハーデスが日本家屋に向けて戻り出すから私達もその流れで解散した。ハーデス、リアルで追求するからね!!
一旦ログインして夜食作り、夕餉の時間を三人と過ごしていた俺は―――。
「で? 美人な吸血鬼さんに押し倒されちゃって、その後どうなったのかな?」
「私もそこのところ気になるわ」
「・・・・・」
美少女から美女に尋問目的で詰め寄られ大変困っております。ソファーに座る俺の太腿に腰落とす燕、左右を固める瑠海と璃香に。
「お前達の想像に任せる」
「王様のくせにそーいう逃げ方はいけないと思いまーす」
「ハッキリと言えばいいのに、キスをされたって」
「まったくそうだよー」
とそんなことを言うがこの三人、妙に怒っている感じが払しょく出来ちゃいないのは何故なのか。
「正直に言って、はいそうですかって納得しないお前達の早々しやすくて言ってもだなぁ」
「うん、それとこれは別件ですからね」
「ゲームだからと言っても、一時的に女同士でも、ね?」
笑顔で物申すがその笑みの裏では絶対笑っていない。分かりやすいぞお前達。そして璃香は・・・・・。
「私が知らない、見ていないところで許していない相手とするのはダメだって、前言ったよね?」
「あれはどう見ても不可抗力だろ璃香さんよ・・・・・」
「大体アレはなんなのさー! 装備が爆散するって!」
「ああ、あれはスクショコンテストの最中にイカルを介して俺に渡してきたプレイヤーからの頼みなんだ。俺もスクショされる側としてポイント貰えるから、まぁいいかなって軽く受け入れた」
「「本当に軽っ!!」」
「でもまぁ、ゲーム内に下着の概念があるってわかって知った時はびっくりしたわ。水着があるのだから当然なのかしら?」
だったら男用のも作れたりするのか? と質問したら首を横に振られた。
「水着用ならともかく、下着用はまだ実装されていないみたいで作れないの」
「・・・・・ルシファーに頼めば案外できそうだなぁ」
「あら、魔王の奥さんが関わってたの?」
「バニースーツを渡してきたプレイヤーと、だがな。俺もまさかルシファーと関わっていたなんて知らなかった。何か知らんけどバニースーツを作る情熱を持ったプレイヤーに感心して手伝ったみたいで」
俺以外にもNPCと関わるプレイヤーはいるだろうけど、いるだろうけどあんな装備を作るこたぁないだろ。まさか自分の夫にそんな服を着させるためじゃないだろうな? 魔王、本格的に泣くぞ。
「だけど少ーし気になるな。装備の下の下着は皆同じか? 初心者用の装備だって多彩な一色だよな」
「それを知るために爆散する装備を着なきゃいけないのは嫌よ」
性転換した男にしてもらうからいい。機会があればの話だしなこれ。
「さて、8月31日はあと数日か・・・・・今週の火曜日、朱雀を狙うか」
「あ、そうだ。ペインからの誘いの話があるんだけど。まさしくその朱雀の攻略の話だよ」
「別にいいぞ。イッチョウ達は?」
「参加させてもらいまーす」
「私はどうしようかしら? 称号は特別欲しいわけじゃないけど朱雀って火属性のモンスターよね?」
あの見た目で火属性じゃなきゃなんだって話になる。でも、単純な火属性の攻撃をしてこなさそうではある。
「火は火でも炎・・・でも、単純な炎の攻撃をして来るとは思えない」
「どうしてそう思うの?」
「世の中には化学反応で様々な色の火や炎にする事が出来るからさ。それをゲームに取り込んで氷属性の炎や毒の炎、光属性の炎や闇の炎とかありそうじゃん」
「あー、なるほどー。じゃあ、朱雀は四神で神獣、聖なる炎とかだったりするかも?」
「魔王の王様にはちょっと辛い戦いになりそうです?」
ちょっとどころじゃないかもしれないんだよ燕君。溶岩魔人で炎を無効にすることできても璃香が言う聖なる炎が本当に実装されたらどうなることやら。
「取り敢えず、俺がやることは防御力を上げ直すことだ。うーん、プレイヤーの装備が一定時間ダメージを与えるなんて呪いのアイテムないかな」
「あっても作らないわよ。鍛冶師は壊れる前提で作るために存在していないのだから」
「でも結局壊れるじゃん」
「もう、そう言われると何も言えないじゃない」
ちょっとすねた瑠海の頭を撫でてからその日の夜でもゲームにログインした。徹夜してでもレベルも上げ直せねば・・・・・!!
「てなわけで、へいクリスタルモンスターブラザーズ!! 今日も俺がボールのサッカーやドッチボールをしようぜ!! かかってこいやー!!」
経験値増幅の課金アイテムを使い尽くす勢いで宝饗水晶巣に乗り込んだ。