「【同調リンク】。あれから新しいスキルが手に入ったから、【相乗効果】で―――」
「・・・はい、わかりました!」
「ユイとマイはもう少しだけ待っててくれ。絶対に朱雀は結界から解放される何かを仕掛けて来るから」
「「はい!」」
結界の中に閉じ込められた朱雀のHPが3割も削れている。対して挑戦者のプレイヤーは未だ0人のまま被害は被っていない。ダメージは食らっているがミザリーの回復魔法のおかげで直ぐに戦線復帰できるのがかなり大きい。このまま何事なければいいけど、と思いたいがそう問屋は卸してくれないだろう。それがフレデリカの【星の魔法】の効果の一つ、スキル封印が解けた時だった。
『―――見事です』
朱雀が翼を大きく広げた。何か仕掛けてくる兆候なのは誰から見てもそうだとわかる。
『勇者の力は神にも届きうる。誠に見事なりとしか言えません。ですが、何時までも私を鳥籠の中に入れられると思わないでください』
「ッ!! 全員、散らばらずに1ヵ所になって結界の外から出ろ!!」
「みんなー!! 一定時間経ったよ! 朱雀の力が解放されたから気を付けて!!」
ただの鳥籠となった結界から全員を退避させる。しかし、逃げる皆の背後で朱雀から激しく燃え上がる炎の攻撃の方が早くミィがその様子を見て叫んだ。
「フィールド全体攻撃だ!!」
「―――フェル、皆のところへ行け! イカル、【クイックチェンジ】!」
『グルッ!』
「ひゃっ、ク、【クイックチェンジ】! は、速いー!!」
フェルの背中に乗ってスタンバイしていたイカルが装備を変更して真っ白な鎧にするとHPが増えた。悲鳴を上げるが、朱雀が攻撃を放つ直前に退避する皆のところへ行けた。
「全員、イカルのところに集合! イカル! 【救済の残光】と【方舟】だ!」
『【救済の火葬】』
「は、はいっ!! 【救済の残光】! 【方舟】ぇ!」
急かされるイカルのスキルの宣言とともに周囲の地面が輝きイカルの背に四本の羽が生え、【身捧ぐ慈愛】とは違う天使の輪が頭上に出現する。同時にフィールド全体に燃え広がる炎。ハーデスを残してセキトと【巨大化】したミーニィの背に乗って宙へ退避するイズ達。彼女のスキルに感想を口にする暇もなく、イカルが次のスキルの宣言と同時に地面を照らす光が強くなり、数秒して二十人と一匹は光に包まれるとふわっと空中に浮き上がる。
『な、なんだこの力はっ?』
そうして空中に避難したのを確認すると真下からは大量の水が溢れ出し、凄まじい勢いでフィールドを埋め尽くしていく。灼熱地獄と化した炎が滅茶苦茶に押し流されていく中で二十人と一匹を包む光は強くなって目の前が真っ白になる。皆は水が引いた地上、しかし元いた場所とは違い朱雀の真後ろに移動、転移した。
「【水神の加護】【相乗効果】【大型化】【古代魚】【海竜神】!」
技が強制的にキャンセルされたことに驚きを隠せない朱雀へ、3つの大きな水球を従え、巨大なリヴァイアサンに変身したハーデスが朱雀の首筋に喰らいついた。
「えええええっ!!?」
「リ、リヴァイアサンだとっ!?」
「ベヒモスだけじゃなかったのかよ!!」
「・・・・・ますます化け物染みてきたなあいつ」
「あー、やっぱり手に入れてたなあの時に」
「予想できたからそこまで驚かねぇな」
「イカル、このまま維持を頼む」
「わ、わかりました!」
皆から離れ【八艘飛び】で空中移動でハーデスの長い身体に飛び移り駆け出すペインは叫んだ。
「ハーデス、そのまま捕まえていてくれ!」
『結構激しい抵抗するから早くな!』
長い胴体を駆使して赤い身体に巻き付く。その状態で自由な顔から朱雀の顔を目掛けて莫大な水量の塊を吐き出して攻撃するハーデス。
『ぐぅっ! なんて威力っ・・・・・!!』
「【破壊の聖剣】!!」
ペインの一撃が朱雀の片目に届き、赤いエフェクトを流出した様子に黙ってみているミィ達ではない。イカルにハーデスの身体の上に移動してもらえばミィ達は朱雀を巻き付いてる身体に降り。
「私達も行くぞ!」
『おおー!!』
動きを封じられた朱雀に集中砲火。スリップダメージは受けているもの、リヴァイアサンの長く太い身体で炎のベールが塞がった形でプレイヤーまで届かないでいた。
「【崩剣】!」
「【フレアランス】!」
「【ホーリジャベリン】!」
「おぉらー!」
「はぁっ!」
「僕、直接攻撃のスキルないんだけどね」
「「えい、えいっ!」」
「ここで使うか【勇者】【暗技】!」
「フレデリカ、サポート頼むぜ!」
「いつも通りねー」
「セレーネ、行くわよっ!」
「うんっ」
「メイプル、私達も!」
「わかったよサリー!」
「私も頑張ります!」
なので、袋叩きにされてHPがあっという間に六割も減ると朱雀の全身が太陽のごとく輝きだした。
『あ、ヤバイ!』
朱雀から緊急離脱。その拍子にバランスを崩してリヴァイアサンの身体から落ちたプレイヤー達も含めて丸のみにしたハーデス。
『【フレア・バーン】』
最高潮に達し、限界まで圧縮されていた計り知れない力が解き放たれた。光熱が朱雀から広がり、リヴァイアサンのお先から炭と化していき変身を解除されたハーデスの目が真っ白に染まった。
『・・・・・』
最大の技の一つを出された朱雀。フィールド全体、回避も防御も不可能な必殺技。これによりハーデス達が敗北に期しても朱雀は称賛に値するつもりであったが・・・・・。
『・・・・・は?』
あるはずのない、建造物が朱雀の一撃を受けても赤熱してはいるが、燃えていないどころか煙も燻ってすらいなかった。なんなのだあれは、と瞠目する朱雀の目に木製の扉が開いて。
「よ、よかった・・・・・これ、破壊不能だったのか!! ユーミル、ありがとうっ!!」
「朱雀の炎を受けても燃えない木造の小屋ってなにさー!?」
「フレデリカ、気持ちはわからなくはないが今はこの瞬間に感謝しよう」
「た、助かったのかよ・・・・・」
「もうダメかと思った・・・・・」
「私もだよん」
「ふぇぇぇ・・・・・」
な、なんだとっ・・・・・!? 誰一人も欠けず建造物から出てきて朱雀と対峙した。
『資格ある者よ。それは何なのだ』
「鍛治師の工房兼家だ。いや、本当だぞ?」
『そんなバカな話が信じられるものかっ!!』
「うーん・・・・・俺もこれには驚かされてる。なんで?」
運営side
「主任、あれはさすがにチートっす! 完璧に安置所になっちゃってるっすよ!」
「あの土壇場であのスキルを使って避難する頭がおかしすぎるんだ!! もっと他にあるだろう白銀さーん!!」
「今回だけは見逃すしかないですよあれ。急に使用不能にしたら戦闘中にバグの影響が起きるかもしれません」
「ああもう、あの神匠のNPCが白銀さんの知らないところで小屋を魔改造したのがいけなかったんだ! 本人達も不思議がるのも無理はないってば! 本当はあれ、壊れるものだったんだぞ!?」
「しかも、国中の鍛治師のドワーフが総出で変わらないモデルの工房を真新しく、隕石が直撃しても壊れない工房にしたっすよね」
「あそこまでドワーフに好かれてるプレイヤーは白銀さんしかいないです。ドリモールの一件で好感度が限界突破しましたから」
「心開くのが一番難しい設定にした宝石匠のNPCも、今じゃあ呼ばれたら尻尾を振る犬みたいだしよぉ~」
「まぁ、そのお陰で過疎化して絶滅危惧職業になっていたプレイヤー達が、勢いを増してやっとクエストを進めるようになったっすから結果オーライで」
「今じゃあテイマーのプレイヤー限定で重宝されてちやほやされてます。細工師のプレイヤー達は感涙で喜んでますよ」
「確かにそこんとこは白銀さんに感謝しかないんだが。はぁ・・・・・しょうがない。イベントの戦闘以外なら使用を可にするか」
「お、見た目どおり太っ腹っすね」
「やかましい!!」
気を取り直して戦闘に臨む両者。先に動いたのは朱雀だった。
『またその家の中でやり過ごさせぬようにする。玄武と青竜もして乗り越えたのだ。この程度簡単に乗り越えれるだろう資格ある者達よ』
高く飛び上がった朱雀からプレイヤーをどん底に沈める技の名前を口にした。
『【天変地異】【フィールドダウン】!!』
朱雀を残してフィールドが激しい地震で揺れ奈落の底に落とされていくプレイヤー達から怒りの叫びが。
「毎回毎回、お前らそれは止めろよな本当おおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
悲鳴と絶叫が深淵の下へ沈んで消えた。しかし、臨戦態勢の構えを解かず見下ろす朱雀。この程度で倒れるものなら、他の四神に打ち勝つことなどできなかった。ならば、彼の者達は必ず―――!!
「こんちくしょうがぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
そんな叫びと共に下から赤い海が浮かび上がり、それに乗る形の大型の水晶の艦が浮上してきた。しかも朱雀と同じ高さまで浮いているではないか!!
「こんなことあろうかと、南極から取り寄せてきたぞ!!」
「いやー、本当にまた使う日が来るなんてね」
「今度は壊れないように扱わないとな」
「相手はリヴァイアサンじゃないが、これでいけるのか?」
「やるしかないだろ」
絶句。まさかの浮遊する船で生き延びるとは誰が思った? 朱雀は暫し放心したあと、嘴を大きく開いて大笑いをした。
『お前達はやはり今までの資格ある者達と格別に異なり越えている!! ああ、素晴らしい素晴らしい!!』
絶賛、称賛する朱雀の全身が神々しい炎に包まれながら膨れ上がり、炎の身体となった朱雀は水晶の艦を見据えた。
『これが私の全力だ。この私にどうやって挑むか見せてもらおうか!』
バチッ! と放電した身体を捻り、ドリルのように回転して水晶の艦を貫かんと高速で接近した。対して二代目の水晶の船は船首が巨大なドリルに形状変化して、激しく回転しては朱雀と真正面からぶつかった。
「心の準備はいいかーイカル、メイプル!」
「は、はいっ!」
「いつでもいいよー!」
甲板に機械の三連砲の大砲。その中にハーデス、イカル、メイプルが砲弾代わりに入っていた。ドリル同士の鍔迫り合いは朱雀が競り勝つ前提で動いていたのだ。
「もっと、マシな手段とか方法とかないわけ?」
「あると思うが、今は信じよう」
「これでハーデスの色にメイプルが染まらないといいんだけどね」
操舵を握るサイナの合図で、セレーネが砲身を朱雀に定め三人を砲撃した。水晶のドリルと競り合う火炎の竜巻に向かって飛ばされた三人は、手を突き出し、大盾を前に出し、大の字となって―――。
「「「悪食!!!」」」
炎の化身となった朱雀を貫いた。
『ッ!?』
ドッパァァァアアアアアアアアアアンッ!!!
炎の身体が激しい音を立てて飛び散って、本体を晒した朱雀の両翼と胸部に穴が空いた。HPが三割も削れ炎のベールも剥がれた。
「行くぞドラグ」
「待ってたぜ! 【勇者】【大地の怒り】!!」
斧を巨大化させて艦から力強く朱雀の片翼と袈裟斬りに叩き下ろした。
「【勇者】【エクスカリバー】!!」
もう片翼はペインが担当して剣から放つ極光の斬撃で両断。そし袈裟斬りに腹部も斬ったことで三割削れた。
「最後だ、【炎帝ノ国】!!」
甲板から赤い海に落ちる朱雀を見下ろすミィ達。
「感謝する【蒼龍の聖剣】」
瞑目して今日まで辛酸を舐めさせられ、敗北した記憶を脳裏に浮かべるミィの開いた目は強い決意の光が籠っていた。
「これで今日までの戦いは終わりにするぞ朱雀!!」
全員が艦から飛び降り、自分達の最大級のスキルを発動した矢先。
『甘いっ!!』
赤い海から炎が巻き上がり朱雀の身体に溶け込み、HPが回復し始めた。
『この海のすべては私の傷を癒すためにある!! あなた達の攻撃など、今さら―――!!』
「だが、そこに最高の攻撃力がお前に当たったらどうだ?」
不適に言うミィの背後から早く通りすぎた黒と白の小さな塊。
「「【ダブルスタンプ】!!」」
八つの大鎚、十六の死の鉄槌が朱雀にぶち当たり、回復した分のHPがまた逆戻りした。
『ぐあっ!? ま、まだだ・・・・・ッ!!』
「じゃあ、おまけにこれね♪」
「当てるっ!」
甲板から一つの高威力の爆弾に矢が朱雀の顔面に当たった。
「赤い海か。落ちたらどうなると思うよ?」
「うーん、スリップダメージかな?」
「即死ではないことを願うよ」
三人のアサシンが高速で最大連続攻撃のスキルで朱雀に斬る。そのまま赤い海に落ちる前にドレッドが【八艘飛び】で二人を回収して船に帰還できた。
『おのれぇっ!!』
朱雀の嘴から巨大な灼熱の火炎球を放ってミィ達を迎撃。
「させないよ【海大砲】!」
その火炎球と同等の水の塊が艦から落ちてミィ達を守った。
『くっ! だが翼は癒えたっ!』
両断されたはずの翼が元通りに生えて飛行能力を取り戻した朱雀が勝手に落ちてくるミィ達から離れようとホバリング―――。
「逃がすかっ!!」
「そうです!!」
『なっ!?』
二体の溶岩のベヒモスが朱雀の翼を噛み砕く。前足も使って拘束しつつ、【飛翔】でミィ達の方へと押し上げた。
「―――朱雀」
赤い短剣に業火の炎が膨れ上がる。ミィの赤い眼は朱雀しか見えていない。
「今度こそ終わりだ」
―――【炎帝】ッッッ!!!!!
『ッッッ―――ァ!!!』
一人の炎の女帝と仲間達の一斉攻撃。朱雀へ今までの想いを込めて放った一撃は確かに朱雀に当たったのだった。