カラーン、カラーンと荘厳な鐘の音がゲーム世界に鳴り響く。ログインしている全プレイヤーの殆んどが何事かと目を丸くする中、アナウンスに思わず動きを停めて耳を傾けた。
『ニューワールド・オンラインをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』
『現時刻を持ちましてプレイヤーにより四神の青竜、白虎、玄武、朱雀の全てが倒されました』
『大陸全土のNPCがその偉業に対し英雄として祭り上げます』
『全ての四神がプレイヤーの実力を認めたことで新大陸の開拓が可能になりました。これより新大陸でもプレイすることが可能になりました。これからもNWOをお楽しみください』
「新大陸っ!?」
「え、でも、どっちから行けばいいんだ?」
「とにかく探すぞ!」
『おめでとうございます死神・ハーデス。あなた様は全ての四神を撃破したことにより、天界の神々がプレイヤーに対し絶賛と称賛を送り、天界へ招待されます』
『死神・ハーデスが四神を倒すまでに至り、重戦士〈大盾使い〉の職業を2次転職せずプレイをし続けた記録を世界の歴史に刻まれました』
『おめでとうございます。神々は死神・ハーデスの戦果を祝して重戦士〈大盾使い〉を神の名を冠する〈守護神〉に至らすことに決定しました』
『神々が死神・ハーデスに専用アイテムを授けました』
『闇神・戦神・海神・樹母神・天神・地神・光神が死神・ハーデスの功績を讃え伝説の一ページに刻み込みました。七人の主神は死神・ハーデスに称号【英雄】を送ります』
『死神・ハーデスは七人の主神の恩恵を受けます』
『死神・ハーデスは既に【七天八祝】を所持しています』
『おめでとうございます。死神・ハーデスはスキル【七福神】を獲得しました』
『おめでとうございます。全プレイヤーの中で神の名を冠する職業を複数取得した死神・ハーデスはスキル【天上天下唯我独尊】を獲得しました』
『七人の主神は死神・ハーデスがテイムした七つの精霊に「神化」を促しました』
『水臨大樹の精霊と七つの精霊の長が死神・ハーデスに敬服しマイホームに訪れるようになります』
『神獣・幻獣のNPCモンスターが死神・ハーデスに敬意を示します』
『四神を主神、神々に認められたプレイヤーは全てのNPCとの会話時に補正が加わります』
「・・・・・」
・・・・・ドサリ。
「あ、倒れた。え・・・まさかまた、なの?」
「そりゃあ四神全部ブッ倒したんだから何かしらあるだろ」
「いいことがあり過ぎて処理能力が追い付けなかったんだろ」
「それを後で聞くとして、ハーデス。朱雀が待っているよ」
・・・・・ハッ!?
「そうだったそうだった。忘我の彼方に旅立ちそうだった」
「うん、まーた凄い称号とかスキルが手に入ったんだね? ま、私も何だけどねー。【勇者】スキルゲットだよん」
「私は三回目だから称号が手に入ったわ」
「うん、凄い、ね?」
「わーい、サリー。私も【勇者】になったよー!」
「うん、私もだよ。しかもこの効果は凄いね。ハーデスが全プレイヤーの中で最強な理由がこういうことかー」
「ハーデスさんと同じ称号です!」
「お姉ちゃん、これ凄い! 私達もっと強くなれるよ!」
「うん、そうだね。これからももっと頑張ろう!」
「・・・・・ふぅ」
「お疲れ様ですミィ。やり遂げましたね」
「やっと倒せたぜ。しかもこんな強力な称号も手に入るならまた頑張れるな」
「あっちは二度も三度も手に入れたってことなら、俺達も負けえちゃいられないな」
「ああ、ここからだ」
「はぁ、疲れた~・・・・・」
全員が【勇者】スキルか称号を手に入れた様子で、戦闘の後の雰囲気が柔らかくなっていた。そんな俺達の前に佇む朱雀。
『資格ある者達よ。感服しました。特に死神・ハーデス、あなたは私達を全員相手にして打ち破ったその強さは神も認めるほどです。もはやこの大陸においてあなたに敵う者は存在しないかと思われます』
「そうだと思いたいけど、油断できない相手はまだたくさんいることは知っているよ」
『その通りです。世界は広い。まだあなたより強者の存在は必ずいるでしょう。これからも慢心せず邁進していきなさい。そのための力を授けましょう』
『スキル【フレアバーン】を取得しました』
『勇者の光輝』緑/青/白/朱
おっし、こっちのアイテムも全部揃えたぞ!! スキルの方の詳細はダメージを受ければ受けるほど、ダメージの総数で範囲と威力が変わるカウンター系のスキルなのか。HPが1000だったら・・・・・10Mぐらいか。まぁ、ダメージを受けながらずっと回復できる状態が出来るし100Mも余裕で越えるかもな。
『死神・ハーデス。全てのオーラを集めましたね。誠におめでとうございます』
「ありがとう。これはこのまま持っていればいいんだよな?」
『いえ、少々それに手を加えさせてもらいます』
朱雀が綺麗な声を高らかに叫ぶと緑と白、青、二つの金の魔方陣が地面に浮かび上がってそれぞれの魔方陣に玄武と白虎に青竜、麒麟に黄龍が現れた。
『ようよう!! まさか全力の俺達を本当に倒しちまうなんてやるじゃねぇーかよ!!』
『本当にのぅ。あっぱれ、見事としか言えんわぃ』
『さすがだな資格ある者よ』
『ああ、まったくだ』
『おめでとうございます』
おおう、神獣勢揃いで祝いを受けるとは・・・・・。
『では、そのオーラを掲げでください』
「こうか?」
四つのオーラを天に掲げると四神の足や手、翼が一つに重ねてきた。するとオーラがそれぞれの色に眩い輝きを放って宙に浮きだすと・・・・・。
「カメッ!」
「グルルル!」
「クォオオー」
「ガァッ!」
四神を可愛い小さいフォルムにした姿となった。あらやだ、可愛いじゃないか・・・ってなんで?
『それらは私達の現身、分身体と思ってください』
『俺達を倒したからにはお前に直接力を貸し従ってもいいんだが、四神の俺達を使役することはできねぇ』
『協力という形ならば構わないが、我々は四方を守護する存在。おいそれと離れることは出来ん』
『ならばわしらの分身体を生み出し、お主に使役してもらうことで叶うことにしたのじゃ』
なるほど・・・・・システムの穴を潜ったってことか。これなら四神の分身体を使役してもいいと。
『そして分身体は資格ある者の装備に憑依することで私達の力を振るえるようになります』
『悪用すんなよ? したら、お前でも容赦しないからな』
『努々気を付けるように』
『これからもお前達を見守り続ける』
朱雀と麒麟、黄竜を残していなくなった魔方陣の光に包まれていなくなった白虎達のあと、麒麟と黄龍が話しかけてきた。
『すべての四神を倒したあなたには願い事を叶えて差し上げます』
『何を願う、何を欲する資格ある者よ』
また急に困ることを。前回はネコバスをお願いしたけど・・・・・。あ、じゃあこれも叶うか? 殆どどうでもよくなったから気にもしなくなったけど、一度ぐらいはな。
「神聖教和国の聖女と話がしたいから会いたい」
叶えてもらう願いをどうか聞き届けて欲しいのに、麒麟と黄龍が脂汗を滝のように流し始めるのはどうして?
『そ、それはダメだ! それだけは!』
『他の願い事にしてください!』
『あなた達、どうしたのですか? らしくない反応をして』
本当にその通りだ。珍しい反応だこれは。交流がないペイン達も不思議そうに見ている。
『朱雀、お前は何も知らない。知ったらあの国に近くことすら忌避するぞ。例え世界が滅んでも、あの国や人間達だけは生き残ると断言する』
『逞しく生き残れるならよいのでは?』
『そだけならまだいいのです。彼等は精神操作を受けたように頭がおかしいのです』
『歴代の魔王もあの国のヤバさを知ったら最後、全力で隠居する勢いで逃げ出す程のものだ』
『魔王や悪魔がかわいそうな程ですね。昔は本当にまともな精神の者達だったのに、今では・・・・・ああ、思い出すだけでも震えがっ』
馬が震えるところみたことないけど、変な震え方をする麒麟。黄龍も頭を抱えてる。待って? そんなになのか、頭のヤバさは。俺、そんな連中と敵対中なの?
『しかも、元々そこが我々が長らく滞在していただけあって、彼等に崇められていましたが』
『・・・あれは、邪神か何かに崇めている方だった。だから資格ある者の家に世界樹や虹の実などが育てられている事実に、我々はあの国から遠ざかる最初で最後の好機だった』
『言い訳もできる理由がなければ、離れることはできませんからね。・・・そこのヒーラのあなた』
麒麟がミザリーに声をかけた。
『神聖教和国に入国したら、もう逃げることは叶いません。あの国には決して近づいてはなりませんよいですね』
「わかりました」
聖女と会うことはできないか・・・・・だったら。
「聖獣って知ってる?」
「『確かに知っています。それが?』
「南極にいるんだけど、会うたびに襲われて困ってるんだ。何か方法はないか?」
『今のあなたならば、襲われないかと思いますが。もしも襲われたのであれば協力しましょう』
じゃあ、願い事は一度だけの助力ってことにしますか。麒麟と黄龍もそれならば、と受け入れてくれた。
「でも神聖教和国は興味あるな。行ってみたいかも」
『『行ってはダメだ!!』』
『そこまで、なのですか』
本当にな。
『最後にミィ、と言いましたね』
「ああ」
『あなたは幾度も私に敗北を重ね幾度も挑戦を繰り返したその不屈と熱意は資格ある者ではなくとも称賛に値しておりました。そしてついに私に打ち勝った。これは個人的な贈り物です』
俺達には分からず、ミィだけしかわからないことが目の前でされて、ミィの目が丸くなったことから思いがけないものを手に入れたに違いない。
『あなたの進む道に火の加護が守ってくれるでしょう。どうか息災であることを願います』
「・・・・・感謝する」
こうして俺達は朱雀が構える洞穴を後にしてフィールドに出た。
「いやー終わった~! ほんともう四神は強すぎだよ。玄武の時はよくもまぁ、勝てたと思うよ」
「今回は誰も欠けずに攻略できたのは達成感が凄いな」
「これ、どっちが同じギルドメンバーだったら絶対に死に戻りした味方が出てるよねー」
「だな。【蒼龍の聖剣】と攻略できたのが大きいな」
「だけど、次敵対するイベントだったら手加減なしで勝ちに行くからな」
「へっ、上等じゃねぇか」
「私達は簡単に負けるつもりはないよ?」
「なら、手合わせのつもりで勝負でもするか」
「いいですねー! 私、負けませんよ!」
和気藹々しながら戦意を示す両ギルドメンバーの話を聞きながら色々とチェックで忙しい俺はミィに声を掛けられた。
「ハーデス。今回は本当にありがとう」
「同じ共通の目的で、協力して戦わないと勝てない相手なのはよくわかっているつもりだった。そこにミィ達がいたのはきっと必然で運命だったろうな」
「運命、か・・・・・他の四神を倒したお前や【蒼龍の聖剣】と出会うのも決まったいた運命なら、私はこの運命に感謝だ」
綺麗に笑むそんなミィに訊ねた。
「【炎帝ノ国】は他の四神にも?」
「無論だ。お前達【蒼龍の聖剣】だけ王者にするつもりはないからな」
「あー、これ、塩を送っちゃった? でも、新しいスキルを手に入れたから負かされるつもりはないぞ」
「次はこちらが勝つ」
途中で止まり、二つのギルドに分かれる。
「だが、今回はお前達と戦えてよかった。また機会があれば」
「共闘しようなー」
お疲れ様でした~!!
運営side
「四神戦、最初は白銀さんの一人抜けで終わりましたね」
「そうだが、まだこれで終わった訳じゃない。旧大陸は前座に過ぎない。新大陸が本番だ。四神も倒さないで新大陸に行ったら地獄を見ることになるんだからな」
「でも、強すぎるあまりに誰も挑戦しなくなりましたよ」
「そこなんだよなー。でも、神相手をするんだからこれぐらい強くなきゃ肩透かしだろ」
「もう少し弱めにします? それとも弱くなるギミックでも加えます?」
「そうだな・・・・・四神と対なる四凶を加えてみるか。白銀さんには無意味になるが別の旨味を与えればいいよな」
「となると、また徹夜作業の開始ですねー」