長い夏休みが終わり二学期が始まった。久しぶりに通う神月学園に登校して夏休み前にSクラスから奪ったSクラスの教室に入る。
「蒼天の王様、じゃなかった学園長が言っていた召喚獣システムになっているのかな」
「これから調べればいいだけだ。ま、机を見りゃあ一目瞭然だがな」
悪友の雄二と全員の真新しくなった机、そこに置かれている綺麗な宝石が埋め込まれている機械的な黒い腕輪。黒金の腕輪みたいな感じな道具を取って眺める。
「これを付けて試召戦争をするのじゃろうか」
「・・・・・用途、不明」
秀吉とムッツリーニも自分の机に置かれてあった腕輪を持って僕達のところに来た。
「あの学園長がどんな魔改造を施したのか授業が始まる前に調べてみようぜ」
「じゃな」
「・・・・・異論無し」
僕も同じ気持ちで腕輪を腕に嵌めた。でも、それ以上の使い方が判らない僕等は宝石を触れたり押したり、スイッチがないか調べてはみたけれど、どうやって使うのか分からないまま朝礼の時間になっちゃった。
「さてお前達。既に配付された黒い腕輪を身に付けているな。そのことについて学園長から説明される。くれぐれも騒がしくせず静かに聞いていろよ」
鉄人の話の後、校内放送が聞こえてきた。
『おはよう若人の少年少女達! 学園長のイッセー・D・スカーレットだ! 長い夏休みを満喫できたか? ちゃーんと宿題をしてこなかった者はNWOを楽しむ他、童貞を卒業して一皮むけた男子や、夏を境にイメチェンした女子も可愛さを磨いただろう。かく言う俺も夏を満喫して来たぜ』
くっ、僕はそんな素敵な出会いも大人の階段も登っていないよ!!
『その魔改造を施したこの学園について説明するぞ。まずは全生徒の机に置かれてある腕輪は教師の同意を必要しない小型の召喚システムの塊だ。調べたり召喚の呪文を唱えてみた生徒もいるだろうが、それは機能を停止したままだから動かせないぞ。まずは起動、アウェイクンと唱えて見ろ』
「えーと、アウェイクン!」
うんともすんともしなかった腕輪に光のラインが浮かび上がり、宝石も淡く光った。
『光のラインと宝石が光ったらそれが起動状態だ。その状態なら教師の承認を必要とせず召喚獣を召喚できる。言っとくがまだ言うなよ? するなよ? 召喚はまだダメだぞ?』
おーっと、危ないっ。試しに召喚しようとしちゃったよ! でもクラスメートの何人かが先に召喚してしまって、鉄人に睨まれちゃってる。
『その腕輪一つで点数の回復試験も出来るし、お前達の総合点数が学食の料金代わりにもなるからどんどん利用してくれ。そして他にもその点数を使えるのは、そのクラス限定の召喚獣の装備と能力の購入だ。自分の机の台の部分を持ち上げて見ろ』
「台?」
夏休みになる前の机じゃなくなってる机の台を掴んで言われた通りに持ち上げると、パソコンみたいに上げることができて・・・って、画面があるからまんまパソコンじゃないかこれ。あれ、なんか窪みがある?
『全クラスの机はパソコンにしたが筆記試験以外は常に閉じておくように。開いたパソコンに窪みがあるだろ? そこに起動した腕輪を嵌めるとパソコンは起動する。やってみろ』
促される僕等は腕輪を外して窪みに入れると、暗い画面が明るくなって、神月学園の紋章が浮かび上がったと思ったら・・・・・画面の中で僕の召喚獣がまるでアニメのように出てきた! その隣に僕の点数と思しき数字とゲームみたいな選択する一覧が浮かび上がった。
『画面が起動したら一覧に装備・能力・回復試験。あとお遊び気分で加えた召喚獣の装飾品アイテムも買えるようにした。回復試験は試召戦争以外で使用できるのは一日三回まで。回復できる点数は一問間違えるまで制限なし。学食の為に点数を増やすのも、戦争の為に事前から増やしておくのも良しだ』
さ、三回か・・・・・少ないなぁ~・・・・・。
『それから試験召喚獣戦争のことについて語るぞ。各クラスの教室の壁や扉は防音性になっているため、廊下の騒音を気にせず授業や勉強に取り組むことにしておいた。そして今後は戦争が始まる度に授業が出来なくなるようなことはない』
授業が出来なくなることがない? 確かに試召戦争の時、先生の立ち合いと各教科フィールドの展開に必要だから戦争に駆り出されて、他のクラスは自習するしかないけど。どういうことなんだろう?
『今後は戦争をする場合、各教科の教師の立ち合いのルールは無しにした。さらに得意科目を選択した状態で召喚、例えば得意な国語の科目教科で敗れた場合は、継続中の戦場に復帰してもその日の戦争中で再び国語の教科を選ぶことはできない。別の教科で戦ってもらうルールに変更させてもらう』
「はぁっ!?」
「科目は自由に選べても、一度戦死したら最初に選んだ得意の科目で戦えなくなるのかよ!?」
「俺達が不利じゃねぇか!!」
学園長に不満をぶつけるクラスメート達の怒りを露にする。
「「・・・・・」」
雄二と大和に至っては、学園長の考えを探ろうと静かに考えている様子だった。
『それとついでに、今月から赤点は3つじゃなくて1つに変更だから』
「「「「「ふざけんなっー!!!」」」」」
『ただし、その救済措置として特殊授業である「召喚獣授業」を設けた。この授業はどれだけ召喚獣の操作が巧みにできるかのもので、合格したら赤点の免罪符を得られるものだ』
ピタッ。
あ、皆の怒りと騒ぎが収まった。
『あとはそうだな。同じ学年でしかできなかった試召戦争、その隔離を撤廃して2年生と3年生、今月から1年生も参加させて学年別関係なく戦争をすることを許可しようか』
へぇ、1年生も戦争をさせることにするんだ。
『戦争の申し込みはこれまで通り学園長の承認の印が必要だから、戦争を仕掛ける相手の同意は忘れずにな。ああ、そうそう。戦争に勝ったクラスは点数とは別のポイントを進呈するから。1000ポイントあれば召喚獣の装備や能力、学食代も浮くしおかずも一品は増えるだろ。それと全校生徒の一限は自習にする。次の授業まで慣れておくように。以上、学園長からのお知らせだ』
そのあとすぐ、鉄人は教室からいなくなって僕達は自習の間に召喚獣の装備や能力を調べるんだけど。
「俺様の総合科目の点数じゃなにも買えねぇー!!」
「Sクラス用の装備と能力だから、それ相応に高いんだね・・・僕も手が出せないや」
「大和はどおー?」
「ギリ、足りない」
「俺も買えねぇや」
「自分だ」
「Fクラスの私達には不相応ってことなんだろうね」
Fクラスの僕達はS級装備も能力も買えずにいたのだった。だから画面の中にいる僕の召喚獣の格好はいつもの学ランの格好のまま。能力の方は買えるけどそれも割高で学食と天秤を図るようなものだった。
ケンティ
「だめじゃな。ワシらは身の丈に合わぬ場所に居座っていると言っても過言ではないぞぃ」
「・・・・・逆に弱体化」
「それじゃあSクラスの教室にいる意味なんてないじゃないの!」
「私は装備だけなら一つ購入できますけど、全部の装備を整えるのに点数が足りません」
「ちっ、あの学園長。食えねぇことをしてくれる」
不満気に舌打ちする雄二。食えないって何が?
「うんむ? 雄二よ、何が言いたいのじゃ?」
「ババア長より一枚も二枚も上手でやり手だ蒼天の王様は。俺達に得意科目だけ戦わせないようにしたのも、点数で学食を食べられるようにしたのも、召喚獣を強くする装備や能力も点数で買うようにしている。それもこれも俺達の学力を向上させる方便だからだ」
「坂本、どういうことよ」
「まだ判らないのか? 赤点を一つにされた以上、苦手な科目も必死にお勉強しなきゃいけないんだぞ。新しい学園長様は飴と鞭の使い方が巧み過ぎる。完全に俺等をガキ扱いにしていやがるのが気に喰わねぇがな」
雄二だけ気付いたことを言われても僕達はちんぷんかんぷんだった。だから雄二は呆れた顔で深いため息を吐き出した。
「バカにも分かりやすく言うと、何かするにもやるにしても蒼天の王様はそれら全部、点数を必要にさせているんだ。じゃあ、その点数をどうやって増やす」
「そりゃあ勉強だよね?」
「そうだ勉強だ。日本史が得意バカ明久、数学が得意島田、保健体育が大得意なムッツリーニ。だがそんなお前らが戦争中で得意の科目で戦死してみろ。戦争に復帰しても自分の得意科目じゃなくて苦手な科目で戦うことになるんだぞ」
「そんなの、戦死しなきゃいい話でしょう」
「Bクラス並みの点数しか出せないお前が、Bクラス以上の相手に、しかもお前より召喚獣の操作が上手い相手と戦っても戦死はしないと胸張ってまだ言えるのか?」
美波は雄二に反論できず、悔し気に口を閉ざした。
「ムッツリーニだってそうだ。最大の攻撃力は最大の弱点になり兼ねない。保健体育以外、お前は最悪明久より戦力にならないんだぞ」
「・・・・・」
「明久は日本史は得意がそれ以外は平均的に低いものの、召喚獣の操作はハーデスと松永を除いてお前が一番優れている方だ。点数や学力何て関係なく誰が相手でも強くなれるだろうその強みが、お前の唯一の長所だ」
珍しくあの雄二が僕を褒めてくれている、だって?
「雄二・・・・・変なモノ食べちゃった? 保健室に行った方がいいよ」
「輝け俺の足ィッ!!」
僕の顔を狙った回し蹴りが放たれ、上半身を後ろに傾けながら顎を引いて間一髪避けた! 人が心配してあげたのにいきなり蹴ってくるなんて!!
「バカがバカなこと言うからだ」
「貴様ッ!! 僕の優しさを返せ!!」
「てめぇの優しさ=バカだからすぐにゴミ箱に捨てたぜ。ったく、バカのせいで時間を無駄にした。とにかく、あの学園長は自分の得意科目以外の科目の教科も勉強させる環境に整えていたんだよ。赤点を一つにしたのもそれがいい証拠だ。だから他の教科にも力を入れて点数を増やさなきゃいけないんだ。わかったか」
そこまで言われて判らない僕達じゃないけど、一言言わせて欲しい。王様、いや学園長・・・何てことをしてくれたんだぁー!!!
「じゃあ、今からでも回復試験をしなくちゃいけないわけ?」
「ああ、そうだ。今の俺達は今すぐ他の連中でもSクラスに鞍替えできる格好の的だ。松永とハーデス、姫路の三人しかいない最強のカードばかり使うとなると、必ずボロが出る。だから俺達も全体的に教科の点数を底上げしなくちゃならないんだ。得意科目で戦死しても安心できる戦いを可能にするためにな」
「ふーん、坂本君、理解しているよんハーデス君」
『・・・・・腐っても神童と呼ばれていた男』
「ふふふ、これからの戦争はどうなるか楽しみだよ」
『・・・・・Fクラス、お手並み拝見』
その日の夜―――。
「てなわけで、それから色んなクラスから戦争を仕掛けられて大変だったよー」
「俺と燕以外、召喚獣の装備や能力が買えない状態だったからFクラスだけはいつもと変わらない普段通りの戦いをするしかなかったがな」
今日あったことを言えの中で留守番していた瑠海と璃香に話した。当の二人は召喚した俺の召喚獣をいじくっていてとても興味津々のご様子だった。
「学校の話はいまいち呑み込めないけれど、蒼天の技術ってこんなこともできるのねー」
「しっかりと触れることができるし。これ、物にも触れることができるの?」
「できるぞ。腕力はゴリラ並みにあるから重たい物も持てる」
「「それは凄い」」
ふふーん、だろう?
「この召喚獣って、まるでリアルにできるゲームのキャラクターみたい。ねぇ、NWOの私達のキャラクターも召喚獣みたく召喚出来ないの?」
「調整すれば可能だぞ。なんならスキルの再現まで可能だ」
「うわ、それ面白そう! 私も自分の召喚獣で戦ってみたい!」
「私も興味あるよ」
「じゃあ、二人も通ってみる? 事情があって何人かの大人も学園の生徒として過ごしているから」
その一人が俺でぇーす。燕の提案に目を丸くして、本気なのかと疑いの眼差しを送って来る。
「え、本気で言っている? 大人の人も高校に通ってるの?」
「「本当」」
「どうなっているの、二人の学園って・・・・・」
さぁ、俺がそうしたわけでもないからどうしてなんだろうかねぇ・・・・・。
「さらに言うと飛び級した小学生も通っているから、本当に意味が分からん学園だ」
「小学生って、嘘でしょ」
「しかも九鬼財閥の家の末娘だよん」
「よりにもよって有名な財閥の娘だし」
そうなんだよ。そんな財閥に狙われているんだから厄介極まりない。隙を見せたら絶対に飛び掛かってくるだろうし、なんなら不法侵入してきそうだな。用心をしないと。