いや、あのなー? 【幼齢期】のスキルが得られる薬を売った矢先、一時間も経たずに完売ってどういうことだよ。それをラプラスに教えたら教えたで腹を抱えて大爆笑。また大量に補充してやる、と頼んでもいないのに自ら率先に動いてくれるし。
さらに言うならノーフがあの神社でGじゃなくて米を奉納したら俺の知らないことが起きて神酒が手に入ったってなにさ? イカルにまってもらい、気になって神社のところに向かうと長蛇の列が出来上がっていた。これ全員、南極大陸に向かうプレイヤーなのか? ・・・・・夜中にしておくか。お、並んでいるプレイヤーの中に同じギルメンのプレイヤーがいるな。
「タゴサック」
「・・・・・誰だ?」
「ああ、性転換したままじゃわからないのね」
【憑依】解除するとタゴサックと俺を見ていた数人のプレイヤーがギョッと目を張った。
「白銀さんだったのか! しかもそのキツネ、九尾のキツネか!」
「クズハのスキルで性転換していたんだ。で、タゴサックが並んでいるのはこれから南極大陸へ?」
「いや、もう白銀さんも知っているだろうけど神社に米を奉納する為なんだ」
そっちか。俺もしたいが人が少ない時にすると決めたばかりだからなぁー。
「神社を置いた俺でも知らなかったことだよそれ。他に何かわかったら教えてくれ」
「わかった。首を長くして待っていてくれ。そうだ、それと少しだけど白銀さんに渡しておくよ」
タゴサックからトレードで受け取ったのはもち米の稲だった。・・・・・稲、だと!?
「これ、どこで手に入ったんだ?」
「白銀さんが九尾のキツネの関するクエストを攻略したからか、南極大陸で新たに販売されるようになったんだよ。大量購入はできないけど、白銀さんならあっという間に増やせるだろ?」
「お、おおーっ・・・・・クズハ、もう一度【人化】と【憑依】」
「コン」
もう一度九尾のお姉さんに性転換した俺は、タゴサックに感謝を込めて九つの尻尾と一緒に抱きしめ、頬にキスをした。
「ありがとう! 大好き! これですぐに畑に植えられるよ!」
「~~~っ」
「またね、タゴサック!」
彼女を残してホームへとんぼ返り! やったー!!
「・・・・・い、いい匂いしたし、色々と柔らかった」
何かタゴサックが顔を真っ赤にして震えていたのを俺は気付かなかったけどな!!
「オルトー! 半分の畑米の稲を抜いて空けたらこっちの稲を植え替えるぞ!」
「わかった、ご主人!!」
オルトと米の稲を育ててる畑の半数を空にしてもち米の稲を植えて瞬間。すくすくとレア度と品質が最高ランクまで育った。それからその稲を刈り株分スキルで種を増やし、畑に植えて早く成長を遂げた稲をまた―――それを空けた半数の水田が埋まるまで繰り返した。結果、俺の畑にもち米の大量生産が可能な状態にできたのだった!
「あと必要な道具を揃えたら、もちが作れるようになるな。臼が必要だから・・・・・」
水晶樹で臼をゆぐゆぐ達樹精シスターズに作ってもらう間に俺は育てたばかりのもち米をルフレと一緒にたくさん洗い、釜で炊く間はヒムカに見てもらうその間。あんこ作りに手を出す。
「イカル、これからあんこ作ります!」
「あんこ! 大好き!」
「じゃあ、まずはたくさんの小豆を茹でるから水で洗おうね。それから鍋に入れてね」
「はーい!」
それから水を入れて火をつけて茹で始める。沸騰したら全部の湯を捨てて、また水一杯に入れてもう一度沸騰させたら二度目の湯を捨てる。これが渋ぎりという。
「今度は沸騰するまで強火で茹でる」
「はい」
「沸騰したら弱火にして小豆が潰れるほど柔らかくなるまで待つ。その間にこの白い泡、苦いもとのアクを全部、丁寧に掬いとって捨てる」
イカルにも体験させてその時までアクを取ってもらう。潰れるほど柔らかくなったら半量の砂糖を一回投入することと、砂糖を溶かしながら小豆が水面に出ないよう差し水をしながら待つことを教える。そして数分たって砂糖が溶けたら溶けたら、もう半量の砂糖、少量の塩を加えて小豆を潰さないよう優しく好みの固さになるまで煮詰めながらかき混ぜる。
「あとは大体の水分がなくなったら冷やして完成」
「完成です!」
火を消して冷えるのを待つつもりが、ゆぐゆぐが臼の出来具合を見てほしいと呼びに来たので台所から離れる。向かった先には結晶の樹木で作られた餅つきに欠かせない臼のセットが。うわー、よくもまぁレア度が9と品質が10って高評価を叩き出したな。凄すぎでしょ。
「ご主人様。どうですか?」
「頑張りました♪」
「問題ないかしら?」
「ありがとーう! 凄い出来栄え、問題ないよ! 大切に使わせてもらうから!」
感謝の抱擁をして、臼セットを持ってヒムカのところへと向かえばこういうところは出来上がっていた。何時の間に時間が過ぎていたんだと思うぐらいに。
「よしよし、炊きあがったこれを皆でぺったんこしよっか」
「はいお姉ちゃん!」
リヴェリア、アカーシャ、ラプラス、サイナとゼロを招集して農業地区の畑で餅つき大会の開始! 黄龍に転移された桜の木は元の畑の位置に戻してくれたから、舞う桜の花びらの中でできそうだ。
「「「餅つき?」」」
なお、NPCは知らないご様子だったので。粘り気が出るまで槌を振るってもち米を突くことを説明した。
「とにかく実践。アカーシャ、その槌を持ってこの臼の中にある米を突いてちょうだい」
「強くていいの?」
ひょいっと片手だけで持ち上げる腕力を見せつけてくれるアカーシャ。魔王代理の頃は近接戦闘が苦手そうな印象だったけど、身体能力はそれほど低くないのか? ・・・・・そう言えば一人でリヴァイアサンの頭部を引きずっていたな
「悪魔族の力は分からないけど、壊しちゃダメよ」
「わかった。よいっしょっと」
ぺったん!
「・・・・・擬音が鳴るとは知らなかったわね。まぁいいや、続けて」
「うん。ふっ!」
ぺったん! ぺったん! ぺったん! ぺったん! ぺったん!
突く度に米を突きやすいようにずらす。アカーシャが疲れたらリヴェリアに交代。
「これは、中々、力のいる、作業、ですね。お父様が、喜びそう、ですっ」
「ああ、なんかこういう作業が似合っていそう」
そんな想像をしたら少し笑えて来るんだが。次はサイナ。
「私の手を合わせて高速で突ける?」
「可能です」
「それじゃいくわよ相棒。―――始めっ!」
ぺったんっぺったんっぺったんっぺったんっぺったんっあなたのお胸はぺったんこっ!!! あなたのお胸は断崖絶壁っ!!!
「わ、凄い。速く突いたり速く米を動かしている。腕に当たらないのが不思議」
「一糸乱れぬ連携ですね。時折おかしな音が聞こえますが」
「ふむ、ゼロよ。私達も真似てみようじゃないか。付き合いが長い私達も簡単に出来るだろう」
「間違ってお餅ごとマスターの手の骨を打ってしまったら、異物が混入する恐れがございますのでご遠慮させていただきます」
「失礼だね君は!?」
「・・・・・何か、餅つきを始めたんだが白銀さん達」
「いやそれ以前にあの臼と槌代わりにしている水晶のような結晶は何だ?」
「知らなかったのか? 白銀座店で売られている結晶樹で、既存している木材の中じゃレア度が高いぞ」
「美少女と美女、可愛いと綺麗なドールと餅つき大会・・・羨ましい、交ざりてぇ」
「俺的には女の子が作った餅を食べたいんだが」
「「「禿同」」」
全員が何周も餅をついた頃。粘り気がある米と化したので、皆で小さく均等にちぎっては丸めていく。オルト達も手伝ってもらって十数分で餅が完成した。
「よし、できたぁー!」
「わーい!」
さーて後は焼いて食べるだけなんだけど、畑の外側からジーと凝視しているプレイヤー(見守り隊?)が大勢いた。そしてその中にタイミングを見計らっていただろうノーフが入ってきて近付いてくる。
「もう餅が自家製で用意できるほど稲を大量生産できる状態に? えーと、もしかして白銀さんか?」
「うん、正解よノーフ」
「・・・・・堕天使の次は九尾のお姉さんかぁ」
何も訊くなよ。と念を込めた目で睨んだ。
「それはそうとノーフ今まで何をしてたの? 神酒を手に入れてからの意味で」
「いやそれが、酩酊になるまではいいんだけどよ。一定時間その場から動けなくなるとは思いもしなくてさ。さっきようやく動けるようになったんだ」
「状態異常?」
「そうそう、耐性がないとダメみたいだ。もしくは酔拳でしか発揮できないか何かあるのかも」
俺はその耐性があるからいけるかな? ちょっと興味がある。
「ノーフ、このお餅と交換で神酒を一杯だけ飲ませてくれないかしら」
「え、餅と? それって白銀さんが作った餅か?」
「その一つね。他にもこの場にいる全員が丸めたお餅もあるけど、何か食べたいお餅があるなら用意するわよ?」
そんなに時間は掛からないだろうし、と軽い気持ちで交渉すると。ノーフはその場で土下座をした。
「全部! いや、半分の餅と神酒を交換してくれ!?」
「何でそうなるのっ!?」
「女の子や白銀のノーム達が作った餅なんてプレミアすぎるからだよ!!」
そ、そう言うものなのか? 外にいるプレイヤー達も聞こえていたようで困惑する俺にうんうんと頷いた。えええ~・・・・・。
「というか、今後必要になるかもしれないから取っといた方が―――」
「それなら問題ないぞ」
この声は、タゴサック! 畑に入ってきた彼女を見れば脇で抱える神酒と書かれた壺を持っていた。
「俺も米を奉納したらノーフと同じ結果になった。白銀さんほど品質は高くなくとも手に入れられることがわかったよ」
「その神酒を奉納したら?」
「・・・その発想はなかったな。だが、またしに行くのも時間が掛かるんだよな。白銀さん、あの神社はまたあるのか? あるならもう1つ出してくれるとありがたい」
「そうしたいけれど、プレイヤーの出入りが邪魔にならない場所って探すの苦労するのよ?」
「あー、実際にあれだもんな。いつまでも並ばれると他のプレイヤーが通りづらくなる」
納得と頷くノーフ。俺達は考える。
「滅多に通らず、一方通行になってもいい場所・・・・・」
「できれば身内が利用できやすい場所・・・・・」
「それなら・・・・・」
ノーフは水臨の大樹を見て、タゴサックは俺のホームを思い浮かべただろう。俺はどちらも神社を置く前に。
「はい、完成! クズハの好物あんこもち!」
「って、俺が譲った稲をもうこんなに増やしたのかよ!? 三時間は経っていないぞ、どうなってるんだお前の畑は!」
「タゴサック、白銀さんだからと受け入れるしかない。実際にもち米の稲の畑を見た俺も同じ気持ちだがな!」
スキルを解除してさっそくクズハや他の従魔達と日本家屋であんこもちパーティーを始めた。出来映えはよくてバフも中々。【耐寒】、【AGI】+20、氷結耐性中、満腹度減少(中)だ。
「うわ、凄いバフだ。いまここで食べるのは勿体ないぐらいだ」
「生粋の料理プレイヤーだったらもっとこれ以上のモノを作るだろうさ」
「否定はしないが、寒い場所に行く際には必要不可欠なバフが付与されてるから、売ったらかなり儲かるんじゃないか?」
そうだろうなぁ。あ、そうだ。
「麒麟と黄龍、鳳凰。お前達のお供えだ。たまには虹の実以外にも食べてみろ」
『ふむ、そう言うのであればいただきましょうか』
『そうだな』
『ではいただくぞ』
『どんな味だろうか』
全員、一口で食べて咀嚼する。鳳凰に至っては喉に詰まらないのかと反応を窺うと、皆の目がカッ! と大きく見開いた。
『『コケコッコー!!』』
何か鳳凰が翼を広げて踊っているつもりなのか回り出し、麒麟と黄龍は目を細めて思わず天に仰いでいらっしゃる。
『虹の実とは違う優しい甘味が口の中に広がります』
『このもちもちとした粘り気のある未知の食感も悪くない』
悪くない反応? じゃあ神酒を飲ませたらどうなるんだ?
「ノーフ、神酒を神獣達に奉納してみたらどうだ。もしかしたら何かあるかもよ」
「ええ? そんなことあるのか?」
「虹のゼリーを作ったプレイヤーさんを四神を含めた神獣達が認めたから称号【神獣が認めしパティシエ】と職業【神の料理人】を得たぞ。パティシエのウサミが」
「「なんだとっ?」」
タゴサックまで反応しちゃった。
『うむ、英雄の言葉に偽りはないぞ』
『あれは言葉にするには形容しがたい衝撃を受けましたからね』
『古代の果実の新たな可能性を見出した者を認めぬわけにはいかぬからな』
『その通りだ』
神獣達もこう言っているんだから間違いない。神獣達に認めさせる、またそれ相応の事をしたら何か変化が起こるだろう。何度も経験した俺がそれを保証する!
「「・・・・・」」
神酒を持つ二人は顔を見合わせ、物は試しにと麒麟と黄龍、鳳凰の前に神酒を置いた。
「えっと、神酒をお供えします」
「どうか飲んでください。・・・・・これでいいのか、白銀さん?」
恐る恐る神獣達の前に置いて戸惑いながら話しかける二人がとても初々しい。
「いいと思うぞ。黄龍、身体を小さくして」
『うむ。神酒か・・・神々が飲む酒を口にできる日が来るとは』
『あんこもちも美味でしたから神酒の味も期待してしまいますね』
『英雄よ。器を用意してくれ!』
『神酒を飲んでみたいぞ!』
はいはい、今用意するから。それぞれの壺から酒を皿に酌み取って用意したら、麒麟達は顔を近づけて香りを嗅いでから神酒を飲んだ。
『『『『・・・・・』』』』
バタリ・・・・・。
「え、ちょっ!?」
「お、おい。倒れたぞ急に。大丈夫なのか・・・・・?」
俺もこれには予想外だわ。近づいて確認してみると・・・・・あーうん、これはですね。
「酔って寝ているだけだ」
「「酔った! 神獣が!?」」
「耐性がありそうな感じだったんだけど、実際そんなことなかったのかなぁー」
とにかくしばらく起きる気配はなさそうだ。今なら悪戯し放題だろう。・・・・・そんな罰当たりな事はしませんよー・・・・・?
「うーん、神獣がこれなら。もしも新大陸にヤマタノオロチがいたら、この酒を飲ませて酔っぱらわせてみよっと」
「ヤマタノオロチって、あのヘビだかドラゴンだか八ツの頭を持っている怪物だよな?」
「そうそれ。神スサノオが天叢雲剣を手に入れた話に出る怪物な。でも、人が持てるサイズの壺で酔うかな・・・? 麒麟達も今は馬以下のサイズで酔うんだから、ヤマタノオロチがベヒモスとジズ、リヴァイアサンの大きさだったら酔わせるには量が足りないよな」
「そうなるとレイドボスになるんじゃないのか? わざわざ手の込んだことをしなくても普通に戦えるようなっているかもしれない」
きっとそうだろうな。しかも新大陸。レベルが100以上なのは確実だ。はぁ・・・またレベル上げか。