バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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白雪の悲愛

 

 

「え、え~と・・・・・どうして南極に? ここで俺を埋めるつもりですか」

 

呼び出した佐々木痔郎と今、南極に連れて白銀の世界を歩いていた。歩いているのは佐々木痔郎だけで俺はセキトの背に跨って移動しているがな。お供にフェルとクズハを連れてきている。

 

「そうしてほしいならするぞ」

 

「勘弁してくれ! でも、怒ってるんじゃ・・・?」

 

「俺の同意なく勝手に決められたら困るだけだ。こっちの都合も考えろってな」

 

「申し訳ございませんでした。以後気を付けます。それで、どうして南極に?」

 

南極に連れて来た理由を当然知りたがる佐々木次郎に理由を教えた。

 

「知っていると思うけどデュラハンと戦うためだ」

 

「あのまだ誰もクリアできていないやつか。勝算は・・・・・あるから挑むんだな」

 

「HP無しで3分間の耐久勝負。ヤマタノオロチより簡単だろ」

 

でも、本当にそれだけのクエストなのか今も疑問だ。それだけの勝利条件ならとっくに他のプレイヤーもクリアしているはずだ。と考察していたら、しばらく目的地まで進んで歩いていれば少なくない数のプレイヤーの集まりが出来ているところを見つけた。

 

「あそこか?」

 

「多分な」

 

情報を頼りにここまで来たんだ。情報通りになってもらわないとこっちが困るわけだが・・・・・。

 

「佐々木痔郎、乗れ。そこからじゃ見れないだろう」

 

「お、サンキュー。地味に初めて馬に乗れた」

 

後ろに乗ってもらったまま近づくとここが件の場所であり野次馬と化しているプレイヤーが見ているのは、骨の馬に乗っている白い全身型鎧を着た首無しの騎士とロバもどきの馬に跨っている騎士風のプレイヤー。

 

「ハイヨー、シルバー!」

 

「これまた随分と久しぶりなプレイヤーが挑戦していたわ」

 

「ああー『紫髪の冒険者』か。『白銀の先駆者』と揃うなんてレアじゃんか」

 

そんなもんか? にしても『紫髪の冒険者』ことジークフリートも強くなっているか。ロバもどきの馬は変わって・・・いや、馬の方もちっとは成長した感じになっているか。うちのセキトほどではないがな!

 

「今度こそ、花嫁を守り切ってみせる!」

 

・・・・・今回が初めてではなさそうだな。花嫁というのは、本当にウェディングドレスを纏った骸骨だしなんか不気味だな。

 

「そろそろ三分だよな」

 

「今度こそジークフリートは勝つのか?」

 

「いや無理だろ。最後のあの即死技から誰も逃げられねぇって」

 

野次馬から聞こえる話題。即死技、か。それで誰もクリアできずにいたのかとジークフリートの戦いを見ていると、デュラハンが剣を両手に持って天に掲げたら背後に巨大な鋭い目が浮かび上がり、掲げた剣を振り下ろすと目から禍々しい極光のビームが白雪の大地を抉りながらジークフリートに迫った。

 

「もう何度もそれは見てきた! 行くぞハイヨーシルバー!」

 

ロバもどきの馬が駆け出す。追尾性があるビームから逃げ出すジークフリート。・・・・・?

 

「佐々木痔郎。確認だけどこのクエストの詳細は?」

 

「え? 三分間の耐久性だろ?」

 

「タラリアから訊いた情報では花嫁の骸骨をデュラハンから三分間も守護するものだったぞ。デュラハンが花嫁を狙っているなら、どうして今狙わないんだと思う?」

 

「そりゃあ攻撃の対象はジークフリートだからじゃないのか?」

 

「だったらジークフリートが花嫁から遠ざかっている今なら、攻撃できるはずじゃないのか」

 

佐々木痔郎が静かになった。俺と同じ疑問を抱いたのか、振り返らないとわからないが俺は言い続ける。

 

「あんな風にプレイヤーだけを狙うなら、花嫁の存在は入らないだろ。となると・・・・・」

 

「別の隠し要素があるってことか?」

 

「おそらくな。後どうでもいい話だが、あのデュラハンは首を持っていないんだよな、なんでだか」

 

「ほんと、どうでもいいことだな。あ、喰らった」

 

積もっている雪のせいで本来の動きと速さを発揮できない馬と諸共、デュラハンの一撃を受けたジークフリートが消失した。その後野次馬のプレイヤー達がざわめいた。

 

「やっぱり駄目だったかー」

 

「雪のせいで動きづらいもんな」

 

「次、誰が行く?」

 

「こんな誰も勝てないクエストを誰がするのかって言うんだよ。名のあるトッププレイヤーが悉く挑戦してやられてんだぞ」

 

「他にも挑戦していないトッププレイヤーはいるだろ。このクエストのことを知らないだけかもしれないぜ」

 

「おーい、他に誰か挑戦したい奴はいないかー?」

 

自分達は行く気ないのかって突っ込みたいところだ。まー、あんなの誰も避けられないなら自分達が出しゃばっても同じ末路を辿るだけだと悟るのも無理はないか。

 

「行くか。準備は?」

 

「あ、これ。一人用のクエストだからパーティは解除されるぞ」

 

「それは知らなかったなー。よし、佐々木痔郎行ってこい」

 

当然のように言う俺に「死刑宣告だよなそれー!?」と悲鳴を上げる佐々木痔郎。まぁまぁ、タダとは言わんよ。

 

「お詫びはするよ。なんなら性転換した俺の膝枕でもするか?」

 

「よし任せろ! 勝ちに行ってやる!」

 

「チョロいなお前。だが、勝ちに行かなくていい」

 

なんで? とセキトから降りた佐々木痔郎がそんな顔で見上げて来る。

 

「敵を倒すクエストじゃないなら、実際そうだろ。それにあの花嫁の存在が気になる。だから佐々木痔郎、試しにやってほしいことがあるんだが」

 

そこから先はメールでやり取りをする。佐々木痔郎は承諾して挑戦に名乗り出た。

 

「今度は侍か」

 

「誰がやろうと結果は変わんねぇって」

 

「じゃあお前が行けや」

 

「やだよ。なんでわざわざ負けるクエストに出て何の意味があるんだよ」

 

誰も期待していないが、暇つぶしに来ている感ってところか。とにかく佐々木痔郎の戦いが始まった。刀を正面に構え佇む佐々木痔郎に対してデュラハンは馬を動かして迫った。馬上する相手に地上から槍ほどリーチがない刀ではデュラハンには届き難いし当たらない方だろう。だが、勝つ必要のないクエストだ。

 

 

佐々木痔郎side

 

 

「うぉっ、と、ぐっ、重っ!」

 

今思えば俺、レベルとステータスが下がったまんまだった! あー、あのお詫びが男として魅力的だったから軽く了承した自分が恨めしぃ! というか、このデュラハン。花嫁の骸骨から守るクエストはずなのに執拗に俺ばっかり狙ってくるな!? それにステータスが低い俺でも何とか3分間ぐらいは生き延びることができる弱さじゃないかこれ?

 

「白銀さんが疑問に抱いていた気持ちが、少しわかった気がする、なっ!」

 

その場でデュラハンの馬を斬りつけながら水平に刀を振るって一回転した。俺の真後ろに立っている花嫁の骸骨にも刀が当たって―――あっさりと砕けた。

 

 

―――戦いながら、守らないといけない花嫁に攻撃を当ててみてくれ。できればデュラハンと同時に攻撃するようにな。もしもそれが―――

 

 

挑む前に送られたメッセージの内容を思い出しつつ、転がった髑髏を掴みデュラハンに向かって放り投げると、奴はそれを片手で掴んで・・・・・脇に抱えた途端になかった筈のHPが表示された。

 

「はははっ! その通りになったぜ白銀さん!!」

 

『うっそだろー!?』

 

野次馬達から驚きの絶叫が。そりゃあこんなもん、誰も気づかないって! 誰もがあのクエストの内容に騙されていたわけだな!! どうでもよさそうな疑問もしっかり考えないといけないってことか。

 

「三分間の方は変わっていないだろうから、さっさと終わらせるぜ!」

 

うぉりゃー! と馬と諸共デュラハンに攻撃をしようと駆けだした矢先。俺の一撃を弾いた後・・・・踵を返したデュラハンが俺から遠ざかった。その行動に俺や白銀さん達も固まって・・・・・あ、お空にあのお目めがぁ。

 

「おまっ、それはないだろうがぁー!!!」

 

目から放たれた禍々しビームを食らいながら思わずにはいられなかった。運営、またお前達の悪意と悪戯がここにもかぁー!!?

 

 

 

 

うーん・・・・・もしかしたらと思ったのに。まさかあんな行動を取るとは思わなかった。デュラハンが戦線離脱して、フィールド外からの即死攻撃とはな。佐々木痔郎を屠ったデュラハンは何事もなかったように俺達の前に戻って来て、花嫁の骸骨も壊される前に再生ボタンが押されたように戻ったし。デュラハンの頭もなくなっている状態で次の挑戦者を待ち構えている。

 

「佐々木痔郎。お前の仇を取ってやる」

 

誰も行かないなら先にやらせてもらおう。フェルとクズハを待機させてセキトとデュラハンの前に対峙する。

 

『EXクエスト白雪の悲哀』

 

勝利条件 三分間の花嫁の護衛

 

敗北条件 プレイヤーの敗北

 

クエストのパネルが浮かび上がり、YESを押せば戦闘開始した。

 

「【超突進】」

 

「ブルルッ!!」

 

先制攻撃を仕掛ける。セキトが雪の大地をものともしない走りで首無しの馬に体当たりしてデュラハンを吹っ飛ばすことができた。地面から宙に浮いたが体勢を立て直すデュラハン。意外としぶといな・・・・・。

 

「セキト、【浮遊】! 【超突進】! デュラハンに【踏み付け】!」

 

宙に浮いた状態でまた速い勢いで接近しながらデュラハンを飛び蹴りの要領で踏んづけた。今度こそ雪の大地に寝転がらされたデュラハンは立ち上がって首無し騎士の傍に寄ろうとする骨馬に騎乗―――

 

「させるか! 骨馬を吹っ飛ばせセキト【赤き閃光】!」

 

俺が降りたあとに全身を赤く輝かせるセキトが【超突進】より速く光の速度で骨馬に突進して大きくデュラハンから遠ざけた同時に。

 

「【金晶戟蠍(ゴール・D・スコーピオン)Ⅳ】【黒晶守護者(ダーク・ゴーレム)Ⅳ】【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)Ⅳ】【百鬼夜行】!」

 

数でさらに押し時間を稼ぐ。とは言ってもそう長くはないがそれでも時間は稼ぐ。花嫁の髑髏をもぎ取り、デュラハンに投げると、髑髏を浮かんで胸に抱えたデュラハンのHPが浮かんだ。

 

「【飛翔】【超加速】【悪食】!」

 

この場から逃がさないために、瞬間火力で畳みかける。懐に飛び込む俺に鋭く打ち落とすその剣に短刀で受け止めながら片方の手を突き出し、デュラハンの髑髏ごと胸部を貫いた。【八重ノ狂龍】で八回分の効果により―――八回分の【悪食】を受けたデュラハンのHPが一気になくなり全損した。

 

『・・・・・カンシャ、スル』

 

「え?」

 

『コノ、ノロイカラ、ヨウヤク、カイホウサレル、ナガイ、ナガイ、クツウモ、ダガ、ドウカ、カノジョモ、カイホウ、シテホシイ、ワタシノ、イトオシイ―――ヲ』

 

口の無い首無しデュラハンの言葉と思しき声に何も言い返すことができず、最後に何を言おうとしたのかわからないまま、鎧が消滅して骨馬の方もこの場から消えた・・・・・。

 

クエスト【白雪の悲哀2】

 

同時に新たなクエストが発生して、デジャブを思い出しながら受けるとなんか指輪が手に入った。

 

『かつての騎士に許されない恋をしていた女が送った指輪』

 

としか書かれていないフレーバーテキストに首を傾げる。

 

「次のクエストに必要な物か。セキト」

 

そしてフェルとクズハも呼んで教会へ向かう。何か言ってくる野次馬達は取り敢えず放置だ。無視はしていないぞ? 「次のクエストが教会で行われるから行ってくる」と言伝を残したからな。

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