バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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氷の魔女

教会に到着する前から聞こえた大鐘楼の音。まるで主張するかのように音色を鳴らし続ける大鐘楼がある教会に着いた俺は佐々木痔郎に労いのメールを送ってから開けっ放しの教会に入った。氷の世界に閉じ込められたみたいな凍り付いた教会の内部。その中心にガラス製の棺桶が鎮座してあって、中には全裸の美女が眠っていた。

 

「ん?」

 

冷たい棺桶に触れると胸から狐のクエストで手に入った鍵が飛び出して、棺桶に吸い込まれるようになくなった。見守っていた俺の目の前で今までこの場に来たプレイヤーの誰が開くことはなかったはずの棺桶の蓋が勝手に開きだし、それに呼応して美女がゆっくりと目が開きだしたかと思えば、美女が上半身を起こした。

 

「・・・・・私は、あなたは・・・誰?」

 

「旅の冒険者、ハーデスと呼んでくれ」

 

「ハーデス・・・・・失礼ながら、私は誰だかわかりますか?」

 

「いや? 覚えていないのか?」

 

「はい・・・自分が何者かも、名前も今まで過ごしてきた記憶すら」

 

記憶喪失? いや・・・デュラハンが妙なことを言ってた話と関係が? でも、最後の方は何を言いたかったのかわからなかったから・・・・・これ以上の憶測は止めておこうかな。

 

「なら、全てを思い出すまでの間は白い雪、白雪と名乗っておこうか」

 

「白雪・・・・・何故だか懐かしい響きを覚える素敵なお名前です。くしゅん」

 

そりゃ、寒いところに全裸でいるんだからくしゃみぐらいするわ。クズハに【人化】してもらい、九本のもふもふの尻尾で彼女を包んでもらいフェルに乗ってもらうつもりだったがいきなり扉が閉まり出した。

 

 

クエスト【白雪の悲哀3】

 

 

新しいクエストになったってことは・・・・・そういうことなんだな? 教会の中だというのに吹雪が発生して、一ヵ所に集まると中から氷でできた白銀のナイトドレスで身に包んだ豊かな体つきの女が現れる。顔の上半分、眼を隠す氷の仮面を付けている彼女は不敵な物言いで話しかけてくる。

 

「貴様か。私の封印を解いた愚者は」

 

「封印? この棺桶のことか。でも何で彼女を封印した?」

 

「決まっているだろう。この大陸で世に美しい者は二つもいらぬからだ」

 

「じゃあ、宝石も一つだけで十分ってことか」

 

「私の美しさをさらに彩るものであればいくらあってもよいのだ。一つでよいのは美しい女のみよ」

 

なるほど・・・・・このストーリーはそう言う感じか。

 

「意味は分かるし理解も出来る。だが・・・えーと名前は何て言うんだ? 美女さんよ」

 

「愚者がこの私の名を口にするなど万死に値するが、死にたいようだな?」

 

おっと、コミュニケーションが必要な流れですかこれは?

 

「美しさを誇示したいならば相手に名前を知ってもらうのも必要ではないか? 名前の判らない美女を、名前を呼ぶ代わりにただの美女としか認識してもらえなくなるぞ美女さんよ」

 

「私の美しい名を口にしていいのは私だけだ」

 

「ふーん・・・で、何しに来たんだ?」

 

「決まっている。封印が解かれたのであればその女を殺すまでよ。ついでにそうであるな。この私の魅力と美を理解できぬ大陸の者共も殺し尽くそうではないか」

 

あ、これが週末のイベントに繋がるのか?

 

「殺し尽くしたらこの大陸で美女さんしかいなくなるけどいいんだな?」

 

「だったらどうした」

 

「自分が美しいと認める者が周りにいなくなっていいのかって聞いているんだよ」

 

「ふん、今更である。美とは常に孤独が付き纏うものよ。私が幼い頃から美しく、そして誰よりも強かった故に周囲から私を美の魔女と畏怖の念を込めて呼ばれ続けたからな」

 

独白し始めたな。意外とお喋りさんかな?

 

「彼女を封印したついでに記憶も封印したのか」

 

「その通りだ。おのれの名前も含めて全ての記憶を消す呪いをかけたのだ。覚えもないのも当然よなぁ?」

 

やっぱり記憶喪失の元凶はこの魔女だったか。

 

「さてこれ以上、愚者と話をするのも億劫だ」

 

指を鳴らした魔女の周囲に氷で形作った模型、強固な甲冑の兵士がたくさん現れた。

 

「貴様程度にはこれぐらいで十分。後は勝手にここで朽ち果てるがよい。私はその間にこの大陸の人間を殺戮する準備をしよう」

 

魔女が消えていなくなり残された俺達は氷の兵士に囲まれた。大盾、大剣、ハルバード、大弓、金棒etc・・・・・を持つ氷の兵士達がじわりとにじり寄る。

 

「セキト、フェル、クズハ。彼女を守れ。かすり傷もつけたらお前達の幻獣としての品格が疑われるぞ。まさか、この程度の輩に後れを取るわけがないよな?」

 

からかいも含めた長髪の言葉を送ったら、ふざけるな的な睨みを利かせてくる。主を睨む従魔ってある意味凄いぞ、何でも従順でいるよりいいがな。

 

「まずは、お前からだ」

 

遠距離攻撃をしてくる大弓を持つ氷の兵士に迫ったが、それを阻む他の氷の兵士達。

 

「悪いが邪魔だ」

 

―――【暴虐】

 

今まで誰にも見せなかった変身スキルの力。異形に変身した俺は四本の腕を振るい、四体の氷の兵士を掴み取って妨害をはねのけ、弓兵から放たれた矢を大盾を持つ氷の兵士で防いだ。手の中で暴れるハルバードと大剣を持つ氷の兵士に攻撃を食らいそうになって弓兵に向かって叩きつけた。それだけで粉々に砕けたのだから防御力はそこまで高いものではないらしい。

 

「ガルルァッ!!」

 

「ブルルルヒヒィーン!!」

 

フェルとセキトの声が聞こえる。あっちも俺の発破で奮闘している様だ。というか、見たらフェルが前脚を燃やした状態で切り裂いているし、デュラハン戦で覚えたのか飛び蹴りをかますセキト。尻尾で全裸な白雪を包んでいるから動けないクズハは、迫りくる氷の兵士に業火の炎で対応していた。

 

うん、問題なさそうだな。こっちも負けてはいられないな!

 

 

―――数分後。

 

 

圧勝。全ての氷の兵士を砕き倒すことができたら閉ざされた扉が開きだした。

 

 

クエスト【白雪の悲哀4】

 

 

クリアしたから新しいクエストが発生したか。だけど今回は何のヒントもないんだが・・・・・そういえばあの棺桶、傷一つ付かなかったな。彼女が保管されていたから、きっと他にも何か保管されているのかもと思いつつ棺桶の中を探ってみると、お姫さまが着るようなドレスが敷き詰められていた花束の下に隠された形で見つけた。

 

「白雪、これを着てくれ」

 

「・・・・・これは?」

 

「棺桶の底にあったものだ。」

 

クズハの陰に隠れてドレスに身を包む彼女。その瞬間また青いパネルが発生した。

 

 

クエスト【白雪の悲哀5】発生。

 

また、【白雪の悲哀】クエスト1から4でのプレイヤーとNPCのダメージが基準値を下回っているため、エクストラクエスト【凍解の愛】が発生しました。

 

どちらかのルートを選択して下さい。

 

 

本当にあのクエストを彷彿させるストーリーのクエストだな。当然【凍解の愛】を選んだわけだが・・・・・。

 

彼女の頭の上に【週末 魔女の城】と光が浮かびだした。これ、イベントと連動しているな? クズハをテイムして発生したイベントだ。その流れでデュラハンと戦い、今までオブジェクトだけだった眠る白雪を起こし、エクストラか通常ルートのクエストかどっちを選んでも週末のイベントに繋がる設定だったんだきっと。

 

ただ、この流れは週末までに【白雪の悲哀】のクエストを5まで進めないといけないものかもしれない。だとしたらだ。あのデュラハンを週末まで倒せていなかったらどうなっていた事やら。まさか防衛イベントに現れて来るんじゃなかっただろうな・・・・・?

 

この後、世界の神社を利用して日本家屋に白雪を招く。

 

「リヴェリア、お前の服を一着だけ彼女に譲ってやってくれないか? この服だけじゃ色々と目立ってしまうから」

 

「・・・・・後で詳しく聞かせてくださいね?」

 

彼女を見て、なんか納得の理由でないと許さない的なオーラを纏いだしたリヴェリアから、ワンピースを受け取り別室で着てもらいようやく落ち着いた。

 

「彼女は白雪。本名共に自分の今までの記憶が魔女の呪いによって消されてしまってな。仮の名前で白雪と呼ばしてもらっている」

 

「魔女の呪い・・・・・その呪いを解くことはできないのですか?」

 

「魔女を倒すしか今のところ可能性がない。倒しても呪いが解けるかもだ。だからしばらく魔女を倒すまでこの家に住まわせる」

 

「わかりました。白雪さん。私はリヴェリア・アールヴと言います。これからよろしくお願いしますね」

 

「こちらこそ。よろしくお願いいたしますリヴェリア様」

 

どこか、教育を受けた洗練された挨拶だ。いや、正しくは綺麗と言ったところか。騎士が恋した姫か、農民か判らないがリヴェリアも思うところがあるようだな。

 

「あなた、彼女は異国の王女か姫の者ですか?」

 

「それすら何にもわからないんだ。放置するわけにもいかないからお前のように助けたかった」

 

「そうですか・・・・・」

 

納得してくれた様子だが、何とも言えない表情を白雪に向けるリヴェリアに乞うた。

 

「リヴェリア、白雪の世話を頼んでいいか? 俺は備えをして来る」

 

「わかりました。では、白雪様。この家の中を案内しますのでついて来てください」

 

「はい。リヴェリア様」

 

リヴェリアと白雪を見送ってからまたしばらく俺はクリスタルモンスターブラザーズとサッカーをしにドワルティアへと赴いた。

 

 

 

 

とあるプレイヤーの雑談。

 

 

「まーた例のあの人が戯れてるぞ」

 

「戯れているというか、一方的じゃね?」

 

「絶対に壊れないボールを吹っ飛ばしながら三つ巴をするモンスターの図は、相変わらず理解に追いつけねぇよ。追いつきたくもないが」

 

「あんなことして何がしたいんだ?」

 

「防御力でも上げているんじゃないか?」

 

「攻撃を受ける度に永続的に【VIT】が増えていくって? はははー、そんなまさかー」

 

「当ててみるか? 俺は上げている方で」

 

「なら俺は、今まで喰らったダメージの総合数でスキルを手に入れる方だ」

 

「うーん・・・・・単純に遊んでいるだけだったり? というかさ。この答えをどうやって知るんだ?」

 

「・・・・・週末のイベントの時に?」

 

「初詣のごとく渋滞するだろうイベント中に見つけるのは困難極まる。素直にファーマーのプレイヤーを介して訊いた方が早いって」

 

「それもそうだな。うし、今日もモンスターを倒しに行こうか」

 

「進める範囲も広がって来たし、慎重に音を立てずに行こう」

 

「白銀さんの次にこのステージの攻略者に俺達はなるんだ。あわよくばあの水晶の大樹のところまで」

 

「「「三つ巴の中心地だけどなー」」」

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