バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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南極大陸のイベント(5)

 

 

6時間ぶりに防衛イベントに参加する。挑むべく門に向かう途中でプレイヤーの密度が高まり、やがて100人以上はいる群集に紛れ込んだ。妙な視線を感じる時間が長かったが、それ以外問題なく俺達も門の向こうへ足を踏み入れた。

 

「・・・・・ん?」

 

「あら?」

 

「え?」

 

「・・・・・」

 

異変はすぐに訪れた。この拠点も5人だけでの防衛戦かと思ったのに、俺達以外のパーティーが同じエリアにいる。隣ではなく真横にだ。だからこれから一緒に戦うことになる他のパーティー、それも2パーティーのプレイヤーは俺達に気付きびっくりした形相で見た。

 

「白銀さん!?」

 

「嘘だろ、俺達このパーティーと一緒に戦えるのかよ!」

 

「うっしゃー! この戦、色んな意味で俺達の勝ちぃ!」

 

「縁がないと思っていたのに、嬉しすぎるっ」

 

歓喜・狂喜な俺達のパーティーを挟む形で立っている2パーティーから黄色い声が聞こえてくる。

 

「最初にどんなモンスターが出てくるのか教えてくれるかしら?」

 

「メスゴリラだ! 白銀さんどうかお願いします!」

 

「あ、あと、3パーティーで防衛するから向こうもいつもの3倍の数で来ます!」

 

あーそういうことか。となると・・・・・。

 

「イカル、ちょっと前に行こう。ゴリラを先に麻痺の状態にしたいから」

 

「はいお姉ちゃん」

 

「サイナは空中から援護を。イズとセレーネは新しく得たスキルかアイテムで戦えるなら惜しみなく使ってちょうだい」

 

「「わかった」」

 

「了解しました」

 

防衛する門と壁から離れちょうど真ん中あたりで立ち止まる。【パラライズシャウト】発動の為に短刀を鞘から少しだけ出して両腕を前に伸ばし水平の構えで待っていれば、森林から性転換した俺を見て舌打ちしたメスゴリラが飛び出して来た。その数は10・・・あれ、3倍じゃなかったのか? まぁいいや。

 

「イカル【挑発】! 俺は【相乗効果】【咆哮】【挑発】!」

 

「【挑発】!」

 

2人分の【挑発】を受けたゴリラ共は方向を変えて真っ直ぐこっちに来た。

 

「「【パラライズシャウト】!」」

 

短刀を鞘に収納した瞬間に迸る雷がゴリラ達の身体に走り、俺達の目の前で倒れた。ふふふ、これでお終いだ。俺が手を突き出した後にイカルも真似をしてテンポ遅れながらも俺と同じスキルを放った。

 

「【エクスプロージョン】」

 

「【エクスプロージョン】!」

 

 

ドッカァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「しゅ、瞬殺!?」

 

「やだ、カッコイイ!!」

 

「やったー! 初めて次のウェーブに進めたー!!」

 

「次もゴリラじゃありませんように。次もゴリラじゃありませんように!!」

 

後ろが騒がしいな。しょうがないっちゃあしょうがないが・・・・・。

 

2回目のウェーブで現れたのはまーたゴリラで数は倍の40だった。おいおい、マジかよ。

 

「【海竜神】!」

 

これ、ウェーブごとにモンスターが2倍に増えていくようになってんのかっ!? イカルの前でリヴァイアサンに変身した姿で、全身を伸ばした状態で転がる! ゴリラの悲鳴と身体に伝わる何かを踏んだような感触を覚えたが、それでも全部倒し切れなかったか!

 

「あっ・・・」

 

イカルに飛び掛かるメスゴリラが3匹! 迫るモンスターの迫力に気圧された様子のイカルは動きを止めてしまった―――。

 

「う、【宇宙空間】!」

 

「「「ウホッ!?」」」

 

そう発した次の瞬間だった。メスゴリラを含め俺まで宇宙空間にいるように地上から浮いて体勢が・・・いや、蛇みたいな身体だから関係ないか?

 

「お、お姉ちゃん大丈夫ですかー?」

 

「思うように体が動かせれないだけだが、これは何時までだ?」

 

「1日3回で10秒です」

 

その10秒が過ぎて無重力化が解かれたことで俺とメスゴリラ達が地面に落ちた。相手の動きを阻害するスキルみたいだな。でもモンスターはまだ健在だ。

 

「イカル、攻撃」

 

「はっ!? 【ブラックホール・クラスター】!」

 

「・・・なんでクラスター? ・・・・・あっ!?」

 

晴天から落ちてくる球状で黒く渦巻く数多のブラックホールのどれかに当たったメスゴリラ共々、俺まで引きずり込まれる。掃除機に吸引される気分を味わいながらだ。

 

「ちょ、リヴァイアサンの巨体と質量関係なしかあああー!?」

 

「お姉ちゃーん!?」

 

吃驚仰天するイカルの顔を最後に見た俺は―――どーやら死亡扱いされたようで、一足早く拠点の中に戻された。

 

「・・・サイナはまだ中か。しょうがない、待っている時間も勿体ないから新しく手に入ったスキルを試してみるか」

 

ステータスを開いてスキルを少し弄った後、今度はソロで防衛戦を挑みに門を潜ったその結果。見知らぬ2パーティーと協力し合って30ウェーブまで進んだが、敵モンスターの数と強さに堪えきれず俺だけ残して死に戻ってしまった。しかしこれはこれで都合がいい。

 

「【相乗効果】【闇影の兵士】【再誕の闇】」

 

今まで倒しまくった全モンスターを広がった足元の影から召喚される形で這い出てくるはずだが、地面に広がるのは黒い泥のようなベタベタとした黒い何か。そこから這い出るようにして次々に異形の生命が姿を現す。

 

【再誕の闇】は、味方となる存在を無差別に飲み込み化物に生まれ変わらせるスキルだ。スキルで召喚するようなモンスターは勿論、テイムモンスター、果てはプレイヤーすら対象となる。なんならレアなスキルから生み出された怪物達は強力だ。

 

「おーおー・・・・・圧巻ですなーこれ」

 

前方の黒い沼から吐き出される異形のモンスター達。HPがあるから召喚系のモンスターだよな? 異形の怪物達は森林の奥から現れるモンスターの数が倍に増えてもお構いなしに襲ってくれる。うん、俺の出番はなさそうだな。

 

 

 

「待て待て待て、何だあれは!?」

 

「召喚系のモンスターとしか思えないが、とにかくあれはヤバイというのは間違いないだろうな」

 

「本当に何なんだよあのスキル! もうチートだろ! あいつはチートを使うクソな奴だ、皆もそう思うよな!?」

 

「何怒ってんだお前? このゲームにチートなんてできるわけないだろ」

 

「そいつ、白銀さんの公開処刑に参加したプレイヤーだぞ。だから怒ってんだよ」

 

「そう言うお前は見守り隊だな? 畑に常駐しているところ何度も見たぞ」

 

「もうさ、白銀さん一人に任せてもいいんじゃね? って思えるんだけど」

 

「言えてる」

 

「魔王だもんな―――堕天使になってくれないかな」

 

「それな」

 

 

 

異形の怪物達のおかげで楽々とレベル54台までクリアできた。それまで倒したモンスターが自動的に【闇影の兵士】の効果で俺の召喚モンスターとして生まれると同時に異形の化け物になって現れる。んー、このスキルのコンボは使える―――。

 

「・・・・・来るか」

 

ここまで5段階になると幾度も中ボスが現れた。もはやその強さは旧大陸に配置されているエリアボスを凌駕している。これが新大陸に行く俺達プレイヤーへの洗礼と言うなれば越えなければ話にならない。通算11回目の中ボスは―――森の奥から跳んで目の前に舞い降りた。

 

「・・・・・え?」

 

強靭な二本足、野太くて長い尻尾、何でも噛み砕きそうな凶悪な顎、大きい手から伸びる鋭利な鉤爪。頭部から尻尾の先まで生えている氷柱を彷彿させる突起物と全身を覆う羽毛のモンスター。だが、姿形は見紛うことなかれ、ティラノサウルス君じゃありませんかー?

 

「何で南極に恐竜が出てくるんだー!!」

 

叫びながらこの事実の公開をするため配信を開始した。

 

「緊急の死神の宴In防衛イベント! 集まれー!」

 

 

『おー、そっちはどう? こっちは戦い疲れ・・・・・え?』

 

『白銀さんも防衛中のようだな。相手は中ボスのようだけど・・・・・』

 

『顔が恐竜っぽいモンスターですね?』

 

『いやいや、そんなわけないだろ。南極に出すとするならマンモスが自然だって』

 

 

召喚した異形の怪物達と戦い始めるモンスターの名前は『ICE T-REX』と珍しい英語名のモンスターだがな。

 

 

「えー、名前は英語名でICE T-REX。漢字やカタカナで多いモンスターの中で初めて英語の名前で出現したモンスターだ 。ただいまウェーブ55回目でーす」

 

 

『マジでティラノサウルスかよ!?』

 

『普通に55回も戦い生き残っている白銀さんもスゲー』

 

『なんか、黒いモンスターが大量発生しているのは何故?』

 

『白銀さんのスキルに決まってるだろ』

 

『なるほど、それで生き残っていたのか』

 

 

ICE T-REXの方が格上かどんどん怪物達が一方的にやられていく。背中の突起物もただの飾りではなく、ミサイルのように射出して投げ放たれた槍の如く地面ごと怪物を狙い違わず縫い付けるように突き刺し凍らせ、絶対零度のブレスを撒き散らし瞬く間に凍り付いた怪物達を野太く長い尾を使って薙ぎ払い砕いて行く。爪の方も壁を深く残すだろう爪痕を印象付けるダメージが宿っているようで、手を振るえば怪物達が神の如く引き裂かれ消滅していく。

 

「・・・・・普通にヤバい、あれはヤバイ」

 

 

『ですよねー』

 

『南極大陸の王者に相応しいモンスターでは?』

 

『白銀さんも見ただけでヤバいって言わしめるモンスターが現れたか』

 

『でもちょびっとずつHPを減らしているね』

 

『そりゃあ数の暴力には何事も逆らえないから』

 

 

視聴者の言う通りであるが、あれはフツーに逆らっているように見えるぞ。

 

 

「出し惜しみ無しだ。【アルマゲドン】」

 

天から降ってくる無数の隕石がICE T-REXに直撃する怪物達も巻き込まれたがまだまだストックはある―――が、このスキルを受けても1割って頑丈すぎやしねぇか?

 

「押し固めろ」

 

細かい命令は出来ないが単純な事なら遂行できる怪物達はICE T-REXに纏わりつき、身動きを封じた刹那に『宇宙の星塊(小)』を出した時、怪物達の隙間から白い煙が噴出したと思えば白く凍り付く怪物達の拘束を粉砕して出てきたICE T-REXところを狙って投げた。

 

「やっぱりそうしてくるよな、っと!」

 

ICE T-REXに投げた金の塊は液体状になってICE T-REXの背中、爪まで覆い広がって拘束具として纏った。

 

GYAOOOOOOOOOOOOOO!!!

 

己に纏わりつく鬱陶しいものを剥がそうと暴れ回るが、雁字搦めの状態で腕も拘束されたんじゃあどうすることもできまい。たぶん全身から対象を凍結させる白い煙も効果は薄いだろうな。

 

「遠距離射撃と厄介な爪を封じれば何とかなる! 【色彩化粧】【飛翔】!」

 

【闇影の兵士】と【再誕の闇】を解除し、残った怪物達は拠点の壁と門の前に配置すると姿を暗まし飛んでICE T-REXの懐に潜り込んだ。攻撃する際は姿隠れの効果はキャンセルされるがここまで来れたなら問題ない。

 

「【エクスプロージョン】!」

 

雪が消し飛ぶ威力の大爆発がICE T-REXの腹に炸裂した。さすがにこれでも通用しないだろうが、雪が消えた今、罠を仕掛けられる。落とし穴をセットしてそこにICE T-REXを落とせば穴に落ちる。ククク綺麗に嵌ってくれたもんだな。『宇宙の星塊(小)』を回収した後にICE T-REXの背中に落ちる。

 

「【相乗効果】【溶岩魔人(ラヴァ・ゴーレム)】【大地の揺籠】【大型化】!」

 

巨大な溶岩魔人(ラヴァ・ゴーレム)となって落とし穴にいるICE T-REXを包み込んだ。外部から影響はでるが、内側なら極寒の冷気の影響はないだろう。実際に背中の突起物の氷柱が融けているし、全身すっぽり溶岩に覆われてるICE T-REXは俺から出ようともがいている。

 

「念のためだ【溶岩流】【火山弾】」

 

落とし穴から溢れ出るマグマが赫赫とした川の道を四方八方に大きく広げながら作っていく。さらにこのエリアを火の海と化していく溶岩の塊を広く飛ばし地形ダメージとして落とす。そうしている間にICE T-REXが動きを止めて力を抜いた。まだHPは3割もある。警戒―――と思ったらカッ! と目を見開いたICE T-REXが足に地面が触れるや否や、力強く踏んで強靭な脚力でもって溶岩の身体から抜け出した。―――だがな。

 

「それを見越して、溶岩流を用意していたんだ!」

 

溶岩の道に潜水してICE T-REXの真後ろに流れている溶岩流から先に手を出して掴もうとするが、あっさり躱される。意外と素早い・・・・・これを繰り返すうちに溶岩流を凍らされて、移動と逃げ道を潰されるのがオチだな。溶岩魔人(ラヴァ・ゴーレム)を解除して大盾を仕舞う。

 

「いくぞ」

 

GUOOOOOOOOOOOッッッー!!!

 

駆ける俺達。ICE T-REXは走りながら背中から氷柱を放って先制と牽制してくるが【超加速】でさらに素早く動く俺は軽々と躱しながらトラップを設置していく。その間にも氷柱を飛ばしてくるが、かすりすらせずにこざかしく動き回るとICE T-REXはブレス攻撃に切り替えた。

 

「【色彩化粧】」

 

また姿を消した状態で高く跳躍する。広範囲攻撃だろうが、それより高くそれより遠くの位置にいれば当たることはない。姿を消した俺を見失った敵に対してICE T-REXがキョロキョロと目視で探す仕草を見ながら、背中に向かって落ちる。

 

「【灼熱地獄の誘い】【トリアイナ】」

 

『日食・Ⅹ』の短刀を刀に変形させてICE T-REXの全身を幾多の切り傷を刻み、スリップダメージを与えた。攻撃と同時に姿が見えるようになった俺に全身から白い煙を噴射するICE T-REX可能性を考慮して、直ぐに距離を置くと案の定白い煙が噴き出して来た。あの煙って羽毛の隙間から出ているのか? マグマの中に閉じ込められても羽毛は溶けないどころか燃えすらしなかった。だが、スリップダメージは与えた。

 

「よし、こっちに来い!」

 

GUUUUOOOOOAAAAAAAAAAAAAAA!!!

 

設置した罠アイテムへ逃げる俺に追いかけるICE T-REXがブレスを吐き出した。俺が通り過ぎた罠アイテムが凍り付いて使用不可になってしまったのを見て最悪すぎた。クソ、あの氷のブレスは厄介すぎるぞ!? もう一回、あの口を―――あっ。

 

見えてしまった。森林の奥からモンスターの大群が壁や門に押し寄せてきたのを。ここで失敗したらその分のゲージが減ってしまうイベントの内容を思い出して舌打ち。次会う時は絶対に倒してやる! 【飛翔】で異形の怪物達が守っている門のところへ戻り、迫ってきているモンスターよりも早く触れて防衛戦を終了した。

 

「ちくしょう、倒せなかったッ」

 

 

『いやー、あともう少しだったね白銀さん!』

 

『時間を掛け過ぎたのがダメだったけど、あの恐竜の攻撃パターンが判ったじゃん』

 

『俺達は恐竜まで生き残れる自信はないけどな!!!』

 

『主にあのゴリラのせいで!』

 

『ゴリラに襲われるぐらいなら白銀さんに襲われた方がマシだわ!』

 

 

「俺に襲われてマシって、女体化した状態でって意味ならこっちからお断りだ」

 

 

『ですよねー。なら同じ女体化した相手とだったら? あ、キスをするって方向で』

 

『おいそれを聞いちゃうんかい』

 

『本人がOKしたら凸るぞ俺は。もちろん白銀さんにだ!』

 

『カメラマンはどこだ、早くベッドシーンの撮影の準備をするんだ!』

 

 

「見知った相手ならともかく、さすがに知らない奴とはごめんだぞ」

 

 

『見知った相手とならいいのかい!?』

 

『白銀さん、俺とお知り合いになってくれ! そしたら俺を襲ってくれ!』

 

『是非ともフレンド登録をしよう白銀さん! その後二人きりホテルに!』

 

『私とお友達に!』

 

 

「何馬鹿なこと言ってんだよ。嫌に決まってるだろ」

 

 

「あ、ハーデスさんいたっ!」

 

「ハーデス、お疲れ様ね」

 

「一人で凄いね。あんなに頑張って」

 

「お疲れ様ですマスター」

 

死に別れしたイズ達が俺を見つけてこっちに来た。配信者に向かって宴の終了を告げてから配信を止めて4人に話しかける。

 

「そっちはどうだった?」

 

「厳しすぎだわ。ウェーブ10回も行けなくて途中で戻ったの」

 

「ハーデスさん、あの、ごめんなさいっ。私のせいで・・・・・」

 

「イカルちゃんがハーデスをフレンドリーファイアで倒しちゃってから凄く落ち込んじゃってね。あの、怒らないであげて。イカルちゃん、わざとじゃ・・・・・」

 

分ってる。あれはどうしようもないわ。それに俺のミスでもあるしな。

 

「スキルの確認を怠ったのが悪かった。先に防衛戦をするんじゃなくて取得したスキルの確認からするべきだった。そうさせずに防衛戦に催促した俺が悪かったから、イカルは謝らなくていい」

 

「ううう~・・・・・」

 

今にも泣きそうなイカルを慰めるながら頭を撫でつつイズとセレーネに問いかけた。

 

「二人はまだ戦える方か? 疲れてないか」

 

「ええ、行ける方よ」

 

「アイテムの補充は出来ないけど、まだたくさん残っているから大丈夫」

 

「イカルは?」

 

「・・・大丈夫、です」

 

ゲージの方は・・・・・俺の働きのおかげか60%以上も増えていた。あ、でも数%下がった!?

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