「【
「【相乗効果】【覇獣】【海竜神】【黒皇鳥】!」
最初の男殺しゴリラを突破しなければ話にならない戦いを乗り越えてから、再びパーティーで防衛戦に挑んでどれぐらい時間は経ったか。共に戦っている2パーティーと奮戦はしているもの、数の暴力と強さに悪戦苦闘している。味方のフォローをしながらなんとかレベル40台まで生き残れたところ、俺でもまだしたことが無いことをイカルはして、一気に50回目の戦いに臨めるようになった。
「尻尾がリヴァイアサン、背中にジズの翼と頭部、身体は変わらずベヒモスというキメラになるのか」
「したことがないの?」
「無いぞ」
召喚時間が経って消失するクリスタルボスモンスターズを見送りながら感想を言う。
「時にイズさんとセレーネさんや。こういうアイテムって作れる?」
「どれ?」
「『運命の赤い糸』・・・・・?」
効果も見てもらい、凄い実用性があると知ってもらった2人なのだが難しい顔を浮かべた。
「糸自体は問題ないけれど、このスキルが発現するほどの素材がないと無理だと思うわ」
「多分、鍛冶師じゃなくて錬金術師の類じゃないかな」
そうなるとラプラス先生に聞くしかないな。量産できれば異性限定でプレイヤーが強くなれるのに。
「このゲームにそんなロマンチックなアイテムもあるのね」
「それ、誰に使うの?」
「誰と言われても。俺のスキルを完璧に使いこなせるプレイヤーは今のところ二人しかいないんだよな。一人は当然だがイカル。もう一人はメイプルだ」
挙げた二人の少女達の特徴を察した二人は同時に納得してくれた。
「確かにそうね。3人共防御力極振りだもの」
「ハーデスのスキルは似た者同士じゃないと、ね」
セレーネ? その似た者同士って言葉は誉め言葉ではないな? なーんか引っ掛かるぞー?
「モンスター、来ましたよ!」
「わかった、迎撃! 左右のパーティーが苦戦したらすぐにフォロー!」
「「わかった!」」
「かしこまりました」
レベル50の中ボスは二本の長い鼻と顔、六本足を持つ巨大なツインマンモスだ。特徴は何と言っても高いHPと防御力。攻撃は二本の鼻での物理攻撃、地面の雪を吸い込んでから放つ吹雪、足を踏んで地面を操作、そして猪突猛進だ。HPが三割になると全身に氷の突起物を生やして駒のように回転を続ける。そして多くダメージが入るのは腹部のみと。
それを全員に伝えて【身捧ぐ慈愛】を使って俺の防御力を付与しながら戦った。仮に勝ってもここからは辛い戦いになるぞ。
「【挑発】!」
イカルが体を張ってモンスターの意識を俺達から逸らしてくれた。『八岐大蛇の大盾』の前に立ったことで8つの状態異常が付与され、一目でわかるぐらい弱体化したツインマンモスに好機と攻め立てる。俺はツインマンモスの懐に滑りながら潜り込み、セットした幾つもの落とし穴が作動したのでそのままツインマンモスと落ちたがこれが狙いでもある。
「イズ!」
「わかってるわっ。いくわよー!」
片手に爆弾を持っているイズが落とし穴に落とした。ツインマンモスの体の隙間に入って転がって行く最中に爆弾の大きさが倍になった直後。ツインマンモスの巨体が上空に向かって吹っ飛ぶほどの爆発が起きた。もちろん俺も仲良く空の上に飛ばされた。
「【クイックチェンジ】【血纏い】【クイックチェンジ】【反骨精神】!」
【STR】に変換した【VIT】と一割まで減らしたHP分の【STR】+『八呑の指輪』を装備して16の大槌を急いで装備し、一緒に落ちるツインマンモスに目掛けて力強く打ち下ろす直前に予想以上に時間が掛かったせいで次のウェーブに出るモンスターの軍勢が現れてしまったようで、落とす場所をモンスター達に変え殴り飛ばした。そのまま上空から『死神の大鎌』の【無双乱舞】で800の斬撃を放って一網打尽に倒していく。
「うわー、数をものともしねぇ」
「これで51まで進んだか」
「俺達もちょっとは貢献してるよな?」
「だといいがな」
「このイベントが終わったら俺はスキルを探すんだ」
「俺もそうしよう」
「故郷に帰ったらゆぐゆぐちゃんと結婚するんだ!」
「なら俺はウッドちゃんだ!」
「おい、白銀の腕が兵器みたいになってこっちに砲身を向けてね?」
「って、違う! 白銀さんの攻撃に倒れなかった幸運のモンスターがこっちに来てるんだ!」
気付いたプレイヤーはあとで褒めてやろう。レーザーを撃って生き残った一部のモンスターを倒す前に、俺の代わりにサイナがガトリングガンで倒してくれた。ナイスフォロー。それに比べて・・・・・。
「男共、集中! 特にそこの二人は死力を尽くして戦え! ゆぐゆぐとウッドが作った餅を食いたかったらな!」
「な、なんだと!? ゆぐゆぐちゃんの手料理を食べられるのか!」
「ウッドちゃんの柔らかい手で作られた餅ぃー!!」
まだ止まらないモンスターの侵攻に向かって駆ける二人のプレイヤー。否・・・・・。他のパーティープレイヤー全員まで後れを取らんと血気盛んに掛かっていった。んーでも・・・・・。
「「「「「ぐあーってむぅー!!」」」」」
「「「「「おおーのぉー!?」」」」」
個人プレーして勝てるモンスターのレベルじゃなくなってるんだよなぁ。呆気なく返り討ちに遇った2パーティーを呆きれ俺達は何とか54回目のウェーブまで進んで、あの恐竜との戦いに臨めるところまで来たが、また強制的に拠点に戻されてしまった。
「くそっー! 次が恐竜だったのにー!」
「もう防衛ゲージが満たしたのね」
「あ、門が開いたよ」
「次の拠点に行きましょ?」
この悔しさ、次の拠点の防衛戦で晴らしてやる! 続々と門を潜り抜け外に出るプレイヤーと交じって足を運ぶ俺達であったが、なんか背後が騒がしい。シャンシャンと鈴のような音も聞こえてくるから何となく振り返ると、数匹のトナカイでソリを引かせているNPCが門に向かって行ったかと思うと、途中で停まった。ソリに乗っているNPCがこっちに振り向くその顏は、よく見たら鍛治師のヴェルンドだった。
「よう・・・口だけのならず者ではないようだな。半日で守り抜くとは思わなかったぜ」
「結構ギリギリだったけどな。それで、どうして急にここへ?」
ヴェルンドに近寄りながら尋ねる。他のプレイヤーも集まり出し不思議そうに成り行きを見守りに佇むようになる。
「乗れ、送って行ってやる」
「・・・・・あの場所に?」
「他にどこにある。とっとと乗りやがれ」
また催促されたので四人乗りが出来る大きなソリに乗るや否や、トナカイを使役するヴェルンドが「ハイヤッ!」と掛け声をかけながら手綱を振るった。トナカイ達はその合図で門の向こうへ走り出す。
「おお、初めての体験だ」
「本当ね! トナカイに引いてもらうなんてリアルじゃ外国に行かないとできない体験だわ!」
「凄い・・・・・」
「わぁー!」
雪道を駆けるトナカイに引かれるソリに乗る俺達。貰った地図に描かれた目的の場所までは、10分程で着く距離にあった。山の麓にソリが止まってヴェルンドから降りろと促される。
「この山に登って行けば洞穴がある。その中に入って行けば氷だらけの下り坂の洞窟に着く。そこを滑って行けばお前らがこれから向かう次の拠点に辿り着く」
「因みに、一日も掛かる道はここを通るのか?」
「通らねぇな。ここまで来る途中で見ただろうが分かれ道があっただろう。ここに来る時に左側の道を通ったが、次の拠点に向かうなら右側の道が正規のルートだ。最短で着くがそれなりの危険が伴う覚悟が必要な裏のルートと安心安全だが長い時間を掛けなければならない正規のルート。俺だったら安全を選ぶがな」
「命知らずなのは冒険者だけで十分だもんな。ここまで送ってくれてありがとうヴェルンド。また何時か会おう」
「ふん、さっさと面倒事を終わらせろ。そうしたら俺達も何時もの日常を過ごせる」
その言葉を最後に残して、俺達を置いてきた道に戻るヴェルンドを見送った。
「ハーデス、私達だけでいいのかしら。他のプレイヤーは何も知らずに一日でも時間が掛かる道のりを歩くことになるのだけれど」
「俺達をソリに乗せてくれたヴェルンドを見かけたプレイヤーなら、このソリの痕跡を辿ってくるかもしれないが、それなりに危険が伴うって言われたからなぁ。死に戻る可能性があるって暗に言われた気がするし」
「取り敢えず、登って洞窟の前まで行ってみよう?」
「そうしましょうハーデスさん」
セレーネとイカルから指摘を受けて山登りを開始する・・・・・のだが。
「急斜面で中々上り辛いな」
「これ、思ったよりもスタミナが減っていくよ」
「幸い、木々があるから何とかなるけれど・・・・・」
「あ、わわわぁー!?」
雪山に登るのは別に初めてではないが、身体が小さいイカルには大変な山登りだ。実際に体勢を崩しかけたのはこれで三度目だ。イカルの後ろにいる俺がいないと下に転がって行ってしまいかねないな。
「裏ルートにも行きやすい道を必要だろ。こうなったら・・・・・」
「こうなったら?」
久々に使うぜ、銀狼の衣! たくさんのフェンリルの毛皮でイズが作製してくれたこのアイテムで俺自身がフェンリルになった!
「あ、久しぶりに見た」
「そっか、その手があったわね」
「ハーデスさんが狼になった!?」
俺がフェンリルになった意図を察し、三人は俺の背中に乗る(サイナは自分で飛ぶ)と人の足よりスイスイ速く駆け登って行く。そして程なくして目的の洞窟を発見した。
「体内時計的に10分ぐらいか。人間の足だったら絶対に数倍の時間は掛かるぞ」
「三日間も歩くよりはいいんじゃないかしら」
「お疲れ様ハーデス。ありがとうね」
「ありがとうございますハーデスさん」
俺から降りた三人の後に衣を脱いで彼女達と洞窟の中を見る。一寸先は闇と体現している洞窟の先は何も見えない。
「話じゃあソリに乗った方がいいらしいけど」
「私達にはないのよねぇー」
「でも木材があるなら作れるよ?」
それならインベントリにたくさん保管してあるぜ。と鍛冶師二人に作ってもらうその前に食料を取り出した。
「滑る前に氷結耐性対策にもちを食おう」
「そうねー。何事も万全に整えておきましょうか」
「おしるこ・・・・・!」
「あんこもち!」
「キュ!」
スタミナ回復+バフ目的に作り置きしたもち料理を渡していく。最後の一匹・・・・・一匹?
「・・・・・ウサギ?」
「「「え?」」」
つい渡してしまったもちをみょーんと伸ばして食べるウサギ。ただし、モンスターの方だ。俺達の一心不乱にもちを食べる雪ウサギを見守っている視線に気付き、ハッと我に返った雪ウサギが脱兎のごとく逃げて距離を置いた途端に、俺達を囲むように雪がモリモリをと動いて―――凶暴な顔つきの大きな雪ウサギが姿を現した。
「嘘! 外にもモンスターが!?」
「気付かなかった・・・・・!」
「た、戦いますか?」
驚く三人を他所に目の前の雪ウサギ等を懐かしげに見る俺の目の前に、顔に傷跡があるボスの風格を持っている雪ウサギが前に出てきた。
「お前・・・・・あの時の?」
これまた意外な再会を果たした。もしかしてここが雪ウサギの縄張りだったりするのか? もしそうなれば戦闘回避はでき―――
グウウウウウウ・・・・・。
何か音が鳴った。なんだ? と思いでイズ達に振り向き問うと分からないと返答をされ、雪ウサギへまた視線を戻すともちを食べ終えた子ウサギが再び来て手を突き出して来た。
「え?」
イカルが持っているあんこもち。それを物欲しそうにつぶらな瞳をイカルに向ける。もしかして・・・・・。
「お腹空いているのか? この場にいる皆も」
「キュ!」
「頷いた」
「そうだったんだね」
俺が出したもち、あんこもちとかおしることかの匂いで身を潜んでいた雪ウサギ達が空腹に堪えかねず出てきまった感か。でも、人間サイズの量しかないもちなんかで満腹になるはずが無いぞ。くま並みに大きい身体をしているんだから。
「ハーデス、何かない?」
「あるっちゃああるぞ。生でもいいなら、な」
宝石肉と虹色の実をたくさん出すと、我慢の限界だと雪ウサギ達が二つの食材に群がって、我先と貪るその姿はくまと遜色のない喰いっぷりだった。子ウサギの親もそこに交じっているし。
「美味しい?」
「キュー!」
「可愛い・・・・・!」
自分のあんこもちを食べさせているイカルに頭を撫でられている子ウサギ。
「凄い食べっぷりね。相当お腹が空いていたんじゃない?」
「冬眠、していたのかな?」
「くまみたいな体型をしているけど、種族的にはウサギの方なんだよこいつ等」
「「そうなんだ」」
そんな雪ウサギ達を見ながら俺達はもちを食べていた。ウサギなのにくまみたいなデンジャラスな食い方をする。アメリアが見たら気を失うんじゃないか?
「さて、食ったか? 食べたならごちそうさまでしただ」
「「「ごちそうさまでした」」」
「よし、それじゃあ滑りに行こ―――」
「ガル」
「お?」
おや、もう食べ終えたのか。それとももっと食べたい? あ、違う?
「ガルル」
頭を近付けてきて、俺の頭とゴンと重ねるように押し付けてきたら『雪ウサギと友誼を交わしました』とメッセージのパネルが浮かんだ。
「お、力を貸してくれるのか?」
「ガルッ!」
それもボスだけじゃなく、部下も一食の恩を返すとばかり頷いた。ふむ、そういうことなら・・・・・。
「俺達は次の拠点に向かいたいんだが。俺達以外の人間達も共通の目的で一日中も歩かないと行けない。そいつらの全員の足となってこの場所にまで送ってやってくれないか?」
ヴェルンドから得た地図にこれから行く城のことを伝える。ボス雪ウサギは頷き、部下達に話し掛けて命令をくだしたようで、たくさんの雪ウサギ達が山から降りていった。
「一応、大丈夫かしら? モンスターの襲撃だと思われない?」
「無害だとわかれば恐らくは?」
ドドドドドッ!
「な、なんだあの厳ついウサギの群れぇー!?」
「こっちにくるぞ! ウサギなのに顔が凶悪すぎるだろ!?」
「というか、HPがないぃ!?」
「に、逃げろ勝てねぇよ!?」
「う、うわぁー!! ・・・・・あれ?」
「え? 止まった・・・・・なんで背中を向けるんだ」
「あ、子ウサギがいるぞ。何か訴えてんな?」
「・・・・・もしかして、これは白銀さん現象なのでは?」
「あ、ありえるぞっ?」
「えっと・・・・・乗れって言ってんのかな」
「そんなまさか・・・・・あ、子ウサギが頷いてるぞ」
「乗れって親分ウサギの背中を叩いてるみたいに手を動かしてる辺り、そうなんじゃないかって思ってきた」
「よ、よし・・・・・乗ってみるっ。お前らも来い」
「わ、わかったわよ」
「うわ、ふかふか・・・・・えと、全員乗ったぞ? これからどうするんだ?」
「キュ!」
「ガルルッ!」
「うわ、動き出した! 速い速いっ!」
「えつ、プレイヤーを乗せて走っていったぞ!?」
「なるほど! 俺達のために次の拠点までウサギ達は背中に乗せてくれるのか!」
「だったら乗らない手はない!」
一匹だけ残り他は山を下った雪ウサギ達を見送った後に改めて洞窟に入ると急に氷の道が下り坂だった。これ以上踏み込んだら確実にどこまでも滑るしかない状況になるなこりゃ。
「ガルガルル」
何か伝えてくる雪ウサギが俺達の目の前で、背中にポンポンと叩いた。
「乗れってことか?」
「ガル、ルルル」
頷く雪ウサギ。
「そうみたいだわ。それじゃあ乗りましょう?」
「よろしくね?」
「よろしくお願いしますっ」
「頼んだ」
「失礼します」
雪ウサギの広い背中に俺達を乗せたまま、洞窟の中に入ると躊躇なく氷の滑り台にペンギンのごとく腹で滑って移動する。当然その速度はジェットコースター並みでイカルが悲鳴を上げたのは必然的だった。