バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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南極大陸のイベント(7)

 

三つ目の拠点―――を囲む天然の要塞と化している山の一つに繋がっている洞窟の中を滑って一時間程で本当に次の拠点にたどり着いた。洞窟から雪ウサギの背中に乗って滑ってきた俺達はすぽーんと飛び出て・・・・・。

 

「って、思っていたより高いところから落ちるんだな!?」

 

「地上から100メートルです」

 

宙に投げ出された形の俺達は、雪ウサギから離れないよう毛皮を掴んで一緒に落ちていく。

 

「「きゃあー!?」」

 

「ハーデス、お願い!」

 

「言われなくとも! 【身捧ぐ慈愛】!」

 

ドスーンッ!

 

俺の防御力で【カバー】となるスキルの効果範囲にいるイズ達と一緒に地面に着地した。雪ウサギもダメージがない、というかそもそもHPがないモンスターだからダメージは入らないか?

 

「ジャスト一時間。俺達の目的地の拠点に着いたが、次は随分と凄い拠点のようだがな」

 

「ええ、今までの拠点より大きい規模ね」

 

「人、というよりNPCがたくさんいそうな拠点だね」

 

「わぁ・・・・・」

 

拠点に着いても移動してくれる雪ウサギの背に乗ったままの俺達は、高さ100メートルはある壁を見上げながら感嘆の念を抱く。外から見る限り、防衛機能は万全とは思うがここも防衛する次なる拠点なのだろう。雪ウサギの足が不意に停まる。止まった場所は門の前だった。

 

「門に着いたのね。ありがとう」

 

「ガルッ」

 

背中から降りると、雪ウサギは颯爽と雪山の方へと走って行く。見送った俺達は踵を返して目減りしていく何かの設定されたタイマーと拠点に着いた人数である5人と表示している門に近付いて拠点の中に入った。

 

「うわ・・・・・」

 

「これは、想像してなかったわ」

 

「・・・・・全部、凍ってる」

 

「建物も、人(NPC)も・・・・・」

 

氷河期時代に取り残されてしまったかのように、セレーネとイカルが言ったように凍ってる。昨日までの日常の時間が何者かに氷付けの形で停められたまま、今日まで時間が流れてしまったような拠点に出迎えられた俺達は、驚きを隠すことなど出きる筈がない。

 

「・・・・・門が開いたまま、どうなると思う?」

 

「開いたままでも、防衛戦はできないのかしら」

 

「できてしまったら、門が開いたままですよ?」

 

「・・・・・門が開いたままの防衛戦」

 

・・・・・ちょっと、考えたくないことが頭に浮かんだぞ。【飛翔】で拠点の上空に飛んで他の三方の門も開いたままになっていたことを確認してイズ達のところへ報告に戻る。

 

「門が全部で四つあった。それも開いたままのな」

 

「そうなんですか? だからみんな凍っちゃったでしょうか?」

 

「NPCまで凍るとは思えないわ。おそらくだけれど氷の魔女の魔法じゃないかしら?」

 

「自然で起きた現象じゃない規模だから、きっとそうかもしれないね」

 

近くの建物に触れてみると、開けられない。いや、それ以前に入ることはできないか。

 

「建物の中で一日過ごすことはできないな」

 

「ああ、やっぱりなのね。じゃあもう気付いてると思うけれど、パーティーが自動的に解除されてるわ」

 

「これって、あの時と同じだよね。リヴァイアサンレイドと」

 

「?」

 

イカルは不参加だからわからない話だが、俺達は体験したからセレーネはそんな考えに至れたのだ。

 

「それがこの拠点にも適用するならさ」

 

「間違いなく、今度はレイド戦をする防衛戦が始まって」

 

「この凍りついた拠点を守る戦いになる」

 

開けっ放しなのはそういうことなのか、はまだ判らないが判ったことはある。

 

「それとあのタイマー。あと一日ほどの時間しかないが、レイド戦までの時間か? 門が閉まる時間なのか?」

 

「判断しにくいわね。このイベントは五日間だから、まだ一日も時間はあるとして」

 

「一日って、まだ時間がそれほど経っていないから実質二日間、48時間だよね」

 

「あの、二つ目の拠点から三つ目のここの拠点まで歩いて着くまで一日で、残り一日しかありませんよね? 他のプレイヤーは間に合うでしょうか?」

 

三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったものだ。根本的な回答は見出だせないが、俺達は最悪・・・・・運営にしてやられる可能性が高いかもしれないぞ。

 

「ねぇ、レイド戦って専用のエリアでするのよね?」

 

「その心は」

 

「もしそうじゃなくて、開きっぱなしの門の前で四方から攻めてくる可能性もあるじゃないかしら。ほら、500人のプレイヤーが参加しているし、ひとつの門に125ずつわかれるし」

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

「・・・・・イズ、その推測は笑えないぞ」

 

「どれかひとつでも突破されたら防衛戦が失敗に終わるってことになるかも・・・・・」

 

「え、大量のモンスターと戦わないんですか?」

 

その大量のモンスター分のボスモンスターがレイドボスなら納得しちゃうんだよイカル。

 

「それってさ、俺達が固まるより四方にわかれて仮定のレイドボスと戦った方が効率がいい気がしてきたぞ」

 

「えっ?」

 

イカル、どうして驚く? もしや離れるのが嫌なのか?

 

「逆に私達が積極的かつ素早く倒して、他のレイド戦に参加できるなら参加して倒すのもありだと思う。セレーネは?」

 

「どっちも悪くないかな? モンスターと戦うことは変わらないけど、レイド戦のルール次第で臨機応変な動きをするべきだよ。でも今は他のプレイヤーを待つしかないけど」

 

一時間の近道で来た俺達と違って。徒歩で二日間は掛かるが雪ウサギの協力を得てここに向かっているプレイヤー達は、果たしてあと何時間で着くのかな。

 

「とりあえず、建物に入れない以上、寝床をどうにかしないとね」

 

「はい!」

 

イズの言う通りだ。まだ四日もイベント期間の時間が残っている。ここの拠点が最後とは思えないけどもうさすがに戦いを控えたい。普段使っている強力なスキルのクールタイムが終わっていないからな。それに今はすっかり夜の帳が降りている。

 

「ハーデス、あの工房兼家は出せない? 前の拠点と違ってここは建物を利用できないから」

 

セレーネがそう言うので俺はこう言い返した。

 

「出してもいいが、このサーバーのプレイヤー達の装備の修理のお時間がやってくると思うぞ。リヴァイアサンレイドみたいになってもいいなら出すが」

 

「「かまくらを作ろう」」

 

どうやらあの状況に懲りたらしい。すぐにイズまで異口同音で言い返したあたり、休みなく急かされる作業の苦労を骨身に堪えたとみえる。それから有り余る時間の中でブロック状のかまくらを作った後、俺達がいることと眠っている看板を立てて、その中で次の日になるまで設定して眠った・・・・・。

 

 

二日目―――。

 

 

ムクリ。

 

「「「おはよう」」」

 

「おはようございます」

 

「おはようございますマスター」

 

寝てすぐに起きたような何とも言えない睡眠だった。時間もゲーム内で一日過ぎていたことを確認してまだかまくらから出ないで話し合う。

 

「今日はどうするかなー」

 

「凍ってるけど拠点の探検でもする?」

 

「まだ時間はあるからのんびりできるしね」

 

「そうですねー」

 

イベントでゆとりの時間が出来るなんて思いもしなかった。ならその時間内で出来ることをしようかな。

 

「そんじゃあ、少し調べ物でもしようか」

 

「どんなことを調べるの?」

 

「開きっぱなしの門の前の向こうに何かあるかどうかだ。山に囲まれているこの拠点だけど、他にも国がありこの拠点まで往来できる道もあったわけだからさ。もしかすると最初の村イベントのように大悪魔のような巨大なモンスターがいるかもしれない」

 

「南極だから悪魔はいないと思うけれど、氷の魔女がいるものね。その可能性はあるかも?」

 

「じゃあ、見に行ってみましょう!」

 

ということで俺達は目的を定めた。かまくらから出てこの拠点に着いて闊歩しているプレイヤー達とすれ違ってまずは西方面から調べに向かった。

 

「【相乗効果】【大型化】【溶岩魔人】【海竜神】」

 

「【相乗効果】【大型化】【溶岩魔人】【海竜神】!」

 

溶岩のリヴァイアサンとなってイズとセレーネを頭の上に乗せて雪を融かしながら進む―――。

 

ゴンッ!

 

「あがっ!?」

 

「わっ!?」

 

「「きゃっ!!」」

 

―――見えない壁によって途中で俺達はぶつかり、これ以上先に進むことはできなかった。ぶつかった衝撃で頭に乗っていた二人が落ちてしまったが、サイナが地面に激突する二人を寸前で空を飛びながら回収してくれたから助かった。

 

「ううう~・・・痛いです」

 

「・・・見えない壁が張られてんな。これ以上先に進めなくなっていたのか」

 

尻尾を動かして前方に強く振るったら、バシンと俺の尻尾が弾かれた。

 

「これってプレイヤーの進行を防いでいるってことよね」

 

「他の方角もそうなのかな」

 

「調べますかハーデスさん?」

 

「ん、調べよう」

 

踵を返して来た道に戻りながら他の方角にも赴くと、西と同じで見えない壁に阻まれてしまった。結果的に砦を囲む四方に見えない壁があることが判った。それまでの距離は100メートルと思いの他短い。ただし、二つ目の拠点と繋がっている道も今では壁が張られてて戻ることはできなかった。

 

「なるほど。プレイヤーは完全に閉じ込められてる。一つ目と二つ目の拠点はすぐに見える距離だから後戻りする考えを頭から消されていた」

 

「向こうからこっちに来られるわよね?」

 

「うん。でないと三つ目の拠点に行けれないよ」

 

「明日はどうなりますか?」

 

どうなるだろうなぁ~。一先ず拠点に戻る俺達だったが、そこで待ち構えていたプレイヤーに話しかけられた。

 

「白銀さん、何してたんだ?」

 

「今後の展開の調査だ。100メートル先まで見えない壁に阻まれて行くことができなかったぐらいしか分からなかったがな」

 

「じゃあ、あのタイムリミットみたいなのは?」

 

「門が閉まるまでの時間か、防衛が始まる時間か、タイムリミットまで拠点にいなければだめなのか・・・色々と考えさせられる謎の時間で俺達もわからない」

 

「ここを防衛するモンスターってどんな感じですかー?」

 

「それは実際にタイムリミットが過ぎるのを待たないとわからない。でも、四つの門に125人ずついてほしい気持ちはある」

 

「125人? なんでだ?」

 

「四つの門に125人・・・あっ、丁度プレイヤーが500人だからか!」

 

「100人も超える人数をそれぞれの門に配置って・・・・・もしかしてレイドボスの可能性が?」

 

頭の回転が速くて助かるなー。俺がその通りだと肯定すれば、プレイヤー達は相談し合い始めた。

 

「まだ時間はあるし慌てず皆に教え回った方がいいんじゃね?」

 

「でも、まだ全員揃ってないぞ」

 

「何やってんだよ、まだ二つ目の拠点にいるのか他のプレイヤーはー!?」

 

「今すぐ掲示板で教えないと!」

 

「掲示板を見てくれるか分からないが、しないよりはマシだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【南極】エルフイベントのリベンジを語るスレ9【防衛隊】

 

 

 

677:防衛隊員

 

次の三つ目の拠点までまだ着かないんだが

 

 

678:防衛隊員

 

裏山。俺達のサーバーはまだ一つ目の拠点で足止めを食らってる

 

 

679:防衛隊員

 

鹿鹿鹿鹿鹿鹿ぁぁああああああああああああああああああ!?

 

 

680:防衛隊員

 

こっちもそうだけど、もう諦めムードで消極的。というか、もう誰もやっていない

 

 

681:防衛隊員

 

今回の防衛イベント、難しすぎるだろ!!!

 

 

682:防衛隊員

 

二つ目の拠点も難しい・・・!!

 

 

683:防衛隊員

 

≫680 さすがにヤバすぎるだろそれ。運営の対応力が試されるぞ

 

 

684:防衛隊員

 

≫680 鹿に苦戦する気持ちはよーくわかるけど、10ウェーブぐらいは進んでいるだろ? 途中で止めれば防衛ゲージは溜まるんだからそれを繰り返せばいいじゃん

 

 

685:防衛隊員

 

そうそう。やりようはあるぞ

 

 

686:防衛隊員

 

頑張れー!

 

 

687:防衛隊員

 

≫684 ≫685 ≫686

 

・・・・・鹿じゃなくてメスゴリラなんだが

 

 

688:防衛隊員

 

あっ・・・・・

 

 

689:防衛隊員

 

あ―――

 

 

690:防衛隊員

 

アアアッ――――!!?

 

 

691:防衛隊員

 

誰もやりたがらないのはそっちだったかぁ・・・・・

 

 

692:防衛隊員

 

えっと、が、頑張れ! ゴリラに負けたらお婿に行けられない身体にされるぞ!

 

 

693:防衛隊員

 

・・・・・うちのサーバーのプレイヤー、男しかおらんのでメスゴリラにとっちゃあより取り見取りの婚活パーティーなんすよ

 

 

694:防衛隊員

 

な・・・なんて凄惨な・・・・・!!

 

 

695:防衛隊員

 

えーこちら、白銀さんがいる11サーバーから同じサーバーにいるプレイヤーにお知らせします。まだ第二の拠点にいるプレイヤーは今すぐ第三の拠点に走って来い! タイムリミットが迫っているぞ!

 

 

696:防衛隊員

 

諦めちゃダメだ、急いでその婚活パーティーから抜け出さないと! お前達の人生が終了してしまうぞそれでいいのか!?

 

 

697:防衛隊員

 

ガンバレー!

 

 

698:防衛隊員

 

≫695 タイムリミット? そんなのあるのか?

 

 

699:防衛隊員

 

何のタイムリミットだよ?

 

 

700:防衛隊員

 

白銀さんの予想では第三の拠点の四つの門での防衛戦はレイドボスが現れる可能性があると示唆した。実際に拠点に入ったらパーティーが解除されて、パーティーを組み直すことができなくなっているから多分間違いないと思う

 

 

701:防衛隊員

 

三つ目の拠点にタイムリミットなんてあるんだ?

 

 

702:防衛隊員

 

え、マジで? 今時間はどれくらい進んでいるんだ11サーバーの方は?

 

 

703:防衛隊員

 

残り時間18時間を切ったところだ。まだ第三の拠点に集まっている人数は400人も超えていないから早く来てほしいんだよ。第三の拠点までの距離は結構長いから。体感で言わせてもらえるなら一日中歩かないと着かない距離だったぞ

 

 

704:防衛隊員

 

そこまで遠いのかよ第三の拠点は!?

 

 

705:防衛隊員

 

同じ11サーバーでまだ第二の拠点にいるプレイヤーだが、マジかよ。通りでNPC達に追い出されたわけだ

 

 

706:防衛隊員

 

俺達も急がないとヤバいかもしれないなぁー!?

 

 

707:防衛隊員

 

≫705 追い出された? NPC達に? どーいうことだ?

 

 

708:防衛隊員

 

≫705 悪いことでもしたのか? キリキリ吐くんだ! 略してキリ吐くん!

 

 

709:防衛隊員

 

何もしてねぇー!! ただ、イベント期間は五日間もあるんだから一日ぐらい遅れてもいいだろ的な考えで無人の家に寛いでいたら、拠点にいなかったはずのNPCのおっさんが来て「てめぇ、空き巣の分際でいい度胸しているじゃねぇか!」って追い出されると、いつの間にかたくさんのNPC達が帰って来ていたみたいで、皆して俺を拠点から追い出しに掛かって来たんだよ! しかも俺だけじゃなくて俺と同じくまだ拠点にいた他のプレイヤーもだ!

 

 

710:防衛隊員

 

別に悪い事できるような要素はないと思うぞ

 

 

711:防衛隊員

 

なるほど、空き巣をしたからNPCの怒りを買ったわけか。おまけに怠け者でもあるから

 

 

712:防衛隊員

 

そりゃあNPCじゃなくても怒るわな。他のプレイヤーは真面目に次の拠点に向かってるのに一日ぐらいは~な気持ちで不法侵入した家で寛いでいたら、家どころか拠点から追い出されても文句は言えねぇよ

 

713:防衛隊員

 

ぐっ、うるさい! だからしょうがなく次の拠点に向かって行っているんだろうが!

 

 

714:防衛隊員

 

ある意味では自業自得

 

 

715:防衛隊員

 

残り18時間で一日中歩かないと着かない拠点まで間に合うかー?

 

 

716:防衛隊員

 

とにかく走れ! 500人全員揃わないと勝てる戦いが勝てないんだから!

 

 

 

 

運営side

 

 

「主任、何サーバーか一つ目の拠点から進んでいないっすけどイベントとして問題ないっすか?」

 

「二つ目の拠点の防衛も諦めてやらないプレイヤーも目立ってきていますよ」

 

「困ったな。これじゃあイベントとして本末転倒じゃないか」

 

「いっそのこと、三つ目の拠点で寛いでいるプレイヤーに協力を求めてはどうっすか?」

 

「白銀さんとこのサーバーだけが早くも三つ目の拠点に着いていますからね」

 

「ダメだ。それじゃあ特定のサーバーばかり贔屓しているのと同じだ。それに元々こうなることを想定して一日過ぎたら一つ目の拠点にいる間は全プレイヤーのステータスを50%、二つ目の拠点にいる間のプレイヤーの全ステータスを25%に上昇するようにしただろう」

 

「そうっすけど三つ目の拠点にいる間はステータスの上昇は無しのままっすよね?」

 

「ああ無しだ」

 

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