GMと別れてすぐに、召喚したフェルに跨り【念力】で飛んでドラム缶山へ向かった。一度も行ったことが無い場所であるがどんな場所だろう。200mは優に超える岩壁の頂上にある城を見つけると、積もった雪の上に降り立った。誰がどうやってこの場所まで登って建てたかは知らない氷で創られた綺麗な城を見上げる。魔女が幼い子供たちを連れ去って一人も帰ってこなかった話は聞いたことあるが、まだこの中にいるのだろうか?
「さて、行ってみようか」
大きな扉に触れて重く鈍い音を立たせながら押し開く。明かりが必要ないほど城内は奥まで見えて、幾つも間隔等に並ぶ柱の中に氷の兵士―――いや、ちゃんと鉄製の鎧を着たNPC達が収まっていた。ガラス蓋の役割を果たしている氷の壁に阻まれて触れる事できないが、このNPC達は白雪と同じく封印されているのか? でもその中、誰もいない空虚な柱が一本あった。
「ふん、よもやここまで来る礼儀知らずな異邦人とは思わなんだ」
NPC達を見ていた俺に話しかけてくる女の声。足を運び進む先の奥には氷で出来た王座に座り脚を組んで頬杖をしている傲岸不遜な氷の女王こと魔女もいた。
「それはどうも。呪いを解いてほしいからな」
「呪いを解いたところであの女の記憶は戻らぬ。無駄足であったな」
「それならそれで問題ないさ。他にも彼女の出生を知ることができればいいし」
「この我が知ると思っているか?」
あくまでも希望的な思いだ。知っているなら力尽くでも教えてもらうまでだ。無言で答える俺を氷の魔女は手を突き出して来た。
「一度問おうか。異邦人、この我に仕える気はないか。仕えるならば永遠の美を間近で永久不滅の時の中で見る許可を与えてやろう」
彼女の提案は俺の目の前に浮かぶパネルにも選択肢として浮かび上がった。同時にその提案の裏を気付く。
「・・・・そいつは、柱の中にいる騎士たちと同じになれってことか」
「察しがいいではないか。だが、お前だけはそうしない。数多の異邦人の協力があったとはいえ、唯一この我を打ち破ったお前はこれでも評価している。一生涯、我の傍に立たせてやってもいいと提案を持ち掛けているのだ」
おや、それって・・・・・? 思わずある想像をすると、ぽっと頬が朱に染まった。
「あれ、もしかして俺は告白を受けているのか? やだ、嬉しい意味で困っちゃう!」
「自惚れるな!? 誰が貴様と契りを結ぶものか!」
「あ、いきなり結婚は困るって? じゃあ結婚を前提に交際しよう! それか友達から交流しようか! 俺は一向に構わないぞ!」
「ふざけるな! 氷の魔女の我が何者にも添い遂げるつもりはないわ!」
「一生一人で生きるつもりってか? じゃあ、なんで柱に多くの騎士を封印しているんだよ。孤独に生きるなら白雪姫も含めて封印せずさっさと海に出も沈めればいいだろうが」
NOの選択を押すと、氷の魔女が奥歯をぎりっと噛みしめた。
「もしかして、大切だから腐らせないよう封印したのか? だとしたら案外優しい氷の魔女だな」
「―――・・・・・れ」
「そうしなきゃいけない理由があるなら協力してやるぞ氷の魔女」
「―――だ・・・・れ・・・!」
「お前の事情は知らない。だから俺に打ち明けてくれ。そうしたら―――」
「黙れぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!」
激昂した氷の魔女から吹雪が吹き荒れる。吹き飛ばされそうになるが、フェルと踏ん張って目の前の魔女を見据えると氷の魔女にHPバーが表示された。
「貴様をペットとして侍らそうとした我が愚かであった! もはや貴様の顏も思い出すだけで腹の中で煮え繰り返す怒りしか抱けんようになる! そうなる前に早々に貴様を氷漬けにして粉砕してくれるわ!」
「ふはははっ! 俺は異邦の地で1000人以上の人間を血祭りにしてやった元勇者の魔王だ! 俺が勝った暁にはお前を最初の僕且つ妻の一人にしてくれるわ!」
「氷殺してくれる! ―――出でよ!」
天に手を翳す氷の魔女との戦闘が始まった。同時に何かを召喚したようで場内が激しく揺れて、床が粉砕した。
「貴様が唯一倒せなかったモンスターで葬ってやる!」
えええ・・・・・それがここで出てくるのか? 強靭な二本足、野太くて長い尻尾、何でも噛み砕きそうな凶悪な顎、大きい手から伸びる鋭利な鉤爪。頭部から尻尾の先まで生えている氷柱を彷彿させる突起物と全身を覆う羽毛のモンスター。だが、姿形は見紛うことなかれ、ICE T-REXの登場に俺の視線は見上げてしまう。さらにあろうことかそいつとまた一つになって・・・・・変身した!?
さらに巨大化を果たして四足歩行の爬虫類のようになったが、後ろ脚だけで立って近づいてくるから二足歩行も可能のようだ。
最大の特徴として、後頭部から尾にかけて結晶に似た瑠璃色の剣とスパイクのようなもので背面が覆われており、特に尾の先端部は剣竜のサゴマイザーのような形状となっている。これに加え白銀の体色も相まって、さながら氷を鎧のように纏ったかのような姿となっている。
それだけならまだいいが、長い尾を駆使して薙ぎ払って、氷柱をへし折って自分の城を壊すのは如何なものだろうか。
「芸がないな! また引っこ抜かれたいのか!」
「二の鉄は踏まん!」
「そうっ、か、よっ!」
宙に作られ放たれる氷の槍から躱しながら、大盾で防ぎながら言い返す。
「フェル、【同化】!」
「グルッ!」
そっちがそう来るならこっちも同じことをしてやらぁ! フェルの身体に触れながら従魔と一つになるスキルを使い、狼男の様な二足歩行の獣になった。
「ほう・・・・・ペットと一つになるとは珍しい物を見せてくれる。だが、どこまで我と戦えるか見ものであるな」
「それはこっちの台詞だ氷の魔女。―――【神速】! 【金炎の衣】! 【灼熱地獄の誘い】!」
フェルが保有していたスキルで目にも留まらぬ速さで城内を駆けまわる。床や氷柱、天井を足場にして移動を繰り返し彼女と一体化したモンスターの身体から過ぎ去る際、氷の魔女の身体に爪で刻んでダメージを蓄積していく。赤いエフェクトが漏れていようと奴にとっては微々たる掠り傷程度でしかないだろうよ。
「その程度か? 痛くも痒くもないわ」
「だが、後から毒のように効き目が効くがな?」
「小賢しい真似を!」
【神速】の効果が切れた瞬間に氷のブレスを吐かれた。間一髪避けれたが、凍った個所が氷に侵食されたように凍結した。少しでもあんなの喰らったら状態異常になるだろうな。
「ふはははっ! どうした、獣らしく逃げてばかりではないか!」
「汚物まみれになりたくないだけだ!」
「その汚物まみれにした後に焼却してくれる!」
有言実行とばかり氷のブレスではなく青白い炎を放射する氷の魔女。回避して空ぶった炎が床に直撃すると、燃える氷塊と化した。耐性が無効のスキルを持っていても通用しそうだなあれは。
「―――【天の鎖】!」
ならば一定時間でも封じ込めている間に攻撃をするまでだ。氷の魔女を囲むように発現した金色の幾何学的な円陣から神々しい輝きを放つ数多の鎖が飛び出すと、氷の魔女とモンスターの全身を拘束した。
「触手の次は鎖か!!」
忌々し気に鎖を見ながら暴れ狂う氷の魔女。鎖の方もあっさり拘束が解かれそうに罅が入ったり千切れたりするので、とっとと攻撃に畳みかけるとしよう。この好機を逃しちゃだめだ。
「【悪食】!」
相手のHPを減らしながら自身のMPを回復、容量オーバーの魔力は魔力結晶として体内に蓄えられる。さらには【八重の狂龍】のスキルでアイテムやスキルの効果を八回分の恩恵を得られるから―――。
「一日10回と【悪食】の回数制限が規制されたとしても【八重の狂龍】と組み合わされば、実質一日80回なんだよなー運営!!!」
ほぅら、氷の魔女のHPがあっという間に5割以下も下がったぜ!
「おのれぇええええええええええええ!!!」
おっと、楽勝の気分の余韻に浸っていたら【天の鎖】から解放された氷の魔女に噛みつかれた!!
「このまま噛み砕いてくれる!!!」
「・・・・・できるのか?」
ガチン! ガチン! と何度も俺を噛み砕こうとするモンスターの牙だが、まぁー【天地転変】で入るはずのダメージの分はHPの回復として変わってしまう。
「なんだ、この硬さは!? 貴様の身体は鋼か何かか!」
「言い得て妙な例えだなー。口の中に失礼するぞー」
口が開いた瞬間に牙から離れて、自ら食べられる形で口の奥へと進み・・・・・この辺りでいいか。
「【エクスプロージョン】!!!」
カッ!!!
口の中では外の様子は見られないが、恐らく爆心地となっている氷の魔女を中心に8回分の爆裂魔法が炸裂して氷の城が吹っ飛んだかもしれないな・・・・・。
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
口の中に脱出するまでもなく消失したモンスター。その代わり床にボロボロの状態で倒れている氷の魔女がまだ生きていた。近づくと彼女自身のHPは1割だった。素顔を見たくなった衝動に駆られて仮面を掴むと、条件反射的に華奢な手にフェルの腕を掴まれた。
「はな・・・せっ、我が・・・・・で、なくな・・・・・」
「なら、降参しろ」
意識を取り戻したもの、満足に動けない状態の彼女に降伏を求めた。まぁ、当然ながら彼女は。
「断る・・・・・!」
降伏を否定した。
「そうか」
同時に仮面を剥がした。すると氷の魔女が甲高い悲鳴をあげながら眩い光に包まれ出し、何かが飛び出して来た。なんだ・・・・・あれは?
《よくも・・・よくも我の邪魔をしてくれたな貴様!》
宙に身体が透け通った鬼の形相をした老婆が俺を睨みつけてくる。これって、どういうことだ?
《貴様が来なければ我は未来永劫この永遠の美を持つ女としていられたのだ! 許さぬ、許さぬぞ貴様ァァァアアアア!!》
両手を突き出してこっちに突っ込んできた。HPがない相手にどう戦えと―――! と迷っていたら俺の胸から2つの指輪が飛び出した。クズハと戦闘後に向かった山の頂上の祠の中にあった指輪とデュラハンのドロップアイテムだ。それらが老婆にぶつかると薄い膜の様なもので閉じ込めた。見守っていれば、指輪から身体が薄い鎧を着た騎士と綺麗な女性が浮かび上がった。
《―――感謝する異邦人。ようやく愛しい彼女と共にいられる》
騎士の方は・・・・・デュラハンの声と同じだった。もう一人の女性は美しい笑みを浮かべた。
《解放してくれてありがとう。やっと彼と来世で愛し合うことができるわ。お礼にこのお邪魔虫を片付けておくわ。でも最後に一つだけお願いをしていいかしら》
「・・・・・?」
何を言い出すのかと柱に封印されていた騎士達の透明な姿が増えていく光景も見ながら耳を傾けた。
《姉様のこと末長くよろしくお願いするわ。名前は―――》
姉の名を言うだけ言って、暴れて足掻く老婆を閉じ込めた騎士達と曇り空へ昇って・・・・・あっ。
ヴオオオオオオォォォォォォォォォォンッ
因縁あるクジラがタイミングよく現れて彼等彼女等を丸呑みにした。そしてクジラ自身が雲に飛び込んで・・・・・雲が晴れて南極大陸に太陽の光が照らされて、大地に積もっていた雪が溶けていき、代わりに草花が芽吹いていく。
「・・・・・」
氷の魔女、いや、元魔女だったモノはいつの間にか人の形をした雪と化していた。その雪に一輪の花が咲いており、採取も可能だ。老婆に憑依された元魔女の形見として採取をすると、彼女に渡しに日本家屋へ戻った。
数日後。
「白雪様、今日も見ておられるのですね」
「はい。となんだかとても懐かしくて一日中見ていても飽きません」
「いつかその花だらけの園を実現しようとする彼もお気に入りですからね」
ラプラスの錬金術により、永遠に咲き誇り続けることが可能にするガラスの中に保管された氷の花。白雪はハーデスからその花を受け取ってから、生き別れた家族のように大切にしていた。
「いつまでも待ち続けます。ところでハーデス様は?」
「仲間の方々とモンスターを討伐しております」
【蒼龍の聖剣】は八岐大蛇との再戦を臨み―――怒りと悔しさを八岐大蛇にこれでもかとぶつける味方の活躍で打ち倒すことができた。また参加できなかった【蒼龍の聖剣】のメンバーの残りのプレイヤー全員にも改めて参加&勝利に導いたことで【蒼龍の聖剣】全体が一回り強くなった。
「感謝するよハーデス。やっと八岐大蛇を倒すことができた」
「どういたしまして。やっぱり最強の矛と盾があると攻略がスムーズになる。・・・・・本当、あの時の苦労は何だったんだ、と思わせるぐらい拍子抜けだった」
ハァーと若干落ち込んで溜息を吐くとタゴサックとノーフに無言で慰められた。イカルも労いの言葉をくれた。他の【蒼龍の聖剣】のメンバー達は既に解散状態で残っているのは八岐大蛇を初回で倒した俺を含む四人とペイン一行。
「あのー、皆さんも何か手に入りました?」
その一言に俺達は頷いたり横に首を振ったりして・・・・・え?
「タゴサックとノーフは手に入れなかったのか? 俺はまた手に入ったぞ。イカルは?」
「私も手に入りませんでしたよ?」
ペイン達は? と訊くと四人共、素材アイテムだけだと答えたので初回で倒した俺達は不思議そうに首を傾げた。
「もしかして初回特典ってやつか? ダンジョンのように初めてソロでボスモンスターを倒したらユニーク装備やスキルが手に入るような感じの」
「俺の経験上で言わせてもらえば2パーティー以下で倒さなきゃドロップアイテムがでないと思う。・・・・・でもこれは完全に運なのか?」
【蒼龍の聖剣】メンバー全員を勝たせるべく何度も戦い攻略した結果、天叢雲剣と十束の剣を手に入れたのに。それらの武器を見せるとノーフが驚いた。
「白銀さんも天叢雲剣を手に入れてたのかよ! しかも十束の剣まで!」
「十束の剣? どういう剣なんだ?」
知らないタゴサックに教えてしんぜようか。
「十束の剣ってのは日本神話の神々が使用していた十本の剣の総称だ。他にも剣の柄の部分に握った拳の人差し指から小指までの長さから『十握剣』『十拳剣』『十掬剣』そう呼ばれてもいる」
インベントリから出した黒板にチョークで三つの名前を書いていく。
「色々と省かせて説明させてもらえばな。ヤマタノオロチを討伐した日本の神、須佐之男命ことスサノオが使っていた十束の剣の一つである天羽々斬。この剣の刃が天叢雲剣こと別名『草薙剣』の刃の強度に負けて刃こぼれをしたほどだから、強さ的には天叢雲剣の方が強いんだよ」
「本当に省いたような説明だが要点だけは理解した」
「それは何よりだ。因みに十束の剣はユニークの武器だ。天叢雲剣がレジェンダリー武器であるのも、これらの強さとレアをハッキリと格付けされているのが顕著に表れているな」
殆ど使う機会はなさそうだからインベントリの肥やしにしてしまいそうであるがな。と思いつつ二振りの剣を仕舞う俺に話しかけてくるのがペイン。
「十束の剣にスキルはあるのか?」
「あるぞ。【十の偏剣】ってな。さっき言った十本の総称、天羽々斬以外の九本の剣に切り替えながら臨機応変で戦うことができる。しかも天羽々斬を含めた他の別名を持つ十束の剣のそれぞれにスキルがある」
「つまり一本の剣が10の剣のどれかに変えながら10のスキルを使えるのか」
「制限が課せられているがな。一度変えたら一分の待機時間を経てからじゃないと変更できないんだ」
故に一強ではないことと、対して強くはないがそれなりに便利であることを伝える。
「因みに天叢雲剣は?」
「ノーフ、説明頼む」
「高性能なステータスの数値と【退化】と【武器破壊】【破壊不能】のスキルが付与してある」
「【退化】?」
うん、その通りだ。これがまた厄介であるんだペイン。
「破壊が出来ない仕様になっている装備に耐久値を付与してしまうとんでもないスキルだ。しかもモンスターにも同じ効果が発揮するぞ」
「はぁ? おいハーデス。ってことはユニーク装備じゃなくなるってことかよ?」
「リアルと同様、この世に絶対に壊れないモノは無いってことなんだろうな。さっき教えたよな。天叢雲剣が十束の剣の刃を欠けさせたって。ユニーク装備の十束の剣が出た以上、リアルの神話を忠実に再現したんだ運営は。それ以前にユニーク装備=絶対に壊れない装備はある意味最強だろ?」
それが今後も多くのプレイヤーの手に入るなら、さらに上のランクの装備があってもおかしくはない。それがレジェンドモンスターの攻略が難しい証拠だろうよ。
「んじゃあ、事実上ヤマタノオロチから手に入る天叢雲剣の類が最強の武器ってことか」
「レジェンダリーの武器だからな。きっと新大陸にもあるぞ」
「その新大陸へ行くにも色々とやらなきゃいけないようだけどさ。あの水晶の艦で行けないの?」
フレデリカのそんな指摘に対して「わからない」と言い返す。
「地図なしでの航海は、無謀だからあんまりしたくはないんだよな」
「地図なしで南極大陸を見つけた奴の言葉じゃねぇーだろ」
「とにかくクエストをして新大陸に行けるようにしないとな」
「そうだね。どんな場所か気にならないと言ったら嘘になる。ハーデスはこの後、どうする?」
そうだなー。どうしようか、と悩んだ時。ゲーム内で放送が聞こえてくる。
『プレイヤーがイベントを発生させました。今月の日曜日に開催します』
南極大陸のイベントが終わったばかりなのにもう他のイベントか。・・・・・ちょいっと、みんなして俺を見るんじゃありませんよ。今回ばかりは俺ではありません!
「珍しいね。ハーデスがイベントを見つけないなんて」
「なんでもかんでもそうじゃないぞ。他のプレイヤーだって自分で見つけるって」
「そうだが、釈然としないな」
「はいはい、俺のことはどうでもいいからイベントの告知がメールに届いてるから見るぞ」
無理矢理話を変えてメールに届いたイベントの内容であろうメッセージを・・・・・。
「ハーデス、メールは届いてないぞ」
「俺もだよ」
「俺もだ」
「私も」
「私もです」
うん? あれ俺だけ? タゴサックとノーフも届いていない? じゃあ、俺だけか? 何だ・・・・・あっ。
「悪い、用事ができた」
「誰からかのメールだったのか」
「・・・・・知らない女のプレイヤーじゃないよね?」
フレデリカの目から光が消えた。それはないと断言させてもらう。メールで都合はなくて問題ないと返信すると、俺だけ別空間に転送され、特別に創ったのであろうスタジオのステージの舞台に立つGMが佇んでいた。
「お時間を下さいまして誠にありがとうございます」
「まじでCMを作る気だったとは」
「もちろんでございます。早速ですが、時間は限っておりますので練習をしましょう」
ある日の朝、日本中のお茶の間にNWOのCMが初めて流れた。NWOを遊んでいる者、初めて見る者も含め女天使と女堕天使が激しく衝突し合う宇宙の下では世界を歩き回り冒険をする様々なプレイヤーと、強力なモンスターと戦うプレイヤー達、未開拓のダンジョンで発見した宝箱、現実世界の様に生産をするプレイヤー、第二の世界で生きるNPC達と触れ合うプレイヤー、テイムしたモンスターと戯れるプレイヤー、マイホームで過ごすプレイヤー、船で大海原を航海して新大陸へ目指すプレイヤー達の映像が流れる間に聞こえてくる歌声が耳に残る中。
「お姉ちゃんの声だー!!!」
ただ一人、狂喜になって歌手は誰なのか敏感な反応で気付いた少女がいた。共に見ていた両親は、どうしてわかると若干引いていた。それから―――GMから連絡が届き、会いに別空間へ転送されるとビジネススーツを着たGMが朗らかに話しかけてきた。
「死神・ハーデス様。CMの製作のご協力ありがとうございます。大変好評の評価を頂いております」
「協力した甲斐があるよ。俺も見たけど力が籠っていたな。興味が湧かせるCMだったと思うよ」
「はい。担当した者たちも報われるでしょう。さて、本日お呼びしたのは他でもありません。兼ねてより死神・ハーデスに渡す報酬をご用意しました。受け取ってください」
大き目なプレゼント箱がGMの手の上に浮かび上がってすぐに消失した。インベントリにGMからのプレゼントという名のアイテムが入っていた。