太古の新大陸を冒険してから数日が経過した。他のギルドが未だに樹羅四苦八苦にたどり着いていない中【蒼龍の聖剣】は未知を既知にしていく。今日は謎の遺跡の調査をするつもりで遺跡を発見してくれた仲間の案内で同行する皆と向かえば、恐竜の時代にあること自体不自然な構造物が確かにあった。原始人なんて恐竜が滅んでからもっと先だって言うのに。神か? 神なんだな?
「ここだ白銀さん」
「よし、調べてみよう」
ストーンサークルの中心へ足を運び立ち止まっても、俺ですら何も反応が無い。
「やっぱり白銀さんでも駄目だったか」
「不思議なオブジェクト・・・・・なんか、旧大陸で身に覚えがないか?」
「お前もか? 実は俺も何だ」
「何かしらの結晶が必要なんですねわかります」
「結晶なんてどこで手に入るんだよ。白銀さんですら持ってないらしいから無反応なんだぞ」
「色々試さないか? 恐竜に関するかもしれないもので」
「そうだな」
仲間達が今日まで死に戻りしながら集めた恐竜の素材を持って入れ替わりながらストーンサークルに立つ。そうしても誰一人も変化が無くて・・・・・。
「あ、いたいたハーデス。皆とここで何をしてるの?」
イズとセレーネの鍛冶師コンビが俺達の上空から降りて来た。【飛翔】のスキルを使っている様だけど慣れるの早いな。
「謎のオブジェクトの解明。俺に手伝ってほしいことが?」
「ええ、例の洞窟に―――」
二人の足が地に踏んだ時、ストーンサークルが光り輝きだした・・・・・何事!?
「え、なに? 急に周りが光ったわよ?」
「オブジェクトが反応する何かを二人が持っている前兆だ! 何を持ってる!? 確実にこの大陸で手に入れたものに違いない!」
「ちょ、ちょっと待って落ち着いて!?」
「えっと・・・・・太古の結晶を捧げますかってメッセージが浮かんでいるけど、捧げても?」
俺は全力で首を横に振った。新大陸では何が起きるか分かったものではない。死に戻りするような場所に転移させられたら堪ったもんじゃないからだ。二人にはストーンサークルから出てもらうと輝きが消失した。古代の結晶というアイテムがカギらしいな。
「その結晶ってどこで手に入れたんだ?」
「山の方よ。これからハーデスの協力が得られるならまた再挑戦しに行きたいの」
「わかった、協力しよう。ということで皆もこのストーンサークルのオブジェクトを攻略したいなら太古の結晶とやらが必要だ。装備を失う覚悟で手に入れたいなら一緒に行こう」
俺の誘いの後に案内してくれるイズとセレーネについていく俺の背後から追いかけてくるストーンサークルにいた仲間が半数ほど。最初は真っ二つに割けた山の切れ目に案内してくれたが採掘ポイントが無くて、ここに来た二人は不思議そうに首を傾げた。それからイッチョウが見つけた洞穴、二人が再挑戦従っていた未開拓の洞窟の中へと突入した。凄く暗いので召喚したサイナに照らしてもらった。機械の箱から出てくる小さな虫型の機械が蛍のように光りながら洞窟の至る所に張り付く。
「サイナ、この洞窟の中をマップにできるか?」
「可能です。お任せください」
続いて無数の鳥が出てきて光虫の機械と一緒に洞窟の奥へと飛んで行く。またサイナは別の機械を創造したもので俺達にも洞窟内をマップにする経過途中を立体映像として見せてくれる。
「えええ・・・・・これはちょっと」
「広過ぎる、よね」
「広いってもんじゃないな。アリの巣みたいな洞窟だぞこれ」
時間を掛けて洞窟内のマップは1時間ほどで網羅できた。その間、俺達も洞窟内を歩き回っていたので暇ではなかったし、いくつも見つけた採掘ポイントにピッケルを打ち下ろして未知の鉱物をゲットできた。太古の結晶は手に入らなかったのが残念である。
「サイナのおかげで迷うことはなくなったが・・・・・やっぱりモンスターの巣であったか」
しかも一メートル程の大きさである。あの特有の足音や羽音が凄くうるさくて敵わない。姿形が見えた時には、サイナを格納して来た道へ一糸乱れず俺達は逃げる羽目になり、黒い波から追われる。ちょっと調べてみようかな・・・・・ハイ?
「・・・・・名前はゴキブリン。・・・・・うわー最悪すぎる」
「何が!?」
「あのモンスター、【悪食】と【生命簒奪】のスキルで攻撃してくる。一匹にでも捕まったら即死するぞ」
「ヤバいじゃないのー!!」
「うおおおおー! それだけは死に戻ってもいやだぁー!!」
「絶対に生き残ってやる~!!」
ならばと宝石肉をゴキブリンに投げ込むと一瞬で黒い波に飲み込まれて消失した光景に危険度がMAXになった。
「水晶系のモンスター以上にヤバい!」
「ハーデスがそこまで言うほどのモンスターなら本当に相当なのね! レベルは!?」
「不思議なことにレベルは1だけど、ステータスがおかしすぎる! HPとAGIが1500!」
「事前にハーデスが私達を強化してくれたおかげで逃げ切れているのね!」
「あともうちょっとで出口だよ!」
全力疾走する俺達から少し遅れて追いかけてくるゴキブリン達。このままいけば確実に逃げ切れるというのに、何か別の震動が起きていないか?
「あ、この揺れ・・・・・破壊不能のモンスターが転がってくる!」
「なんだと!?」
あ、ゴロゴロと音が強まってる! というかこの感じ・・・・・真後ろからだよな? ついでに何かが潰れる音が聞こえるようになって、振り返るとゴキブリンを押し潰しながら転がる大きな白い塊が俺達に迫って来た。
「あれ、速い!? いま俺達のAGIは1万なのに!」
「「嘘!?」」
害虫モンスターの脅威はなくなったが、また別の脅威に晒される。一難去ってまた一難! 俺達は必死に走って走りまくりやっとの思いで出口がある洞窟のエリアに戻ることができると皆と一斉に【飛翔】して外へ脱出する。
シュバッ!
「んん!?」
俺の足に何か触手みたいなのが巻き付いた。下を見やれば白い塊もとい破壊不能のモンスターから伸びていることが分かった矢先に、俺は引きずり込まれた。
「「ハーデス!?」」
「先に行けー! 何とか生き延びてみるからー!」
脱出する皆に叫ぶ俺は破壊不能のモンスター『???』の口の中に喰われてしまった。おや、懐かしい体験ですねー? 胃袋の中に納まる感じー・・・・・・うん? あ、ちょっと待って、転がろうとしてない? あの転がらないで? 気持ち悪くなる、本当に気持ち悪くーーー!! おおおあああああー!?
運営side
「えええ・・・・・なんで食われて無事なんだよ。あのモンスターって捕食行動を設定してもプレイヤーが即死するんじゃなかった?」
「一度【不屈の守護者】の発動が確認されたあとに、あのチートアイテムになりうる『宇宙の星屑』を使って防護衣のように自身を包んだことで即死は免れたっすよ」
「やっぱりあれは耐久性ありにしておくべきだったろ!」
「いやいや、五つ以上が必要な上に神匠の鍛治師がいないとインベントリの肥やしになる代物ですよ? しかも集めるだけでかなり大変な設定にしたじゃありませんか」
「それにNPCを神匠の鍛治師にするのも、鍛治師のNPCと深く関わって好感度をかなり高くなきゃいけないっす。白銀さんは無自覚で好感度を上げに上げまくったどころか特定のプレイヤーの専属鍛治師になるほど限界突破してしまったっすよ?」
「・・・・・この後、どうなると思う」
「お持ち帰りされてますし、白銀さんを消化するまで閉じ込められたままでしょうね」
「意地でも死に戻りする気はないと思うっすよ」
「・・・・・少し様子を見よう」
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
ううう・・・・・ひどい目に遭った。HPが一気に1に減る勢いを見てチートなアイテムを使って身を包んで守っても転がることだけは変わらずで、どこまで転がって行ったのかわからないけどやっと止まってくれた。でも実際はどこだ?
「・・・・・圏外、だと?」
サイナが網羅した洞窟内のマップ内・・・・・からさらに奥まで移動していたようだ。おいおい、どこまで広いんだよこの洞窟は?
「生き延びて戻ると約束したんだ。まずはどうにかして腹から脱出しないと話にならないな」
ちょっと周りを探るか。宇宙の星塊に腕だけ通す穴を開いて手を出してペタペタと手先だけで触感を確かめる。地面なら硬質だが・・・・・そうじゃなかった。液体に浸かっている感触だ。うーん、まだモンスターの胃袋の中かこれ。さて、破壊不能のモンスターだから倒すことは不可能。しかし、必ずしもスキルの影響は受けないとは限らないことをドラグが証明した。腹から脱出するには・・・・・許容オーバーしかないだろうな。日食を装備した手も宇宙の星塊から突き出してスキルを発動する。
「【ヴェノムカプセル】」
何度も、何度も俺を吐くまで毒の攻防一体の塊を大きくしていく。破壊不能のモンスターの胃袋がどれだけ頑強か確かめてやろうじゃないか!
運営side
「何やってんだこのプレイヤー!?!?!?」
「う、うわぁ・・・・・見事に大きく膨らんでる」
「見ていられない程にな。もう天井近くまで膨らんでも破壊されないって、データなのに不憫過ぎて可哀想と思ってくる光景を見ることになるなんて・・・・・」
「主任どうするっすか? ベヒモスの時と違って絶対に倒せないモンスターの中でこれ以上、しかも何時間も閉じ込めると上から何か言ってくると思うっすよ」
「あそこで死に戻ったら装備を落とすことになるから、白銀さんも意地になって脱出しようとするんですよ」
「・・・・・諦めてくれることはないか?」
「「全財産賭けてもいいぐらい、絶対に諦めないと」」
「・・・・・あと十分だけ様子を見よう」
「うわ、鬼畜! 鬼! この人でなし!」
「プレイヤーの頑張りを無下にする最低な上司っすね!」
「やかましい! 運営が特定のプレイヤーを贔屓するような真似をしていいわけないだろうが!」
「じゃあ、もしも白銀さんが・・・・・あ」
「なんだ、その『あ』って・・・・・えええ」
「今度は、そうするのか白銀さーん」
「【溶岩魔人】を使ってるっす・・・・・スキルも使って出口、というかモンスターの口から出ようと溶岩だらけにしてるっすけど・・・・・」
「破壊不能だからダメージも入らないんだよなー。モンスターも苦しまないし」
「・・・というか、【テレポート】のスキルを何で使わない!? あれなら脱出できるだろう!?」
「いや、あの状況では無理です。【テレポート】はプレイヤーが座標を登録した場所やエリアのみしか使えないスキルですよ? プレイヤーがイベントでの戦闘中、もしくはプレイヤーの自身に何らかの影響を受けている最中だと使用できない設定をしたじゃないですか」
「現在進行形でどうやっても倒せないしどうやっても脱出できないモンスターの胃袋という名の牢獄に囚われているんで【テレポート】の使用はできないっす。使えるならもうとっくの昔に使って脱出しているっすよきっと」
「・・・・・う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
『くそったれええええええええええええええええええ!!? 脱出できねぇえええええ!!! 死に戻りは絶対にしないぞ運営こんちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!!』
「「ほら、賭けは俺達の勝ちってことで諦めて解放を」」
「ぐうううう・・・・・っ、チクショウー!!! 上から怒られるのは俺なんだぞー!!?」
「―――お?」
破壊不能モンスターが突然消失した? 急に何で・・・うん? メール、って運営からか。
「・・・・・謝罪と、諦めてほしかった呆れた文章だな」
悪かったな、諦めが悪くて! 装備を失ったら二度とこのゲームはやらないから! って運営にメールを送り返した。今回だけは特別に運営側から解放してくれたことも感謝を込めてだ。はぁ~・・・・・久々の自由!
『スキル【不屈の闘志】を取得しました』
「これも手に入ることになろうとは・・・【不屈の守護者】みたいな感じか?」
【不屈の闘志】
戦闘中にプレイヤーのHPが半分以下になると残りのHP分の数値が【STR】と【VIT】と【AGI】に増加する。それ以降もHPが減少すればその分の数値が各ステータスに加算される
取得条件:ソロでアイテムやスキルによるバフ、装備のステータス数値を除く【VIT】値500以上で破壊不能のモンスターと30分以上戦う
おおおう・・・・・これは厳しい条件だな。俺の場合は、胃袋の中にいたから戦闘という戦闘を碌にしていなかったというのに。そうか、胃袋の中であれこれしていたから条件が達成したのか。これはペインにも取得してほしいところだ。その為には防御力を高めてもらわないといけないんだが・・・・・。
さてと、改めてここから脱出を・・・・・。サイナ召喚!
「サイナ、またマップを作ってくれ。明かりも頼む」
「かしこまりました」
お世話になりますサイナさん! さて俺も何かしていようと考えた矢先に機械型の光虫が真っ暗で何も見えなかったこの場を照らして・・・・・洞窟内の全容を晒してくれたお陰で大発見ができた。
「・・・・・すげぇ」
天上・・・いや、この洞窟全体が綺麗な縞々模様でそれらが採掘できるポイント、それらがそこら中に表示されているんだ。十や二十どころか百以上もあるかもしれない。極めつけは、洞窟の行き止まりの天井から巨大な金塊があることだ。気になって近づこうとしたらサイナが話しかけた。
「マスター、完了しました」
「あれ、意外と早かったな?」
「途中で中断したために調査ができなかった範囲外、私達はその範囲外から調査を完了したルートと繋がりました。まだこの洞窟内の全容を暴くには多少時間がかかります」
「そうか。地上と繋がる通路が判れば今はそれで十分すぎる」
止めていた足を再度動かして金塊に近づいた。採掘ポイントは無しか。無いのにこれ見よがしに掘れと言わんばかりに主張してる金塊に気になった。他の皆には悪いが先に採掘させてもらおう。
「サイナ、この金塊の周りを削ってくれるか?」
「了解。採掘開始します」
宝饗水巣の水晶の鉱石を採掘した機械型の大きい昆虫を召喚するサイナ。天井に張り付いて金塊の周りの岩盤を砕いて掘っていく。音に反応して襲撃してくるクリスタルモンスターズがいないから気にしないでいられる。岩を掘る機械型の昆虫を見守っている間にモンスターが来ないか警戒するが、十分ほど経っても来る気配が感じられないまま、採掘の作業が終わった。
大きさは10Mもある金塊。鑑定するととんでもないものであることが判明した。
『宇宙の星塊(超大)』
「・・・・・ここまで大きいのがあるのかよ」
何とも言えない気持ちになるも回収した。それからこの場の光景をスクショ、【テレポート】の座標を登録してからサイナを送還させた後、一回だけ採掘してからマップを見ながら地上へ帰還する。皆と合流するとイズ達が凄く安堵した表情を浮かべて俺を出迎えてくれた。
「ハーデス、生きていたのね!」
「やっぱり生きていて・・・・・凄く心配したよ」
「さすがに俺も死に戻りする覚悟をした。何をしても脱出できなかったからな。諦めが悪い俺を見て運営が解放してくれたんだ」
「防御力極振りのプレイヤーとして伊逹じゃないところを見せられなのね運営」
「ハーデス、凄いね」
えっへんと胸を張った。いや、本当に自分でも悪足掻きしたと思うわ。
「そのおかげで色々と発見したぞ。色々と言っても二つだけだが」
「なに? またスキル?」
「それもそうだけど一番の発見はこれだ」
スクショした洞窟内を見せると数えきれない採掘ポイントに目を限界まで見開いた二人に肩を掴まれた。
「これ、本当なの!? こんな一ヵ所にこれだけ採掘できる場所が存在するなんて!」
「ここどこ、教えて? ハーデス!」
「顔が近いって二人共、場所はさっきの洞窟の深層だ」
「「行こう!」」
行動力が凄すぎではありませんかね!?
「行くなら全員でだ! 今ならたぶん、あの破壊不能のモンスターもいないだろうし!」
「「呼びかけてくる!!」」
え、本気で? あ、本当にコールしちゃって・・・・・まぁいいか。俺は少し休もう。暗い場所で狭い場所にいるのも少し疲れたし、砂浜で日向ぼっこでもしよう。