バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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決着

片足を奪われたのは不味い。というか、アバターの身体が欠損するなんて初めて知ったぞ。【飛翔】で宙に浮き砲撃を繰り返すものなら、あいつは【跳躍】で一気に俺との距離を縮めて顎を開けて俺を喰らわんとしてくる。それを避け背後に回ろうとしても野太い尾で小うるさい蝿を叩かんばかりに狙って振られる。

 

『よくもお姉ちゃんを!!! 許さないー!!!』

 

「イカル!?」

 

【相乗効果】でベヒモス、ジズ、リヴァイアサンのキメラ姿になったイカルが怒りながらSCAR-RED・T-REXに飛び掛かった。標的を変更したSCAR-RED・T-REXはイカルに目掛けて顎を開くが、如何せん体の大きさはキメラのイカルの方が大きく、尻尾のリヴァイアサンも獲物を呑み込まんと大口を開けばそれ以上だ。

 

SCAR-RED・T-REXはそれを察知して【跳躍】した。宙に跳んだ恐竜に背中のジズが口を開けてビームを放った。・・・・・え、そんなことできたのか? さすがに避けられなかった奴はそれなりのダメージを受けてビーチに着地してイカルの背後から【跳躍】で一気に接近した。

 

「させないよー!」

 

どこからか聞こえて来る謎の声。一拍遅れて見たことが無い炎に包まれた巨人がSCAR-RED・T-REXの上から落ちてきてしがみ付いた。・・・・・誰ですかあなた?

 

「ハーデス!」

 

「白銀さん! って、性転換していたー!?」

 

「しかも水着姿! あ、ありがとうございます!」

 

「あれがユニークモンスターのティラノサウルスか! デケーな!」

 

「白銀さんと従魔達をよくも!」

 

「恐竜には恐竜だ! いけー! 俺の恐竜ー!」

 

「おうそうだな!」

 

【テレポート】で戻ってきた仲間達が駆け付け、テイムした恐竜で戦わせる。中には恐竜に乗って戦うという危なっかしいことをする仲間達を見送る俺の傍にペイン達が寄って来た。

 

「ハーデス、その腕と脚は大丈夫なのか? リアルに血みたいな液体が出ているよ」

 

「痛みは全くないわ。見た目も本番にしたようね。流れる分HPも減っていくしここまで再現しなくてもいいと思う」

 

「なに冷静に話しているの! 止血しないと!」

 

「ていうか、欠損した部分ってどうやって元に戻すんだ? 死に戻らなきゃならないのかよ」

 

「多分そうだろう。ハーデス、あのティラノサウルスの情報を教えてくれ」

 

イズとフレデリカが手足に包帯を巻いて止血してくれる間にSCAR-RED・T-REXの情報を公開する。ハッキリとドラグが「やべぇ」と口にするほど危機感を抱いたようだ。

 

「【絶望】ってスキルは何だ?」

 

「プレイヤーの数によってステータスが増減する。一人に付き+500」

 

「おい!? 俺たちが強化しているようなもんじゃねぇか!」

 

「いやいや、【不沈】の方がヤバいでしょ。絶対に沈まないって意味だけど、どんな攻撃でもダメージは固定で一割しか受けないってスキルなのよ?」

 

俺より硬いモンスターなんて初めてだ。そんなモンスターを配置する運営も鬼畜過ぎる。これを乗り越えないとこの先も勝てないぞって言われている気分だ。

 

「おい話している間に挑んで行った連中、もう半数以下になってるぞ」

 

あれまいつの間に。でも、SCAR-RED・T-REXの方もちょっとはダメージを受けたようだ。全然9割も残っているけど。イカルと炎の巨人も健在だが、時間の問題だろう。

 

「ハーデス、倒す手段はある?」

 

「一つ気になることが。皆は恐竜って種族的に竜、ドラゴン系だと思う?」

 

「は? 恐竜は恐竜だろ。ドラゴンなんてあるはずがないだろ」

 

「竜って文字があるんだから親戚みたいなもんだろ」

 

「恐竜の時代の後、神話と一緒に西洋のドラゴンや東洋の竜の概念が生まれたからね。関係はあると思うよ」

 

「私はよくわからないけど、ドラゴンだったらなんとかなるの?」

 

「もしかして、あるの?」

 

俺は可能性があると込めて頷いた。

 

「ということで協力してくれ。何とかできるのがいくつかある。でも、これが一番楽で確実に倒せるのがって作戦はある」

 

「お前ってどんなプレイをしてれば地獄絵図を喜劇に変えられるようなことできるんだよ」

 

知りませーん。ということでトップバッターはお前だドレッド。これをもってティラノさんの足元にばら撒いて来い。

 

 

 

 

 

 

 

 

数多のプレイヤーとテイムモンスターの恐竜を相手に【ニトロ】を撒き散らし爆発で蹂躙、純粋なパワーで凌駕したSCAR-RED・T-REXの目の前には敵は巨大な異形の二体のみとなった。その二体も一撃を喰らえば敗北は必須。故にSCAR-RED・T-REXは本能的に己が脅威と感じる片足と片腕を奪ってなおも、脅威のレベルが下がらないハーデスに目を向ける。

 

まだ己を恐れない、闘争心の炎を宿す目を向けるハーデスを喰らわんと一歩前に足を運んでから【跳躍】しようとした瞬間。地面がいきなり消失した。理由が分からず、それなりに深い穴の中に落ちたことだけは理解する。だが脱出できない深さではないので【跳躍】で脱出を試みた矢先。

 

「【相乗効果】! 【生命簒奪】! 【悪食】! 【ラグナロク】!」

 

ハーデスを中心に全てを呑み込む『海』が発生した。エリア中に広がる大津波に呑み込まれるSCAR-RED・T-REXの高いHPが【VIT】を無視して呆気なく6割まで減らされた。水瓏も呑み込まれる筈だが、高く宙に浮いていて難を逃れていた。

 

「【連結】! 【エクスプロージョン】! 【アルマゲドン】!」

 

海が大爆発の連鎖を起こし、さらにHPが減る。やがて『海』が消えるとSCAR-RED・T-REXは本物の海へ流されていることに気付く―――。

 

「イカル! メイプル!」

 

「「はい!」」

 

「「【ラグナロク】!!」」

 

いつの間にかハーデスの傍にいた二人の少女のスキルの宣言とともに周囲の地面が再び『海』に呑み込まれる。SCAR-RED・T-REXはまたしても呑み込まれてさらに沖の方へと流されていく。その様子を見ていたプレイヤー達はドン引きしていた。自分たちで倒せないなら溺死させて倒そうという魂胆に気付いたプレイヤー限定で。

 

「「【アルマゲドン】!」」

 

空から落ちてくる隕石を喰らいHPを減らすSCAR-RED・T-REXへ忍び寄る大きな影。ハーデスがテイムしたモササウルスとイカルがテイムしたプレシオサウルスだ。二匹がSCAR-RED・T-REXの尻尾を噛みつき、海中へと引きずり込む。遅れて海中に潜るリヴァイアサンに変身したメイプルに跨るハーデスとイカル。【STR】が高いSCAR-RED・T-REXは二匹の海竜から抜け出して海面に出ようとするが、ハーデスがインベントリから繰り出す『宇宙の星塊(超大)』で全身を蓑虫のように拘束され、メイプルが噛みつくとモササウルスとプレシオサウルスも噛みつき、一緒に深海へ向かった。

 

その間、【蒼龍の聖剣】のプレイヤー達は自分たちの落し物の回収に動き出した。三度の【ラグナロク】でも流されなかったことに安堵で胸を撫で下ろした後に。

 

「あれ、これ私のじゃない! この黒っぽい戦士系みたいな鎧の持ち主は誰ー?」

 

「この麦わらみたいな帽子とその他の装備・・・・・佐々木痔郎のじゃねー?」

 

「俺の? どれどれ・・・お、確かに俺のだサンキュー。じゃあこれはお前のか?」

 

「・・・・・おいこら、SMの女王様の装備を俺のにしようとするな! 明らかに人違いだって判ってて言っているだろ!」

 

「それって私のよねー? 返してくれたらお礼に鞭を打ってあげるわ」

 

「遠慮するわー!?」

 

和気藹々と自分の装備の回収しているプレイヤー達は呑気そのもの。全員が白銀さんなら勝って戻ってくるという全幅の信頼から、誰一人として心配していないからだ。その様子を水瓏から見下ろすイズ達。

 

「ハーデスの奴、えげつねぇことをするな」

 

「地上では勝てないからって海の中で倒そうとする発想は浮かんでも普通は実行できないぞ」

 

「実行できるからするんでしょ?」

 

「確かにね。俺も出来るようになりたいな。不可能を可能にするように」

 

「それにしたって恐竜のユニークモンスター、強すぎでしょ。あのハーデス君ですら真正面から倒せないモンスターなんて。これからも他の新大陸にもいると思うと、私達も強くならなくちゃいけないって」

 

「そうよねぇ・・・・・110までレベルをこの島であげておいた方がいい気がしてくる」

 

痛感させられる新大陸の厳しさ。新大陸を楽しみたかったらレベルを上げろと運営に示唆されている気がしてならず、一同は海面から飛び出すリヴァイアサンを横目にそう考えた。

 

『ただいまー!』

 

「メイプルちゃんお帰りなさい。ハーデスとイカルちゃんはー?」

 

『勿論いますよ!』

 

水飛沫を立ち上がらせながら甲板に跳び移った巨大な影。目を丸くするイズ達の後ろにSCAR-RED・T-REXが現れた。ペイン達は一瞬警戒したが、突然輝きだす光からハーデスが姿を見せた。続いて背中からイカルも姿を見せる。

 

「ただいま」

 

「お帰り、テイムしたんだねー」

 

「戦力を確保しておいた方がきっといるだろう。他のユニークモンスターと渡り合えることができるだろうからね」

 

「それより、その手足はどうするんだよ」

 

「死に戻り、もしくは死に戻りする直前にプレイヤーを復活させるアイテムを使うかだな」

 

それしかないだろうと思ったのは一同全員だった中、ハーデスはインベントリから摩訶不思議な手のひらサイズの玉を取り出すと軽く真上に放り投げたその後、短刀を装備して逆手に持つと躊躇なく自身の心臓に突き刺して自傷、HPが一割の状態だったか自殺した。消えゆくハーデスの身体に放り投げた玉が落ちてぶつかると、玉が淡い光を放ちハーデスのHPを全回復するだけでなく欠損した手足も復元した。ついでに性別も戻った。

 

「・・・よし、セルフ蘇生成功だ」

 

「器用なことするねー」

 

「『ドラゴン族の宝玉』を手に入れてこの蘇生アイテムを見つけてから何回か試したことがあるからな」

 

「もしかしなくても、お前だけで何とか出来たのかよ?」

 

SCAR-RED・T-REXを見ながら指摘するドラグにハーデスは首を横に振った。

できなくはないかもしれないが、単独で挑むことになってしまったベヒモス戦より苦労を強いられ、敗北が濃かったのは事実だ。

 

「はぁー・・・もっとレベル上げとおかないと」

 

「やっぱりハーデスも同じ事を思ってたね」

 

「そりゃあ、レベル500のモンスターがこの先に待ち構えているんだ。今のままで同じ楽しみが出来ると思っちゃいないぞ」

 

「だよな。そんじゃあ、目標のレベルは?」

 

「110だ。個人的にはユニークモンスターもいることが分かったし、最大120まで上げるつもりだけど反対側の陸地にも探索したい気持ちもある」

 

「それもそうね? じゃあ、近い内に反対側に行く?」

 

首肯するハーデス。

 

「そうしよう。その前に皆に伝えておかないとだけど、何しているところだ?」

 

「自分の財産を回収中よ」

 

「じゃあ、それが終わったら会議室に集合だ。いいか?」

 

イズ達が頷くことで先にハーデスは船から降りて、SCAR-RED・T-REXをテイムしたことを皆に伝え感謝の言葉を送った。

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