そろそろ大陸の反対側へ向かうことに決めた。ギルドメンバーの皆も賛同してくれてミィ達の船を残し出航する俺達は大陸を半周して恐竜の背中の部分に停泊すると。ヘリコプターのプロペラの音が聞こえ、森から巨大な昆虫が飛び出してきてどこかへ飛んでいく様子を目撃した。
「うおおー!? 何だ今の虫は! すげー!!」
「はい! ロマンですね!」
「ああ、ロマンだ!」
「まさか、ここにも恐竜みたいに虫と虫を合体、合成できるオブジェクトがあるんじゃないよな」
「それは・・・・・見つけて試してみたくはあるな」
「合体スキーの者としては、是非とも見つけ出さなければならぬ使命感が・・・・・!」
一部のインセクトテイマー達が恐竜の時よりもはしゃぎだす中、いつも通りバフを盛ってからみんなは上陸をした。
「みんな、気を付けろよー! 特に古代の虫は大きい奴もいるかもしれないんだからなー!」
「それはそれで捕まえたくなる!」
「その通りです!」
「だったら蜂や蚊にも気を付けろよ。気付かれない内に状態異常されてたなんてことあったら助けられないからな」
俺は船番で全員が帰るまで待つこと五分。
「白銀さあああぁぁぁぁぁぁん!!」
「うん?」
寛いでいた甲板から顔を出して、森の奥から声がした方へ見つめる。仲間達が何かから逃げるように森から出てきたその理由は、何か体長が一メートルはある巨大な蚊の群れに追われているではありませんかー?
「海の中に飛び込め! 【相乗効果】【毒竜】! 【パラライズシャウト】!」
毒を食らわせてみた感じ、状態異常にはなった蚊がUターンして森の中へ戻ってしまった呆気なさに首をかしげる。でも、麻痺して逃げれなかった蚊がいて、調べると。
ブラッディーキート
群れで獲物の血を吸う古代の大型の蚊。遠くにいても吸血する際マーキングするので必ず見つて獲物が死ぬまで血を吸う執着心を持っている。
と、そんな蚊のモンスターを倒すと【吸血】のスキルが付与されてるブラッディーキートの口針が手に入った。その後に海に避難した仲間を引き上げて遭遇した場所の情報を聞く。
「やられた仲間は?」
「いや、襲われたから逃げてきた。あの羽音がリアルでも嫌いすぎでさ・・・・・」
「俺も田舎だから夜になると五月蝿くてしょうがないんだ」
「ログアウトしたら蚊取り線香を買うぞ!」
死に戻りしたプレイヤーはいなかったか、と思っていたら初期装備姿の仲間達が甲板に出てきた。
「お前らは死に戻ったのか」
「トンボに襲われて・・・・・」
「いや、あれはドラゴンぽかったぞ?」
「でもトンボだったぞ」
・・・・・ドラゴンみたいなトンボ?
「体の色はなんだった?」
「赤だった」
「んじゃあ、ドラゴンフライか。 別名アキアカネってトンボでもあるから」
「「「それだ!」」」
回りから納得された。
「というか恐竜の時代にトンボっていたのか?」
「化石で発見されてるぞ。名前はメガネウラって30cm以上の翅を持つ大トンボ類の一属が」
「白銀さん、博識だな」
「恐竜に興味あるなら誰でも知ってる知識だと思うが?」
お前らは知らないのか、と目で見回す俺から皆が目を剃らす。
「まぁ、俺も全部が全部知ってる訳じゃないから。みんなも知っていそうなマイナーな恐竜ぐらいしかわからないと思うさ」
「具体的に言うと?」
「分かりやすく例えるとティラノサウルス、ブラキオサウルス、ステゴサウルス、トリケラトプスに属する、本に描かれている恐竜はわかる。骨だけの恐竜は今一判別できないな」
「それはそれで凄い・・・・・じゃあーあの恐竜はなーんだ」
どれのことを言っているのか、なぞなぞの問題を出されて仲間が指した方へ振り向くと。トリケラトプスがいた。
「あれはトリケラ・・・・・」
ただし、顔の部分だけがそれで首から下は二足歩行できる大型の体の恐竜だった。てか、よくみたら草食の恐竜の目付きと口の中から覗ける牙は肉食のそれですよね? 手も何かを掴めることができる大きさだし。背中はステゴサウルスの剣プレートが生えてる。というか、あんなモンスターもいるのか。―――青いマーカー、NPCだ。
「いや、全く知らない恐竜だ。ティラノサウルスとトリケラトプスを合体したような恐竜だろあれ」
「なん、だと?」
「ああいうのもありなのかよ!」
「しまったー! ・・・・・で、すんごくこっちを見てるんですけど、襲ってきますかね?」
「襲ってこないことを祈る。船が壊されかねないからな。ということで餌付けができるかチャレンジしてみる」
宝石の肉を取り出して突きつけると、謎の恐竜は鈍い足音を踏み鳴らしながら接近してくる。肉の匂いを何度か嗅いだ後にトリケラトプスの口で噛みつき、火山にいる赤いドラゴンを思い出させる豪快な喰いっぷりを見せてくれた後。踵を返して去ろうとするも、こっちに振り返って見つめてくる仕草に察した。
「ついて来いって言ってるな。行くぞ」
「え、俺達もですか!?」
「あのー、装備がロストしちゃって・・・・・」
「俺が艦から離れると無防備になってモンスターや他のプレイヤーに破壊されて帰る家がなくなるのと、絶対安心できる防御力の恩恵を得られるのとどっちがいい?」
「「「「「一生ついて行きます!!!」」」」」
わかっているじゃないか。もちろん、水瓏ごと行くつもりだから安心しろ。艦を浮かして上陸する俺達の前に歩き出すキメラ恐竜について行く。一体どこへ行くのだろうと追いかけてみれば地図で例えると恐竜の腹部あたりの山脈だ。山を登り頂上に着くキメラ恐竜が停まった。
・・・・・なんか、白骨化したドラゴンっぽいオブジェクトがあるのだが。その骨の前に祭壇みたいなのがある。
「何のためにここへ案内したのか? ということでフェル召喚」
通訳、というわけではないが艦から降りた俺にもわかるように教えてもらうことにした。
「・・・・・」
「・・・・・」
目線を合わせ、語り合って・・・・・今更ながら狼と恐竜って話通じ合うっけ? とおかしな考えをする俺によるフェルが寄って来て、足で背中を押して祭壇の方へ歩けと催促される。
「・・・・・ん? これは・・・・・」
祭壇に触れると『生贄を捧げろ』というメッセージが浮かんだ。
「・・・・・まさか、そういうことなのか?」
キメラ恐竜を見れば、何故か頭を垂らしてくる。えええ・・・・・本気なのか?
「白銀さん、一体どうしたんで?」
「多分、この恐竜を復活させることができて、それをしろというクエストかどうかわからんことを頼まれている気がする」
「マジで? 骨からモンスターを復活させることができるんですか?」
「この祭壇に生贄を捧げろと表示する。試しに触ってみてくれ」
「じゃあ、俺が・・・・・あ、本当だ。物騒なメッセージが白銀さんじゃなくても表示されたぞ」
「生贄って、プレイヤーをか?」
「さすがにそれは・・・・・ないよな?」
「恐竜でもいいんじゃないかなーって思ってはいる」
「アイテムじゃあダメですかねー?」
色々と試さなくちゃならないなこれ。
「じゃあ、最初にプレイヤーを生贄にしてみるか。ということで俺がなってみるけど異論は?」
「ドロップアイテムがロストしちゃいますよ!? 船もロストしちゃいません!?」
「艦か・・・・・どうなるんだ? サイナ召喚」
鍵格納を介してサイナを呼び出した。
「サイナ、俺が死んだ場合は艦はどうなる?」
「告:所有権を失い艦本来の機能が停止します」
「となると、イッチョウの協力が必要か」
コールして協力が不可欠な事が出来たから来てほしいと頼むと、すぐに【テレポート】で来てくれた。事情を説明すれば呆れつつ納得した。
「他のプレイヤーを生贄にするって考えはなかったの?」
「そういう提案を考えるなら、可愛いイッチョウが試しに生贄になってくれるか? 落とした財産は俺が守るから」
「ンー、それなら別に構いよん。何を生贄にできるかはまだわからないんでしょ?」
「そういうこと。もしも装備までロストしたら、ユニーク装備を何とか用意するよ」
「頼りになるねー。それじゃあ、試そうか」
軽い調子で祭壇に乗るイッチョウ。で、どうすればいいんだ次は?
「生贄を捧げる、って言えばいいのか?」
「じゃあ、言いますねー。生贄を捧げる!」
宣言をしたイッチョウ。しかし、何の変化もなかった。俺達は小首を傾げる。
「えーと、生贄に捧げることはできませんって表示されたけど?」
「プレイヤーはダメってことか。じゃあ次はモンスターだ」
「モンスターって、恐竜ですよね? べらぼうに強い恐竜をテイムせず生贄のために捕獲できるんですか?」
「一応できなくはない。運搬もそれなりの大きさの恐竜なら・・・・・いや、わざわざそうしなくてもできる方法があるかも?」
何か脳裏に過った。俺のスキルにそんなことができそうなのがあった気がした。探してみると・・・なかった。あれ何だっけ、アイテムだったか? ・・・・・お、あったすっかり忘れてた『神獣使いの指輪』に付与されてる【再輪】だった!
「えーと、アンモナイトのドロップアイテムがあるから使ってみるか」
指輪を装着して【再輪】を使ってみた・・・・・が、MP不足と表示されたー!? こなくそ、『黄金の対秤』を使って俺のMPを大量のGを消費して爆盛するしかないんじゃん! 試しに100万まで増やして再度挑戦したら、今度は成功してドロップアイテムが輝き海で見掛けたアンモナイトが祭壇の上に横たわっていた。
「え、どうなって?」
「モンスターが復活した?」
野次馬の声は無視し、祭壇に向かって生贄を捧げると言った瞬間。祭壇が光り出してアンモナイトが消失した。・・・・・これ、パラメータ的なのが見えないのか? と思ったら・・・・・。
〔感謝する。若き神獣使いの者よ〕
「・・・・・?」
〔あなたの目の前にいる〕
目の前と言われても、骨だけなんだが?
〔捧げた命で少しだけ会話ができます。これからも生贄を用意して私を復活させてくれるならば恩恵を捧げると約束します。どうか、よろしくお願い―――〕
頭の中で聞こえる声が途切れ、青いパネルが浮かび上がった。EX『古の恐竜王の復活』というクエストだ。
「クエストが発生したー」
「新大陸初のクエスト!? どんなですか?」
「この骨の恐竜を復活させるクエストだ。ちょっとお前らも手持ちのドロップアイテムを捧げて見てくれるか? やり方はさっきと同じだ」
促してみると一人の仲間が鉱石のアイテムを捧げて見たら、生贄として使えませんと表示されたらしく、別の仲間が恐竜の爪を捧げると祭壇が輝いて―――。
「あ、俺もクエストが発生したぞ。白銀さんと同じEXクエストだ!」
「「「「「エクストラ!?」」」」」
「ってことは、白銀さんと同じクエストをするために一度アイテムを捧げないといけないのか」
「だろうな。そしてそれはおそらく命あるアイテムじゃないとダメと見た。鉱石がダメで恐竜のドロップアイテムが捧げれたからな。新旧のモンスターのドロップアイテム、もしくは料理系のアイテムじゃないとダメじゃないか?」
さっきの様子を見て他の皆もきっとそうだろうと予想していたようで誰も否定はしなかった。
「・・・・・ところでテイムしたモンスターも生贄の対象なんですかね?」
俺に向かってその一言以降、俺達の間で微妙な空気になった。それを破らんとして俺は・・・・・。
「試しにゆぐゆぐを生贄にしてみよう。お前の予想通りかどうか―――」
「「「「「や、やめろぉおおおおおおお!!!」」」」」
「ふははは! 止めてほしくば俺を捕まえてみるがいい!」
なお、この場にいる俺以外のギルドメンバーは、ゆぐゆぐのファンであることを覚えていた。それをわかり切っているのに敢えて特定の従魔を差しだそうとすればこうなることも簡単に想像できたから、俺は追いかけ回されるのだった。
「お前ぇ! 白銀さんにむかって何てこと言うんだー!?」
「ご、ごめーん!!?」
口は禍の元だ若人よ。次から発言に気を付けたまえ。さもなくば居心地の良さが悪くなるぞ。